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<ミャンマーで今、何が?> Vol.102
2014.07.09

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■マンダレーで戒厳令

 ・01:マンダレーで夜間外出禁止令

 ・02:マンダレー地区の暴動が拡散

 ・03:事件の発端

 ・04:事件の続報

 ・05:更なる続報

 ・06:国営新聞NLM紙の報道は理解できましたか?

 ・07:NLM紙が書かなかった情報

 ・08:マンダレーとラカインの宗教対立は異なるか?

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01:マンダレーで夜間外出禁止令

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戒厳令による夜間外出禁止令が発布された。隣国タイの話かと思ったら、ミャンマーだという。例によって7月4日付日刊英字新聞NLM紙から情報を拾ってみよう。第一面の囲み記事で“マンダレーに夜間禁止令施行”の表題が付いている。記事内容は次のとおりだ。

「7月1日・2日の連続2夜、暴動で2名が死亡したことを受け、地方当局は7月3日午前9時にマンダレー地区合計6町区で夜間外出禁止令を発令した。喫茶店オーナーがレイプ事件で起訴されたという情報で、7月1日、何人かの暴徒が集合しはじめ、この喫茶店を攻撃した。翌7月2日、警官隊は再びこの喫茶店を攻撃した何百人という暴徒たちを追払い四散させた。この暴動が周辺の町区へ拡散するのを防ぎ、安全確保と法律遵守を徹底させるため、午後9時から午前5時までの外出禁止令を発令し、この時間帯に路上で5人以上の集合を禁止した。この暴動では棍棒、刀類、武器、発火性物質が使用されたとし、警官隊の鎮圧行為を阻止するものは厳罰に処すとしている。」



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02:マンダレー地区の暴動が拡散

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この暴動事件は問題の喫茶店があるチャンエイタザン町区を含む6町区からさらに拡散し、翌7月5日付NLM紙の第一面囲み記事で、“パテインジーにも夜間外出禁止令”のタイトルで「7月4日から同様の措置が取られた」ことが記載されている。この暴動事件の拡散化が危惧されている。


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03:事件の発端

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7月4日・5日の連続2日間の囲み記事はマンダレー当局の公式発表だが、それ以外に7月3日付け同NLM紙第一面で、関連記事が出ている。

表題は“マンダレーで警官が何百人の暴徒を追払う”となっており、「マンダレーの27番街と82番街の角にあるサン(Sun)喫茶店のオーナー、ネイウィン、は刑法第376条により起訴された。7月1日午後7時30分に暴徒たちは喫茶店近くに参集しはじめ、その人数はさらに増えていった。警備隊が鎮圧しようとしたとき、暴徒たちは26番街と86番街の角に移動し、3台の車の前面ガラスを壊し、レンガや空き瓶を一般家庭に投げ込んだ。警備隊はバリケードを設置し、ゴム弾で暴徒を四散させた。7月2日午前2時には、約450名の暴徒が棍棒やナイフを手に、83番街と84番街の間に集まり、午前3時には26番街で一台の車が炎に包まれた。」



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04:事件の続報

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これは7月6日付NLM紙第一面。表題は“宗教関連ビルより殺人兵器発見”となっている。「警備隊はマンダレーのチャンエイタザン町区の一宗教関連ビルを捜索した結果、大量の殺人兵器を発見したと4日朝発表した。7月2日の犠牲者を弔う葬列の中から一人が飛び出し、マンダレー・モゴック間高速道路のシュエチン交差点で高速バスの乗客二人に襲い掛かった。攻撃者の身元は不詳だが、二人の犠牲者はマンダレーの総合病院に運び込まれた。パテインジー町区にある墓地では、トタン屋根の竹で編まれたビルに集まった一団が火を付け逃走し、4人が逮捕された。」



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05:更なる続報

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これは7月7日付NLM紙第二面で、タイトルは“マンダレーで夜間禁止令違反者、犯罪者が起訴される”となっている。

「マンダレーで一週間前に勃発した暴動で、16名が武器の違法所持など異なる15件の罪状で起訴された。そして2件の殺人事件、3件の強襲、1件の死体焼却について現在調査中である。7月3日には、6町区で145名が夜間外出禁止令違反として逮捕されたが、後刻釈放された。また7月4日・5日にマンダレー地区7町区で201名が夜間外出禁止令違反として逮捕され、現在調査中である。そして現在もこれら7町区では夜間外出禁止令が施行中である。」



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06:国営新聞NLM紙の報道は理解できましたか?

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これらの記事を一読し、内容を理解できた方は本当のミャンマー通である。一般読者は宗教関連といってもこの記事からはどの宗教なのか皆目見当が付かない。ラカイン州でのロヒンジャーの問題も同じようなレイプ事件ではじまっていった。そして大英帝国が種をまき、歴史的にくすぶっていたイスラム教徒と仏教徒の仁義なき闘いに発展していった。それを欧米のジャーナリストがスーチーさんにマイクを突きつけ、回答を求めるほど問題は単純ではない。彼女の沈黙もひとつの回答である。あるいは欧米のマスコミ連中にアジアの歴史を学んでから出直してらっしゃいとレクチャーしてあげるのもひとつの手である。
だが、ミャンマーの今を理解する意味でこれは重要な出発点となるので、今回は週刊英字新聞“ミャンマー・タイムス”第736号(2014年7月7-13日)の記事を副読本として解説を試みたい。



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07:NLM紙が書かなかった情報

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この暴動の発端は同地区で有名な喫茶店のムスレム店主が仏教徒の女性をレイプしたというウワサにある。国営新聞の情報はこの肝心なところが抜けている。このウワサは人気のあるブログが流し、一気にソーシャルメディアに広がり、最終的にこのブログはウェブサイトで謝罪している。ミャンマーの通信関係は半世紀遅れているといわれていたが、どうしてどうして、一気に欧米に追いついてきたといえるだろう。同地区の国境安全保障担当大臣は、当初暴動は鎮圧できる、戒厳令は社会に不便を引起すだけだとしていたが、ラカイン州のロヒンジャー事件から学習した中央政府の指令か、前言を取り消し、事件の深刻化を阻止するために急遽戒厳令の発令となった。

事件最初の夜に、警官一名、その他四名が負傷し、車11台が壊され、7月2日の夜には、仏教徒一名、ムスレム一名の計2名が殺され、仏教徒13名とクリスチャン1名が負傷した。ネイピードで6月30日に喫茶店店主が一人の女性をレイプしたとのオンライン記事が発表された後、7月1日に、保安部隊がサン喫茶店に配置された。地方当局の要求で喫茶店のスタッフは早仕舞いを考慮していたとき、暴徒化した仏教徒が喫茶店の周りに集合し始めた。ちょうどそのとき、店内はラマダンの一日の戒律明けとなるイスラム教徒で満員だった。ムスリム指導者の要求で群集はいったん四散したが、午後8時ごろ、バイクに乗った6名の若者が国歌を歌いながら26番街を駆け抜け、約20名のグループが同じく国歌を歌いながら26番街を歩き始めた。その数は急速に膨れ上がり200名の強力な暴徒と化し、ムスレムの家々に石を投げ、3台の車を破壊した。

警官隊は秩序の回復に努めたが、このグループは26番街と86番街の角に終結し、ビルや車を破壊した。警官隊は四散を命じたが、暴徒は従わず、私有財産を破壊したので、ゴム弾3発を空に向けて発砲した。暴徒はさらに26番街と80番街の角に進行し、石をモスク寺院に向けて投げつけた。警官隊はその地域の道路を閉鎖し、これ以上暴徒が集まらないように処置した。有名な仏教僧が平和裏に立ち去るよう暴徒に説得したので、7月2日午前3時に事態は沈静化された。一方ウェッブサイトの編集者はマンダレーで仏教徒・イスラム教徒間に危機状態を作り出したことに遺憾の意を表明し、同掲載記事を取り消した。

(注)イスラム教とは回教のことで、その教徒はムスレム、その寺院をモスクと呼ぶ。



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08:マンダレーとラカインの宗教対立は異なるか?

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7月4日早朝、マンダレー市内中央部で、何十台のバイクが36歳の仏教徒の棺の行列に加わった。一方マンダレーにはかなり大きなムスレム共同社会が確立しており、同時に攻撃的な民族主義仏教徒の存在が緊張をいやがうえにも高めている地域でもある。だが、これほどの宗教的対立はこの数年間経験したことがなかった。当局筋は、数多くの少数民族と宗教的多様な人口が存在するヤンゴンなどの都市への飛び火を警戒して、予防措置を取っていると語った。フェースブックなどのソーシャルメディアは書込みの急増を阻止するために現在使用できなくなっている。そして当局の何人もこの事件へのコメントをすべて禁止されている。7月2日の夜、残虐な殺され方をした仏教徒とともに現場にいた友人の一人はムスレム集団に襲われ腕に刀傷を負っている。そして、“残りの人生一生奴らを恨み続ける、同様の事件が発生したら、躊躇なく連中と闘う”と語っている。人気のある地元自転車屋であるムスレム店主の葬儀は7月3日に行われた。この店主は朝一番の祈祷に行く途中で殺害された。

これら仏教徒、イスラム教徒は最初から殺害の目標にされたわけではない。残されたそれぞれの家族は取返しの付かない途方に暮れた悲劇に見舞われている。単に宗教戦争と見る無知なメディアもある。ラカイン州のロヒンジャーと同じカテゴリーに入れるメディアもある。大使館は例のごとく“君子危うきに近寄るな”情報を続々と流してくる。どれもこの国独自の原因が見えてこない。この国の歴史的な国情を見ないで、表面の出来事だけの報道で終わっている。

次回はこのあたりにも踏み込んでみようかと思っている。






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