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<ミャンマーで今、何が?> Vol.119
2014.11.05

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■国家元首の発言

 ・01:第一面を大きく飾る写真

 ・02:第二面の写真

 ・03:第三面の写真

 ・04:第一面の写真は何を意味するのか?

 ・05:政治対話で何を話し合うのか?

 ・06:出席者の顔ぶれ

 ・07:国家の意思は奈辺にありや?

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記事にしたい話題が幾つかあり、どれを選択しようか、いささか迷った。

だが、国家元首の行動は、そして発言は、国家の意思を表明していると考え、それを優先すべきとお伝えする次第です。

11月1日付日刊英字紙GNLM紙の第一面から拾ってみた。実際には、第一面の三分の一、第二面のすべてのスペースを使用し、そして第三面の半分以上の紙面を費やしている。それだけではない。第九面にフォト・ギャラリーとして、この政治対話に出席した大統領以外の13名のパスポートサイズの写真がずらりと並び、それぞれの氏名と肩書きがキャプションとして付いている。そして、関連記事として今回の政治対話に関する情報省ウ・イエトゥ大臣による内外記者89名に対するブリーフィングの模様が写真入で報道されている。


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01:第一面を大きく飾る写真

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テインセイン大統領とアウンサンスーチーNLD党首ががっちりと握手している写真である。大統領は少しばかり斜め後ろからの撮影で表情は読み取れないが、スーチー党首はニッコリ微笑んだ良い写真だ。お決まりの白い花で後ろ髪はきちんとまとめられている。表題は長いが、「この移行期を成功させるために、お互いに話をする以外に選択肢はない。政治の安定が選挙を成功させる基本となる。」となっている。

ここでの選挙とは、2015年の総選挙、大統領選挙を指している。この表題は、大統領による開会の辞からの言葉である。



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02:第二面の写真

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このページには写真が三葉。

一番上に、この政治対話に出席した全員が横一列に勢揃いした写真が大きく写っている。テインセイン大統領を中心に副大統領2名、上院・下院の両議長、国防軍最高司令官、連邦選挙委員会の委員長、国防軍副司令官、USDP(与党)副議長、野党NLD党首(スーチー女史)、野党National Unity Party(NUP)代表、野党United Nationalities Alliance(UNA)代表、野党Nationalities Brotherhood Federation(NBF)代表、野党Federal Democratic Alliance(FDA)代表の合計十四名だ。

あとの二葉は、第一面同様に大統領が与党USDP党首でもあるトゥーラ・ウ・シュエマン下院議長と、そしてもうひとつは大統領がウ・クントゥンウーUNA野党党首とそれぞれにがっしりと握手している大きな写真だ。



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03:第三面の写真

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ここでのスペースも記事写真を含めて約五分の三ページが割かれている。

ここでは二葉の写真が使用され、一葉はこの政治対話を主宰した議長席のテインセイン大統領の写真。もう一葉は円形に設置されたテーブルに十四名の出席者が着席した写真。円形の真ん中は大きな空間となり三柱の花で飾られている。各出席者の前には発言用のマイクが置かれている。



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04:第一面の写真は何を意味するのか?

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軍事政権時代の写真序列であれば、第一面に議長を務める大統領の写真、次が2015年大統領選挙の大本命である与党USDP党首ウ・トゥラシュエマン下院議長になるはずだ。そして憲法上、大統領選出馬も危ぶまれるスーチーNLD党首の写真はダークホースとしても取上げられず、抹殺されるのがオチだった。

だが、第一面トップを、このダークホースにもならないNLD党首と大統領ががっちりと握手している写真が飾った、ということは何を意味しているのだろう。

GNLM紙は私企業となったと、最近お伝えした。だが、それを信じる欧米のメディアはいない。政府の広報紙というラベルは、一夜にしては変わらない。資本構成の変更は出来るだろう。だが、それまでに出来上がったシステムはそう簡単には変わらない。しかも、身に染みついた体質も簡単に変わらない。その問題のGNLM紙が第一面にこの写真を持ってきたのだ。そして、大統領が呼びかけた政治対話の3議題の一つが2015年の総選挙である。

さあ、アナタならどう解釈しますか? どう、読み解きますか? この写真を。



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05:政治対話で何を話し合うのか?

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開会の辞で、テインセイン大統領は3つの主要議題を提示するとともに、野党の皆さんにとって関心のある問題も自由に提議してこの会議の場で話し合ってほしいと促している。この発言だけでも、どれほど民主主義的な話し合いを大統領は意図しているかが読み取れる。軍事政権時代であれば、3つの議題を押し付けるだけだった。だが、大統領は与党側の提案だけでなく、招集した5つの野党代表にも公平にチャンスを与え、各野党にとって関心のある議題もテーブルに載せて話し合ってほしいと要求している。

第一の議題:民主主義への移管と政治過程について話し合いたい。そしてどうしたらこれらの改革が民主主義として根付き、自由社会全体に浸透していくかを確実なものとしたい。

第二の議題:国内での平和協定を強化し、それによって、ここまで到達した成果を、わが国にとって必要とされる国内和解の基盤を引き続き形成していきたい。
第三の議題:わが国が民主化へ移行するのに決定的な要因となる2015年の選挙をどうしたら成功裏に遂行できるか話し合いたい。
 
第一は、ミャンマー国を民主国家としてゆるぎないものにしたいとの強い意志の表れで、第二は、国内で長い間相互不信の巣窟となっていた武装少数民族との全国的平和協定の達成を呼びかけ、第三には、刻々とタイムリミットが近づき、内外から注目の的となっている2015年の選挙に関する話し合いである。

大統領はこの主要三議題を、政府の関連トップ高官と主要野党5代表が出席したテーブルに提示し、しかも双方で話し合うように要望している。
もちろんGNLM紙には<何が>話し合われたか、あるいは各野党が何を提議したかについては何一つ言及していない。当然、読者には行間から読み取る技術が求められる。



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06:出席者の顔ぶれ

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合計14名の各出席者については、すでに列挙した。もう少し詳しく見てみよう。

まず野党に関しては、野党第一党のNLDを除いて、党名にUnity、Alliance、Federation、United、Federalなどの名称が目立つ。これらは少数野党同士が連立、連盟を組み統合されていったものだ。2015年の総選挙が近づくにつれ、数の論理の与党USDPに対して野党が分裂していては相手に有利に作用するだけだという判断が出てくるので、この野党連合はNLDを含めてさらに促進するかもしれない。今回の出席者からすると改革派票は5名分。

では政府側の顔ぶれを見てみよう。

この会議を主宰するテインセイン大統領は、何らかの議題で、仮に賛否を問う票決が行われる場合でも、票決には加わらないと東西南北研究所は判断する。理由はバランス能力に優れ、しかもしたたかな大統領であるからだ。

両副大統領がテインセイン大統領に忠実であれば、この二人も票決には加わらず、棄権するだろう。残りは単純計算で14-3=9となる。この9票で旧守派あるいは改革派が色分けされる。では票読みをしてみよう。

両議長であるが、両議長ともに上院・下院での票決に従うことを建前とするが、圧倒的に軍人プラス与党の多い両院では旧守派に立つことになる。下院議長の場合USDPの党首でもあるので、一時は改革派のポーズをとり人気取りに努めたが、天下分け目の票決では露骨に旧守派に票を投じる可能性が大きい。

国防軍最高司令官および副司令官の軍人代表2名は与党USDP以上に旧守派で、場合によってはUSDPも自分たちのコントロール下に置こうとするジェスチャーを示すかもしれない。
連邦選挙委員長は本来は中立であるべきだが、天下分け目の票決では、水面下で通じる旧守派の要請に応じる可能性がある。



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07:国家の意思は奈辺にありや?

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これら保守派合計は5票となる。そして野党代表あるは改革派が5名。このあたりのバランス感覚と舵取りをテインセイン大統領のしたたかさと東西南北研究所はみている。与党USDPからの出席は副議長1名だけだが、実際には下院議長の資格で党首も出席している。だから野党側にも代表の各1名しか出席を許していない。そして最高司令官・副司令官の2名をも招き国防軍も満足させている。

もし、下院議長、国防軍最高司令官、NLD党首の会議中における生の声が聞こえてきたら、あるいは情報省大臣の記者会見でそのあたりを透明にしてくれたら、テインセイン大統領の民主化仕上げにどの程度の反対圧力があるのかが見えてくるのだが、これは行間を見つめるしか手がない。

今、議会も、野党も、メディアも、守旧派の粘り越しによって、憲法改正問題は足踏み状態である。前にお伝えしたとおり、NLD党首にエネルギーの消耗戦を強いる旧守派の作戦は今のところ成功しているようだ。ほとんど進展はない。

だが、GNLM紙の第一面の写真は何かの変化を暗示しているように見える。今回のテインセイン大統領による話題の人物を含めた合計13名の招集は、2015年を控えて千日手に陥った憲法問題を早急に解決しろとの大統領の強い明確なメッセージのような気がしてならない。

読者の皆さんはどう読み解きますか?



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