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<ミャンマーで今、何が?> Vol.120
2014.11.12

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■オバマ大統領二度目のミャンマー

 ・01:オバマ大統領の旅程

 ・02:“真珠の首飾り”から“海上シルクロード”へ

 ・03:米国がアジア重視政策

 ・04:APEC、アセアン・東アジアサミット、そしてG20

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オバマ米国大統領が本日11月12日から15日までミャンマーを訪問する。今回はアセアン+東アジア・サミット出席が目的である。2012年11月29日、2年前の歴史的なミャンマー訪問はわずかに5時間55分だった。

しかもその6時間、隣国中国はカチン州の国境沿いにアリの這出る隙間もないほどびっしりと人民解放軍を配備し、不審行動にはいつでもミャンマーを襲撃すると軍事的威嚇でミャンマー政府と米国大統領にシグナルを送った。

このため、オバマ大統領はミャンマーの首都ネイピード訪問を敬遠して、ヤンゴンのみに限定した初訪問となった。ミャンマーの接待儀礼としては異例のことだが、テインセイン大統領がヤンゴンに出向きオバマ大統領を接見した。ミャンマー国会の上院議長・下院議長も同様で、首都ネイピードに常駐する大物高官がすべてヤンゴンにやってきた。オバマ大統領との公式記念写真を撮影するのが目的である。オバマ大統領はもちろんスーチーさんとも会見した。

シュエダゴン・パゴダを裸足で見学し、ヤンゴン大学で学生向けのスピーチをする間、大統領専用機“エアフォース・ワン”はいつでも飛び立てるようヤンゴン空港でスタンバイしていた。


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01:オバマ大統領の旅程

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今回のオバマ大統領訪問は北京(11月10-12日)で第22回アジア・太平洋経済協力(APEC)、ネイピード(11月12-15日)で第25回アセアン・東アジアサミット、そしてブリスベーン(11月15-16日)でG20首脳会議に出席の予定となっている。

オバマ大統領は、ミャンマー入りの前に北京で習近平国家主席と膝を突き合わせて会談する。だから、今回は中国国境での物騒な歓迎を受けることはないだろう。

これまで朝貢国としてミャンマーを手なずけてきた中国にとって、当時の米国のミャンマー急接近は予想外の展開で、逆に中国にとって脅威と映った。それがアリ作戦の人民解放軍であったようだ。



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02:“真珠の首飾り”から“海上シルクロード”へ 

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米国国防省で「アジアのエネルギー問題予測」と題した内部レポートが密かに回覧され、そのなかで“真珠の首飾り”という言葉が使われた。2005年のことである。この言葉を中国政府が正式に使用したことは一度もない。だが、インドのメディアには頻繁に登場する。

中国は世界第2位の石油消費国で、世界最大の石油輸入国である。湾岸諸国・アフリカからの石油輸入が70%にも達する。将来の石油需要を予測すると、人民解放軍の海軍による海上輸送の安全保障は中国にとって将来を見越した戦略となる。

米国艦隊が遊弋するマラッカ海峡、ロンボク海峡は重要な航海路だが、米国との間に一触即発ともなれば、安全保障上、最も危険な水域となる。

そこで最後の切り札が、中国が突貫工事で完工させたミャンマー・ラカイン州・ラムリー島のチャオピュー深海港である。原油と天然ガスを輸送する2本のパイプラインは昔のビルマ公路をなぞるようにラカイン州からマンダレー地区、シャン州ラシオを抜け、中国雲南省の省都昆明を経由して、大工業都市・重慶にまで達する。海上輸送の隘路といわれるマラッカを避け、中東・アフリカからのエネルギーが直接中国本土に運び込む悲願の輸送形態である。

グレン・ミラー楽団の奏でる軽快なスイング・ジャズの名前を借りた、この“真珠の首飾り”は、海南島にある中国の海軍基地を起点として、バングラデッシュのコックス・バザールからチッタゴン港、スリランカのハンバントータ港、そしてモルジブの首都マレーには2011年に中国大使館を開設した。これは米軍がインド洋の要として秘匿する南海の孤島ディエゴ・ガルシアの海軍基地に対抗する軍港を模索するものだとされ、首飾りはパキスタンのアラビア湾に面するグォーダー港を経由して、紅海のポート・スーダン港で最終目的地のアフリカに到達する。

2010年、多国籍軍によるソマリア沿岸防衛パトロールに中国が突然協調するようになったのは、海上安全保障の確保が中国にどれほど重要であるかを裏付けるものである。
前後7回にわたって、中国の大艦隊を率いてアフリカにまで達した明の大提督・鄭和を髣髴させる大構想である。

欧米が旧態依然としたアフリカ戦略で、欧米寄りの指導者を金権汚職で捏造し、武器を供給したり、軍事訓練を施す間に、中国は確実に、橋を架け、トンネルを掘り、道路と港湾を整備して、漁港とコンテナヤードを建設し、目に見える形でのインフラ貢献をしてきた。特に港湾施設の充実には目を見張るものがある。そして、中国と関連諸国の双方で経済的な果実を分配しようとしている。このビジネス成功モデルは中国が独自に開発したもので、アフリカ大陸でも、パキスタンでも、スリランカでも、そしてバングラデッシュでも相手側から感謝されてきた。見返りとして中国籍船の荷卸し・積荷には各国政府から免税措置がとられる。これらの港湾施設をリンクさせて繋いだものが“真珠の首飾り”である。繰り返すが、中国政府は経済協力だけを謳いあげ、この言葉を公式に使用したことはない。

習近平国家主席は2013年のアセアン出席で“海上シルクロード”という言葉をはじめて使用した。これは米国の国防省、戦略研究所、欧米のメディアが中国の海上覇権に重きを置いて使用する“真珠の首飾り”を、近隣古代都市が経済的に栄えた往年のシルクロードに置き換えてイメージ・チェンジさせた巧妙な表現ととられている。

中国人民解放軍の病院船・巡洋艦は友好親善の名目で、すでにヤンゴンのティラワ深海港に接岸した。しかし、刺激が強すぎるとして、チャオピュー深海港への寄港はいまのところ遠慮している。だが、ミャンマー政府、オバマ大統領の顔色を窺った上で、中国としてはチャオピュー寄港を成し遂げ、ダーウィンの海兵隊同様に、究極的には常駐を果たしたいところである。



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03:米国がアジア重視政策

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中国の動きを見据えて、米国はアジア重視の政策に転向したといわれて久しい。2020年までに米国は、海外の軍事基地、海軍基地の60%をアジアに集中させるという。同盟国であるオーストラリアは全面的に基地を提供し、西のパースから北のダーウィンまですでに米軍基地が構築され、狙いはインド洋での存在感を増す中国とロシアだとされている。2011年には、オーストラリア政府は史上最強の海兵隊(オサマビン射殺など)2,500名のダーウィン常駐を承認している。そして、エドワード・スノードンが暴露したとおり、アリススプリング近くのPine Gapには巨大な米軍基地があり、スパイ基地のハブとして無人偵察機を世界中に飛ばせる体制を敷いている。

これらの強力な軍事パフォーマンスを実績として、米国オバマ大統領は北京でのAPEC、ネイピードでのアセアン・東アジアサミット、そしてブリスベーンでのG20で主導権を握ろうとしている。



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04:APEC、アセアン・東アジアサミット、そしてG20

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オバマ大統領のスケジュールに見るとおり、今回の3つのイベントは参加国の顔ぶれがかなり重複している。各イベントの議題は異なるものの、各国の利益は縦糸・横糸のように複雑に絡み合っている。各国ともに一定の枠組みの中で、自国に有利な展開を狙おうとするだろうが、中国経済はすでに世界経済に深く食い込まれている。

オーストラリアの例でいえば、軍事的には米国と協調して中国に対峙するものの、経済的には、中国はオーストラリアにとって最大の貿易相手国である。2008年の経済不振を救ってくれたのは中国で、中国が膨大なオーストラリア資源を購入してくれなければ、オーストラリアの鉱山ブームは起きなかったと専門家は言う。同様に、政治的、軍事的に、敵対していても、中国抜きでは成り立たないのが、米国・日本を含めた今の世界経済である。
今、ミャンマーまでもが世界経済の渦潮に巻き込まれようとしている。

そして、NLDのスーチー党首は、来年の総選挙を控えて一向に埒の明かない憲法改正に激怒して、民主化の速度が停滞し、欧米の経済制裁解除はあまりにも楽観的過ぎたと、世界の指導者、特に米国大統領、に訴えている。オバマ大統領がこれにどう反応するか、世界が注目している。

そしてNLDは、来月スーチー党首の公式な中国初訪問を発表した。オバマ大統領の反応次第では、これまで欧米のアイドルであったスーチーを中国が切り札として取り込もうとするのか否か、このあたりも見所となりそうだ。

テインセイン大統領が主宰した今年のアセアン・サミットを各国首脳が、そしてメディアがどう評価するか、これも間もなく判明するだろう。そして来年2015年の総選挙がミャンマー判定の総仕上げとなる。

今年は、ベンガル湾に低気圧が何度か押寄せ、異例の大雨、洪水がまだまだ発生するという。

グーグルニュースを引き続き追いかけたい。



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