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<ミャンマーで今、何が?> Vol.134
2015.02.25

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■シャン州におけるドンパチ

 ・01:大統領がチン州のナショナルデーに出席

 ・02:米国がMRCS輸送部隊攻撃を非難

 ・03:国防軍の記者会見

 ・04:一筋縄ではいかない国境地帯

 ・05:記者会見はまだ続く

 ・06:ドンパチはまだ続く

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横浜在住の友人からミャンマーの現状についていくつか有意義な疑問を呈された。

その情報は詳しく、現地のビデオも見たという。中国の影響、そしてクンサーの残党などという刺激的な言葉が興味を惹く。当方の手持ちデータは乏しい。押っ取り刀で、危険地帯に踏み込むつもりで調査してみた。 


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01:大統領がチン州のナショナルデーに出席

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2月20日(金)、テインセイン大統領がチン州の州都ハカーで行われたチン・ナショナルデーに出席した。式場に到着した大統領には、チン州独特のカラフルな民族衣装、ターバン、バッグ、腰差し刀などが、プレゼントされ、大統領はチン州首席大臣からその場で着付けをしてもらった。もちろん、大統領もチン州への贈答品をふんだんに用意してきた。

チン州はミャンマー西部ラカイン州のさらに北部を占め、西方はバングラデッシュと国境を接する山岳丘陵地帯である。大分前に三鷹の友人からプレゼントされたチン州の写真を思い出す。朝霧が低くたなびく尾根の広場に、着飾った女性たちが村々から出てきて花嫁を追いかける、女性だけの行列が膨らんでいく。結婚式に向かう村人たちの一瞬を次に続く上り坂から捉えた幻想的な写真だ。陶淵明が詠った別天地がここにはある。

このミャンマーにはビルマ族を含めて136のエスニック民族がいる、とされる。平家の落人伝説にも似た、金銭とは無縁の、ひっそりと、だが心豊かに暮らす村人たち。その人たちとの共存を強く意識していたのはアウンサン将軍ただ一人だった。北朝鮮並みの、あるいはIS国家並みの、不信感が渦巻いたこのミャンマーを開放できたのはテインセイン大統領の手腕である。

数多くの大変革を成し遂げ、世界中の投資家、国際機関からたっぷりと援助資金を勝ち得たのもテインセイン大統領のお手柄である。このような人物が2015年末の大統領選挙で降板すると、世界の政治・経済・地政学・安全保障は不安定な状況に陥らないだろうか。当たりをとって評判のミャンマー劇場には、四囲を見回しても、テインセイン以上の舞台を演じられる看板スターはいない。続投しかないという結論は早計だろうか?

2014年のアセアンホストを乗り切ったテインセイン大統領は今、アウンサン将軍が残したパンロン精神(メルマガNo.128/133ご参照願います)を復興させようとしている。その趣旨は国内民族との融和・平和協定である。大統領選挙までに仕上げるべき大仕事は、これひとつである。冒頭のナショナルデー出席はその一環である。



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02:米国がMRCS輸送部隊攻撃を非難

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駐ヤンゴン米国大使館の2月20日付プレス発表が、大統領のナショナルデー出席と同じGNLM紙第一面に囲み欄で掲載された。MRCSとはミャンマー赤十字社のことで、英字新聞で苦労するのが略語が頻繁に登場することだ。その一方で幕僚関連は長ったらしいくどいくらいの説明で非常に分かりやすい。

2月17日にシャン州北部で人道的支援物資を輸送中のMRCS車両部隊が攻撃され、数人が負傷した。そのことを非難し、コーカン地区およびミャンマー全土で、今後はその安全を保障するようにという警告である。この記事を見て、米国の赤十字社に対する肩入れ、人道的支援という名前でかなりの活動家が現地入りしていること、山岳地帯のコーカン地区がきな臭くなってきたことなどが、基礎データとして入手できた。



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03:国防軍の記者会見

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これは国防軍の記者会見を2月22日(日)付GNLM紙が報じたものだ。国内27社、国外8社のメディアが集まった。担当報道官は陸軍中将で、国防軍の情報公開も徐々にではあるが進展している。あくまでもこれは政府側の発表であるということを頭においておかなければならない。

このニュースは西のチン州ではなく、東のシャン州での話である。

ポンチャーシン(Phon Kya Shin)は1967年にビルマ共産党に入党し、コーカン・グループが1989年モンコ(Mongko)の北部支部を占拠した時点でビルマ共産党を離脱した。そして、1989年3月31日、2706名の軍隊を率いるコーカンの指導者たちはミャンマー全国民主同盟軍(MNDA軍)の名の下に、1345丁の武器とともに政府軍に投降した。

政府軍の支配下に組み入れられ、ポン・グループは、ポンチャーシンが政治・行政を担当し、ヤンモーリエンのヤン・グループが軍事を担当した。やがて両者間で権力闘争が発生し、二人はライバルとなる。蛇足だが、両名ともに中国名である。

智謀優れるポンチャーシンはその地域を支配し、やがて麻薬・賭博・暗黒市場を牛耳っていく。そんな中、ポンチャーシンがヤンロンチャイン村で武器工場を経営しているとの密告が政府側に届く。危険視した政府軍は武器弾薬を問題のラウッカイ(Laukkai)で押収した。

政府軍はポンチャーシンを含む4名の容疑者を引き渡すよう警告を発したが、本人は辛くも逃げ延びる。政府軍の態度に激怒した彼らはミャンマーの警察部隊の何人かを捕まえ残忍な仕方で殺害した。



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04:一筋縄ではいかない国境地帯

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2011年11月14日、新政府発足半年後のテインセイン大統領にポンチャーシンの特赦を求める嘆願書が提出され、国内統一を最大課題とする大統領はそれに同意した。

だが、ポンチャーシンは麻薬取引・その他違法ビジネスで入手した巨額資金を中国やモンラ(Mongla)に投資してきた。

2014年4月25日、タム(Tamu)の3マイル・チェックポイントで武器弾薬とともに8名の中国人が逮捕された。調査した結果、給料をもらえるということで彼らはコーカンの反乱軍に参加した。だが、金も手当ても支給されず待遇は劣悪だった。そこで副隊長を殺し逃げてきたという。

コーカン反乱軍はその地区での軍事力を再構築するためにUWSA、NDAA、KIA、TNLAの支援を受け、UWSA(Wa)グループが製造したといわれるType-81-1狙撃ライフルを含む数多くの武器を所有している。

KIAの300名からなる一精鋭部隊、UWSA(Wa)の4部隊とコーカン反乱軍計1,000名で一大隊が形成され、これを統括して民族連合軍を組織し、コーカン地区とミャンマー・中国国境からミッチーナにいたる一帯を占領するのがその目的だといわれる。

2014年初めには、ポンチャーシン率いる約1000名の部隊がモンラ(Mongla)に移動し、そこで軍事訓練を行った。SSA(ワンハイ)、TNLA、KIAの合同部隊がラウッカイとモンコを攻撃しようとしたが、密告を受けた国防軍はその地区をしらみつぶしに捜索し、その計画を壊滅させた。

2014年12月29日、GNLM紙と会見したポンチャーシンはミャンマー国防軍と対決する計画を漏らしている。



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05:記者会見はまだ続く

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この国防軍中将による記者会見は2月9日から連日続き、言ってみれば、イラク戦争開戦時の米軍による広報活動を思い起こさせるものがある。もちろん衛星中継やビデオ映像などの視覚効果は劣るものの、米国スタイルの政府発表を真似しようとする努力がそこに見て取れる。

記者会見はまだ続く。

この企ては自治行政区を脅かし、主権を転覆するものである。政府と国防軍はこのような状況を座視することなく、最終的に壊滅させるまで徹底的に戦う、これに深入りしているモンラ・グループ、ワ・グループ、KIA、TNLA、SSA(ワンハイ)には警告を発した。現在、ラウッカイの行政機能は麻痺しており、国防軍はこの一帯を鎮圧せねばならない。

2月12日、ポンチャーシンは中国語のオンラインを通じて、自分たちは漢民族であり、ミャンマー政府から手ひどい目に合わされ支援を求めたいと宣伝工作を始めた。一方、ミャンマーの大統領に対しては、自分たちは135のエスニック民族のひとつで、同情を示して欲しいと訴えている。

2月16日、ポンチャーシンは大統領に公開レターを送りつけ、家族(同胞)の一員として現状に終止符を打ちたいとしている。

これまでに、将校7名、その他のランク48名が命を落とし、将校12名とその他96名が負傷した。現在、国防軍は、撤退作戦を遂行中である。敵の被害は約72名で、それには連隊長一人と参謀一人が含まれる。そして115種の武器、弾薬、地雷、麻薬などを押収した。

そして国防軍は国民の生命と財産を護り、国境地帯に沿って要塞を築こうとする反乱軍の計画を壊滅すると語った。



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06:ドンパチはまだ続く

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以上はミャンマー政府の国防軍による公式発表である。

そしていまどきのニュース・ウォッチャーは政府発表と反政府軍で視点が180度異なるということを、過去の太平洋戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、継続中のIS戦争を通じて知っている。

そして勝者が常に正義ではないということも、秘密工作機関が暗躍することも、ハリウッドの映画によって、BBCのドキュメンタリーによって、そして内幕ものの小説などによって学習してきた。

激しいドンパチはまだ続きそうである。
当メルマガも情報不足である。失礼してもう一週間ほど様子を見てみたい。

尻切れトンボながらご勘弁を。





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