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<ミャンマーで今、何が?> Vol.144
2015.05.13

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■天国と地獄の間

 ・01:ホルムズ海峡のミャンマー人

 ・02:華やかな海外渡航の陰に

 ・03:Human Trafficking=人身売買

 ・04:ボート・ピープル

 ・05:天国と地獄の間に

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日本語情報誌によると、最近のミャンマーは、日本企業のめざましい活躍、日系金融機関の進出、そして特にヤンゴンは、和食レストランの新規開店と、非常に華々しいニュースであふれている。だが、ひねくれものの「ミャンマーで今、何が?」は、あまり見向きもされない地味な情報の中にも、ミャンマーの今を語るものはないかと、落穂拾いに精を出している。

今週も、先輩に教えてもらった英語、Beachcomberに徹したいと思います。浜辺を歩きながら、遠くから流れてきた漂流物や珍しいものを生活のために、あるいは趣味で拾い集める人のことだそうです。


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01:ホルムズ海峡のミャンマー人

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イランはペルシア湾、アラビア諸国はアラビア湾と称している。その入口のホルムズ海峡で貨物船“Maersk Tigris号”が拿捕された。4月28日のことである。マースク・ラインといえばデンマークの海運会社で、世界一のコンテナ船運航会社である。

ソマリア沖で海賊船に襲われた“Maersk Alabama号”を描いたトム・ハンクス主演の“キャプテン・フィリップ”も同社の巨大コンテナ船がモデルであった。

メソポタミアのチグリス川を船名にしたこの“マースク・チグリス号”には、ミャンマー人船員13名が乗船している、とヤンゴンの船員派遣会社ユニチーム・マリーン社が確認した。この貨物船の全乗組員数は21名とのことであるから、半数以上がミャンマー人の船員で占められている。

同船はホルムズ海峡で、イラン船舶より船首を越えて砲撃されたため、遭難信号を発し、米国海軍に駆逐艦と偵察機を急行させるよう要請していた。しかし、その後、乗組員は全員無事であることが確認され、乗組員も国際電話とインターネットの使用が許可され、船舶も近々解放される模様。

このように最近は、海外で何らかの事件が発生すると、あっこんなところにもと、至るところでミャンマー人が巻き込まれているのに驚かされる。



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02:華やかな海外渡航の陰に

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ミャンマー連邦は昨年2014年、アセアン10カ国首脳会議の議長国を見事に務め上げた。そしていま世界の寵児となっている。そしてこれまでの中国、米国、日本、韓国に加えて、欧州の進出が目覚しい。しかも、直接ネイピード詣でだけではなく、ありとあらゆるNGOを表に立てて、中央政府だけではなく、地方政府とも各種のプロジェクトを推し進めている。

そういう、基金付きのエリート・プロジェクトとは縁のないミャンマー人は大勢いる。国内で仕事の口はない。合っても最低の賃金だ。

彼らは両親の資金援助で、あるいは親類縁者から資金を集めて、個人で海外に渡航するチャンスを掴もうとする。そのもっともポピュラーな例のひとつが下級船員である。それほど高度な技術と経験は必要とされない。

だが、やっと念願が叶い、ヤンゴン国際空港から海外に行けたかと思ったら、そこに罠が潜んでいることが多々ある。

そういうミャンマー人が今、シンガポール、クアラルンプール、バンコクなどに帰国も適わず大勢たむろしている。



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03:Human Trafficking=人身売買

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5月9日、15名のミャンマー人漁船員がインドネシアからヤンゴン国際空港に戻ってきた。インドネシアで奴隷状態で囚われたままの生活を送っていた535名のミャンマー人漁船員のうちの第一陣だそうだ。

何があったのか? 

人身売買禁止を担当するミャンマー警察の司令官によれば、この15名のうちの8名はベンジナ島に奴隷として閉じ込められていた。他の5名はタイの漁船から逃げ出し、アンボン島で身動きとれずにいた。残る2名は国際移民機関(IOM)の援助で帰国できた。全員が人身売買の犠牲者でIOMの支援で帰国できた。

そのうちの一人は、2011年にミャンマーを離れたあと、ブローカーに説得され、漁船で働くことになった。そして2年間、無給の奴隷状態で働き、ベンジナ島に置き去りにされた。ヤンゴン空港に戻った同青年によれば、約1000名のミャンマー人漁船員がインドネシアの島々で働いているとのことである。

もうひとりの青年は約3年間タイの漁船で奴隷状態で24時間働かされ、眠ろうとすると船長が煮えたぎったお湯をぶっ掛け、何人かのミャンマー人は殺され、死体は海中に遺棄されと語る。

ベンジナ島で7年間も奴隷状態だったという別の青年は、漁船員として働いた期間、賃金は支払われなかったと、AP通信社の取材に応じたが、ミャンマー当局はメディアとは安全のために、二度と口を利くなといわれたと語る。

本人確認のために、アンボン島で8ヶ月、ジャカルタで2ヶ月を要し、すべての漁船員はミャンマー市民としての資格を取り戻すために同様の手続きを踏む必要があると、帰国した漁船員は語った。ベンジナ島で見つかった8名の漁船員もジャカルタのミャンマー大使館で2ヶ月かけて市民権を取り戻しヤンゴンに帰国できた。

華やかなニュースの陰で、世間ずれしていないまったく無知なミャンマーの青年たちが、人身売買という毒牙にかかっている。



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04:ボート・ピープル

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インドネシア北西部のアチェ沖合いに木製のボートが到着し、469名のミャンマーおよびバングラデッシュからの移住者が救助されたとインドネシア当局が5月10日に発表した。

10日朝、漁民からの通報でボート・ピープルがアチェ北部沖合いで暗礁に乗り上げていると聞き、地元救援隊が女性・子供を含む469名を救助し、今のところ全員無事だと語った。

彼らは北部アチェ地区の難民収容所に連れた行かれ、そこで警察や移民局から詳しい調査を受けることになっている。

聴取できた情報によれば、紛争の続く北西部ミャンマーから先週5隻のボートで脱出した。業者の言葉ではマレーシア沖合いに到着したので、岸まで泳げといわれ、何人かはそうしたが、近くの漁船からはここはインドネシアのアチェだといわれた。救助されたとき、女性が83名、一人は妊娠中で、子供が41名、その何人かは10歳以下であった。ボートにはほとんど食料と飲料水はなく、早急に医療手当てが必要とされる。

彼らはイスラム教徒のロヒンジャーで、ミャンマー政府はベンガリ族と呼んでいる。その大半はムスレム国のマレーシアへの渡航を望むが、多くは途中のタイで人身売買の餌食となっている。

このお粗末な木製ボートでの航海なので、海上がしけるモンスーン雨季は、この人材派遣商売は一時休業となり、10月ころからまた再開される。



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05:天国と地獄の間に

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500人ちかくのボート・ピープルが5月10日インドネシアのアチェで救助されたが、同日夜、マレーシアのランカウィ島でも、さらに数隻のボートが発見された。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、今年の1-3月だけでも25,000人以上のロヒンジャーとバングラディッシュ人がタイとマレーシアを目指してボートで乗り出した。この数字は2014年同期間と比較して約2倍となっている。少なくとも300人が、同期間中の航海中に脱水症、飢餓、殴られて死亡している。

UNHCRが指摘するところでは、密入国者たちはマレーシア国境に近いタイ領のジャングルかプランテーションにある人目に付かない収容所に潜り込み、そこから次の行き先を探る。だが、その収容所では親族からせしめる身代金要求の拷問が頻繁に行われている。

鉄パイプやチェーンで殴りつけたり、木から逆さまに吊り下げたり、生爪をペンチで剥がしたりされ、多くの女性がレイプされている。

だが、これらの難民を保護するどころか、引き受ける国はどこにもない。人身売買業者の餌食となるのが落ちである。

タイ政府は最近、10日間と限定した厳戒態勢を発表し、ボートのタイ沿岸接近を完全に阻止した。調査によれば、最近遺棄された4ヶ所のタイ難民収容所で、浅く掘ったくぼみから、
人骨と思われる焼却した遺骨が30以上も発見されている。

ロヒンジャー・ベンガリ族たちにとって今、落ち着く先はない。ミャンマーをはじめとして近隣諸国で引き取り手がいないのだ。彼らの運命は今、ダンテの叙事詩「神曲」を、そしてワグナーの楽劇「さまよえるオランダ人」を髣髴させるものがあり、カソリックでいう煉獄、あるいはキリスト教でいうリンボ、イスラム教の彼らは今、天国と地獄の間のどこでさまよっているのだろう。





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