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<ミャンマーで今、何が?> Vol.156
2015.08.05

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■ひとりの女番長

 ・01:私は誰でしょう?

 ・02:ヒント

 ・03:その人の名前は

 ・04:丸秘調査システム

 ・05:私生活

 ・06:慈善活動

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01:私は誰でしょう?

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カリフォルニアのロスに生まれた。幼いときに父親が外に女を作り離婚。これが長いことトラウマとなる。やせっぽちで、メガネを掛け、歯列矯正器のため、ハイソのベバリーヒル高校ではイジメにあう。お決まりの転校。そこで嫌われ者のパンクに走った。全身黒ずくめの服、ヘビメタのロックで踊り明かす。女だてらにナイフを振り回し立回り。14歳で好きなボーイフレンドができ、母親から自宅での同棲を許される。それが二年間続いた。

なんとか高校を卒業し、自宅を出て、レスビアンの女性と生活をともにする。モデルになったが上手くいかず、女優業も鳴かず飛ばず。常に不眠症・食欲不振に悩まされる。衝動的にナイフで自分を傷つけ、19歳と22歳で自殺。だが、果たせず。薬物にも手を出した。手に入るヤクはほとんどやったという。特にヘロインにはまった。その身体17ヶ所には刺青が彫られている。社会的堕落の道へ。防腐剤などでの死体処理技術を通信教育で学び、葬儀屋にもなった。24歳のときに、神経障害で倒れ、UCLAの医療施設に72時間、緊急収容された。

結婚歴もいくつかあり、英国人俳優ジョニー・リー・ミラーとの結婚式には、黒のラバーパンツに、真っ白なTシャツで現れ、Tシャツに彼女自身の血で新郎の名前を書いた。

こんな娘を持ったお父さん、アナタだったらどうします。

アナタではなく、本当の父親はジョン・ボイト。いぶし銀のような渋い演技で知られるハリウッド俳優で今年76歳。もっとも憎んだ父親で、母親が2007年に死ぬまで関係修復はできなかった。父親と同じ血が流れていたのか、彼女も演劇の道に入っていった。1975年の生まれで、今年、彼女は40歳。



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02:ヒント

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この女性がスーチーNLD党首の招きで、先週ミャンマーにやってきた。
7月29日、ネイピードでテインセイン大統領と会い、そして内戦で壊滅状態のカチン州北部で性的暴力を受けた被害者女性たちの声を聞いた。

8月1日、ヤンゴン・インレー湖畔の自宅にスーチーさんを訪ねた。その後二人で、ヤンゴン西郊のラインタヤー町区にある衣服工場に行き、その大半を占める女性工員たちの宿舎で労働状況などについて話し合いを持った。

この数年間、衣服工場はアジア全域で脚光を浴びている。劣悪な労働条件、低賃金、人権問題などがその理由である。ミャンマーも同様で、2011年に軍事政権が終焉し、労働者の抗議デモが許可されるようになった。このメルマガでも以前取上げたが、韓国の工場主がミャンマー政府の許可を受けずに衣服工場を閉鎖し、母国に逃げ帰ったり、時間外強制労働、低賃金、給与支払い遅延などなどが問題となっている。

彼女に同行した16歳になるマドックス君は、カンボジアの孤児院出身で、生後間もなく法的手続きをとり、正式に彼女自身の養子とした男の子である。



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03:その人の名前は

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ボーグやバニティフェアなどの雑誌は、この女性を“世界でもっとも美しい女性”と呼び、エスクワイア誌は“この世で、もっともセクシーな女性”と絶賛している。いまハリウッドで最高のギャラを稼ぎ出す売れっ子女優で、映画のプロデューサーとしても名をなしている。

ブランジェリーナという呼び名もあるが、彼女の正式名称は“アンジェリーナ・ジョリー・ピット”である。ついでに付け加えると、現在の旦那の名前はブラッド・ピットというらしい。

話を無理矢理ヤンゴンに結びつけると、このセクシーな女性が7月31日、東西南北研究所の裏通りにある建物内のこじんまりとした教会を小一時間訪れたという。そのときパパラッチしたという写真を得意げに見せてくれた近所の女性がいる。いまではヤンゴンの誰でもがケータイを持っている。何でもかんでも激写してしまう。

直線距離にすると、この事務所の裏窓からその教会まで百メートルも離れていない。これがジャンボ機であれば、完全にニアミスの射程内である。

何を言いたいのかというと、前回のオバマ大統領もそうであった。オバマ大統領が訪れた英国植民地時代の旧総督府も、この事務所から1kmも離れていない、いわゆる数百メートルのニアミスであった。もうチョット話を前に戻すと、トニー・ブレア元英国首相とビル・クリントン元米国大統領が密かに会談したといわれるヤンゴンのレストランも、この東西南北研究所から2kmと離れていない。ともにこのメルマガでお伝えしたとおりである。

ヤンゴンを動かずとも、世界の超セレブが向こうの方から勝手にニアミスをしにやってくる。すなわち、ミャンマーが変わり、ヤンゴンが変わったということを言いたいだけである。



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04:丸秘調査システム

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近所の女性がパパラッチならば、当方は独特の調査方法で、このアンジェリーナ・ジョリーのオッカケをやってみた。東西南北研究所の編み出した丸秘調査システムである。

ほとんど停電がない深夜に自家製密造酒をチビリチビリ飲りながら、ブルーレイDVDを鑑賞するのが東西南北研究所の息抜きタイムでもある。あまりの偶然に驚くが、先週のことである。映画のタイトルは“Beyond Borders”(仮題:国境を越えて。この映画は南西アフリカのナミビアで撮影された2003年作品)、主演男優がクリーブ・コーエン、一時英国の人気投票でジェームス・ボンド役に推奨された俳優、女優がアンジェリーナ・ジョリー。

彼女の役柄は、エチオピアでの難民キャンプを視察し、そこで人道的な医療活動を続ける野性的な医師に惹かれていく。これまでの英国での美術画廊という優雅な生活から一転して、戦乱状態から逃げだし難民キャンプでの地獄生活を覗いてしまう。この映画がアンジェリーナ・ジョリーのその後の活動の原点となっているような映画である。

そして見覚えのある裏通りの建物内でのパパラッチ写真。大いに興味を惹かれ、アンジェリーナ・ジョリー自身をオッカケしてみた。そして判明したのが、出だしに書いた<私は誰でしょう?>の不良少女物語である。あまりにも抱いていたイメージと違ったので、俄然興味が湧いてきた。

そして東西南北研究所のメンバーを総動員して調査を開始した。



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05:私生活

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彼女の型破り人生からすると、あまり意味のないことだが、正式に結婚・離婚した年は一応次の通りである。

その一:ジョニー・リー・ミラー(英国人男優)1996-1999
その二:ボブ・ソーントン(米国人男優)2000-2003
その三:ブラッド・ピット(米国人男優)2014-現在継続中

型破り人生という意味は、最近はまったく珍しくないが結婚する前に、すでに何年も同棲が始まっており、正式に離婚する前に別居生活が続いたということ。そして彼女はレズの女性との関係も長いこと続き、自分が両刀遣いであることを公に認めている。

その二のソーントンとは、お互いの血液を小瓶に詰め首にぶら下げていたことは、ハリウッドのゴシップ界では超有名な話である。その一のミラーとの結婚式でTシャツに自分の血で新郎の名前を書いたことと合わせて、アンジェリーナをドラキュラ女優と呼んでもおかしくないだろう。

このソーントンとアンジェリーナは2002年3月にカンボジアで先述した孤児を養子にすると発表し、その三ヵ月後にこの夫婦は突然別居した。

こんどは話をアンジェリーナ・ジョリーの子供たちに移そう。

(一)2002年3月、カンボジア孤児院で7ヶ月になる男児マドックス・チバンを養子縁組
(二)2005年7月、エチオピア孤児院で6ヶ月になる女児ザハラ・マレイを養子縁組
(三)2006年5月、アンジェリーナとブラッドの正統な娘、シロー・ヌーベルが誕生
(四)2007年3月、ベトナム孤児院で3歳になる男児パックス・ティエンを養子縁組
(五)2008年7月、アンジェリーナとブラッドの正統な男女の双子が誕生

アンジェリーナが養子にしたのは、すべて戦争・紛争地帯の後進国(敢えて発展途上国とは呼ばない)で、両親に見捨てられたか、失った孤児たちである。そして基本的に彼女自身の養子として縁組した。国によって養子縁組の法制度は異なり、手続きは非常に煩雑である。だが、最終的には、ジョリー=ビットの連名カップルとして法手続きを終えている。

アンジェリーナ自身の子供時代の悲しみも大きく影響しているのだろうが、彼女の芯の強いポリシーが見えてきそうな気がする。



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06:慈善活動

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(三)女の子(五)男女の双子の合計三名はアンジェリーナとブラッドの血統書つきサラブレッドである。誕生前からパパラッチが病院前でキャンプを張り、最初のプリンス・プリンセスたちの激写瞬間を狙っている。当然、プレミアムが期待される。

そこで二人は、パパラッチに盗撮されるよりもチャリティでと(三)の最初の写真を、北米掲載権と英国掲載権に分けて売却することにした。そこで合意された価格は、410万ドルと350万ドル。これは当時のセレブ関係の写真としては記録的な最高額であった。そしてそれはすべてUNICEFに寄付された。

(五)の双子が写っている写真は1400万ドルの値が付き、これはセレブ関係の写真金額としてはかってない最高額である。そしてこれはすべて、ジョリー=ピット財団に寄付された。二人はこの名前で数多くの慈善活動を行っている。

カンボジアの国立公園の土地60,000ヘクタールを買い上げ、密猟者が出没するこの地を野生動物保護地域とする遠大な計画を養子にしたカンボジア人のマドックスの名前で立ち上げ、その運動を推進している。この計画は、マドックス・ジョリー=ピット基金計画(MJP)と名付けられた。このため、アンジェリーナは2007年にカンボジア国王から名誉市民の称号を受けている。

スイスのダボスで毎冬世界の超リッチな人々を招いて行われるWEF(世界経済フォーラム)については、このメルマガでも紹介し、そこにミャンマーのスーチー女史が二年連続招待され、ビデオ講演を行ったことは、以前お伝えした。そして、長期に自宅軟禁されていたスーチー女史が最初に海外に出かけた地が、隣国タイのバンコクで、それはこのWEFのアジア版のメイン・スピーカーとして招待されたためで、これには世界中のメディアが殺到し話題を呼んだ。

そのダボスでの恒例のWEF会議にアンジェリーナ・ジョリーも2005・2006年と連続して招待され、スピーチを行っている。そこで知り合った経済学者のジェフリー・ザックスが国連発展機関の協力を得て推進するミレニアム・ビレッジの構想に刺激を受け、同氏の案内で西ケニアで行われているミレニアム・ビレッジを訪れた。

いまでは、このMJP計画が国連の協力も得て、アジアで最初のミレニアム・ビレッジに発展していった。6,000名の村人および元密猟者など72名を雇用して、彼らはこの地区のレンジャー(国立公園監視員)として活躍している。この広大な敷地内に、孤立して生活していた約10ヶ所の村落をお互いにリンクさせ、学校と道路を建設し、豆乳の工場も建設した。すべての資金はアンジェリーナ・ジョリーが負担している。

話は少し遡るが、2003年に南西ナムビアで“Beyond Borders”のロケ撮影が行われていたとき、アンジェリーナはカラハリ砂漠で野生動物の孤児院とその医療活動を支援するハーナス野生動物基金のパトロンとなった。そして、2010年12月には、パートナーのブラッド・ピットとともにシロー・ジョリー=ピット基金を立ち上げ、ナアーンクス野生動物国立公園近くで大規模な野生動物保護の活動を開始し、同時に無料健康診断クリニック、学校などを建設している。憶えておいでだろうかシロー・ジョリー=ピットとは、アンジェリーナとブラッド・ピットの最初の女児の名前である。

彼女の戦争・紛争地帯への旅は数限りない。30カ国、40ヶ所の難民キャンプを訪れ、自分の目・耳・鼻・皮膚でその現実を感じ取っていく。その行動力には驚嘆するものがある。国益優先などとほざいている世界中の政治家に、彼女の爪の垢でも、飲ませるキャンペーンでも立ち上げたくなってくる。

スーダンのダルフール紛争、第二次湾岸戦争時のシリア=イラク国境地帯、アフガン戦争のカブールなどなど。これらの人たちの困窮を知るべきだし、彼らを見下す目線では、何一つ解決できない。そして、メディアの関心が遠のいてしまった、この状況を、アンジェリーナ自身の言葉で「忘れ去られた緊急事態」と表現している。彼女自身の軌跡は、映画“Beyond Borders”のリリースと同時に発行された彼女の著書“Notes from My Travels”(私の旅日記とでも訳すのか)に詳しいという。

この騒乱状態に乗じて女性への性暴力が日常茶飯事で行われている。結局は弱きものの女性と子供たちがその犠牲となっている。アンジェリーナは国連、英国政府をはじめ各国政府を巻き込んで、それらを撲滅するキャンペーンを彼女主導で、しかも地球規模で行っている。
この世界中の危険地域への支援物資を運ぶために、2004年に航空機操縦訓練を受け、自家用機操縦免許を取得している。そして現在はCirrus SR22 &Cessna 208 Caravan単発機を所有している。そして、10年以上もUNHCR(国連高等弁務官事務所)の善意大使として活躍し、2012年4月には、その肩書きが、アントニオ・グテラス高等弁務官直属の特別大使に昇格された。
東西南牧研究所の総力を挙げて調査中だが、アンジェリーナ・ジョリーの行動範囲のまだ万分の一しかレポートできていない。
彼女の前半生の女番長的な記録だけを見ていたら、肝心要を見逃してしまう。Unbrokenという映画の上映をめぐって日本ではひと騒ぎあったと聞くが、それだけに囚われると、彼女の本質が見えなくなってしまう。
いま、ヤンゴンにはカネを稼ぎに大勢の人たちが殺到している。アンジェリーナ・ジョリーからは多くを学んだが、カネの使い方という、人生でもっとも難しい精神も教えてもらえそうな気がする。世の中にセレブは大勢いる。だが、かなり毛色の変わった一人のセレブがヤンゴンにやってきた、というのが今回のメルマガで、紙数が尽きてしまいました。


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