******************************

<ミャンマーで今、何が?> Vol.161
2015.09.09

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

******************************


━━━━━━━━━━━━━━━━━ MENU ━━━━━━━━━━━━━━━

■難民大移動

 ・01:写真の印刷技術

 ・02:軍事パレード

 ・03:洪水被害・山崩れはミャンマー全土で

 ・04:ロヒンジャー問題

 ・05:ヨーロッパのボートピープル

 ・06:経済優先が招いた悲劇

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


======================================

01: 写真の印刷技術

======================================


GNLM紙の写真印刷がかなり鮮明になってきた。チョット前までは、3D映画をメガネ無しで見ているようで、焦点が定まらなかった。

先週、テインセイン大統領が天安門広場で習近平主席と握手をしている写真が掲載された。習主席の笑顔は、安倍首相との写真に比べて、100倍ぐらい相好を崩している。それがシャープに写っている。



======================================

02:軍事パレード

======================================


戦勝記念日とか、国軍記念日になると、どの国も軍事力を発揚する形で、ミサイルを含めた重火器のパレードが延々と、そして堂々と行われる。だが、21世紀のいま、それは非常にダサい示威行為ではないのだろうか。

人類はこれまでに、イヤというほど、ウンザリするほど、戦争を繰り返してきた。歴史はその記録でオーバーフローしている。それにも懲りずに、世界のどこかで、いまも国際紛争が起こり、なかには国内での戦争状態が継続している。ミャンマーもそのひとつである。

だが、21世紀には、どこかの国が先頭を切って、軍事力を鼓舞する軍事パレードではなく、戦争のない時代を象徴する画期的な祭典を展開できないものであろうか。


03:洪水被害・山崩れはミャンマー全土で

ミャンマーはご承知の通り、合計14の州・地区から成り立っている。今年は、そのうちの12の州・地区が水害・山崩れの天然災害に見舞われた。ミャンマーの大半が被害を受けたことになる。ある学者に言わせると、これは天災ではなく、監視の目を逃れた樹木の違法伐採による森林破壊が直接の原因で、人災の結果だという。

ミャンマーのほとんどの河川は護岸工事がなされず、自然のままで、雨が降り続き、水かさが増し、流れが急になると、簡単に川辺の土が削り取られ、流されていく。その数量は半端ではなく、川底に相当数量の土砂が沈殿し、層をつくっていく。浅くなった河川の水かさはさらに増し、簡単に危険水域に達し、堤防の決壊につながる。



======================================

04:ロヒンジャー問題

======================================


10月に入ると、季節は廻り、自ずから雨季も終了し、乾季がやってくる。
荒れ狂っていたベンガル湾も、次第に落ち着き、これまで出航を見合わせていた、ボートピープルの季節がまた巡ってくる。年々ロヒンジャーに対する国際機関の監視の目は厳しくなり、マスコミ報道も過激になってくる。

ミャンマー政府の領土を避け、定員オーバーのボートは沖合いを南下する。北から順番にタイ・マレーシア・インドネシアを越えてオーストラリア・ニュージーランドにまで達する。

欧米政府の指導を受けて、あるいは国連機関の働きかけにより、関連諸国は人権問題を口にしはじめ、緊急援助の手を差し伸べるジェスチャーは示すが、ボートピープルを自国に収容することにはすべての国が反対している。欧米政府による、そして国連機関による、二枚舌でのダブル・スタンダードが当たり前になっているからだ。

ロヒンジャーは過激な仏教徒により迫害を受けた政治・民族・宗教難民であるという国連難民高等弁務官事務所に対して、彼らはよりよい生活を目指して水平線の向こうへ旅立つ経済難民であるとして各国政府はボート接岸の受入れを拒否する方向で動いている。

ミャンマー政府は、頑くなに彼らをベンガリ族と呼び、ロヒンジャーという言葉は禁止している。ベンガリの現地語ではロヒンギャーと発音するようだが、このメルマガでは欧米マスコミが呼称するロヒンジャーを採用する。

11月8日に迫った国民総選挙の選挙人名簿つくりに選挙委員会は急ピッチだ。本人の出生時点で、父親・母親がともにミャンマー国籍を取得しているかどうかが精査のポイントで、ラカイン州から国会議員あるいは地方議会に立候補する候補者はこれでかなりの制限を受ける。その制限は投票者としの資格審査にも適用され、投票用紙は配布されない。



======================================

05:ヨーロッパのボートピープル

======================================


このメルマガで最初にロヒンジャーを取上げたのは2012年8月15日号の<多様な民族を抱えるミャンマーの続編>であった。

その時は、ラカイン州のロヒンジャーに焦点を当てた。だが、これは地球規模での深刻な大問題だということが、見えてきた。

地球の裏側、地中海で同じ深刻な問題が不気味に発生している。
先ずは地中海の地図を見てほしい。ルートは二つある、
ひとつは内戦・貧困状態の北アフリカからリビアを経由して、主にイタリアを目指すルート。
もうひとつはアフガニスタン・バングラデッシュ・パキスタンからの難民が陸路でトルコに入り、エーゲ海を越え、ギリシャに、あるいは中近東のシリア内戦を逃れてギリシャに入るルートである。地中海は大きな湖ではない、冬場の航海には危険な大洋である。
それをみすぼらしい小船・ゴムボート・漁船に過剰に詰め込まれイタリア・ギリシャに向け漂流するのである。

ロヒンジャーは東南アジアが主舞台で、最終的に流れ着くのがオーストラリアおよびニュージーランドの白人国家である。だが、北アフリカおよびトルコ・シリアからのボートピープルは直接ヨーロッパの白人国家に流れ着く。ここで28カ国からなる欧州共同体は蜂の巣を突いたような議論が沸き起こっている。口では人権問題を唱えても、受入れを拒否したいのが本音である。それが露骨に討論されているのが欧州議会の現状である。

大量の放浪者が職にありつけず、街中で物乞いする。深夜レストランの裏通りのゴミ箱を漁る。街中の公園にホームレスが集団で寝泊りする。見るからにヒゲ面のムスレム野郎たちだ。人種が異なり、宗教が異なる。もちろん言葉は通じない。安心して子供たちを学校に送り出せなくなる。往復の通路が不安だからだ。深夜遅くまで外出を楽しんでいた若いカップルが危険を感じる。安全だった白人国家が急に恐怖を感じはじめ、政府が苦悩する。

第二次世界大戦の負け組み、日本とドイツは、武器よさらばで、経済活動に集中してきた。そして世界有数の経済大国となった。危険な地中海を生き延びたボートピープルは最終的に、その金満国ドイツを目指す。

そのドイツは今年2015年の難民受入れは合計80万人になるだろうと発表した。同じ状況下の東洋の日本は、そこに思いをはせることもなく、その覚悟は皆無である。

欧州では、現実に命を懸けた難民大移動が始まっている。しかも、ルートは皆バラバラだ。ウワサを聞きつけて、有利だとされるルートに政治的・経済的逃亡者たちが殺到する。すべてはウワサが頼りで、これらの難民を食い物にする悪質ブローカーが結構な商売を始める。

基本的にドイツが約束の地となり、他はすべて通過国でしかない。だが、通過国といっても、イナゴの大群に襲われた農地といっしょで、街が汚されていく、ひょっとして汚物・汚水・病気・伝染病だけが伝播していくかもしれない。通過国はその防御に必死である。

オーストリアは国境防衛を強化し、隣国ハンガリーに押し戻す作戦を取っている。悪質ブローカーの冷凍トラックを明けたところ、すでに50名の難民がすし詰め状態で死亡していた。

リビアの首都トリポリ東のコーム沖合いでは、難民ボートが転覆し37名の死者がでた。イタリアのコーストガードはリビア沿岸付近ですし詰め状態の3,000名の難民ボートを救助したが、50名以上が死亡。スウェーデンの艦船も出動し、439名の生存者を救助したが、51名はすでに死亡。

これらは表面化したケースのほんの一部である。いま、難民大移動がヨーロッパを震撼させている。



======================================

06:経済優先が招いた悲劇

======================================


日本のカースト制度では、商人は最下層に属していた。だが、第二次世界大戦後、アメリカの植民地となり、日本は経済最優先のシステムを採用し、優秀な学生はMBAと称するビジネスを対象とした学位をアメリカの一流大学で取得する。日本の各企業でも、米国式経営が主流となり、経営者は短期間での利益確保に精を出す。そこには、昔あった日本の企業理念などは微塵もない。ライバル会社から非常識な高給を提示され、嬉々としてライバル会社のCEOに転職していく。渋沢栄一の理念など、日本の大会社に残されていないのでは。

矜持を保った経営哲学はこの地球上から消えてしまったのだろう。
その哲学を持たない経済人が世界のシェアを独り占めにしようとしている。
その結果が、経済難民の異常発生である。それも地球規模で発生している。家族構成はリッチマンほど小家族で、プアマンほど大家族である。地球の人口増加に貢献しているのはこのプアマンの大家族である。この難民大移動は歯止めが利かない怒涛の状態で進行している。

昔、日本の池田首相がフランスのドゴール将軍からトランジスターのセールスマンと揶揄された。いまの各国首脳はスーパー大国のアメリカをはじめとして国益しか考えていない。中国も同様である。一国の宰相が政治哲学も持たず、経済人の太鼓もちをしているのである。

そこでテインセイン大統領、あるいはスーチーNLD党首に提案したい。東洋人の英知で、もう少し大きな、毛色の変わった選挙キャンペーンを打ち出せないものでしょうか。米国・欧米・中国・日本などの選挙スタイルでは、あるいはG7・8、G20などのリーダーシップでは人口70億、100億の世界は救えないと思います。だが、テインセイン大統領あるいはスーチー党首の東洋の知恵に根ざした哲学なら、解決策とは言わずとも、ヒントの切っ掛けは与えることができるのでは?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ご意見、ご感想、ご要望をお待ちしております!
 magmyanmar@fis-net.co.jp 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


=================================
- ご注意 -
このメールマガジンは情報提供を目的としたものであります。
なお、内容につきましては正確であるよう最善を尽くしておりますが、その内容
の正確性を保証するものではなく、内容についての一切の責任を負うものではあ
りません。
=================================


▽このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください
 表示がズレる場合はお使いのメールソフトのフォントの設定をご確認下さい
 ※MS Outlook Expressの場合
 「表示→文字のサイズ」を選択、「等幅」にチェック


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※「ミャンマーは今?」の全文または一部の文章をホームページ、メーリングリ
スト、ニュースグループまたは他のメディア、社内メーリングリスト、社内掲示
板等への無断転載を禁止します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※登録解除については下記のページからおこなえます。
 ○購読をキャンセル: http://www.fis-net.co.jp/myanmar/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 発行元:ミャンマーメールマガジン事務局( magmyanmar@fis-net.co.jp )
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━