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<ミャンマーで今、何が?> Vol.169
2015.11.11

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■ドキュメンタリー11月8日

 ・01: 改革スピードに衰えはない

 ・02:選挙当日11月8日(日)の様子

 ・03:明けて9日(月)早朝

 ・04:デッチ上げ記事による週刊メルマガ

 ・05:世の中は大きく変わる

 ・06:追伸

 ・07:アウンサン将軍の夢


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01:改革スピードに衰えはない

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ナーギス台風のときも、ラカイン暴動のときもそうだった。何かあると、ありがたい海外の友人たちが心配の問い合わせをくれる。だが、ここぞという肝心なときには、国内にいては何一つ見えない。そこで海外の一流紙を斜め読みし、見てきた嘘を海外の友人に逆発信する。

今朝11月10日、午前2時にメールを開くと、お目でとうの挨拶メールが入っていた。だが、本当に正しい側が勝利したのだろうか?の疑問が追伸で付け加えてあった。ヤンゴンに頻繁に出入りするロンドンの友人からである。

即座に、YGNの巷ではそう信じている。だが、悪賢い当局のことだから、開票発表に手間取るようだと、悪巧みが入るチャンスが出てくるかもしれないと返事しておいた。

10日(火)、いつもの通り朝6時にGNLM紙とMT誌を買い求め路上喫茶で一通り目を通した。驚いたことに、GNLM紙の第一面に、“選挙結果が早々に集計”となっており、“NLDが第1ラウンドで制す!”これは連邦選挙委員会による9日(月)午後9時の時点での選挙速報を基に記事にしたものだ。総選挙の結果の集計表が第一面に続いて第3頁に掲載されている。左の表が下院議員のヤンゴン地区合計28選挙区、右が連邦ヤンゴン議会の合計24選挙区。

下院議員28議席のうち、NLDは25議席、USDPは2議席、ワ族民主党が1議席を占め、ヤンゴン地区議会では、NLDが23議席、USDPは1議席を占めたとなっている。

さらに連邦選挙委員会委員長は、選挙は平穏に行われ、成功だったとし、全国4万ヶ所以上の投票所のうち不正行為は48件だったと公表した。

今後、選挙結果は午前9時、12時正午、午後3時、午後6時、午後9時、午後11時に引き続き発表すると、ネイピードで開催された午後4時の記者会見で語った。これは想像を絶する早業である。やはりミャンマーはものすごいスピードで変化を遂げている。

繰り返すが、これが国営新聞と言われた日刊英字GNLM紙の第一面の掲載記事である。
メルマガ今週号は10日(火)に書きはじめたが、念のため、11日(水)早朝の二紙を確認の上、原稿を発信したい。



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02:選挙当日11月8日(日)の様子

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・05:30--ミャンマー全国4万ヶ所の投票所で午前6時きっかりに投票は開始する。午前5時半前からYGN下街を徘徊してみた。すでに長蛇の列が延々と表通りにまで続いている。遅れてきた人たちが、といってもまだ投票開始前だ、列のうしろに黙々と一言も発せずに加わる。
欧米であれば、支持政党のプラカードが目立つところだが、ここヤンゴンではそれは無い。ラテン諸国のように、カリビアン・ダンスの足踏みもない。すべては粛々と静謐な空気が漂う。町内何ヶ所かに設けられたすべてが沈黙の長蛇の列だった。

・06:15--投票が開始された模様だ。沈黙の列が静かに前進しはじめる。
・06:30--中から出てきた若夫婦に声をかける。紫色のインクで汚れた小指を得意になって見せてくれる。だが、誰に投票したかを人前で不注意に漏らしたりはしない。長年染み付いた、秘密警察の聞き耳を心配するからだ。

・07:00--近所に住む日本語学校の校長先生に出会う。いつものことだが、早朝散歩の挨拶をひと言ふた言交わす。

・07:30--外国の報道機関が、投票現場で英語を話せそうな人を捕まえて、NLDに投票した事実を発言させようと必死だが、この国ではそれは許されない。長年の経験で、前後に並ぶ、町内会の顔見知りでも、心の底は明かさない。身の安全を守ることを知っているからだ。これまでロンジーを穿いた秘密警察が人の集まるところにはウヨウヨいた。異国文化に無知(イノセント)な報道機関が、イノセント(無知)なミャンマー人を危険に陥れようとしている。なぜ、長蛇の列が無言なのか、欧米人は何一つ考えようとしない。上品な発言をすると、今のマスコミは他人のパンツの中まで覗こうとする。品性の無い連中はこの優雅な国にはふさわしくない。

・08:00--車椅子の夫人の面倒を見ている年輩の友人がいる。近くの選挙事務所からスタッフが出張してきて夫人は自宅で投票を済ませた。オレもというと、アナタは歩いていけそうだといわれたと友人が教えてくれた。

・11:30--街角の新聞・ジャーナル配送センターが店じまいをする時刻だ。ここは生の情報が取り交わされる場所でもある。顔見知りが何人かいた。投票は済ませたかと訊くと、競って紫色インクで刻印された小指を見せてくれる。中には朝3時から並んで最初の20人のグループに選ばれたと言う顔見知りもいる。今日は日曜日である。大半の人たちは午前中で投票は済ませたようだ。ここは気を許して本音を聞ける場所でもある。言葉には出さない、だが、みな親指を上に突き出し“勝った”という仕草だ。誰が勝ったのか顔に書いてある。この国の情報ネットワークはCNNやBBCよりも速い。

・11:45--町内の寄り合いでモヒンガーの炊き出しをやっている。是非食べていけと、無理矢理プラスチックの小椅子に座らされご馳走になった。新聞記事には書いてないが、ミャンマーが大きく変わりそうな予感がする。午後からは近くのシティ・マートが開店するとの情報も教えてくれた。だが、その筋のお達しにより、アルコール販売は禁止とのこと。

・12:00--“歩ける友人”が予定より20分も早く到着した。道路の違法駐車が一掃され、路上の露天が強制的に追い払われたために、今日の道路はスイスイ来れたという。英国人が経営するパブにいくとシャッターが下り、閉まっている。困った、ヤンゴン川の中華料理も、外国人を主要客とするテインビューやストランド通りのレストランも。タクシーの運チャンにまかせ、どこでもよいからとチャイナタウンまで回る。めぼしい料理店は、強制的に閉店させられっている。ひょっとしてと、大使館村の一角を覗いたら一軒だけ見つけた。高級料理店だが、今日は何かよいことが起こりそうで、散財する決心をした。案の定、外交官の家族やカップルたちでほぼ満席だった。しかも、ビールも飲めた。政府の通達を破るのは常に外国人だ。

・14:30--WiFiスティックのチャージで、パソコン街に行ったら、選挙のためここもすべて閉店。

・15:15--暗雲が空を覆い、遠雷も聞こえる。そして雨がポツリ。

・16:00--本降りの雨。ビルのトタン屋根がショパンどころか、ベートーベンの運命を奏でる。確かに何かが変わりそうだ。今日は昼間からビールを飲り、帰宅してからも薬草を浸した自家製のラム・カクテルで余韻を楽しむ。ヤンニのDVDを見ながら、そのまま夢の世界に。



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03:明けて9日(月)早朝

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03:15 まだ夜は明けていない。15分間ほど又雨。そして03:45ころより本降りとなる。トタン屋根の素晴らしいところは、カーテンや窓を開けなくとも、外の変化が分かることだ。それにしても不思議だ。火祭りが終わると、季節は変わり晴天が続くはずだ。しかも、明日10日(火)はヒンドゥー教の火祭り“ディパバリ”である。東西南北研究所の第六感は、これらの雨は、独裁政権時代の終焉を嘆く粗製乱造されてきた将軍たちの大粒の涙と読んだ。それ以外に考えられない自然現象である。

午後からは身近な人たちを招いて祝勝会を開いた。フリーメイソンの儀式のように。理由を語らない祝勝会でワインのグラスが次々に飲み干される。便利になった。友人のケータイにはフェースブックからダウンロードしたNLD本部の屋外大型スクリーンに各地の模様が流される。そのたびに真っ赤なシャツが、真っ赤な鉢巻が、大きく躍動する。

テインセインが先週だか言った。「これまでに多くの改革を成し遂げてきた。これ以上何を望むというのだ。これ以上の改革を望むとすれば、それは共産主義だ。」

だが、この大型スクリーンの延々と続く赤色の人波を見たら、大統領は、本当に共産革命が起こったと錯覚したかもしれない。

友人のケータイは、このようなビデオを次から次に見せてくれる。中にはBBCやCNNからのダウンロードもある。ワインを楽しみながら、ミャンマー全国を取材できる。これで明日のメルマガ記事を捏造できる。



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04:デッチ上げ記事による週刊メルマガ

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現地調査が基本の文化人類学者が日本の土を踏まずに書いたのが「菊と刀」。その犯人はルース・ベネディクト。マンダレーを訪れずに書かれたのが“ロード・トゥ・マンダレー”。その犯人はラドヤード・キプリング。ともに名著で名バラードと謳われている。
「ミャンマーで今、何が?」もそのひそみに倣い、トタン屋根の屋根裏部屋に閉じこもり、10日間ほどのGNLM紙およびMT誌、そしてネットで集めたロイター、NYタイムズ、Wポストなどの記事約20件ほどを斜め読みして、見てきたようなデッチ上げ記事を捏造している。

11月10日(火)も同様の手法で、書きはじめた。

スーチーが先週木曜日語っている。NLDが選挙で多数を占めたら、大統領になれない自分は“大統領の上”に就任する計画を持っていると。この瞬間、ワタシの目から鱗が落ちた。そうかそうだったのかと。シュエマンは大統領資格のないスーチーはNLD党首として、シュエマンを大統領に指名するとアドバルーンを揚げていた。だが、メッキがはげた元No.3のシュエマンを指名したら、全国民から大ブーイングが発生する。賢明なスーチーは全国民を敵には回さない。NLDが多数を占める議会でシュエマン以外の人物が大統領に選ばれる。その人物はスーチーを三軍(陸海空)の最高司令官に指名する。これがスーチーが抱く秘伝の超裏ワザと読んだ。読者はいかがお考えであろうか。

現憲法上でも、政府とは一線を画し、しかも大統領の上に君臨するポジションといえば英語で、Commander-in-Chief of Defense Services、陸海空の三軍を統括する。お粗末な話しだが、憲法上外国人を配偶者にもつ人物が三軍の長官に就けるかどうかは調査していない。だから、この話は証拠不十分のデッチ上げ記事である。美味なワインのせいと勘弁願いたい。

ミャンマー人の性格は、トップが替わり絶大な権力を掌握すれば、下はその変化についていけなくとも、ゆくゆくはなびいていく。この理論がどうして軍人グループに適用されないということがあろうか。しかも、スーチーは国父、国民の英雄、国軍の創設者の、直系の娘である。

これが実現した場合の最大の利点は、20いくつあるという反政府武装勢力のすべてがアウンサン将軍の娘であればと、将軍と同じように彼女を信頼し、平和交渉のテーブルに着席する可能性が非常に大きい。テインセインはそのうちの8グループとしか協定を結べなかった。全国すべての反政府武装グループを一同に平和協定調印式に招待できれば、これはスーチーの偉大な政治的大勝利である。そして国連を始め海外からも、その成果は大きく絶賛されるだろう。

選挙戦前は、スーチーは経験も無く、ド素人で、後継者も育てていないなどの意見もビジネス関係の多くから耳にした。だが、そんな野次馬など、まったく相手にする必要は無い。アウンサン将軍同様に、何が国民にとってもっとも重要かを問い詰めれば、これまでの独裁軍事政権が成し得なかった国内統一を最優先課題であることは明白である。ビジネス発展など次の次のプライオリティである。

これを成し遂げれば、第三者の遠吠えなど吹っ飛んでしまうであろう。旧政権が口にしていた国内のユニティなど、彼らにとって夢の、また夢であった。そこから新米政治家アウンサンスーチーのすべては開始する。

繰り返すが、雲上人およびその取り巻きが練ったと思われる8月13日のUSDP党内クーデターは不運なテインセインを党首に祭り上げ、シュエマンを追放した。
このとき、一般国民はテインセインもシュエマンもやっぱり軍人仲間だったと、再び悟らされた。その結果が、国民総選挙で一気に大爆発を起こしたと東西南北研究所は解釈した。
もうひとつ悟ったのが、あれ程の大改革をやり遂げた元将軍テインセインも単に使い捨ての道具でしかなかったということである。

もしも、もしもである。テインセインが大統領最初の半期だけで、後ろを振り向かず潔い引退を実行できていたら、ノーベル平和賞も不可能ではないとこのメルマガでは書いた。だが、最後の最後でケチがつき、泥を被った。彼自身がノーと言えない雲の上ですべてはお膳立てされたからだ。だが、この一、二日の報道写真で見るテインセインの顔には何かホッとした穏やかさが見て取れる。これで操り人形の役目は終わったとの安堵感が自然に出たのであろう。

今回のミャンマー劇場では、国防軍の最高司令官をはじめ、国会の両議長、政府の主要閣僚、ほぼ全員が選挙結果を尊重すると明言している。だから、いまのNLD優勢がひっくり返ることはないだろう。だが、アウンサン将軍は言った。「物事はベストを期待するが、常にワーストに備えたい」と。娘にとって父親の言葉は大切だ。敵が公式の敗北宣言をするまでは、勝って兜の緒を締めよという警戒体制を崩さないだろう。



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05:世の中は大きく変わる

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USDP内にもサムライはいた。

今回の選挙でUSDPの議席を失ったウ・ラースエという人物がフェースブックで語っている。「地元から立候補したNLDの候補者には自分は勝った。だが、その他の地区で上院議席を保持できなかった。この敗北はNLDのせいではない。私は長いこと無視し続けていた国民の英雄アウンサン将軍に負けたのだ。私は将軍に負けたことを誇りに思う。アウンサン将軍と比肩できる人間などこの世に誰一人としていない」と。

だから、いまや、ミャンマー国軍を動かせる人物はスーチーしかいないと東西南北研究所は断定した。そして次には現在の国軍内部で、NLDではないスーチーに、なびく連中が雪崩現象を起こすのではないだろうか?そんな予感がする。

今日はワインを飲みすぎた。賢明な読者諸氏は、こんなたわけ者の言うことなど、笑い飛ばしていただきたい。なぜなら、当たるも八卦、当たらぬも八卦が、この国にはもっともふさわしいからだ。



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06:追伸

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2017年のいつか、どこかで、世界最強の女性たち、スーチーとヒラリーが世界のひのき舞台でひしとハグし合う同時中継が、そして写真が世界を席巻することだろう。武闘派の男たちの時代は終わった。どうですご同輩諸君、安い南酒場で、一杯飲りませんか、積もる話もいろいろありますから。



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07:アウンサン将軍の夢

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その遠大な夢が実現する環境が整ってきた。
アナタの直系の娘がそれを実現できそうな予感がする。

藩基文さん、次期国連事務総長にはスーチーさんを推薦しませんか?保身の術に長けた高級官僚たちが決めた、アジア・アフリカ・中南米とかのローテーションがあると聞いたことがある。そして、同一国から二人も輩出するのはルール違反だとも聞いた。だが、これからは実力の世界、持ち回りなどナンセンス。

今の、地球上で世界の舵取りを出来るのは、この人物を置いていない。彼女は立派にアウンサン将軍の資質を受け継いでいる。もうミャンマーの大統領などという小さな世界(失礼!)におさまる人物ではない。彼女こそアウンサン将軍の夢を実現できる容器だと思われる。これはたわけ者の夢でもある。



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