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<ミャンマーで今、何が?> Vol.182
2016.02.17

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■権限委譲に暗雲か?

 ・01:朋あり遠方より来る

 ・02:酔生夢死の人生

 ・03:ムーンシャイナー

 ・04:嫌なウワサ

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01:朋あり遠方より来る

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先週、PhD(博士号)を取得した米国人が東西南北研究所を訪ねてくれた。ゲストブックで数えてみたら、PhD所有者の訪問は彼で9人目となった。ミャンマー人2人、英国人1人、米国人3人、日本人3人という内訳だ。

驚いたことに、米国人3人の博士はワタシより日本語が達者だった。逆に日本人の多くが世界中どこでも相変わらず日本語で押し通そうとしている。情報の経済学でいえば、米国人はインプット(+)の幅が大きく広がり、日本人は情報流出のアウトプット(-)のみで、商売の日米決戦でいえば、勝負は目に見えている。

太平洋戦争の時代もそうであった。今の時代も、日本人はヤンゴンの居酒屋に集まり、日本人同士で情報交換している。

伝説の南機関を創設した鈴木敬司大佐は、そんな官僚化した日本人ではなかった。単身ラングーンに乗り込み、アウンサンをはじめとする伝説の三十人の志士を日本に密航させ、海南島で鍛え上げた上で、祖国ビルマに再侵入させていった。すべて英語での勝負であった。今の日本社会からは、このようなサムライはもう輩出しないのであろうか。

9人の博士に話を戻すと、ビールを飲みながら、あるいはお茶を飲みながら、ご専門分野をマンツーマンで講釈してもらえる。ヤンゴンのあばら屋に隠遁して、こんな贅沢なことはない。気が合えば、また訪ねてくれる。あるいはメル友となる。一般論で言えば、欧米人は話題にオープン性があるが、日本人は閉鎖的だ。

このようにして、路上喫茶の夫婦も訪ねてくれる。ムスレムの友人もドアをノックしてくれる。秘密警察は遠慮したいが、東西南北研究所は「来るもの拒まず!去るもの追わず!」の目に見えぬ看板を掲げている。



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02:酔生夢死の人生

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ヤンゴン在の友人が、シーズン走りのミャンマー産ブドウを市場で手に入れ、赤ワインを自分で仕込んだという。発酵を促すために砂糖を適量加えたが、その分量は秘伝中の秘伝である。これによってアルコール発酵がはじまるそうだ。このボージョレーヌーボーを太っ腹の友人はペットボトルで5リットルも分けてくれた。

普段はフリーシンカー(Free thinker)とほざいているが、実は熱烈なるバッカス神の信者で、酔生夢死の我が身にとっては、これほど贅沢で、ありがたいことはない。まさに口福である。持つべきものはやはり友だ。

ワタシはこの友人の「ものの考え方」が気に入っている。このヤンゴンに何も持ち込まない、そして何も持ち出さない。この地の産物で人生の折々を楽しむ。安易に外国産に飛びつかない。いま、日本市場では、外国産が季節を問わず出回っている。グローバライゼーションで確かに便利になったのかもしれない。だが、季節感がなくなってしまった。四季を待ち、恋焦がれる、日本人の繊細さが世代ごとに消滅していく。

友人のように味覚を自分の舌で判断するのではなく、ボトルのブランド銘でジャッジするグルメが大勢いる。人類は醍醐の味を堪能する本能を失ってしまったのだろうか。北海道では北海道の味を楽しみ、沖縄では沖縄の味を楽しむ。そしてミャンマーではミャンマーの味を楽しむ。季節も同様である。

このボージョレーヌーボーは、すでに発酵がはじまっており、ときおりガス抜きのために栓を弛める。ワインレッドの液体と、表面の泡立ちが、挑発的だ。暗所で寝かせ、一ヶ月間もしたら、飲み頃だという。それまで我慢しろと非情な注文がついている。

数時間おきに、美女の寝顔を覗きに部屋の暗所を訪れる。フルボディを想像すると生唾がでてくる。

ところが、途中から、発酵が止まってしまったようだ。ガス抜きが不発に終わっている。友人からは懇切な指示説明がメールされてくる。私設のソムリエを抱えたような気分だ。


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03:ムーンシャイナー

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これは禁酒法時代の密造酒製造のことを意味する。

他のことはいい加減だが、酒については、少しばかりウルサイ。その道の通に聞くと当地ではラム酒は“ARMY RUM”に限るという。市販されてはいないが、その名の通り軍が独占的に製造している。キニーネが入っているので、マラリアの特効薬でもある。これにボーガレーの朝市で手に入る秘伝の薬草を一ヶ月浸す。これで飲み口がまろやかとなる。これは酒そのものを製造するわけではない。だから、正式な密造酒ではないと勝手に判断している。

“Shaken and not stirred”お馴染みジェームス・ボンドのドライ・マティーニだ。マドラーで掻き混ぜずに、氷を入れて冷たくなるまでシェークしろということだ。イアン・フレミングの小説では、ゴードンジン、ウォッカ、それにキナ・リレットをシェークする。オリジナルのキナ・リレットはペルー産のキナの樹の樹皮から製造され、この樹皮がキニーネの原材料となる。

したがって、ヤンゴンで密造酒作りに精を出せば、Jボンド気取りでマラリア対策にもなるというわけだ。だが、4月からのスーチー政権となって、軍の酒保からの横流しがどう変わるかが若干心配だ。

ついでに無駄口を叩くと、ミャンマーではレモンの若葉を生で食する。それをミャンマー産の安いジンに約一ヶ月間浸しておくと、濃緑色の葉っぱが真っ白に脱色される。その道の先生に確かめたところ、強いジンの酒精で、葉緑素の色素が抽出されたのではないかという。カクテル辞典で調べると、ジンライムのように柑橘類とジンは相性がよい。これに秘伝のジュースを加えると、ミャンマー独特の銘酒が誕生する。

その他に、シャン州特産の米焼酎は日本のヤワな焼酎と違いアルコール分が高い、少しばかり小皿に注ぎ点火する。こんな時に限って停電は起こらない。手動で室内の電気をすべて消す。暗闇のヤンゴンで、オーロラと見まごうほどに見事なブルーフレームが乱舞しはじめる。



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04:嫌なウワサ

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今週は、上記を話の枕として、スーチーの「ものの見方」を分析するつもりだったが、ちょっと気になる動きが出てきた。話題を変更したい。

それは、軍事政権側の奇怪な動きである。ひとつはテインセイン大統領、そしてもうひとつはミンアウンライン最高司令官がどうもおかしい。

オバマ大統領の呼びかけで米国・アセアン首脳会議が米国カリフォルニア州サニーランド・リゾートでこの2月に開催されることが昨年12月に決定していた。そしてアセアン10カ国首脳は全員その出席を確約していた。

ところが、テインセイン大統領が、その出席を直前の土壇場で断わった。いわゆる“どたキャン”である。これは国際儀礼上、もっとも非礼な外交行為となり、しかもその理由が何一つ説明されていない。外国メディアが御用新聞と呼ぶGNLM紙も何一つ説明していない。そして、突如、副大統領のニャントゥンが14日(日)現地入りしたと報じている。しかも、副大統領の顔つきがいつものゆとりある笑顔では無しに、引きつったような写真である。

大統領府は、テインセイン大統領は3月30日の大統領辞職を前に、国内に留まる必要があると、意味不明瞭な奇怪な説明をしている。それが何を意味しているのか?まったく読めない。

もうひとつ気になるのが、ミンアウンライン最高司令官である。
最高司令官の職は60歳を持って定年となるのが慣例であった。しかし、最近開催された年4回開催の上級司令官会議で、今年60歳となるミンアウンラインは今後5年間、現職に留まることに決定したとの情報が流れてきた。同時に副最高司令官のソーウィンも5年間現職にとどまるという。

両名ともに、スーチー新政権への権限委譲には協力すると言明している。だから、これらの動きがプラスに作用すれば御の字である。だが、これまでの軍事政権はNLDに対して、そして国民に対して、約束とは名ばかりの、裏切り行為ばかり行ってきた。それだけに不気味である。

今の時点で、これ以上の情報ネタはない。

だから、憶測でモノゴトを判断するのは止そう。

テインセイン大統領は最後の花道として、カリフォルニア州の首脳会議に出席するもよし、デズニーランドで無邪気に遊んでくるもよし、あるいはハリウッドでスターたちに囲まれて写真を撮りまくるのもよし、だが、なぜ“どたキャン”なのだろう。非常に気になる。

ミンアウンラインは、スーチーには憲法条項を盾に大統領就任を阻止しておきながら、自分は最高司令官職の慣行を無視して5年間の定年延長を決定するとは、ルール違反もはなはだしい。国権の最高機関トップを占めながら品格のない行為である。

これらすべてが、どうしても解せない動きである。二人とも何を企んでいるのだろうか?

今週は、申し訳ないが、すっきりしない形で、筆を擱く。



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