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<ミャンマーで今、何が?> Vol.198
2016.06.28

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■ヤンゴンの病院事情考察

 ・01:またもや、自分のメールA/Cが開けなくなった

 ・02:ヤンゴンの階段話

 ・03:ヤンゴンのクリニック

 ・04:国際クリニック

 ・05:ヤンゴンの病院事情考察

 ・06:蛇足ながら

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01:またもや、自分のメールA/Cが開けなくなった

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ミャンマーで今、大いに落ち込んでいる。
それは、自分自身のGmailアカウントが再び開けなくなったからだ。この一、二週間苦闘しているが、メルマガのプロバイダーにもメルマガ原稿が発信できなくなってしまった。

これまでのパスワードを記入すると、セキュリティー保全のために、パスワードを変更しろと強制的に要求してくる。この要求が面と向かって口頭でならば、パスワードを変える変えないは俺の勝手で、オマエに言われる筋合いはないと蹴飛ばすのだが、PCの画面上では新パスワードを設定しないかぎり次ぎに進まない。

100歩も譲って、新パスワードを挿入してみた。だが、グーグルはそれすら受け付けず、変更しろと同じ要求を繰り返す。そこで、新新パスワードを再挿入すると、それも受け付けない。

こうなってくると、PCに弱い化石世代に対するイジメである。なにがユビキタスで、なにがユーザーに優しい通信手段だ!!!

今はすべてが進化して、便利になったようだが、心のこもった優しさに欠けている。オジさんは落ち込むと同時に大いに怒っている。

緊急避難として、友人のメールからメルマガ原稿を添付して、プロバイダーに送付することにした。解決方法を引き続き模索するが、次回のメール発信が心配だ。



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02:ヤンゴンの階段話

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“廊下”で転ぶのを“老化現象”と言う。だが、友人は不幸にも“階段”で転倒してしまった。小泉八雲なら、これをヤンゴンの“怪談話”に仕立て上げることだろう。

この友人は無責任なメルマガの“サンダル話”を真に受けたらしい。ビル入口の階段は雨に打たれ、滑りやすくなっている。穿き慣れないサンダルがアダになった。両手は買い物で手一杯。上り階段の角に額の生え際を否という程ぶつけ横2.5cm縦1.0cmの裂傷を負った。幸いにもメガネと眼球は咄嗟によけ無傷だった。

出血の激しい傷口を応急処置の消毒液で洗い、抗生物質のクリームを塗ったガーゼを当てたが、傷口の肉がせり出し、出血が止まらない。何度もガーゼを取り替える。

親しい通訳およびその友人たちの到着を待って、クリニック、それから救急病院に急いだ。

今回のメルマガはその随行見聞録、というよりもヤンゴンの病院事情考察である。



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03:ヤンゴンのクリニック

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とにかく、消毒と止血が急務である。
徒歩5分のクリニックに通訳軍団とともに急いだ。外科医のいるクリニックが良いと、別のクリニックを紹介された。雨の夕暮れ、タクシーを拾い急行する。だが、交通渋滞で車はいっこうに進まない。

だが、今はケータイの時代だ。各人がケータイでそれぞれの心当たりにダイヤルする。バンコクの損保会社が日本語で応対してくれた。ヤンゴンの病院2ヶ所の電話番号と住所も教えてもらった。24時間対応で、しかも日本語が通じるという。ありがたい。

タクシーの中からヤンゴンの病院に電話した。日本語のできるスタッフも担当の医師も帰宅して不在だった。これでも24時間対応との看板を掲げている。もうひとつの病院も日本人医師常駐を謳い文句にしているが、時間外で不在とのコト。必死にその日本人医師のケータイ番号を教えてもらった。何度もその番号に電話するが常に話中のトーンが返ってくる。埒が明かない。

最悪の事態として、バンコク行きが現実の問題となってきた。旅行会社、エアーライン会社へも電話する。だが、その日の夜行便には間に合わないことが判明。

別のクリニックに到着した。同伴の通訳は実に有能だった。受付で掛け合い、すぐにも2階の診察室へと急ぐ。このときの見聞録は、メルマガの読者にも少しは役に立つかもと思った。

中国のドラゴン踊りを想像してほしい。クリニックの入口から、細長い奥に向かって診察を待つ患者がスツールに座り延々と蛇行している。グッタリした子供を抱く母親もいれば、目がうつろな老人もいる。妻に付き従う心配そうな夫もいれば、その逆もある。ムスレムのヒゲもじゃもいれば、サリーを纏ったインド婦人も。ビルマ族もいれば中国系もいる。さすがに少数民族の宝庫である。

その一人ひとりが、延々と続く順番を辛抱強く待っている。その中を、われわれ一行は“失礼!失礼!”と、壁と人混みの間を縫い奥へ奥へと急いだ。そしてやっと2階への階段にたどり着く。上り階段にも行列が続いている。有能な通訳のお陰で割り込み診察だ。ドクターは女医さんであった。女医さんの話は長々と続くが、消毒止血の処置はいっこうにはじまらない。

数軒のクリニックで経験した長い物語を一言でいうと、有名な病院で診て貰ったほうが良いとの結論であった。どのクリニックでも、初診料というか、相談料とかは、しっかりと徴収された。緊急の割り込み診察だから、これは仕方がない。

実は、この街のあちこちで見かける“クリニック”をたらい回しにされた。後刻、事情通のミャンマー人に解説してもらうと、この“クリニック”のドクターたちは、総合病院など大きな病院の医師たちで、安い給料を補うため副業としてクリニックで働き、なかには数件のクリニックを掛け持ちしているという。

そしてさらに重要なことは、彼らは市民のための街のドクターであって、外国人を診察するドクターではない。したがって、外国人を治療して死亡させると、軍事政権時代は、善意のドクターでも、逮捕され監獄行きになったという。外国人と関ること自体、彼らにとっては迷惑なのだ。だから、女医さんの外国人に対して何も医療行為を行わないという処置は、ミャンマーの医師として妥当な対応だったわけである。



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04:国際クリニック

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そして最後に行き着いたのが「国際クリニック」だった。最新の医療設備だけでなく、日本語・英語・ドイツ語・フランス語・中国語・マレー語・ミャンマー語で対応を謳い文句にしている。

だが、日本人の女医さんは、本人出産のために日本に一時帰国で、日本語サービスは受けられなかった。

それでも、当方はミャンマー語・英語の通訳を用意していたので、言葉に支障はなかった。

ミャンマー人の当直医師は、状況説明を患者から聴取したあと、体温、脈拍、血圧など基本的測定を行い、傷口の消毒、止血、化膿止めの注射とテキパキとこなし、そして傷跡が顔面に残らないよう、裂傷部分は縫合せずクリップで仮止めし自然癒着を待つ方法を採択してくれた。医療行為の最中に、患者が納得できる説明を詳細にしてくれた。保険処理の手続きについても親切だった。これで、これまでの不安がすべて解消した。バンコク行きも思いとどまることができた。

さらには、必要なら数日後に再検診といわれた。その指示に従った。最初の処置が適切だったのだろう。傷口も塞がり、しかも傷跡は小さくなっていた。もう絆創膏も不要だ。野次馬見聞録の大略はこれで終わる。



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05:ヤンゴンの病院事情考察

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この友人の階段話を口実に、ヤンゴン病院事情の感想を述べてみたい。

どのクリニックも患者は長〜い長〜い行列を耐えねばならない。すべてのクリニックがそうだった。ミャンマーの一般市民は、悪寒がする、高熱が出た、気分が悪いといっては、クリニックを利用する。だが、ドクターがやってくるのは、本業の大病院を終えた時間帯だ。大病院で緊急事態が発生すると、そのドクターのクリニック診察は休診となる。

たいていの一般市民は、少しの体調不良はガマンする。病状が悪化してから、クリニックにやってくる。そしてあの長〜い待ち行列に直面する。むずかる子供の場合、母親は途方に暮れるだろう。この待ち時間は決して効率的とはいえない。特に体調を崩した患者にとっては、苦行にも等しい。先進国といわれる日本ではどうなのだろう?

英語で入院することを、アドミット・ツー・(ザ)ホスピタルと表現する。ミャンマーも伝統的に英国流で、許可されなければ大病院には入れない。その点、クリニックは町医者で、気楽に利用されるし、大病院よりも診察料は割安とのことである。

ミャンマーでは医師の数は多いが、軍事政権時代、優遇されてこなかった。ドクターといえども給料は安く生活は厳しい。そこで、クリニックという商売が成り立つ。どのクリニックも、小児科・産婦人科・耳鼻咽喉科・眼科・外科・皮膚科などと窓口を広げていく。そして、評判の有能な医師たちを数多く抱え込んでいる。入口には、紺色のプレートに白い字で医師の名前がずらりと掛かっている。国内外のどこそこ大学で医師の資格を取得したと誇らしげだ。

この国には国軍の病院もあり軍医もいる。だが、歴代のエリート軍人たちは、自国のドクターを信用しないのか、コトあるごとに軍用機を飛ばし、あるいは民間航空機の一番前に陣取り、シンガポールで手術を受けるのが当たり前となっていた。

タンシュエの宿敵であったスーチーは、自宅拘束中、体調を大きく崩し子宮摘出手術を受けた。それはエリート軍人たちが信用を置かない自国内の病院であった。そのスーチーは、政権を確かなものとした今年の4月に右目の白内障手術を受けた。それも自国内の病院であった。そしてさらに左目の手術を水祭り期間中に受けた。それも国内の病院であった。

どの国でも、エリート軍人たちは“ペイトゥリオット(愛国者)”と言う言葉を好んで豪語する。本当にそうなのだろうか? 祖国を愛し、同胞を愛する“愛国者”という言葉の重みをスーチーは堂々と勇気を持って教えてくれた。



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06:蛇足ながら

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今回の階段話騒動の最中に、某国の会報紙に接する機会があった。
そこには、「医療事情も極めて劣悪なヤンゴンです」と表紙のみならず、各ページの上部ヘッダーにも明記してある。

その時、どういうわけか、司馬遼太郎の「坂の上の雲」が頭を掠めた。日本が三等国・四等国と見下された時代に、その屈辱を必死に晴らそうと、闘っていた日本人の物語である。あの時代の日本人には傲慢さなど微塵もなく、ひたむきに人生を生き、しかも他人への思いやりに溢れていた時代だったような気がする。なぜか、今のミャンマーとオーバーラップする。

今回のわずかばかりの経験から、ワタシにはこの国の医療事情を“極めて劣悪なヤンゴンです”と断言する勇気も度量もない。この某国は国際協力機関を通じて、戦争で、内戦で、疲弊した数多くの国々で医療活動を続け、感謝されているとも聞く。“劣悪な医療事情”とミャンマー(ヤンゴン)にレッテルを貼るほど、この某国は偉く成り上がってしまったのだろうか?

某国の会報紙は、ミャンマー人の配偶者、あるいはその子供たち、ミャンマー人の関係者たちが目をとおす機会があるのを知りながら、なぜかその人たちへの思いやりが、ひいてはこの国の国づくりに必死に努力している人たちへの思いやりに欠けている気がしてならない。

それでいて、国家相談役のスーチーに、あるいは外務大臣のスーチーに、路線変更して擦り寄ろうとしているように思える。外交上、偉く成り上がったスタンスで、この激動する国際政治を乗り切ることが、本当に大丈夫なのだろうか。

多分今回は、Gメール事件でむしゃくしゃし、余計な蛇足に及んでしまった。言葉が過ぎたようだ。日本人らしく、長いものに巻かれるように、ここで筆を止めよう。

 



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