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<ミャンマーで今、何が?> Vol.203
2016.10.06

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■スーチーの外交政策

 ・01: ロヒンジャーへの取り組み

 ・02: スーチーの気迫

 ・03:世界のトップ外交

 ・04: 米国とのパートナーシップは英語で

 ・05: たかが英語、されど英語

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01: ロヒンジャーへの取り組み

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世界の大物、前国連事務総長コフィ・アナン博士をミャンマーのロヒンジャー問題解決の糸口を図るため、スーチーは引っ張り出し、そして指名した。チープな大物ならば、このような仕事は引き受けない。一銭の得にもならないからだ。それだけではない。解決のメドも立たず、政治的にも宗教的にも複雑な問題で、誰もが尻込みする難問で、下手すると築きあげた名声を失うリスクがある。

スーチーの人選も凄いが、それを引き受けるコフィ・アナンもサムライである。

スーチーの外交政策を検証してみよう。
9月19日メキシコ大統領と会見している。ミャンマーとは世界遺産、麻薬関連、国境を接する米国への違法移民流出で問題を共有できる。ロヒンジャーを視野に入れていることがよく分かる。だが、スーチーは前政権が嫌がった"ロヒンジャー"の言葉は使用しない。だが、このメルマガでは、敢えてこの"ロヒンジャー"を使用した。

同日、隣国バングラのハシナ首相とも会見している。外資による衣料工場の問題点も話し合われたはずだ。だが、最優先課題はロヒンジャーに絞られる。チープなマスコミに口を開く前に、ヤルベキコトが山ほどスーチーには残されている。

翌9月20日イスラム協力機構の事務局長と会談した。地球上に大きく勢力圏を確保している回教徒の総本山である。アメリカの チープな大統領の一人であったジョージ・W・ブッシュは、どうして回教徒がその勢力を世界に拡大していったか、その歴史的背景も勉強せず、恐怖感に駆られ、軍事力だけに頼って、無謀にもイスラム世界に宣戦布告した。それが地球上の至る処にカオスを生み出しているのが、今の現在史である。非常に単細胞でお粗末なメンタリティだ。

スーチーはそれと真反対のことをやってのけた。武器など一切まとわず、しかも痩せた71歳の女性が独りで虎穴に飛び込んでいる。

瞑想という手法で問題の根本に対峙し、世俗の人間が恐れる自身の心に巣食う恐怖から脱却し、洋の東西を問わず、伝説の時代から人類が囚われ続けてきた"復讐の心"を放棄するという偉大な哲学に到達した。スーチーは人類の歴史はリベンジの輪廻と見る。その輪廻を断ち切るには、憎い相手を許す心が必要だと説いた。だから、自分の曽祖父を晒し首にした大英帝国を許し、自分の父親を暗殺させたウ・ソウを赦し、その黒幕であった大英帝国を許した。このあたりの事情はさいとう・ナンペイ著「アウンサン物語2015」に詳しい。

スーチーには、JWブッシュが毛嫌いしたムスレムに敬意を払って話し合う品格がある。軍事力や経済力をチラツカセながらではない。心を無にして向き合うのである。洋の東西を問わず、昔の真の武人にはその風格があった。

無礼にもマイクを鼻先に突き付け、仏教徒を支持するか、ロヒンジャーに味方するか、シロクロをつけろと迫る。安っぽいマスコミが相手なら、沈黙こそ金である。スーチーは、これがパンドラの箱(実際は小壺らしい?)になると百も承知だ。イエロー・ジャーナリストの餌食になることを賢明にも避けた。スーチーには、そんな無駄な時間は残されていない。

アメリカの大統領選が代表例だが、今世界中でチープな政治家が乱造されている。そして品格のない失言を繰り返している。もっと堂々と、コソコソせず、スーチーのように、世界が注目する国連の舞台で、青眼の構えで雄弁に発言できるサムライはいないのだろうか。イケナイ、イケナイ、またまた脱線してしまった。

スーチーは同20日、国連難民高等弁務官(UNHCR)とじっくり会談した。緒方貞子の前職でもある。この弁務官こそ、ロヒンジャー問題解決の知恵を語り合う、最適の人物である。国連出席の機会をとらえ、スーチーのロヒンジャー関連の情報収集はUNHCRで締め括った。

冗談半分に、スーチーはロヒンジャー問題を丸投げした、と書いた。本当に丸投げしたとアナタは思いだろうか? スーチーは決して逃げていない。むしろ世界の英知から解決の糸口を真摯に学んでいる。それを、ワレワレはこの日程から読み取るべきと思う。



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02: スーチーの気迫

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9月21日国連総会で演説したその日、スーチーは包括的核実験禁止条約批准式典に参加した。スーチーは、その演説で言及した通り、国連設立の原点に戻り、国連安全保障理事会常任理事国が第2次世界大戦の戦勝国で、核保有クラブであるということも、充分承知したうえで、そのスピーチ原稿を書き上げた。彼女には、魂の込もらないスピーチ原稿をお役所で書き上げる優秀な官僚は一人もいない。その孤独な闘いがスーチーの人生であり、国の内外でこれからもそれは続く。また話が脱線した。

地球の片隅で、北朝鮮を国際的社会から締め出し、孤立化させ、封じ込める、仲良しクラブの構築がはじまっている。

大東亜戦争直前、日本が物資輸入面で包囲され、資源の輸入が困難となり、孤立化に陥り、窮鼠状態となった。軍事力だけでなく、情報力、工業力、資源力、経済力など、総合力で絶対的に不利と知りつつ、精神力で勝てると日本の軍部は、"それでもオマエは日本人かッ"と良識派が頭ごなしに叱られた。

そして、1941年12月8日午前5時過ぎ、各新聞社の記者30名余が海軍省黒潮会(記者クラブ)に電話で呼び出され、同日6時、海軍報道部長の田代中佐とともに現れた陸軍の大平報道部長が「大本営発表第1号」を読み上げた。JOAKがこれを臨時ニュースで繰り返し放送した。「帝国陸海軍は、本8日未明、西太平洋に於いて米英軍と戦闘状態に入れり」と。山田風太郎著「同日同刻」による。

その結果、日本民族がこの地球上から絶滅の一歩手前まで行ったのである。

非情な時代を強いられたワレワレの父母・祖父母の貴重な経験を、何ら学ぼうともせず、戦争を知らない世代の無知な政治家たちが、世界を知らない無知な一国を孤立化に追い込もうとしている。無性に腹がたつ。

スーチーの読書量は膨大なものだ。自宅拘束の期間があまりにも長すぎた。それを逆手に取り、スーチーは自分の内面を磨いていった。スーチーが自分を殺そうとしたタンシュエを赦したとき、スーチーはマハトマ・ガンジーを超えたと東西南北研究所は分析した。すなわち、自分の師匠を越えたのである。

20世紀までの人類は無法な殺戮を繰り返してきた。だが、21世紀になっても、その愚かさを学習せず、戦争への準備を進めるとは、お粗末な政治家揃いだ。インポッシブル・ドリームと言われても、話し合いに持ち込もうとする勇気と賢明さは国連を含めて今の彼らには無い。だが、スーチーには日本の憲法第9条のように、非常に稀有な魅力がある。

ミャンマーを孤立化に追い込んだ"経済制裁"は、効果がなかったとオバマも米政府も反省している。それがなぜ北朝鮮を孤立化に追い込むのか? 英国の経済史家アーノルド・トインビーは「人間は歴史に学ばない動物だ」と見抜いた。したたかな英国は、そのあたりの策略に優れている。閑話休題。

スーチーは国会議員としての初登院で、軍人の捏造した非民主的な2008年憲法は受け入れられないと、それへの宣誓を拒否し、国会を一週間空転させた。お節介なアメリカ人・ヒラリーは国際電話で政治はギブ&テイクであると諭した。あれから4年が経つ。今年71歳のスーチーは自宅拘束解除と同時にパソコンの導入を要求し、あの年齢からネットワーク学習に挑戦した。周りでは現役をリタイアし、毎日が日曜日のお年頃である。ミャンマーのみならず、ワレワレはスーチーに見習うところが、多々あるのではないか。

もし個人的な栄誉で満足するチープな政治家であれば、もう充分すぎるほどの賞賛を得ている。いつ引退しても不自由しないほどの莫大な賞金も得ている。だが、スーチーはこれまで虐げられた国民のため、次世代の子供たちのため、そしてこの世から無益な諍いを無くすため、破壊された自分の家庭生活を口にせず、残り全人生をそのために捧げている。そのような政治家がこの世に存在したであろうか?宮沢賢治のような爽やかさがある。

過去4年間の歩みだけを見ても、その精神力、集中力、思考力、エネルギーで、世界中の政治家を凌駕している。それは鬼気迫るパワーだ。



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03: 世界のトップ外交

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9月21日には、スーチーはアジア・ソサイエティに出席し演説した。スーチー新政権後、最初の国賓としてミャンマーを訪れたシンガポールのリーシエンロン首相はアセアン10カ国のリーダーになって欲しいと懇願した。中国人客家族出身のこの頭脳明晰な首相は、スーチーの国際的な名声とそのネットワークの活用方法を知っていた。

それを具現化した一つがこのアジア・ソサイエティかもしれない。この協会の創設者はJ.D.ロックフェラーIII世で、1956年アメリカにおけるアジアに関する知識を網羅する目的で設立されたが、現在はNPO団体として活躍している。そのカバーする地域は日本からイランまでと広範囲だ。現在のプレジデントはアメリカ人のジョゼッタ・シーラン女史、世界経済フォーラム(WEF)の副議長も務め、2006年には当時のコフィ・アナン国連事務総長からWFP(世界食糧計画)の執行役員に指名されている。

すなわち、ミャンマー連邦の外務大臣でもあるスーチーは、世界のトップ外交をこなすだけでなく、世界の桧舞台から引っ張りだこなのである。

話は変わるが、このジョゼッタ・シーランをはじめとして世界のトップ外交の中身をご存知だろうか。それは金である。金満国から莫大なカネを引き出すことにある。世界の大企業からカネを引き出すことにある。ビル・ゲーツやジョージ・ソロスなどの金持ち財団から資金を獲得することにある。

環境問題に資金援助すれば、悪いウワサを打ち消し企業のイメチェンにつながるとか、知的な恐喝ゲームでもある。昔ならマフィアやヤクザのあるいは総会屋の専売特許であったが、今ではPhDや弁護士資格で着飾り、金の匂いのするところから、言葉上手に合法的に資金を掠め取る。並の外交官ではできない特殊技能である。だから、トップ外交と言われるのだ。

スーチーのトップ外交では、クラウス・シュワッブ博士-->・ジョゼッタ・シーラン-->コフィ・アナン-->ジョージ・ソロスなどなどが見事に絡み合っている。



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04: 米国とのパートナーシップは英語で

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もう一つ気になっていたことがある。9月16日付日刊英字紙GNLMである。
"歴史的なパートナーシップ"という大見出しが第一面を飾っている。博士号資格を持ち教育学のプロであるアメリカ人の先輩にも教えを乞うた。

スーチーとオバマの入念な会談に続き、米国はすかさず手を打った。それがミャンマーの急激な変化に対応できる両国の平等なパートナーシップである。

スーチーの要望で、オバマはミャンマーに対する制裁を解除したと浮かれているメディアもある。そしてそれに踊らされているビジネスマンもいる。だが、それだけでは森を見て樹を見ていないことになる。

米国務省とミャンマー外務省は未解除の制裁以外に5つのパートナーシップを発表している。その中でも見逃しそうだが、間も無くボディブローのように効いてくると思われるのが"米国の英語戦略"である。ミャンマーでは色んな分野で重要課題を抱えている。だが、外国人責任者が現場でつまづくのがトップから末端までのコミュニケーションの問題である。

米国の凄いところはミャンマー全土を対象に英語教育の絨毯爆撃である。英語教師を育てる平和部隊が間も無くミャンマーにやってくる。それは中途半端ではない。さらに、米国の凄いところは、そニュースに呼応して動きはじめる層がビックリするほど厚いのである。政府機関だけでなく、大会社だけでもない。

旧約聖書の創世記に語られるバベルの塔で、人類は各地でバラバラの言葉を喋るようになった。だが、アメリカ人は神を恐れぬかのようにインターネットを発明し、英米語を統一国際語に格上げしてしまった。ポーランドの眼科医ザメンホフがあれほど苦心して普及させようとした世界共通のエスペラント語は今、絶滅危機の運命にある。



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05: たかが英語、されど英語

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バックナンバーでご覧いただくとお分かりの通り、最初の最初に、ミャンマーの民主化はスーチーの英語能力がなければはじまらなかったと分析した。その考えは今も変わらない。そしてここで米国の英語戦略が加われば民主化の達成はかなり早まるだろう。それはミャンマーの急激な変化に対応するためのものだと、米国政府は謳っている。

このメルマガも、実は、英語に対する敵討ちからはじまった。学生時代、会社勤めを通じて、英語には苦しめられた。江戸の仇をヤンゴンで討とうというわけだ。英語はいまでも自分にとっては敵性語である。たびたび引用する日刊英字新聞GNLM(Global New Light of Myanmar)が唯一の教材だ。いまでも変わらず100チャット(乱暴換算で邦貨10円)、これを毎朝365日続ける。そして何年も続ける。

そのうちに英米でも一流紙・通信社と言われるNYタイムズ、ワシントン・ポスト、FT、ロイター、AFP、共同通信などがスラスラ読めるようになる。ただし電子辞書を片手にだ。

この辺りから、英語の試験に辞書の持ち込みを禁止したり、学校で英和辞書の見方を教えないなど、かなり批判的になってきた。会社員が海外で頼りにするのはコノ辞書だけである。だが、その使い方がよく分からないのである。そういえば、学者先生でも、商社マンでも、 大使館員でも、どうして日本人の話す英語はお粗末なのだろう。ジャパングリッシュは喋れても英語になっていない。

ミャンマー人の英語も同様である。だが、日本人ほどにはオドオドせずに堂々と喋る。
この辺りから、東西南北研究所の真の目的は"英語"、そして"エイゴ"、さらに"えいご"へと潜行していった。そして、どうして日本人の英語はスーチーさんのようにエレガントに喋れないかその原因を解明できた。すべては日本の英語教育がお粗末だったのである。

ミャンマーの青年、子供たちにヒントを与えるワタシの英語は、日本の文部省英語を反面教師としたものである。ミャンマーの子供たちは驚くほど上達する。日本の教育のお粗末さは、英語を敵性語とした大本営に責任がある。だが、陸軍中野学校では外国語の習得を奨励した。そして、丸坊主ではなく長髪もOKとされた。

肝心なことを付け加えると、英語の習得は自国語を操れるようになってからスタートすべきで、小学生から習うなど思考力破壊にしか繋がらない。いま、日本の教育は大本営並みの大罪を犯そうとしている。

一応これで、スーチーの米国関連は幕を閉じたい。




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