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<ミャンマーで今、何が?> Vol.210
2017.2.3

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■激動の2017年

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1月28日の夜行便でヤンゴンから成田に飛んだ。


到着日29日の深夜、つけっぱなしのNHKラジオから、「ヤンゴン国際空港、スーチーの法律顧問、ピストルで射殺」のニュースが飛び込んできた。

テレビもない、スマホもない、WiFiもない環境で、続報は翌朝まで入手できなかった。


30日朝6時、朝刊の配達される時間ではと、コンビニで日経・朝日・東京新聞の朝刊を購入した。

だが、通り一遍の情報でしかなかった。


30日昼、一日遅れでヤンゴンから戻った友人と銀座で待ち合わせした。

スマホで決定的瞬間の写真を何枚か見せてもらった。


空港のタクシー乗り場で、幼い孫を抱いているコーニー氏の後頭部に銃を突きつける犯人が写っている。もう一枚は射殺後と思われる横たわるコーニー氏。


私自身は事件の約24時間前、友人はほんの数時間後に現場近くをウロチョロした筈だ。


その後、NYタイムズ紙とロイター電をネットで覗いた。


Ko Ni氏の年齢を65歳、63歳の違いはあるが、要点は「29日午後5時ごろインドネシア視察から帰国したNLD法律顧問のコーニー氏が、衆人環視の中ヤンゴン空港タクシー乗り場で銃で撃たれ死亡した。コーニー氏は同国少数派のイスラム教徒で高名な弁護士。NLDの憲法改正、スーチーを国家相談役に就任させる法案立案にも携わっていた。警察はマンダレー出身の容疑者U Kyi Lin(53歳)を拘束。タクシー運転手のNay Win(42歳)が巻き添えを食って死亡。」


日系新聞では、反イスラム勢力による犯行との見方もあると記述しているが、スーチーがミャンマーは複雑なんです、と日本の外務大臣に語った通り、単に仏教徒と回教徒の対立と見るのは単純すぎるような気がする。


ラカイン州の暴動・ロヒンジャー問題・民族対立問題調査にしても、元国連事務総長を委員長とするラカイン州調査団、ミエンスエ副大統領を委員長とする調査委員会、国連特使の調査団、および現地入りが可能となったジャーナリストの報告を詳細に読み込むと、外地で訓練を受けた組織的なイスラム教過激派がラカインに侵入して破壊活動を行っている証拠がいくつか挙がっている。


スーチー新政権と、これまでの軍事政権の根本的な違いは、調査団による調査結果をまとまり次第記者会見を通じて、国内外の報道陣に極力報告していることである。流行り言葉となったトランスペアレンシーという「透明性」を実現しようとしていることである。


前の軍事政権は、自分たちに都合の良いニュースは流すが、不利になると口をつぐんできた。

だが、今はラカイン州の状況が徐々に解明され、一部地域ではジャーナリストの取材が許され、また暴動の被害を受けた村々に国際的な援助物資が配達されるようになった。まだ全地域ではない。だが、どの地域までは安全、どの地域の安全が確認されていないという情報が噂ではなしに政府の公式発表として配布されるようになった。


軍事政権のときとは、根本的に政府のコンセプトがまったく異なる。


スーチーがミャンマーは複雑なんですという意味には、今回射殺されたコーニー氏はムスレムの高名な法律学者である、それが何故仏教徒を擁護するNLDに協力するのだという不満もありうる。特に過激派である外部のイスラムが新政権を苦境に落し込むためには、ターゲットをコーニー氏やスーチーに絞っても決しておかしくない。


日本に帰国してから、原田伊織著「明治維新という過ち」を購入した。つい先日ヤンゴンで寄贈された同著者の「官賊と幕臣たち」という本が非常に面白かったからだ。明治維新の幕末の志士たちはほとんどがテロ集団だったという新学説である。


ニュースが飛び込んでくる。それを単純に割り切るのではなく、本当にそうなのかと疑い、何度も疑いのシミュレーションを繰り返すと、ストーンと納得のいくところに落ち着くことがある。


いまのラカイン問題も、白黒の決着を急ぐのではなく、本当に納得のいく結論を自分で見つけたい。

とくに、Dトランプの出現によって、エスタブリッシュされた世界は、その原点に戻って見直すことが求められているようだ。

今は確かに、スピードの時代だが、拙速ほど危ない時代に突入したような気がする。

この情報氾濫の日本で、しばらく考えてみたい。
どうせ人生の最後は墓場なのだから、先を急ぐこともないだろう。


このメルマガは人生死ぬほど退屈という方を対象としております。



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