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<ミャンマーで今、何が?> Vol.213
2017.5.8

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■メルマガ復活 (その3)

 ・01: 日本の皆様へ

 ・02: 基本を見据えたスーチー

 ・03: 問題のロヒンジャー問題

 ・04:軍人部落とのせめぎ合い

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01: 日本の皆様へ

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大型GWはエンジョイされましたか?
銀座の失神男です。まだ懲りずに日本に滞在してます。


失神事件の続きをシツコく書きます。
が、噺の枕としてミャンマー絡みも少し挿入しておきましょう。


今年のミャンマー暦は例年通り10日以上の水祭り大型連休となってます。休日は真っ赤に印刷されるので、4月のカレンダーは迫力があります。

ですが、新政府は突然、公式連休を、水祭り4日+新年正月=合計5日間に短縮しました。確か発表は2月でした。直前だったので、国内は大混乱するやら国民はブーイングの大合唱です。


どうしてだか分かりますか?
今ミャンマーは、特に先進国がウルサイほどのお節介を焼いてくれます。親切な日本国はその最たるものです。お節介とはミャンマーにとっての"外圧"です。


「コンナ長イ休暇ワ、経済ガ停滞スルヨ!!輸出入品ガ港デ滞貨スル!!外国送金ガストップ!!コマル!コマル!」
外圧の大合唱に屈したのが新政府です。だらしないですよネ。発足1年足らずのウブな新政権は、水祭り休暇を5日間に短縮、と突然発表しました。国民こそイイ面の皮です。例年は雨乞いの様相を呈するカンカン照りの水祭り。
が、今年の水祭り最後の二日間は土砂降りの大雨、加えてピカゴロのカミナリ様と、太陽も怒って姿を隠してしまいました。


東西南北研究所のトランプ占いによれば、スーパースター天照大御神(アマテラスオオミノカミ)の偉大なミュージカルが、NYのブロードウェイではなく東洋の一画ミャンマーで再演された、と実に科学的な結論です。


ウブな新政権が悪いのか、余計なお節介の外圧が悪いのか、賢明な読者はどう判断されますか? 


天の邪鬼の当研究所は、4月1日から30日まで4月全部を真っ赤に印刷して、摂氏40度を上回る灼熱の4月に仕事はムリ、一ヶ月間すべてをガゼットホリデーにすると、逆宣言したらどうだろうと私案中でした。短縮ではなく、拡大するのです。ヤンゴンの4月を経験した方なら頭がクラクラする灼熱下での仕事はムリと納得いただけるでしょう。その証拠にミャンマーを奴隷化した大英帝国も、真夏の行政府を涼しげなメイミョウ(現在のピンウールイン)に移しました。


"世界の富を山分けする"ことしか頭にないG8とかG20の首脳たちは、投資してくれと言うからティラワに、チャオピュウに、ダウェイに工場を建ててやったじゃないか、それをなんだ! 水祭りだナンテ抜かしやがって、10日間も休む! 冗談じゃない、働け働け! と外圧をかけます。


先進国は巧妙です。不遜にも自分たちが世界経済を牽引すると先進国ルールを押しつけます。40度を超える熱帯で働け働けと強制します。中国・韓国の衣料工場がイノセントな田舎の乙女たちに仕事を与えて、数世紀遅れの植民地システムを21世紀に再現します。老獪な先進国はエアコンを完備して、中国・韓国よりはマシだろうとミャンマー人労働者を黒人奴隷の如く使役します。本質は何ら変りません。心を揺さぶるアメイジング・グレースでアングロサクソンの子孫たちは後悔を装うが、奴隷船時代の強欲な牙は、今ミャンマーを標的としている。


ドナルド・トランプがなぜ問題なのか?

彼は本場米国においてアメリカン・ドリームを成し遂げたビジネスマンである。その哲学は、勝者を賛美し、敗者を罵倒する。そして勝者になるためには手段を選ばない。破産した物件を安く手に入れては、イチャモンをつけて、これでは再生不可能どころか破産せざるを得ないと脅しをかけて、物件の値下げをさらに迫る。そして、自分はネゴシエーションのプロだと自負する。オレは米国の破産法を徹底的に勉強し、これは大いに役に立ったと公言している。


情けないことに経済人の間、そして哲学を持たぬマスコミの間では、それが大モテである。トランプは弱者(敗者)の涙をもちろん知らない。商道徳の欠片もない男である。「論語と算盤」を著し「道徳経済合一説」という理念を打ち出した渋沢栄一の爪のアカでも煎じて飲ませたいほどの低レベルの男である。下級士族であった渋沢栄一は、商人は利益一辺倒で慾を掻いたら限度がない。そこで仁徳の論語を持ち出し、歯止めを掛けている。


そして明治の国造りの時代に500社以上の産業・工業を興し、それに追加して種々の教育機関、女子育成学校、医療院、貧者の面倒をみる施設などなど・・600以上の事業・機関を興している。しかも渋沢栄一が清々しいのは、それらが軌道にのると、自分は身を引き、自分の親族をその後釜に押し込まなかったことにある。潔いではないか。日本のカースト制度の「士農工商」では、このため賤しくなりがちな「商」を最下層に置いて、貧を貴しとする「士」をトップに置き政道を任せた。もちろん田沼意次のような例外も幾つかあるが、日本独特のシステムである。


蛇足となるが、命の恩人である「聖路加国際病院」の設立にも渋沢栄一が関与していることを、今回飛鳥山の「渋沢史料館」を訪ね、偶然にも知った。


場面は変わる。当然のことながらフロリダのゴルフ場では、渋沢栄一とか日本独特のシステムについてたっぷりとレクチャーしてあげたと想像するが、逆に国有地を格安に入手するトリックを学んで帰ってきた先進国首脳もいる。


だから米国式ビジネスでは敗者(貧者)の面倒をみる必要はない。だが一国の宰相になるには国民の80%~90%を占める敗者救済が必須ではないのだろうか? これがトランプ問題の真髄である。


話を飛躍させたい。

赤道を中心とすると北半球・南半球の熱帯ベルト地帯は、有名なコーヒー生産地と重なる。そして世界でも指折りの貧乏地帯でもある。いくら働いても、貧乏国は豊かにならない。末端に近い焙煎業者とスタバなどのグローバル企業が富の大半を独占するシステムとなっているからだ。フェアトレードなどとキレイゴトを言うが、生産国が豊かになることは絶対にない。


そこで、コーヒー中毒に罹っているG20に対抗して、例えばP20(プアー20カ国)で同盟を組み、各国一ヶ月間の休暇宣言を発表する。ミャンマーのピンウイールイン(旧メイミョウ)ではアラビカ種の生産が盛んで 、同盟国のリーダーを務める資格は充分にある。賢明なスーチーなら中東産油国から、どうしたらコーヒー生産の生産調整を行い、コーヒー市場をコントロールする老獪さを学習するキャパは充分にある。すなわちミャンマーがイニシャティブを取りOCEC(コーヒー輸出国機構)を創設してはどうだろう。


ミャンマーは資源国である。コーヒーだけでなく、ルビーでも、ヒスイでも、チーク材でも、漢方薬でも、レアアースでも、ひょっとしたらウラニュウムでもプルトニュウムでも、(なんせ、このミャンマーでは政商のテーザーが被曝しているとの噂が根強い)、世界市場をコントロールできるだけの埋蔵量を秘している。それをオツムのプアーな軍事政権は自分のフトコロさへ潤えばと叩き売ってきた。これこそ国賊的犯罪行為だが、軍事政権は反体制派のスーチーにそのレッテルを貼ってきた。


スーチーは国賓としてシンガポールを訪れた最近、20年経ったら、ミャンマーは経済的にシンガポールを追い越すとリーシエンロン首相に明言している。内弁慶だった軍事政権時代、自国民に夢を与えるこれほどの勇気ある発言をした将軍はいない。リーシエンロンはスーチーに対してアセアンのリーダーになってくれと、スーチーにぞっこんである。


話が飛びすぎた。
アメリカのトランプも、英国のメイ首相も、中国の習近平も、北朝鮮の金さんも、ミャンマーとは違い日本のGW大型連休に文句などつけない。
日本の皆様!大型連休をタップリと楽しんでいただけましたか? 
これが噺の枕でした。



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02: 基本を見据えたスーチー

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失神男は前回ドキュメンタリー風にグダグダ書きました。
実はこれはスーチーの真似をしたのです。
憲法改正を棚上げしたスーチーは、Transparencyをひとつの柱としました。透明性という意味です。


前の軍事政権は都合の良いことだけ国民に知らせ、都合の悪いことは何一つ語りませんでした。どうして輸出入ルールが突然変更になり、どうしてアノ大臣が失脚し、どうしてコノ大臣が選ばれたのか、知らすべからずで、国民はまったく蚊帳の外でした。


いま手元に資料がないので、ハッキリした日付は省略しますが、今年2月の後半だったと思います。新政権の各省庁が御用新聞と言われる日刊英字紙GNLMに、過去1年間で"何を実行したか"を連日3〜4ページにわたって詳細に発表しました。例えば今日は外務省、明日は情報省という具合です。これは国家の連邦政府だけでなく、各州の行政機関も同様です。暴動が起こったと言われるラカイン州も例外ではありません。ラカイン州政府も過去一年間何をやったかを御用新聞紙上で発表させられた。この新政権の大キャンペーンは、失神男がヤンゴンを出発した4月18日も続いていました。


スーチーは民主主義の欠点を認識しながら、民主主義の基本である"透明性=公開"を徹底的に実行しているということは、理解いただけただろうか。軍事政権時代には考えられなかった大変革である。それを日本のゴシップ新聞軍団は、スーチーは過去一年間外遊ばかりで国内では何もやってこなかった。経済発展も停滞したままだ。スーチーは評判が悪い。政治の経験不足が露呈した。これがスーチーの限度だ。
などなど、昨日今日着任したばかりのビジネスマンが、和食レストランで講釈してくれます。ありがたいことです。これらの寸評がヤンゴンの日本人部落で広がっていきます。噂のネットワークはミャンマー人の十八番だった。それを今、ヤンゴンの日本人部落がマネをしている。



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03: 問題のロヒンジャー問題

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たぶん4月の初めだったと思う。
日刊英字紙の第一面にBBC記者とスーチーのインタビュー内容が全文掲載された。質問は多岐にわたったが、面白いのはロヒンジャーの件である。BBC記者は「スーチーがレポーターの質問から逃げている」との風評で口火を切る。だが、スーチーは逃げない。BBC記者にファーストネームで呼びかけた。この部分のニュアンスは、姉貴が若いジャーナリストに諭す感覚だが、実際の相手はBBCの熟練記者である。ここではスーチーの貫禄を示したと読むべきだ。


スーチーは背筋を伸ばして応える。
「レポーターがマイクを突き付け求めるのは、スーチーは過激な仏教徒を支持するのか、あるいは人権擁護のチャンピオンとしてイスラム教徒のロヒンジャーを支持するのか、態度を明確にせよという二者択一である。どちらに味方しても、他方から攻撃されるのは火を見るよりも明らかである。問題はそんなに単純ではない。ミャンマーには136の民族が共存している。中には武器を手にミャンマー政府軍に不信感を抱くグループもいる。だからこそ、国内すべての統一平和協定を最優先の目標に掲げている」と説明する。


ラカイン州問題を解決するために、スーチーは国連の元事務総長コフィ・アナンに協力を求め、彼を調査委員会の委員長に指名した。彼は国際紛争解決のプロである。ここではノーベル平和賞仲間としてのネットワークが生きている。コフィ・アナンは母国ガーナ人の前妻を亡くした後、スウェーデンの名家ワレンベリ家の令嬢を後妻に娶った。ワレンベリ家はいくつも銀行や海運会社を経営し、外交官の叔父はナチスに追われたユダヤ人のためにスウェーデンビザを大量に発行し、杉浦千畝に似た評価を受けている。親族から3名のノーベル賞選定委員を輩出している。私的なことになるが、ワタシはこの令嬢の従兄弟と東京の本社で数ヶ月席を並べたことがある。


コフィ・アナンは優秀な私設調査団を引き連れ、何回か現地入りして、丹念なレポートと勧告のオプションを新政権に提出し、オープンな記者会見も開いている。そしてこの現地入りは今後も続けられる。


これだけではない。
上級副大統領であるミエンスエをラカイン州問題特別調査委員会の委員長に指名し、こちらも独自に調査団を組織し、何度も現地入りしている。同様にその都度、調査結果を内外のマスコミに発表している。


ではコフィ・アナンとミエンスエ調査団の違いがお分かりだろうか?
コフィ・アナンは民族紛争、宗教紛争の問題に関しては国連トップの立場としていくつも取り組んできた。

ミエンスエは上級副大統領に就任する前は、ミャンマー連邦ではなく、ヤンゴン地方管区の首相であった。それでは、その前のミエンスエの出自をご存知だろうか?
彼はタンシュエ、シュエマン、に次ぐ軍事政権時代の第3位に座した将軍である。バリバリの保守強硬派である。しかも、ミャンマー連邦の大統領にマサカが発生すれば、ミャンマー憲法上、上級副大統領であるミエンスエが大統領の座に就くことになっている。


今の新政権がどれほど危ういバランスの上に成り立っているか、理解いただけるだろうか?
スーチーの欠点をほじくり返して、ミャンマーの経済発展が停滞すると、金切り声を上げるのは結構。だが、その結果はどうなるのであろう? 賢明な読者に教えて欲しい。



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04: 軍人部落とのせめぎ合い

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日本の大手新聞までが、スーチーは軍事政権と妥協した、と簡単に片付けている。
本当にその一言で片付けられる問題だろうか?


スーチーは全ての大臣ポストを新内閣のポートフォリオに組み込むよう、軍事政権の強硬派とヤリ合った。だが、国防大臣、情報局を総括する内務大臣、国境問題大臣の3ポストだけは絶対に渡せないと軍部は主張した。これ以上の要求は1990年の総選挙同様、軍部が総選挙の結果を無視して、政権の譲渡を拒否するギリギリの線であった。日本の新聞はこれを軍部との妥協という。


これらの3ポストはティンチョウ大統領が手をつけられない省庁である。
軍部のゴリ押しはこれだけではない。
陸海空の三軍を統括する最高司令官のアウンミンライン上級将軍は昨年60歳になった。軍の規則では定年退職の年齢である。だが今は軍事政権から民主化への過渡期であるという言語不明瞭な説明で、かれの定年をアト10年伸ばした。スーチーには憲法の改正など絶対に認めないと封じ手を使いながらである。


話は変わる。

2016年7月19日。アウンサン将軍を含む9名がヤンゴン下町の旧総督府で暗殺された記念日で、国民の祝日となっている。シュエダゴンパゴダ北口の殉難者霊廟では国父以下の死を悼む行事が盛大に行われた。スーチーは自宅にアウンミンラインを招き、父親アウンサンの法要を行った。軍事政権のトップがスーチーの自宅を訪れるなど、これまでに絶対なかったことである。


その法要を執り行ったミャンマー仏教界の長老がその席で二人に語った。
「ミャンマー独立の父であるアウンサン将軍は、ミャンマー国軍の生みの親であり、スーチーの父親でもある。だから二人はブラザーでありシスターである。」
その瞬間、スーチーが口を開いた。「ミャンマーのしきたりでは、弟は年長者である姉の言うことを聞くものです」とキッパリと言った。地元紙では、その時、三軍の最高司令官はただニヤニヤと意味のない笑いで答えたという。


これを、スーチーは軍部と妥協したという説明で日本の読者は納得したのだろうか?


イケナイ、イケナイ、失神男の話を書く余裕がなくなってしまった。
本当にいい加減なメルマガである。
講読料は無料ということでご勘弁いただきたい。


失神男か失禁男か忘れたが、その結末は次回に!!
噺の枕だけで楽屋に引っ込むとは情けない。




東西南北研究所





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