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<ミャンマーで今、何が?> Vol.223
2017.7.7

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■軍隊スタイルを本格的に解剖

 ・01: 大農園の広さを思い知る

 ・02: 三番手のミンアウンライン

 ・03: 軍用機失踪事件

 ・04: ミンアウンラインが記者発表

 ・05: MBAのケーススタディとして分析する

 ・06: その後の進展

 ・07: その他のミャンマーで今、何が?

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01: 大農園の広さを思い知る

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そして人間のチッポケさをタップリ学ばせてもらった。

NJさん寄贈の「字の大きな世界地図帳」は座右の書で、大いに助かっている。

ミャンマーは日本の国土の1.8倍あるとは、常套文句の引用文。だが、シャン州一つで北海道の2倍とはあまり知られていない。

ミャンマーは米国テキサス州とほぼ同面積は常套文句。そのアメリカの1.8倍あるのがロシアという世界最大の国である。この比較を皮膚感覚で理解しないと、世界とは付き合っていけない。

この辺りの理解度はスーチーは抜群だが、日本の議員さんの理解度はどの程度なのだろう。
などと、どうでも良いことをグタグタ書くのがこのメルマガの出だしである。

軍事政権時代、路上喫茶でスーチーの"ス"の字を言おうものなら、ブタ箱入りの覚悟が必要だった。だからこのメルマガも、秘密警察がウンザリする記事で前半を満たし、肝心なことは後ろに回すことにしている。読者は前半を飛ばして、後半から読み始めて頂きたい。

ではウンザリから始めよう。
幹線道路を外れ、ベートーベンの田園風景が続く田舎道を快適に飛ばす。ここまでの舗装は完璧だ。ある竹藪の角を曲がると 、ここからはダートというよりもマディーな世界が始まる。雨が降っているので、赤土の上を水が走る。しかもオフロードは平坦ではない。四輪駆動は荒馬のように上下して、上り下りではスライド・腰振りが始まる。

向こうからやってくるバイクは気の毒なほど道端に寄せ、通過を待っていてくれる。
頭で荷物を運ぶ女性も、バイクのお兄さんも、雨に打たれて、みな裸足だ。スリッパ・サンダルだと確実に泥濘に盗られてしまう。

小さな集落に近付いた。このゴム大農園を手伝うスタッフたちの家族だという。
巨漢の友人は両手を大きく広げて、ここから向こうが自分の領地と説明してくれた。はるか地平線に小山が延々と続いている。あすこまでが1,000エーカーだとピンときた。それにしても途方もなく広大だ。ワタシの勘は常に外れる。あの小山が所有地の中心だという。と言うことは、あと半分が地平線の向こうに・・。日本人脳には1,000エーカーのイメージは未経験だ。人生の黄昏で、初めてインプットした。
テキサス出身のGWブッシュやプーチンは常識として、こんなことは当然知っている。

ゴミゴミとした東京を抜け出し、晴海埠頭からフェリーで苫小牧に、そこでバイクを降ろし、網走から小樽まで北海道を横断したことがある。その時、北海道ってデッカイなーと感激した。
ミャンマーを出たことがないこの男と話していると、自分がどれほどチッポケな存在かタップリと味わされた。ワタシの常識はペリーの黒船来航でオタオタした人々と変わりない。

この雨季のシーズン、2週間もするとドロ道は状況が変わる。今日は20分ほど奥の民家まで四輪駆動で行けそうだとの情報だ。
奥の民家に四輪駆動を預け、用意してくれた新品のヨット用ゴム長靴に履き替える。ここからバイク・ツアーが開始する。ドライバーは慣れているだけに慎重だ。タンデム・ライディングに身を任す。荒馬を乗りこなす要領で上り下りを繰り返す。

ゴム農園の薄暗いワインディング・ロードがいつまでも続く。ゴムの木立ちが途切れると雨上がりの空が見えてくる。だが両脇はつる草の絡んだ背の高い雑草が生い繁り、ツワモノでも足を踏み入れるのを躊躇する。などと芭蕉を頭に、ビルマに派遣された日本兵を偲んだ。

突然、目の前が開け、幻想的なアリスのワンダーランドが出現した。ブリック2階建てのチムニーまで付いたバンガローである。ここが最終目的地。バンガローの内部、そして外回りを、一通り見て廻って、ワタシの勝手な観察調査が始まる。

バンガロー内部は地震または地盤沈下で、壁やフロアのタイルがヒビ割れしている。水洗トイレとシャワー室は別々に設けられ、キッチンにも水道が引かれプロパンで料理もできる。最もありがたいのが、電気が引かれていることだ。点在するスタッフ家庭には電気を引いてある。
問題はヤブ蚊、ハエの類が気にかかる。トイレには巨大なクモが潜んでいた。ベッドに仕掛けられた大きな毒グモが裸の胸を這うショーン・コネリーの映画を思い出す。

だが、燻蒸噴霧を何度か実行し、軍用蚊帳生地で窓枠をはめ込めば、長期戦には持ちこたえられる。
そこで大型クッキー缶いっぱいに仕込んだ秘密兵器を取り出し、"Qガーデン講習会"を突然開始した。
高木、大木の下で拾い集めた種子、果実を食べるたびに洗い乾燥させた休眠中の種子、変わった或いは美しい草花の種子、それらがワタシの秘密兵器である。中には友人から入手した綿花の種子(コットンシード)もある。多種多様な種子を無数に収集した。それらを一緒くたに詰めてある。

猫の額よりも広い敷地にワタシの秘密兵器を疎らに植えれば、10日もすれば土壌に適した植物が芽を出すはずだ。これはQガーデンで実験済み。さらに環境に適していればサバイバルしていくはずだ。それが熱帯雨林気候の掟だ。ありがたいことに近くを小川が流れているし、庭園ではビニールホースが何本も、のたうちまわっている。自然を利用した溜池もあるし、大きな水槽も設けられている。水の心配はない。

強烈な雑草が繁茂して、この雨季のシーズン、小川や水源を覆い隠している。だから逆張りのQガーデン屁理屈は、ミャンマーには中国製の化学肥料など不要と主張したい。ありがたいことに、ワタシは偉大な農夫たちに囲まれている。すべてこのメルマガが縁で、知り合った知的な凄い方たちばかりである。マングローブの専門家、コンニャクのプロ、ランドスケープの学者先生、籾殻を利用してのオーガニックな肥料作り、麦わらを使用してのかまど作り、竹で編んだ養生花壇作りも教えてもらった。

それらのノウハウを活用させてもらって、ジャングルと闘う雑草マルチング農法が可能か、チャレンジしてみたい。1,000エーカー大農園での土葬に憧れ夢見ていたが、少しばかり欲が出てきた。白衣の天使にすがって、あと4、5年の人生延長が可能か交渉してみたい。今ミャンマーは、WiFi天国である。そこでヤブ蚊に食われながらのオンライン・ワイルド情報発信も悪くない。毛糸に包まれたような巨大な毛虫がチッポケなアリ軍団と奮闘しているのも見た。陽が沈めば、友人たちが得意のギターを奏でる。ウィスキーを啜りながら、スキャットも悪くない。

いつも忘れるのだが、浜口庫之助の♬ダンダンダダン♩ズビダダン♬のCDを今度は忘れずに持参したい。彼なら簡単にこの曲をコピーして、弾き語ってくれる。

この広いバンガロー周辺だけでも、小指ほどのパインアップルのベイビーが幾つも芽生え、Soursop(バンレイシ=糖尿病に効くとか?)、スターフルーツ、竹の子、レモンの木、ライムの木、などなどの幼芽もワイルドに顔を覗かせている。と言うことは、枝もたわわに実った果実が、収穫もせず、自然に落下して、芽生える。この自然の法則ほど感動するものはない。

浅はかだった。ここは子供の時に見たデズニーの「自然は生きている」の世界そのものである。Qガーデンの小賢しいシードバンク構想が吹っ飛んでしまうほどの自然の威力である。フランス式庭園とか日本庭園には、なぜかわざとらしさが感じられる。"おもてなし"も同様である。ワタシはむしろイギリス風ガーデンのワイルドさに惹かれる。それはエリートだけでない多種多様な雑種を包容するコンセプトがあるとみた。それがまたイギリスの老獪さに通じる。

夢は膨らむ。

用意してくれたランチを突きながら、思いつきの夢を話すと、意外な共通点が彼との間に見出された。日本から生きて帰ればの話だが、自由な報告書・計画書をワタシのアイデアで提出する約束もした。
帰宅の道中でも話は弾んだ。日本滞在中に情報を集めよう。メルマガ・ネットワークの先生たちにも、又しても教えを乞わねばならない。
夢は荒野を駆け巡る。
精密検査の合間に、夢の続きをお届けしたい。



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02: 三番手のミンアウンライン

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スーチー寺子屋学級における三番手の分析にやっと辿り着けた。
ミンアウンラインは1956年生まれである。スーチーより11歳年少。
繰り返すとスーチーはタンシュエより一回り年少なので、ミンアウンラインはタンシュエより二回りも年下ということになる。これだけ歳の差があれば、寝首をかかれる心配はない、とタンシュエは判断したのであろう。

最高司令官とは言え、タンシュエからすれば、洟垂れ小僧。スーチーからしてもガキ扱いである。
ミャンマーでは年齢差は非常に大切である。一年違いでも体育会系の先輩・後輩の厳しさがある。
これを無視すると、ミャンマー世界では受け容れられない。

欧米の大学で博士課程を修了した同年代の友人がいる。
学生が教授をファーストネームで呼ぶのに、このミャンマー人はショックを受け、その感情は卒業するまで続いたという。

この感情が分かるが故に、スーチーは135の他民族の指導者たちをリスペクトし、その任をコナセルのであろう。
スーチーは彼女が目指す民主主義の基本をゼロからミンアウンラインに教育している最中である。
ラカイン州の武装勢力鎮圧では、軍事政権スタイルでまだまだ粗野な面が露出するようだが、それでも作戦行動の一部始終を、大統領府と国家相談役執務室に報告させ、記者会見を開いて国内外のメディアにオープンに発表させる、いわゆる"透明性のある"軍隊に改造させる努力を行い、ミンアウンラインが、そして軍隊組織が徐々にその方向に動き始めた。

シュエマンとミエンスエが変われば、はるかに後輩のミンアウンラインも変わる。
体育会系に似た組織を利用してのスーチー作戦である。
それだけではない。スーチーはタンシュエの身の安全と引き換えに葵の御紋章を得ている。
三軍の最高司令官でも従わざるをえない。スーチーはひょっとして、水戸黄門のフアンかもしれない。

だがこの次世代将軍は、誇り高き民族の気性で、人前では滑稽なほど国軍最高司令官らしく振舞っている。
この辺りのアクセルとブレーキを踏み分けるスーチーの駆け引きは見事なものだ。だがオートマチック世代のミンアウンラインには、その機微がまだ分からない。

老獪なスーチーがタンシュエと約束したことは、ソフトランディングな民主化である。

ミエンスエには上級副大統領としての服務規定に従う義務がある。本来はティンチョウ大統領の補佐代行が職務である。スーチーは国家相談役として、ミエンスエには特別任務を課した。それがラカイン州問題特別調査委員会委員長である。国際的な注目と監視が強まる中でスーチーは責任を丸投げすることは決してしない。

国家相談役の肩書きで重要委員会には必ず同席しミエンスエを見護る。しかも似たような民族紛争、強制疎開、国境問題、国際係争に明かるい海外のエキスパートをミエンスエに紹介し、必要があれば彼らの意見を聴取させている。だから今ミエンスエは、単にミャンマー北西部片田舎の問題を担当するのではなく、国際的な共同作業で難問を処理している実感を得ているはずだ。

これら海外のエキスパートは、北欧の外交官であったり、国連の経験者など、とびきりの連中で、すべてスーチー個人のネットワークである。だから軍部のトップが、いくら強がりを言ってもスーチーの人脈には舌をまくはずである。

だからシュエマン、ミエンスエまではスーチーも手応えを感じている。
問題は新人類のミンアウンラインである。



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03: 軍用機失踪事件

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ミンアウンラインの能力、性向、限度などを多角的に分析するため、軍用機失踪事件をケース・スタディとして扱ってみたい。6月7日の事件で未解決だから、このメルマガの趣旨「ミャンマーの今」に合致する。

概略をまず説明する。
軍当局によれば、108名の乗客を乗せた軍用機が、タニンタリ州メイク(旧マグイ)を6月7日01:06pmヤンゴンに向け飛び立った。海岸線の飛行場に立ち寄りながらの行程である。離陸29分後、ダウェイ(旧タボイ)西方約70kmのアンダマン海上、高度18,000フィートでメイク飛行場監視塔と消息を絶った。軍用機には将校35名、乗務員14名、子供15名、成人民間人58名が搭乗していた。

この機種は2016年3月に購入した中国製Y-8-200F ターボプロップ輸送機で、購入時の合計飛行時間は809時間、最大積載可能人員は200名となっている。

コックピットの人員構成は、飛行実績3,162時間の機長、3,161時間の一等co-pilot、2,403時間の二等co-pilot三名の合計飛行時間ほぼ9,000時間の経験豊富な飛行士たちで、離陸時の天候は普通、視界は良好で、2.4トンの貨物を積載していた。

午後2時、海軍から4隻、空軍から2機が同海域での救助作業に向かい、作業は日没まで続けられた。

以上が軍当局の発表で、翌6月8日のGNLM紙9ページに初出の情報である。



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04: ミンアウンラインが記者発表

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巷では、どうせ中国製のオンボロ機を買わされた。軍用機だから、お偉いさんの孫たちでもコックピットに座らせ、イタズラが過ぎて墜落したとの勝手なウワサが飛び交っていた。

そんな中、6月11日GNLM紙第一面に、"国軍最高司令官が軍用機墜落に関し最初のコメント"と題して、事件3日後に行ったミンアウンラインのネイピード指令本部における記者発表を掲載した。

スーチーの指導よろしく、国軍も開けた透明性の記者発表かと大いに期待した。
だが記者発表の内容は当研究所の期待を大きく裏切るものであった。

ミンアウンラインの話は次の通りである。

すでに承知の軍用機墜落事故に関連して、海軍は、33遺体、遭難機からと思われる車輪1個、ライフジャケット2個、衣服とバッグ数個を回収した。そして悲劇に遭難した遺族のために義捐金の協力を求めた。またミャンマーの回復努力に支援を申し出た国は、中国をはじめ幾つかあるが、今のところ何一つ受け取っていない。さらに将軍は、軍人家族を気遣う市民からの9億9千万チャットの寄金は遺族に支払われると語った。又インターネット上で遺族の感情を傷付ける複数のレポートがあることを非難した。そして事故発生時には巨大な雲海が発生していたと述べた。

これが国軍最高司令官のスピーチの骨子である。



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05: MBAのケーススタディとして分析する

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アナタはどう分析しますか?
スーチーならば、まずこう考えるだろう。
将軍ならば、多角的に問題を捉えねばならない。そして相手(敵戦力)のことまで思いを馳せねばならない。そういう意味で、このスピーチは完全に失格である。

民間人58名が搭乗しているが、これは軍用機なので、特別なコネがあって搭乗できたのであろう。すなわち122名全員が何らかの軍関係者とみて良い。
もちろん遭難者の人命は非常に尊い。だが国民の命を虫けらのように抹殺してきた国軍の最高責任者が、軍関係者の犠牲者のみについて、このような募金を呼びかけるのは、これまでの軍人意識丸出しで21世紀の民主主義国家の軍隊には相応しくない。

最高責任者の将軍であれば、同様の事故が二度と起きない対策を講じるべきである。軍だけの所有物ではない国民の財産でもある貴重な人材と軍用機を一瞬にして海の藻屑とした責任は重大だ。離陸時の天候は普通で、視界良好と発表しながら、事故の発生したわずか29分後に巨大な雲海の発生に遭遇している。気象観測に甘さはなかったのか? 設定飛行航路に問題はなかったのか? 軍部としてはどのような安全飛行運輸規定を設けているのか? その点の調査解明は重要である。そして最も重要なことは二度と同様の事故を起こさないための、軍用機の安全飛行運輸規定を作成することである。

インターネットでどのような記事が流れたか不明だが、国軍に対する国民の感情は決してシンプルではなく、それこそスーチーの言う「複雑なんです」がこの国には渦巻いている。
将軍のトップに君臨するならば、21世紀の国軍は国民と共に歩むべきで、歴史を含む国民感情に充分配慮した上で発言・行動すべきである。
その点で、最高責任者の支援寄金呼びかけはミャンマーの慣習に則っているとは言え、将軍としてあまりにも軽率で、バランスを欠いていたように思われる。



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06: その後の進展

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そして、これが国軍が作り上げてきた仕来りで慣習なのだろう。
ミンアウンラインの呼びかけに応じて、寄金が続々と集まってきた。強制的な威力があるのだろうか?GNLM紙には国防大臣(中将)に対する寄金贈呈式の写真が連日掲載されている。

軍部に対しては、疑惑の目で見る習慣なので、上記の感想を抱いた。だが、その後の報道によれば、ティンチョウ大統領が、副大統領を筆頭に国会議長、検事総長、各省現職大臣などに指示して、遺族に懇ろな配慮を呼びかけた。その影響も大きいのだろう。各種政府関係省庁から多額の献金が上記の写真報道である。うがった見方をすれば、大統領の呼び掛けもスーチーの差し金かもしれない。

これと同時に民間企業、ビジネス協会、慈善団体なども多額の献金を始めた。
文化人類学的に見ると、欧米ではこのような災難事故には花束が所狭しと捧げられる。日本では、冠婚葬祭といえば、何といっても現金である。そういう点ではミャンマーとは東洋つながりで一脈通じるものがある。

続いて、遭難遺体、機体の回収作業を見てみよう。
最初は生存者の発見に全力を尽くしたが叶わず、2、3日後には作戦を遺体と機体部分の回収に切り替えた。遺体と同時にバラバラになった機体部分が回収されていく。
アンダマン海には大小の島々が連なる。島々の漁民たちが底引き網などで協力する。島のダイバーも参加する。海岸線の漁民も加わる。これらは徴用されたのかどうかは不明だが、彼らの国民性は得てして親切だ。先進国の見て見ないフリをする芸当は、まだ習得していない。

当然のことながら、海軍は広い海域にかなりの艦船を投入し、空軍は捜索機にヘリコプター2機を加えて捜索を続けている。そして6月18日には、ついにブラックボックス(CVR)の回収に成功し、この日までに収容した遺体は92体となった。

旅客機には義務付けられているが、軍用機にCVRを採用するのは少数派と聞いていたので、ミャンマー空軍のしかも中国製軍用機なら、頭からCVRなど無いと決めつけていたが、これはシツレイした。色眼鏡の偏見ほど怖いものはない。自戒! 自戒!である。

調べてみると、通常ブラックボックスとは事故直前までの、管制塔との応答を含め、コックピット内での音声会話を記録する役目が一つ、もう一つは飛行行程の電子信号記録である。この二つを一体として格納したケースで、衝突の衝撃を軽減するために、通常は尾翼に収納されている。なお、事故後の発見を容易にするため、黒ではなくオレンジ色だそうだ。CVRとはコックピット・ボイス・レコーダーの略語。
実は、このCVRの解析進展を見守っているが、7月7日の段階ではまだ発表されていない。

最後に、7月4日付のGNLM紙第7面記事をお伝えしておこう。タイトルは「Y-8機激突の合同調査委員会開催」。ミンアウンラインがネイピードの軍指令本部に陸海空軍各担当責任者を招集し、それぞれ進捗状況を発表させた。しかもメディア公開の発表である。

まだまだ柔軟性には乏しいミンアウンラインではあるが、隠蔽体質の強かった軍部がこれほどまでに調査状況をオープンにするようになったのも、当研究所はスーチーの手柄と見る。しかもミンアウンラインが最初に謝意を表明するようになった。

「この救援作業に参加してくれた全ての人たちの協調体制があったからこそ、この短期間にかなりの成果をあげることができた。漁船を含むタニンタリ地区の地元の人たちが心からの手助けをしてくれ、全国の人たちが犠牲者の遺族に多大の寄金を寄せてくれた。この事故で亡くなった人命は国家の損失である。捜索活動に協力し海中で死亡したウ・ソーナウンの犠牲は、心痛の極みである。」

今は強力火器よりも、人を動かす言論の時代である。ミンアウンラインもやればできるではないか。まだまだ未熟で、新人類ではあるが、スーチーの寺子屋教室で学べば、立派な司令官に脱皮する可能性はある。頑張ってほしい。

そのあと、准将、少将、中将という大将クラスの責任者が、責任分野における発表を行っている。その中で気付いたのは、参加してくれた26隻の漁船の会社、オーナーに感謝するなど、配慮のあとが見られる。国民に愛される軍隊には程遠いが、その萌芽は見られる。

文句をつければ、6月18日に回収したブラックボックスの解明状況について触れられていないことである。この辺りを急ぎ、発表しないと、軍にとって不都合な情報を隠しているとウワサが発生する危惧がある。だが東西南北研究所の意見としては、前途遼遠ではあるが、スーチーのミンアウンライン教育もスローではあるが、功を奏していると判断する。


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07: その他のミャンマーで今、何が?

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来週7月19日(水)は殉難者の日で、今年はアウンサン将軍が暗殺されて70周年となる。
副大統領のミエンスエは、独立を目前にして凶弾に倒れた英雄たちに感謝を捧げる式典の中央委員会パトロンでもある。目下超多忙である。この記念日は将軍が暗殺された"旧総督府"と、将軍が倹しい最後の人生を過ごした"アウンサン将軍博物館"が大々的に一般公開される。

ミエンスエはシュダゴンパゴダ北口にある"殉難者の廟"と"アウンサン将軍博物館"を訪れ、それぞれの式典準備状況をつぶさに視察した。

タンシュエ時代は、スーチーとアウンサン将軍が接近することを恐れるあまり、国軍生みの親であるアウンサン将軍の功績を異常なまでに無視し、関連施設はそれこそ、"夏草やつわものどもが夢のあと"であった。今、それらがミエンスエの陣頭指揮で大掛かりな化粧直し中である。

これからはスーチーとアウンサン将軍の新たなシナジー効果を期待したい。どんなに非難中傷を受けようとも、今のミャンマーをまとめ上げられるのは歴史の偶然が生み出したこのスーチーしかいないのだから。

そしてマンダレーでは、椅子に座ったミャンマー最大のアウンサン将軍銅像が制作され、マンダラ・タゴン公園に据えられるという。

例の軍帽を被ったアウンサン将軍の白黒写真と共に、将軍の歴史的な演説名文句がGNLM紙に不定期で掲載されるようになった。

スーチーを訪れる海外からの要人もひっきりなしである。

行き脚のついた50万トンのタンカーが止まり、本来のコースに戻り始めたら、この国の将来は有望だ。だが、それを阻止しようとする武装グループや極右仏教徒の動きもある。
そしてそれらにタダ乗りするチープなマスコミもある。
極右に対抗する正統派の仏教集団(サンガ)の活動も賑やかになってきた。これも特集したらおもしろい動きが見えてくるかもしれない。

書きたいことは山ほどあるが、そろそろ白衣の天使とのランデブー時間だ。
生きていたら、またお会いしましょう。


東西南北研究所





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