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<ミャンマーで今、何が?> Vol.236
2017.12.26

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■長〜いロング・グッバーイでした

 ・01: 長期休刊をお詫びします

 ・02: 人生イロイロ

 ・03: ラカインって、どこにあるの?

 ・04: Dr. Pe Myintをご存知だろうか?

 ・05: ミャンマーの歴史

 ・06: ARSAの創設者で指導者であるAta Ullahをご存知だろうか?

 ・07: スーチーが解決すべき問題は?

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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01: 長期休刊をお詫びします

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日本に長期滞在してました。

ミャンマービザが不首尾に終わり、次回又挑戦です。

スマホ&パソコン音痴のため、日本ではメルマガ発信できず、ご迷惑お掛けしました。
とにかく早朝5°Cの東京近郊から32°Cのヤンゴンへ戻りました。

帰宅しても雑用に手間取り、日刊英字紙GNLMも溜まりに溜まってしまいました。
地元の友人にも不義理して、部屋に閉じこもり、丹念に1日分づつ熟読しています。
これが結構面白く、その作業は今も続いてます。
飽きると日本から持参した雑多な本を、近くの路上喫茶か冷房の効いた喫茶店に持ち込み読みふけっています。

古い話になりますが、政府のマウスピース(御用新聞)と揶揄されたGNLM紙のトップ経営陣に、共同通信社から日本人社長が送り込まれ、スーチーの透明化を標榜する民主化政策もジワリと効果を現してきたようです。GNLM紙も集中して読み込むと読み手のある記事が盛り沢山です。

テーマごとに、行きつ戻りつの追っかけをやってます。ミャンマーの今がかなりダイナミックになっているようです。

TVは基本的に見ませんが、国営のMRTVにも英国BBCからトップ経営陣が送り込まれ、新聞だけでなくTVの放送スタイルもガラリと変わったようです。軍事政権時代、TVラジオを通じてタンシュエの声を聞いた国民は一人もいない筈です。国軍の日に軍政府トップの演説ビデオは流れても、スピーチライターが練った原稿が翌日の御用新聞に載るのが常でした。今は違います。大統領でも、副大統領でも、生の声が聞こえてきます。声によって人柄までが推測できます。

これこそ新政権の唱えるトランスペアレンシー(透明化)でしょう。

スーチーが関与できない国軍勢力下の三つの重要ポストですら、アカウンタビリティと言って、頻繁に記者会見を開き説明に大わらわです。

言論の自由が浸透してくると、勉強不足のマスコミも目立ちます。先進国のイエロー・ジャーナルを見習い、稚拙な質問で、一般大衆の愚民化に大いに寄与しているようです。その典型的な槍玉がラカイン問題で、ロヒンギャのようです。

このメルマガで何度も取り上げましたが、再びそこにスポットライトを当てたいと思います。



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02: 人生イロイロ

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今回日本を訪ね、ミャンマーに長期間滞在した何人かの知人とも連絡を取ったが、彼らのミャンマー理解が、余りにも通り一遍で、本当にガッカリしてしまった。

彼らはミャンマーに何度も足を運び、何を見てきたのだろうか?

ミャンマー歴を誇らしげに語り、ミャンマー概観を聞かせてくれるが、日本の報道機関の受け売りでしかない。

だが、それはアナタのことではない。

中には、鋭く核心を突き、目からウロコの分析を披露してくれる知人もいる。
人生イロイロである。

悲観することもなければ、楽観視することもない。



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03: ラカインって、どこにあるの?

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ホンのチョイ前まで、ミャンマーが地球のどこにあるか知らないのが、世界の常識だった。
東南アジアを拡大した白地図で、正確に指摘できるのは、相当のマニアだろう。
だから、ラカイン州がどこにあるか、知らないのが当たり前である。

それならば、世界地図を用意した上で、ラカインに飛び込んでみよう。
と言っても、ラカイン州を拡大した詳細な地図はなかなか見当たらない。
そこで頼りになるのがGoogleアースである。その精度もかなり緻密になってきた。

ミャンマーの国境は、北・東・南は山岳地帯か巨大な川で区切られている。だが、西側はベンガル湾に沿って長い海岸線が続く。その海岸線の北端に位置するのがラカイン州である。ミャンマー全体から見ると、北西部の州となる。

ミャンマーの国境・ 州境はトランプさんの国のように直線で区切ってない。あくまでも天然の地形で区切られている。例えばミャンマーとバングラの国境は271kmで、そのうち150kmは峻険な山岳地帯となっている。単純なトランプ国家には理解しにくいところだろう。
造山運動も大河川も自然の作品だから、クネクネと大きく蛇行している。決して一直線ではない。そこがスーチーの言う複雑な原点である。 

ラカイン州の旧名はアラカン、州都のシットウェイはアキャブと呼ばれた。
ついでに時代を第二次世界大戦に戻そう。昭和18年とは1943年5月12日のことである。
アキャブ西北90kmの海上。敵機を追跡していた加藤隼戦闘隊は、敵機に翼を接するまでに肉薄、そして必殺の一連射を試みた。見事に敵機は翼を傾けて海上に落下していった。


が、その直後、隊長・加藤建夫中佐の機体右翼から発火、炎は見る間に翼を包んだ。陸地は近いが、そこは敵陣地である。隊員の見守る中、200メートルの高度でクルリと反転、機種を垂直に立てて、海中に突っ込んで行ったという。享年39歳。



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04: Dr. Pe Myintをご存知だろうか?

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ミャンマーでは、今、大忙しの連邦政府情報省大臣である。

ラカイン州タンドウェイの高校、ヤンゴンの薬科大学を卒業、バンコクでジャーナリスト学を学んだ。ミャンマー記者協会の副会長も務め、40冊以上の作品を出版した高名な作家でもある。1995年には国民文学賞も受賞している。そして2016年3月24日に新政府の情報大臣に就任した。

新聞・TVラジオ・映画・書籍・印刷などはすべて情報省の管轄下にある。

マスコミはラカイン州問題の真実を充分に伝えていないとDr. Pe Myintは吠えて、外国人特派員を含めて大勢のヤンゴン在のジャーナリストを連れてシットウェイに飛び、そこから軍用ヘリコプターに乗り換え、更に最北西部のマウンドウに降り立った。


自分たちの目で見て、自分たちの言葉で村人に取材しろと言うわけだ。外国人が巻き舌の英語で質問しても通じる訳がない。ビルマ語ですら通じないのだから。ミャンマー国内にいる135の少数民族が話す言葉はすべてミャンマー語である。ところが、この辺り一帯にはミャンマー語ではない、外国語であるベンガリ語を話す民族が多数住んでいる。

さぁー困った。マスコミの武器であるコミュニケーションが取れない。この辺りから、ノー天気のマスコミはラカイン問題の複雑さを思い知ることになる。ミャンマーの村落を取材するのに外国語であるベンガリ語が必要とされる。語学から民族問題を覗くと、国内に自国語が通用しない空白地帯が存在する。経済的に国益を語る政治家はこの世にウヨウヨいる。軍事政権を含めたビルマ政府は、文化的にも血筋の上からも彼らを自国民族とは認めてこなかった。ミャンマーの国益である。



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05: ミャンマーの歴史

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その複雑さを、歴史に基づき復習してみたい。人道問題を叫ぶだけでは解決できないことが分かるだろう。


1948年1月4日 ビルマは英国の植民地から独立した。
その前年の1947年8月15日 インドが英国の植民地から独立した。


しかし、インドの独立は複雑である。当時インド国内にはヒンズー教徒とイスラム教徒が共存し反目しあっていた。ヒンズー教徒のガンジーは盛んにその宥和を訴えた。だが、交渉相手のアリ・ ジンナーはイスラム教徒を引き連れインドから分離した。東西パキスタンの正式独立は1956年。さらに内部分裂で、1971年12月16日 東パキスタンが分離独立し、バングラデッシュの国名となった。
これが問題の隣国バングラデッシュである。


さらに歴史を遡ると、アラカンのマウンドウおよび近隣のブティダウン、ラテダウンは人口過疎地帯であったが米作には恵まれた土地であった。そこで当時の英国政府は人口豊富なベンガリ州チタゴン地区から大量の移民を米作農民として海陸のルートで送り込み、大英帝国が経営する植民地へ配送する食料庫とする政策を採用した。彼らは当時チタゴニアン、あるいはチタゴンのムスレムと呼ばれた。ロヒンギャという言葉は歴史上からもまだ出てこない。


バングラの人口過剰は慢性化し、それを吸収できる産業が国内には育っていない。技能を持たない未熟練の労働者に雇用のチャンスはない。職が無いのだ。国境さえ超えれば、そこは米作地帯で常に大量の労働力が必要とされていた。しかも、賃金も稼げる。その越境はビルマ独立後も、バングラデッシュ建国後も、年を追うごとに増加して現在に至る。だが、国が独立し、建国されると、これは明白な違法移民となる。


人口過剰のバングラにとっては、この違法移民は有効な人口削減策で、しかもミャンマー通貨という外貨まで稼げる。だが、ミャンマーにとっては外国人の違法な領土侵入となる。その人数が見過ごせない規模になると、散発的にビルマ国防軍は手薄な国境地帯に兵士を投入して、ヒンズー教徒・イスラム教徒に向けて手当たり次第に発砲したのが、過去の歴史はそれを繰り返してきた。だが、今回見えてきたことがある。ここで念押しすると、まだロヒンギャ問題は発生していない。仏教徒とムスレムの宗教戦争でも無い。


地形図的にはビルマの領土だが、ベンガリ族の部落がマウンドウをはじめとして周辺に出来上がった。民族的にもベンガリ族に実効支配されたということだ。その証明が使用言語である。ビルマの領土内で、自国の言語が通用せず、他国の言語が罷り通っている。国境を越えて違法移住したベンガリ族によってである。その他国籍住民が同盟を組み"Mujahid党"を宣言した。"イスラム法の創設者で庇護者"という意味である。彼らはスンニ派に属する。


ここでもう一度整理すると、ビルマ領土内のアラカンに他民族の違法住民が定着し、ベンガル語のチタゴン訛りの方言である外国語を話し、しかも異教徒のイスラム教を信奉している。彼ら自身はロヒンギャという言葉は使用せず、"ムジャヒド"と自称していた。そしてムジャヒドの最終目的は、アラカン領土をバングラ(東パキスタン)に組み入れることにあった。これが軍事政権に至るビルマ政府、ミャンマー政府が取り続けた見解であった。ここに至って、これはロヒンギャ問題でもなく宗教戦争でも無いということが分かる。言ってみれば、不法侵入のイスラム問題である。


だが、1971年12月16日に西パキスタンから分離してバングラデッシュが独立した。
これら隣国問題を抱えていたビルマは、西洋諸国に先駆けて、1972年1月13日にバングラの独立を承認した。そして1972年3月21日に、両国は外交関係を樹立した。そしてネウィン、タンシュエを含む両国首脳の交流はあったが、両国ともに無視できない国内問題を多数抱えていた。バングラはサイクロン台風被害を毎年被り経済は疲弊し、ミャンマーは8888などの民主化問題で国際的に孤立化していた。


2011年3月30日形ばかりの総選挙でテインセイン大統領による新政権が発足した。
テインセイン大統領は、軍服を伝統的な民族服に着替え、軍政から民主化へ大きく舵を切った。
だが、バングラ国境の "ロヒンギャ"問題に関しては頑固であった。国際世論の非難に対して強硬に、彼らはベンガリ地方からの違法侵入者でミャンマー固有の民族では無いとし、 "ロヒンギャ"の名称そのものすら認めず、彼らは経済難民であると断定した。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が引き取って国外のどこかに難民キャンプを設置するのが妥当だ。ミャンマー政府はそこへの移送は保障する。と、持論を展開した。


ここまで理解頂けたら、次に進みたい。



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06: ARSAの創設者で指導者であるAta Ullahをご存知だろうか?

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祖国ビルマ・アラカン州からの難民家族としてパキスタンのカラチで1960年代に生まれた。アタアラが幼い頃、家族はサウジアラビアのメッカに移り住み、そこで彼はイスラム教学の学校に入学した。メッカ時代の後半は、約15万人を擁するロヒンギャ共同難民租界の指導者となった。


ICG(国際危機グループ)の調査では、ラカインでの暴動直後、アタアラは2012年にサウジアラビアを去り、パキスタンのタリバンから6ヶ月間ゲリラとしての近代的な軍事訓練を受け、さらにはリビアでも実戦訓練を受けたとの報告がある。


そして何百人というゲリラ部隊を引き連れてラカイン州に侵入し、2016年10月9日に山岳地帯に点在する何カ所かの警察基地を一斉に攻撃し、ミャンマー国防軍に壊滅的な打撃を与えた。その成果を誇示するかのように一週間後にオンラインでビデオを流し、アタアラは自分たちの犯行と主張した。それに続くのが、2017年8月25日の大攻勢で、ラカイン州からバングラへの大難民流出を引き起こした。



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07: スーチーが解決すべき問題は?

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以前は、たぶん今でも、シットウェイからマウンドウまでは地面が繋がっていない。ボートに乗り換え2日がかりの旅程だと聞く。ここは地球上でも最多の豪雨地帯で、舗装道路などなく四輪駆動でも使い物にならない。網の目のように大河、小河川がのたうち回っている。先進国の政治家が言う単にインフラというレベルではない。コストを無視すれば、ホーバークラフトが最適の交通手段だろう。


インフラ以前の問題で、村々を繋ぐ架け橋はなく、小村落が孤立して、点在している。危なっかしい小舟で大河、小河川を渡っていかねばならない。障害となる河川は延々と続く。陸に上がっても、泥濘に足は取られ、片脚・片足が抜けない。ビーチサンダルなど2度と戻ってこない、魚河岸兄ちゃんの長靴でも取られてしまう。地元の人に習い、ハダシがベストと実感する。


インパール作戦の関連書数冊読めば、そしてナショナル・ジェオグラフィのDVDでも鑑賞すれば、この土地特有の凄さがヤット理解できるだろう。中には流砂またはクイックサンドと言って、恐ろしい底なし沼に沈んでいくこともある。


それを新政権発足から一年半も経っていないスーチーに、人権団体が非難の矛先を向けるのがいかに的外れか、お解りいただけるだろうか。日本滞在中に、スーチーはラカイン問題の解決策を何一つ提示せず、スーチーの限界だという論調に度々出くわした。日本のマスコミはこれまで何を見てきたのだろうか。


バチカン法皇のミャンマー訪問においても、ミャンマー政府が"ロヒンギャ"という言葉を使用するかどうかだけに焦点を当てて報道してきた。何かオカシイ。そして歴史的にもこれは仏教徒とムスレムの対立でも無い。それを敢えて、宗教戦争に追い込むようにマスコミは扇動してきた。その騒動にカソリック・クリスチャンの総本山であるバチカン法皇の登場である。


もう少し踏み込みたいが、私自身の読み込みと分析が足りない。もう少しお時間をいただきたい。


皆様にとって、2018年が有意義な年でありますように!
少なくとも、ミャンマーは波瀾万丈の面白い年になりそうです。



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