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<ミャンマーで今、何が?> Vol.238
2018.1.111

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■ミャンマーの巡礼旅行

 ・01: ミャンマー遍路の旅

 ・02: 木の文化を、そして石の文化

 ・03: 仏陀のの国で考えたこと

 ・04: 少数民族のみならず、外交団にも多様性あり

 ・05: 007は二度死ぬ

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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01: ミャンマー遍路の旅

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Pilgrimage(巡礼旅行)に誘われたのは、年末ギリギリだった。家族の一員として遇してくれるシャン州の友人の申し出だ。

この英語には、日本語感覚だと"四国遍路"の響きがある。
欧米人感覚だとイスラエルのエルサレム巡礼、そしてイスラム教徒だとメッカ巡礼となる。
すなわち宗教臭い匂いがする。

だが、自由思想の観点からは、そんなものは平ちゃらである。

このメルマガ開始以来、通信事情からヤンゴンを離れがたく、地方を訪ねる機会がなかった。地方を垣間見る好機が到来したと思った。

スマホの発達で遠方から電話を貰う。その利便性を自分自身で体感してみたい。衝動的にその申し出に飛びついた。 

12月一杯はGNLM紙のスクラップ整理に時間を取られていた。出発に間に合わせ、寝不足状態のままで、ヤンゴンを後にした。

マイクロバスに飛び乗ったら、目前の作業をすべて忘れ、身体のリラックスに徹しよう。寝不足も解消するだろう。

旅行会社の資格を持つドライバーは、抜け道を熟知しており、地理歴史に詳しい。急坂の下り坂でもエンジンブレーキで制御し、追い越しでも慎重に間合いを図る。決して無理はしない。腕もしっかりしている。車中では安心してウトウトできた。疲労が徐々にほぐれていく。

同乗の家族はダウンジャケットで、車内の冷房はギンギンに効かせてある。毛糸の帽子で完全武装だ。用意してきた軍放出(横流し)のアーミーセーターが役立つ。このトロピカルで、ミャンマー人は南極ゴッコを楽しんでいる。こういう遊びができるということは、精神的にも豊かな証拠だ。

あちこちで道路が掘り起こされ、山道では対向車線を避け往路と復路が独立して走るようになった。崖下への落下防止で車止めが続く。分岐点では道を確認しながら、先へと向かう。

ミャンマー人は信じられないほど親切だ。誰も彼もが、懇切丁寧に道順を教えてくれる。
ただ問題なのは、その親切が正しい時もあれば、そうでない時もあることだ。



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02: 木の文化を、そして石の文化

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ミャンマーが仏教国なのは常識かもしれない。山奥の隅々にまで僧院が、そして峰々の頂には仏塔があった。しかも時の権力者である王朝は、その規模を競って建立していった。それが特にバガン周辺から、マンダレーを経由して、ザガイン一帯を覆い尽くしている。

中にはバニアン・ツリーのジャングルに眠っていたと思われる、木造建築が忽然とその姿を現す。

ラテライトと砂岩を多用したアンコールワットのミャンマー版と思えば良い。
カンボジアは石の文化だが、こちらはあくまでも木の文化である。
共に当時の最新技術を駆使した文化の華といえる。

石工技術の本拠地は欧州全土・アフリカ北部から小アジアにかけての精華であった。
英語ではMason。その先端技術集団が、自分たちの特殊技能を誇りフリーメイソンを形成した。

言ってみれば、パロアルトで誕生した、今の時代のIT技術者集団と似ている。
その申し子がスティーブ・ジョッブズ、あるいは宿敵ビル・ゲイツで、さらにはジェリー・ヤン、ラリー・ページ、ジェフ・ベゾスなどの面々かもしれない。話は横道に逸れた。
ジャングルの中で遭遇した、ミャンマーの木造建築に思いを馳せた。
その基盤となっているのが、胴廻りがふた抱えもある巨大チークの柱を何百本も使用している。

西洋の石工(いしく)技術と同じで、東南アジアの木造建築も日本同様に世界最高水準の職人技だったのでは?

何百本の巨大なチークの樹を切り倒す道具と技、しかも枝葉を削り落とし手を加えてある。それだけではない。見るからに重々しい巨木を建築現場に集積した。そこから木造建築が始まる。人間業とは思えない。その重要な助っ人がエレファントだ。それらが寺院の回廊に細密画として記録されている。

木造建築の要所要所には浮かし彫りが施され、そこに登場する動植物は、アンリ・ルソーを思わせるモチーフとなっている。

と思えば、巨大な岩山を切り拓き地下道の洞窟へ下りていく、その右左至る所に大中小の仏像が刻んである。そこに大勢のサルが住み着いている。ここはザガイン州Monywa郊外である。
岩山を切り拓いた絶壁は垂直に立ち、その技術の凄さは、時空を超えている。

アラビアのロレンスで有名なアカバ湾。今のヨルダン王国の最南端。

余計な一言を挟めば、ラカイン州騒動の元祖みたいな、老獪な英国の落し物の一つである。
そのアカバ湾北東120kmにペトラ遺跡が残されている。そこの石窟文化は紀元前6世紀頃から栄えた。紅海、地中海、シリア、エジプト、メソポタミアを結ぶ、中継貿易の集積地で、ラクダのキャラバンの隊商宿となった。このMonywa郊外の石窟寺院は、規模は小さいが、その職人技はペトラ遺跡を思わせ、技術の伝搬、交流を夢想させる。

習近平が提唱した一帯一路をはるかに上回るレベルで、東西文化の交流は、宗教各派勢力の影響力とともに、網の目のように四通八達していたのではないだろうか?

この旅行は石の文化と木の文化を偲ぶ旅ともなった。そして東西交流を。



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03: 仏陀の国で考えたこと

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マンダレー北西136kmに位置するザガイン州Monywaはチンドウィン川東岸の大都市である。
ホテルに置いてあった2002年度版ロンリープラネットによれば、インドからの製品はほとんどがこのMonywa経由でミャンマー全土に配送されたという。

物量のハブとしてだけでなく、インドで発生した当時の革命的な大宗教である仏教もアラカン(現在のラカイン州)経由でこのMonywaを通過していったという。

そのMonywaで有名なのが南東19kmポーカウン山稜の頂点に大きく横たわる巨大な寝釈迦仏とその背後に大きく聳える仏陀の立像である。

山頂に約13mの鉄骨台座を設け、その上に130mの仏像が立ち上がる。この辺り一帯はボディ・タータウンと呼ばれミャンマー全土に知られる。ボディとは仏陀のことで、タータウンは一千という意味である。辺り一面に一千体の仏陀の坐像が縦横に並んでいる。

130mの立像も内部は鉄骨建築で合計33段階設けてある。各段階にいくつもの仏像が配置され、上下する階段は仏像内部の反対側に取り付けてあるので、各段階では、そのいくつもの仏像を拝観してから、反対側の階段にたどり着く。かなりの運動量が要求される。聖路加で見放された心臓がパクパクと元気よく動いている。

結局ワレワレのグループで最上階まで往復したのはワタシ一人だった。遠くに雪を冠った富士山が見えたが、新幹線は見えなかったと、仲間に報告した。一千体の坐像が実際アリのように小さく見えた。

アリガタヤ、心臓は破裂せずに、まだ動いている。

立像の足下に英文の石碑もある。

1995年5月8日午前9時という吉祥時にくい棒(礎石)打ち込みの儀式。そして完工式典が2008年2月20日となっている。異邦人の目からすると、歴史的重みは全くない。しかもコンクリに金色のペイントで僧衣を表し、真っ黒の眉墨、真っ赤な口紅。しかも立像内部の仏像にはLEDの光輪だ。その出来上がったばかりのケバケバしい仏像に、ミャンマーの人たちは恭しくマットに額を擦り付ける。

ワタシには全く興味のないことだが、ミャンマーの人たちを観察するには良い機会だ。禁止マークがないのを確認して、カメラに、そしてビデオに収める。

だが、碑文を読んでいた気付いた重要なことがある。

ミャンマーには世代にわたり敬われる高僧が何人もいた。
彼らが一大発心して、仏陀の説いたアリガタイ説教を念じ、広く遍く寄進を求めた。何年かかるか分からない。その浄財が満願すると、お山の頂、大平原の目立つところに、仏塔が、そしてミニ祇園精舎が建てられた。すべては平信徒の浄財である。

あるいは平信徒でミニ祇園精舎を建て、伝説上のセレブになったヒトもいる。

だが、これはミャンマー人だけではなく、仏教徒だけでもない。ユダヤ教も、キリスト教も、イスラム教徒も、信じる以上はみな同じだ。マルクスの言う宗教は麻薬であり、立花隆が言う宗教はカルトであるからだ。異教徒の言葉を信ぜず、自分たちの神だけを信ぜよと説く。

そのカルトに凝り固まっている連中に、あるいは踊らされている報道陣に無言の行で応じたスーチーは賢明である。と言って、話の分かる一部の外国元首、首脳には詳細に自分の信念、計画をキッパリと表明している。と東西南北研究所は分析判断した。

例えば、同じイギリス人でも、政府首脳と、特定のシンクタンクでは、考えが全く異なる。その綾をスーチーは整理してキチンと説明している。

その点を混濁して、アメリカ人は、イギリス人はと、一括りにして独自の皮相的な考えを披瀝する輩が多すぎるような気がする。



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04: 少数民族のみならず、外交団にも多様性あり

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シャン州の州都タウンジーでは、ホテルにしても、レストランにしても中国人経営が驚くほど多い。だが、これも中国人と一括りにすると誤解がそこから始まる。

レセプション・ロビーを見渡しただけで、中国風の装飾で飾られている。

ミャンマーらしく、家族の写真、創業者らしいセピア色の大人が飾ってある。だが、詳細にチェックしていくと、雲南省あるいは省都昆明を出身とするヒントが至る所に隠されている。例えば雲南省同郷聯合會のごとく。だが、町中には廣東総會という看板も見かけた。と言うことは、毛沢東の簡体字以前からここに住み着いていることを意味する。

タウンジーそしてマンダレーの多くは雲南省の影響を多大に受けている。

単に決して北京政府の中国ではない。タウンジーおよびマンダレーは、立地的にも、雲南省の影響下にある。スーチーもそれを理解し、習近平もそれを理解している。それを観察するインドもそれを理解している。残念ながら、それを理解しない思い上がった外交大国も一杯いる。

だから、ミャンマー大統領・国家相談役(このメルマガではワザと国家顧問とは呼ばない)は、それを充分に見極めて応対している。



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05: 007は二度死ぬ

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昨年のメルマガは、日本とミャンマーの関連も、もう一つのテーマだった。

今回の巡礼旅行では、スコッチを交わしながら、それをタップリと考える時間があった。
彼らも話題が豊富である。植民地時代を肴に、007の話が飛び出した。
その話題なら彼らに決して負けない。

You only live twice(007は二度死ぬ)を知ってるかい?

イアン・フレミングのシリーズ第11作目だ。この映画が封切られた頃、私は大学を卒業した。そして全編舞台が日本国内だったことに興奮した。

東京オリンピック直後の高度経済成長期で、地下鉄丸ノ内線、ホテル・ニューオータニ、旧蔵前国技館、東京タワー、銀座四丁目交差点などが、次々出てきた。

ショーン・コネリーは別格としても、丹波哲郎、若林映子、浜美枝がボンドガールだ。第50代の横綱佐田の山も出演している。漁村シーンとして鹿児島の坊津が出てきた。

あらすじはこうだ。冷戦の真っ最中にNASAの打ち上げた人工衛星が忽然と消えてしまった。米国はソ連を非難する。MI6は日本が絡んでいると見て、ジェームス・ボンドを日本に派遣する。その最中に脅迫状が届く。

SPECTREからの脅迫状は、巨額な支払いの要求に応じれば、MI6が求めるカプセルをビルマの多島海マーグイ諸島に落とすという筋書きだ。ここは800以上の島々が連なる、現在のミャンマーのタニンタリー州の沿岸である。

老獪な英国はすでにあの頃007を通じて、日本とミャンマーの深い深い関係を読み解いていた。というのが「ミャンマーで今、何が?」の所長が見抜いた分析である。

怪しい名前の東西南北研究所の見解など、決して信用せず、今年2018年もよろしくお付き合いください。スーチーの言う通り、この国は非常に複雑ですから。そして現在の国際関係はさらに複雑を目指しているようですから。

*タウンジーからヤンゴンに戻るHEHO飛行場のラウンジからWiFi発信




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