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<ミャンマーで今、何が?> Vol.241
2018.1.16

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■ミャンマー巡礼雑感

 ・01: ある夜の出来事

 ・02: ウ・ベイン橋

 ・03: カックー(Kakku)遺跡

 ・04: カンドウジー植物園(ピンウールイン)

 ・05: 英語力の話

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)
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01: ある夜の出来事

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旅の途中で、いろんな人に出会い、ミャンマーの理解がさらに深まった気がする。

日本が昔そうであったように、大家族が集合した食事会での配列が、見事なほど多彩だ。四世代が集まった中で、さらに兄弟姉妹が枝葉を大きく伸ばしていく。こうやって子供たちは人間関係の複雑さと空気を察するようになる。中国製のバイクが四、五台、室内に仕舞われている。

バラバラのサイズの椅子と卓子を寄せ集め、幾つものテーブルがあちこちにできる。滅多にこない日本人というので、上座に席を設けてくれた。ここはミャンマー第二の都会マンダレーである。古都マンダレーの人たちは新都市のヤンゴンより自分たちが格上と思っている。東京に対する京都の感覚だ。

ここの主人はシャン州王家の血を引き、中国人の血も混じっている。身体のどこかが麻痺しているのだろう、椅子からの立ち上がり着座には夫人の手助けが必要だった。だが、背筋はキリッと伸び、眼光が鋭く光っている。男たちはキビキビと働き、女性たちの躾が十分に行き届いている感じだった。テーブル一杯の山の幸海の幸が幾皿も出てきた。友人の話だと、上ビルマ有数の金持ちだという。どんな仕事か聞いたが、いろんな事業に手を出していると答えにならない答えが返ってきた。

デザート後に、テーブルをすべて取り払い、床にアンペラを敷き参加したほぼ全員が床に正座した。背筋を伸ばした主人が長椅子に座り、隣に夫人が座る。全員を見下ろすように主人が語りかける。異様な光景だった。言葉が分からないので、失礼だったが、写真を数葉撮らして貰った。雰囲気としては、何年か振りの会合を真から喜んでいるようでもあり、二度と会えない別れの儀式にも見えた。眼光鋭い目に何かが光り、言葉が淀んだ。込み上げてくる何かがあったのだろう。それを夫人がハンカチで拭った。床に座った何人かも目頭を押さえていた。最後にこの主人夫婦に対して、全員が額を床にこすりつけ三拝の儀式を繰り返した。

マイクロバスは暗い夜道を縫うように右折左折してホテルに向かった。室内灯を消した暗い車内で、三国志演義の一場面を彷彿させる今の出来事が何度もよぎった。

フト阿片に思い至ったが、それを問い質す勇気と、雰囲気もなかった。



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02: ウ・ベイン橋

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二、三回来たことがある。タウンタマン湖に掛かるこの橋を渡り切ったのは今回が初めてだった。

4ヶ月間にもわたる雨季で湖水は満ち溢れ、その後の渇水期で、景観はガラリと変わる。
この国の名勝地で、絵画のモデル、カメラの被写体として、何度も目にした。

贅沢にもすべてチーク材で出来ているという。風雨に晒されているので、常時補修・補強作業が行われているようだ。

その名望と裏腹に、ここへ来るたびにガッカリする。

一言で言うと美観的にキタナイのである。

よくぞホテル&観光省が観光客誘致に、そのポスターを使用していると、その感覚を疑いたくなる。
環境汚染のシンボルにするのなら分かる。

ミャンマー人の美的感覚を象徴するように、信じられないほど多様なゴミがポイ捨てされている。

それらのゴミが湖水のあちこちに吹き溜まっている。白い可憐な花が群生していると思ったら、すべて白いポリ弁当の空き箱だった。

今、国際世論から孤独無援に叩き落とされたスーチーを支持するデモは良い。

だが、スーチーをもっと強力に、実質的に応援する方法は別にある。

スーチーが補欠選挙で初の国会議員に当選した時、彼女が最初に行ったキャンペーンは何だったか、覚えておいでだろうか?

スーチーは長い間の軍政で、自分の祖国が醜く汚れていることを知っていた。

国民の心も荒んでいることを知っていた。

だからこそ、自分の選挙区ヤンゴンのコームーに戻り、せっせとゴミ拾いを始めた。

スーチーは知っていた。すべては自分の身辺周りから行動を起こすべきと。

政治家として大きなことを口に出しても何も始まらない。小さなことでも、実行すれば、一歩前進だ。

これは仏陀の教えにも通ずる。スーチーは無言で実行した。

だが、マスコミも国民も、何一つ理解しなかった。

政治家としてヤルべきことが山ほどなのに、何をやっている。経済は沈滞すると。

日本からの友人もヤンゴンにやってきて下町のゴミ拾いから始めた。直感的に街が汚れていると判断したからだ。彼の感覚だと、これは恥ずべきことと受け取る。夜間にビルの裏窓から気付かれぬようにゴミを捨てる。そこはネズミとコックローチの養殖場だ。

スーチーは大統領の上に君臨する国家相談役に就任する前から、ミャンマー人のこの見て見ぬ振りする習慣をshamefulと見ていた。外務大臣を兼務する身の上では尚更である。
スーチーを心底、強力に、実質的に、応援するのであれば、こんな簡単なことはない。
アナタたちの祖国を美化してみてはどうだろう。

ワタシは真に美しいウ・ベイン橋を見てみたい。

もう一言付け加えると、ウ・ベイン橋の補修・補強作業がガサツなのである。

素人大工でもあれほど幼稚な作業はナイ。

チークをウリにしながら、ところどころコンクリで補強してある。

シコメ(醜女)の厚化粧と言ったら、コレは差別用語になるのかな?

このウ・ベイン橋からさほど遠くないインワのバガヤ僧院に連れて行って貰った。ヤシが高く聳える密林の中に267本の巨木を支柱としていた。すべて見事なチークである。建造は割に新しく1834年。時代はウ・ベイン橋とあまり変わらない。この地域でもふいごを利用して鉄器農具は作られていた。267本の巨木を処理するには、手斧程度の道具はあった筈である。その伝統を今になぜ残せないんだ。

識者の意見を取りまとめると、結局は軍事政権が、その伝統を断絶してしまったという。そして、軍事政権時代のパッチワーク作業が、現在の伝統になっているという。日本でも宮大工という職人技が咲き誇った時代もある。ミャンマーでも、祖父が残した書き物などで、それに挑戦しようとする若者は出てこないだろうか? 日本のようにミリ単位まで端を揃える必要はない。むしろミャンマーらしくデコボコの自然の美が出せたら素晴らしい。

旅の途中、車に揺られながら、このようなコトが頭に浮かんだ。



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03: カックー(Kakku)遺跡

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ここも二、三度訪ねたことがある。

昔はインレー湖からドロ道を2,3時間、ロング・ワインディング・ロードを苦労しながら、たどり着いた。今は十分とは言えないが舗装され、あっという間に到着した。逆に言うと有り難みが減少した感がする。勝手なもんだ。

今回の巡礼でココほどがっかりしたことはない。

古色蒼然たる円錐形の苔むした塔が所狭しと並んでいた。そして時代を経たためだろう。円錐形の下部はしっかりとのこっているが、上部が斜めに傾いたり、崩れ落ちて、そこに菩提樹の樹が根付き、異様な景観を呈していた。だが、そこにはチッポケな人間の能力では克服出来ない、自然の凄さと自然のままの美がそのまま残されていた。

1980年代後半、北京に住んでいた時、北西郊外の円明園を自転車で何度か訪ねた。

清の時代の離宮名園で、ベルサイユに比すべきバロック式の豪華な洋風建築は異彩を放っていた。だが、第二次アヘン戦争で、英仏連合軍に徹底的に破壊され廃墟と化した。今は知らない。だが、当時の北京政府はその廃墟をそのまま手をつけずに保存していた。崩れた壁、屋根瓦などが、そのまま放置されていた。それが時代を経て、兵(ツワモノ)どもがというか、一種異様な幽玄な世界を作り出していた。それは歴史の証人として、見事な保存方法であった。

ところが、カックー遺跡では、至る所で補修工事が行われており、古色蒼然たる円錐形の上部に昨日セメダインでくっ付けましたと言わんばかりの新テラコッタが載せてあり、おまけに毒々しい金色のペイントまで塗ってある。入り口で3ドル取られたが、ヤンゴンに戻って領収書を確認すると保存作業のための寄進となっている。金を返せと叫んでも手遅れであった。

ミャンマーのお山の頂には、巨額の浄財を集めて、仏塔や仏像がコンクリで無数に建造され、金色、白、紅のペイントで粉飾されている。確かに吉祥の日時を選んで儀式を行っているようだが、果してありがたいのだろうか? ワタシには"仏造って魂入れず"としかみえない。居候の余所者が口を挟むことではないのかも知れない。世界銀行などが称する貧しい国というのは、実は間違いで、真実は裕福なのかも知れない。

バガンでも同様の修復作業を見た。至る所にアーケオロジー(考古学)とは書いてあるが、考古学者が時代検証して同一の、あるいはそれに近い材料を使用しての作業とは思えない。今の時代のセメントで処理しているとしか思えない。文化遺産の破壊ではないだろうか?

ユネスコから調査団が入っていると聞いたが、適切な意見交換は行われているのだろうか?

そして所詮、滅びの美学などは島国根性のチッポケな性根で、ミャンマーの考古学では、な〜にアト100年も経てばケバケバしいペンキも古色蒼然となりますよ、と太っ腹なコトを言いたいのだろうか?



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04: カンドウジー植物園(ピンウールイン)

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マンダレー東50kmに位置し、イギリス時代から夏の避暑地として利用された。1924年に英国の王立植物園キューガーデンを模して造園されたようだ。それを2001年4月8日に国家平和発展議会のタンシュエ議長が国立カンドウジー・ガーデンとして命名して開園したと銅版のプレートに刻んである。

その裏に見え隠れするのが、タンシュエの懐刀とされるミャンマー最大のクローニー(政商)ウ・テイザーの存在である。バガン、カカボラジ山麓、ナパリビーチ、チャウンタビーチなど国立公園の一等地と言われるようなトコロにHtoo Tradingの名前で広大な敷地を独占的に専有している。この植物園もそうであった。民主化の新政権となっても、伏魔殿のようなもので、なかなか手のつけられない込み入った問題である。欧米のマスコミは犬の遠吠えのように騒ぐが、ニクソンを退陣に追い込んだワシントン・ポストの度胸もない。その裏で先進国の資本家は裏で権力家への接近を図ろうとする。



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05: 英語力の話

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今回出会った知的な人たちからオモシロイ話を聞いた。
本人が話しているのを直接聞いたことがあると断っての興味ある話だった。

ネウィンの英語力はマアマアと断定した。だが、タンシュエの英語はお粗末そのもの。それを含めてマウンエイ、キンニュン、テインセインたち軍人の英語は典型的な無教養を晒すもので、対外的に通じるシロモノではない。

それでは教養ある英語を話す政治家はいなかったのか?との質問に対して、独立後の初代首相ウ・ヌー、日本植民地時代の首相バモウ博士、そしてアウンサン将軍の名前を挙げた。彼らは逆にピカイチだったようだ。
と言うことは、ミャンマーの今を知るワレワレとして、スーチーの英語力がどれほど優れているか、ローマ法皇歓迎のスピーチ、その他のスピーチから明白である。

だが、かなり酩酊していたので、何処の誰と、こんな話をしたのか全く覚えていない。この国では忘れてしまうことが、誰にも迷惑が掛からず、最高の処世術でもある。
若い皆さん、ミャンマーでは一日も早く、私のような痴呆症になることをお勧めします。人生が楽しくなりますヨ!
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今回の巡礼から戻って、路上喫茶で隣の席の会話が少し見えてくるようになった。もちろんミャンマー語は分からない。そして車のナンバープレートの登録州を気にするようになった。
嬉しいことに、今回の旅行は、大いなる収穫があった。
これからは小さなチャンスを作ってでも地方に出かけたい。正直日本はもう飽きた。ステレオタイプの話ばかりで、刺激がないのである。



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