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<ミャンマーで今、何が?> Vol.243
2018.1.25

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■インドとミャンマー、意味深な関係

 ・01: 両国の外交関係

 ・02: 歴史の黒幕は大英帝国

 ・03: 独立に至る道

 ・04: チャンドラ・ボースの言葉

 ・05: 読めない

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)
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01: 両国の外交関係

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前回のカレー物語は、今回のイントロのつもりで書いた。

1月22日(月)GNLM紙第2面囲み記事で、「インドのモディ首相の招待で第25回ASEAN・インドの首脳会議、および第69回インド共和国記念式典に国家相談役のスーチーが出席」と報道された。

どの国もそうだろうが、ティンチョウ大統領かスーチー国家相談役、どちらに招待状を出すか、どの国も悩むところである。国家元首と言えば大統領だし、スーチーはその上に君臨すると言っていた。インドはスーチーを選択した。外交儀礼を悩ませながら、ミャンマーの国際社会における位置付けは形作られていく。

モディ首相は、実は、昨年2017年9月5・6・7日の三日間、ティンチョウ大統領の招きで国賓としてネイピード、そしてヤンゴンを訪問している。従って、スーチーのインド訪問はその答礼となるわけである。

ネイピードにおける晩餐会でも、"大英帝国からの独立運動闘争の真っ最中であった両国は、マハトマ・ガンジー、アウンサン将軍、ネルー首相、ウ・ヌー首相は親密な関係にあった"と、ティンチョウ大統領は語っている。

そしてヤンゴンでは、ヒンドゥー教徒のモディ首相は、ミャンマー仏教のご本尊とも言えるシュエダゴン仏塔、アウンサン将軍を含む殉難者霊廟、ヒンドゥー教の名刹寺院、そしてスーチーの特別な案内でアウンサン将軍博物館、それからムガール帝国最後のエンペラーが眠るシャー・ザファー霊廟それぞれで手を合わせた。外国人にとっては、単なる観光スポットと見るかもしれないが、これらは両国にとって非常に意義深い聖地でもある。下準備したインド&ミャンマー両国外交筋の心憎いばかりの配慮が読み取れる。

なお、シュエダゴン近くのシャー・ザファー霊廟について言えば、インド・パキスタン・バングラデッシュの元首あるいは政府高官ならば、必ず訪れる巡礼聖地となっている。



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02: 歴史の黒幕は大英帝国

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インドとビルマを植民地とした大英帝国は、インドを支配したムガール帝国の皇帝シャー・ザファーを1858年ラングーンに追放した。ムガール帝国のラスト・エンペラーである。そして1885年、今度はビルマのマンダレーにあったコンバウン王朝の若きティボー王を玉座から引きずり下ろし、インドの片田舎ラトゥナギリに幽閉した。ビルマ王朝のラスト・キングである。

詳細はメルマガVol.64(2013/10/02発行)<ムガール帝国最後のエンペラー>およびVol.70(2013/11/13発行)<ビルマ最後の王朝>をご参照願いたい。

どちらにしても、ムガール帝国とビルマ王朝という二つの国の支配者を廃帝にしたのである。歴史を弄んだのはその征服者の大英帝国であった。だから、時代が21世紀に移っても、インドとミャンマーの間には話しても話しても語り尽くせない歴史があり、物語がある。だから、だから、スーチーはネイピードの大統領府で、そして歓迎晩餐会で、モディ首相と懇談しただけでなく、ヤンゴンのアウンサン将軍博物館で特別に案内を買って出たのである。

これはインドだけでなく、その生い立ちの歴史からしてパキスタンにもバングラデッシュにも当てはまる。これら三国とミャンマーの関係は微妙かつ取扱注意の複雑なモノがある。これら三国に対するスーチーの発言は歴史の経緯を踏まえて、正々堂々と言うべきは言い、しかも巧妙に対応している。同様の態度は、国境を接するもう一つの強国・中国に対しても見て取れる。

スーチーの目から見たら多分、あれほど文化的・歴史的に深い交流がありながら、どうして日・中・韓の三国は感情に走り、大局から現在という今の歴史を話し合えないのだろうと、指導者に対して疑問を抱くことだろう。
実際スーチーは、イギリスが置き土産にしたロヒンギャという難解で微妙な問題を正面切ってバングラデッシュと話し合い、着実に成果を上げている。両国の間では感情的憎悪はない。あるのは外交交渉の複雑さだけである。それは外交官としてはゴク当たり前のこと。ルーティンワークである。



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03: 独立に至る道

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ガンジーは1919年、50歳の時に非暴力・不服従運動というインド古代思想に基づく、コロンブスの卵のような画期的戦術による反英闘争を開始した。

ネルーはインド ・アラハバードの裕福な弁護士の家に生まれ、英国名門のハロー校からケンブリッジ大学で教育を受けた。帰国して、インド独立のためにはインド的思想が必要で、ガンジー式非暴力による反英非協力が、その当時は、最良の反英闘争であると認めていた。

それでは生ヌルイと言うのが、もう一人の武闘派スバス・チャンドラ・ボースである。(余談だが、中村屋のボースは別人でラス・ビハリ・ボース。お間違えのないように!)
この過激なチャンドラ・ボースは、反英独立運動における最大の障害は、英印軍傭兵として使われていたインド兵であると指摘した。ボースの画期的な指摘は、これらの将兵を英国の傭兵としてではなく、本来、独立を求めるインドの愛国心のある軍人として位置付けた。そして、この愛国者を覚醒させることを、最大の重点としたのである。

これは、ガンジー、ネルーが思いも掛けない盲点であった。しかも、その効果は絶大であった。実際に傭兵たちが各地で群発地震のように反乱を起こした。そのキッカケを作ったのはチャンドラ・ボースである。そして英国はインド撤退に同意した。だが、ボースはインド独立を見ずに台北飛行場での事故で死亡した。

インド独立以降は、ボースを敵視したネルー王朝が続いた。本来は、インド独立の英雄として称えられるべきチャンドラ・ボースの栄光は、いつしか歴史の物語から忘れ去られてしまった。そしてボースの出身地であるベンガル地方はインド有数のスラム街となった。1913年に、東洋人初のノーベル文学賞を受賞したラビンドラナート・タゴールの出身地であるにもかかわらずである。



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04: チャンドラ・ボースの言葉

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インドもパキスタンも、そしてバングラデッシュも、それからミャンマーも、今の混乱・不幸があるとすれば、その元凶は間違いなく大英帝国に発する。アウンサンの学生時代、ガンジーが牢獄に繋がれていた時代、英国憎しの声が国内にはコダマしていた。だが、戦後70年を過ぎた今、それを蒸し返す声はほとんど聞かれない。

イギリスを老獪だ、狡猾だと、このメルマガも断定するが、それは政治運動あるいはプロパガンダとしてではない。

どうしてイギリスは、こうも見事に幕引きできたのだろう。今や英国を憎む声は聞かれない。それが不可解だ。

それにしても、同じ70年が過ぎたのに、日・中・韓の間には昨日のように憎しみの声が聞かれる。どうしてなのだろう?

チャンドラ・ボースが大東亜会議に出席したあと、シンガポールで語った言葉がある。
「日本はなかなか偉い国である。軍人、技術者、みな優秀である。しかし残念なことに国際的視野をもつ優秀な政治家がいない。そのため、日本は致命的な傷をうける恐れがある」

果たして、この言葉が21世紀の今、当てはまるのかどうか南方ボケの老書生は知らない。


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05: 読めない

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もう一つ老書生に読めないことがある。

スーチーは今年6月に73歳になる。そろそろ準備しておくことがある。
この国に変が生じ、乱が起きた時、スーチーはそれを乗り切れる次期大統領を慎重に用意してきた。まずXXXXで間違いないだろう。

今、スーチーバッシングのお陰で、国内での乱はかなり軽減されてきた。
むしろ心配なのは国外である。

チャンドラ・ボースの言う国際的視野をもつ、スーチーに代わる優秀な政治家が見つかるかどうかである。

その辺りが読めなくなってきた。

今回は国塚一乗著「インパールを超えて」1995年6月20日講談社発行を参考にさせていただいた。


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