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<ミャンマーで今、何が?> Vol.251
2018.3.2

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■スーチーの戦略は失敗したのか?

 ・01: 愚かなドンキホーテ

 ・02: 3歳の童子は天才だ

 ・03: スーチーの失敗

 ・04: スーチーは強運の持ち主

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)


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読者の方にお詫びしたい。

この原稿をVol.250として用意していたが、どういう訳かWiFiが繋がらず、そのうちタブレット内で行方不明となってしまった。いくら探しても見つからない。大慌てして作成したのが前回の<メルマガが迷走した道草編>である。

恥ずかしながら、その後で出てきたので、Vol.251として配布します。


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01: 愚かなドンキホーテ

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もし聴衆が、スーチーの発言を真剣に聞く、耳を持っていたら…

もし聞き手が、スーチーの言葉を偏見なしに、受け取っていたら…

だが、ヤンゴン駐在の外交官たちは、ソウではなかったようだ。

もし日米欧のマスコミが、スーチーの語ったことと、わずか一年半の行政実績を、見比べ批判する精神を堅持していたら…

だが、ソウではなかった。

すでに色眼鏡で、スーチーを、しかも多勢に無勢で攻撃しているとしか思えない結果となった。

このメルマガは、現代の権勢と人気をほしいままに振る舞う、それら超エリートに難癖をつける、言わば愚かなドンキホーテの役まわりである。

スーチーの発言は無視され、完膚なきバッシングは未だに続いている。
ということは、外圧を説得するというスーチーの目論見は完全に外れてしまった。



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02: 3歳の童子は天才だ

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ここで話はガラッと横道にそれる。

このメルマガが目指すのは"英語"である。

"英語のプロになる"というのが、この研究所の本来の目的である。

研究所は勝手につぶやき、読者は勝手に覗く。

"英語のプロになる"方便として、外の声を常に気にスル。だから、英語の記事を読み分析する。

外の声を気にするのは、日本人が黒船以来、身に付けてきた外交スタイルかもしれない。

本当は唐の時代よりソウだった。だが、今、中国はハヤラナイ。だから、アメリカの方が、若い世代にはカッコいい。

だから、米国の新大統領の能力・性向も不明のまま、グリーン上の待合に連れ込み、世界に先駆けて二人だけの特殊関係を築き上げた、と日本の報道は伝え褒め称える。

何を語り合い、何を合意したかは報道しない。

だが、これは間違った報道の仕方ではないだろうか。

二人の間には、欧米の首脳同士と異なり、通訳が常に介在する。

鳥飼久美子、米原万里というプロの通訳・翻訳家が、介在する通訳の涙ぐましい努力と歴史的誤訳の実例を、幾つも列挙している。

日本独特の風土は通詞・通訳に頼るくせに、彼らを一段低く遇してきた。黒子役としか見なさなかった。21世紀の今の時代ですら、相手首脳に対する伝達は通訳任せで、本人は英語を喋らない。正確には英語が喋れない。聞き取りもできない。これは政治家に限らず、大会社のおエライさんも同様である。発言者は自分の主張が相手に正確に伝わっているか、チェック機能すら放棄していることになる。公式の会議でも、待合接待でも同様である。時代遅れも甚だしい。

欧州各国には英語を母国語とせず、しかも自国語に誇りを持つ民族は多数存在する。
フランス語しかり、ドイツ語も、オランダ語も、ポルトガル語も、スペイン語も、そして東欧諸国・中東を勘定に入れれば、トルコ語もロシア語もしかりで、世の中はミャンマーの135民族に匹敵するマルチ言語で満ち溢れている。だが、戦後アメリカの戦略であるパソコン、メール、ネットに席巻されて、国際共通語は"英語"に汚染されてしまった。ザメンホフ博士が苦労して作り上げた世界の共通語、エスペラント語、は今や誰も振り向かない遺物となってしまった。

ロシア皇帝まで魅力された、あのベルサイユ宮殿で話されていた優雅で誇り高きフランス語が、今では卑猥で下品な英語に屈服してしまった。ドナルド・トランプはモチロンのこと、英国王室のフィリップ殿下、チャールズ皇太子ですら"SHIT"、"Dog's Shit"を連発している。これこそ開かれた皇室なのであろう。だから欧米の首脳が寄り集まるEUの会議とかG20の晩餐会は実のところ"犬のクソ"だらけである。このダイナミックな時代の変化を認識しない首脳も国民もいる。それは旧態依然の役人が通訳するからである。多分"コンチクショウ"とか上品に訳しているのだろう。言っておくが、"Dog's Shit"とは"犬のクソ"という意味である。無教養で無作法な研究所はそう解釈する。

ところで日本人部落が面白いのは、英語が分からないと謙遜しながら、スーチーは英語が分かるからと矛盾した日本語で語る。スーチーの英語力がどの辺りにあるかを判断できるのは、あるいは世界の首脳を説得できるかどうかを判定できるのは、それなりの英語力の持ち主である。EUの首脳たちはその辺りの教養は身につけている。

何を言いたいのかというと、日本の首脳、そして外務大臣および各大臣は、今の時代、自国語に追加して英語ぐらい教養として話して欲しいということである。

欧州各国の首脳、国民は、バカにしてきた英語を公式の、私的な会議で話すようになった。世界情勢の変化に対応しているのである。
日本の首脳、高官が進化しないのでは、この国際情勢から取り残されることになる。イヤ、すでに取り残されている。尊皇攘夷の時代から何一つ進歩していないからだ。

総理大臣が、国連の檜舞台でスーチーの向こうを張って、海外の外交団を唸らすスピーチをすれば、間違いなく日本の若者は鼓舞され、自ら進んで教養ある英語を身につけるようになる。イギリス人が軽蔑する米国においてすら、J.F.ケネディにインスパイアされてビル・クリントンが、ビル・クリントンにインスパイアされてB.オバマが誕生した。今、同様の雰囲気がミャンマーに起きている。スーチーに刺激されて、ミャンマーの大統領になると語った女性をワタシは知っている。

問題をすり替えて、小学生から英語を学ばすなど狂気の沙汰である。日本語の思考経路も確立されてない段階で、先生の英語力・システムが確立されてない段階で、日本全国の小学生にこれ以上のプレッシャーを掛けるなど、トンデモナイコトデアル。英語のプロを目指す学徒としては信じられない行為である。日本の歴史、文化を、政治家は知らないのではないか?

総理大臣が、外務大臣が率先して、国連総会で、あるいは安全保障理事会の檜舞台で、英語で大見得を切ればよい。それだけで充分だ。冬季オリンピックの勝者のように、次世代の若者をインスパイアすることができる。あとは若者が勝手に夢とヤル気を発揮するようになるだろう。

190カ国以上、200カ国未満の国々で、文法も習わず、辞書も使わずに、3歳の幼児が立派に母国語を、ネイティブの発音で駆使する、という人類誕生以来の自然の法則を、政治家の皆さんは見逃している。そこにこそ、語学習得の極意は潜んでいる。というよりも、3歳の童子は教わりもせずに、その極意を身につけている。しかも人間の住む地球上の至る所で、その神秘は開花している。世俗に長けた政治家の皆さんは、純粋な童子の叡智を失ってしまったのだろう。



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03: スーチーの失敗

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もう一度復習すると、スーチーが入念に推敲した演説原稿を持ってしても、さらにはオックスフォード訛りの英語で重厚に話しても、スーチーは英国の政治家、ミャンマー駐在の外交団、その他大勢の日米欧マスコミを 理解させるのに失敗した。

これはミャンマー連邦の実質的元首として、外交的な大失敗である。

話はガラリと変わるが、年に一、二回当研究所に電話を寄越し、近くの喫茶店で話し込む風変わりな英国人がいる。主に英国人の投資家をミャンマーに案内するのが、目下の仕事で、セドナやシャングリラ・ホテルでゼミなどを開催しているようだ。お互いにミャンマーの現状についての見解を交わす仲だ。

父親がシンガポールでPOW(戦争捕虜)となり、"戦場にかける橋"の過酷な重労働に駆り出されたと話してくれた。だが、日本人に対して恨みつらみを吐露することなく、一時はロンドンの日本商社で働いたこともある。だが、日本語は話せない。リベラルな紳士で、同世代ということもあり、ミャンマーに来た時はお互いに敬意をもって会うことにしている。

一度、ビールの席だった。

スーチー絡みの話で、"それではもう少し早く殺しておくべきだったナ"、と彼にしては珍しくヤバイ冗談を口にしたことがある。その意味するところは、厄介なスーチーという人物がこの世に誕生する前に、父親の将軍を始末しておくべきだったということである。

BBCがアウンサン将軍暗殺50周年記念に、"誰が本当にアウンサンを殺したのか?"という特別番組を放映したことがある。そのDVDコピーがヤンゴンでも出回り、YouTubeでも閲覧できるので、イギリス人社会でも、ミャンマーのインテリ連中の間でも、英国の特殊機関がその犯人であるというのはほぼ定説となっている。だから、この紳士が口にしたのは実にありふれたジョークである。

だが、同氏はオックスフォードの内部事情にも詳しく、当研究所にとってはイギリス社会を勉強するのに、非常に貴重な情報源である。

だから、今度連絡があれば、どうして英国政府が急遽スーチーを見捨てたのか、オックスフォード大学のホールからスーチーの肖像画が取り払われたのか、英国の超有名な士官学校が引き受けていた年に4〜5人のミャンマー国軍幹部候補生の訓練を急遽停止した、などなどの裏話を講義してもらおうと考えているが、まだ連絡はない。掛けてくる電話番号も都度異なるので記録に残っていない。かと言って、英国の女性首相、外務大臣、インテリジェンスの親分に聞くわけにもいかない。読者の皆様で、この辺りの事情に詳しい方がいらしたら、どうぞTip-Off願います。

唐突ですが、Mount Lavinia Hotelはスリランカの西海岸にあり、崖の上からの眺めはインド洋の大海原がわずかに湾曲し、地球が丸いんだとコロンブスになった気持ちにさせてくれます。デヴィッド・リーン監督は映画"戦場にかける橋"でイギリス人将校たちが優雅に集うロケ地として、典型的なコロニアル・タイプのこのホテルを選びました。もう一度DVDを見てください。コロンボ港近くのGalle Face Hotelも大英帝国の世界を覗けます。これは友人への秘密のメッセージですので、ミナさんは無視してください。



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04: スーチーは強運の持ち主

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スーチーが築いてきた海外のネットワークは崩壊してしまった、と書くのも事実とは異なる。

新政府がイニシャティブを執る行動を理解してくれるか、あるいはスーチーの政策に理解を示さないかが、もっとハッキリ見えるようになってきた。

スーチーは支持者を友人と呼び、それらを注意深く選別し、それらのキャパシティに従い、彼らに協力を訴えた。

それは資金的な面だけではない。ミャンマー全土を健全に再建国し、少数民族の武装グループと和解し国内での全国的な平和協定を締結し、健全な発展そして恒久的な繁栄を保障するためには、どのようなシステムが有効なのか、そのアイデアおよびノウハウをお願いした。

イギリス政府はスーチーを見捨てたが、今の世の中は多様性の時代である。イギリスのNGOでも、スーチーを支援するグループが幾つも存在する。イギリス以外でも、酪農事業で支援したいと申し出たり、果樹園のノウハウを持ち込んだり、水運事業のアイデアを提示したり、保健事業の改善や予防注射の実施と、その申し出は延々と続く。

だから、スーチーバッシングと書いたが、捨てる神あれば拾う神ありで、この世の中は悪意だけでなく、善意にも溢れている。

ただ一つ、政治家としてのスーチーが予測しなかったことが、ミャンマー国内の全土で発生した。海外からのスーチーバッシングが伝えられるごとに、国内のあらゆる団体からスーチー擁護の平和デモが自然発生的に主要な大通りを埋め尽くしたことである。

海外でのデモは反対派と賛成派が拮抗している。だが、ミャンマー国内ではスーチーとの連帯を表明し、スーチー賛成派で埋め尽くされている。世界の首脳からしたら、羨ましいほどの、指導力である。

次回からは、どうしてこのような状況になったかを検証していきたい。


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