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<ミャンマーで今、何が?> Vol.254
2018.5.17

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■21世紀のミャンマーは、どこへ行く

 ・01: 先ずは長い沈黙をお詫びします

 ・02: 昨年9月の国連総会

 ・03: U2のボノ

 ・04: SAW WAIという高名な詩人、作家がいる

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)


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01: 先ずは長い沈黙をお詫びします

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パソコンおよびメールアカウントの復活を成し遂げてくれたのはミャンマーの若者であった。秘められたパソコン技を駆使する。世界一貧乏な研究所としては、金銭での謝礼は払えない。そこで悪知恵を働かせた。秘伝の「英語学」を伝授したいが、そのブツブツ交換でヨロシイカと相談した。最初は疑わしげな風情だったが、レッスンが始まると即座に気に入ってくれた。

それどころか、パソコンのトラブルは今後、面倒を見たいと請け負ってくれた。双方ともに金銭を伴わない取引だ。

彼の英語はあまりにも奇妙な発音だった。だが、言葉の端はしに何か光るモノがあった。目を直視して、ユックリ語りかけ、辛抱強く聞くことに専念した。発音の癖が見えてきた。一方通行でないコミュニケーションが開通した。

ミャンマーの北部に、インパール作戦の戦記にたびたび登場する日本人には馴染みの小都市がある。そこにキンニュンが設立した大学があるという。欧米の新聞記者にはスパイ・マスターとして悪名高い元首相である。知り合ったばかりの若人はそこの大学生だという。いろんな意味で俄然興味が沸いてきた。

混み入ってくると会話が通じない。すると筆談に切り替える。英語の筆談だ。

ロケット工学専門の大学だという。しかも彼の専門はロケット燃料である。ありきたりの医学生や工科の学生でないところが面白い。超エリートといっても良いだろう。若き日の糸川英夫博士に出会ったようなものだ。

彼との交流は始まったばかりだが、二度目には韓国系大企業に勤める妹を連れてきた。信頼してくれた証拠だ。卒業式に出席してくれれば、大学およびその小都市近辺を案内したいとも言ってくれた。頭が良いのだろう。彼の会話は常にポイントを突いてくる。こうやって信頼関係が築かれていった。金銭を絡めた信頼関係には落とし穴が待っている。

スーチーの言うとおり、ミャンマーは本当に複雑だ。ミャンマー人ですら、その大学の存在を知らない。20年近くヤンゴンに滞在したといっても、目を閉じて巨象を撫でるようなもので、複雑なミャンマーの全体像は見えてこない。この大学生は、本人の気づかぬうちに東西南北研究所の正式所員に採用した。無給ということである。ミャンマービジネスは金銭を絡めると必ず失敗する。

スーチーが目指す民主国家の種はすでに軍事政権の時代に蒔かれている。同時にスーチーが抱える悩みの種も、軍事政権時代に萌芽しているのみならず、歴史をめくると、大英帝国の植民地時代にばら撒かれている。その批難を回避するために、巧妙にスーチーに責任を押し付ける。英国(政府)が老獪といわれるゆえんである。その尻馬に乗る日本のマスコミは情けない。

英語のヘンチクリンな大学生に話を戻そう。当然コンピュータは必須科目だなと水を向けてみた。その応えが最初の出会いであった。



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02: 昨年9月の国連総会

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スーチーが予定していた出席をドタキャンして、代わりに副大統領を国連総会に差し向けた。スーチーは首都ネイピードからミャンマー駐在の外交官および国外のマスコミを対象に英語で演説した。当然CNNやBBCなどで同時中継されることを読み込んだ上での判断である。当然ロイター、AFP、UPIなどの通信社から世界中に報道されることを見越してのスピーチである。

このメルマガでも全文を和訳して解説したので、バックナンバーを参照してほしい。

何を改めてというと、スーチーの主張は正鵠を得ていたと言う事である。的外れどころか、スーチーの主張は大当たりであった。今になって、それがはっきりと見えてきた。

スーチーの新政権発足当時以前から、海外のマスコミは、ラカイン問題について口を閉ざすスーチーの口をこじ開けようとしつこくマイクを突きつけた。

最近の安っぽいマスコミは二者択一の質問しかできない。

仏教徒に味方するかイスラム教徒か? 

安っぽいマスコミに答えれば、火に油を注ぐだけだ。

国内の仏教徒を満足させれば、海外のイスラム教徒を敵に回すことになる。

その逆の答えは国内に大混乱を起こすだけである。

これは、海外の安っぽいマスコミが仕掛けたワナで、ソーシャルネットワークを利用した反スーチー政権のワナでもある。老獪な英国は決して尻尾を出さない。証拠はまったくない。



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03: U2のボノ

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「ミャンマーで今、何が?」を立ち上げた頃、当研究所にはロックバンドに関する資料は皆無だった。

U2のリードボーカリストであるボノはスーチーを支援する「WALK ON(歩き続けなさい!)」を作詞し、ライブ公演のたびに会場で歌いスーチーを励ました。スーチーが軍事独裁者タンシュエから自宅監禁されていた時代である。

ミャンマーに新しい時代が訪れ、解放されたスーチーが最初の欧州ツアーに出かけ、ノルウェーのオスロで念願のノーベル平和賞を手にする。そのとき、世界のセレブ、そしてすでに大金持ちとなったU2のボノが自家用ジェット機でスーチーのアッシー君を勤めた。その途中で企画どおり、アイルランドのダブリンに待機させていたU2のライブ会場にスーチーを拉致して、待たしていたスーチーの息子たちとの再会をステージ上に演出して、U2ファンの大喝采を得た。

このことは、このメルマガ発足まもなく掲載してあるので、バックナンバーを参照願いたい。

そのU2のボノまでが、今回のスーチー・バッシングに加担した。欧米人のミーハーは日本のマスコミ同様にお粗末君である。



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04: SAW WAIという高名な詩人、作家がいる

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といっても、当研究所も恥ずかしながら知らなかった。

ミャンマーの日刊英字紙ミャンマー・タイムズ2018年5月3日付けで、同氏の写真入でU2のボノに宛てた公開レターが掲載されている。

その概略をお伝えしたい。

「まず最初に、ボノと呼び捨てにすることをお許し願いたい。

2017年12月30日にBBCニュースで流され、その後フェースブックで詳細な批難文が掲載されたので、芸術家として芸術家のボノに反論したい。

非常に複雑で微妙なラカイン問題をミャンマーの国家相談役スーチーの責任というボノの発言は非常に短絡的で、理不尽で正しくない。ラカイン問題の調査委員会議長コフィ・アナン氏が指摘したとおり国際社会はそのことを理解すべきである。

ボノの名前は世界的に高名で、私が軍事独裁政権によって投獄されていた時代からミャンマー市民の心に深く刻印されていた。その名前はこの詩人である元囚人の心にも深く銘記されている。

一時はアナタの歌の中で賛美した我々の指導者であるマザー・スーに辞職しろと迫るのは、理解に苦しむ。スーチーは公正な選挙で、何百万というミャンマー国民によって民主的に選ばれた我々の国家相談役である。

実際にラカイン州で何が行われているかも知らずに、溢れるソーシャルメディアの意見に追随して意見を述べるなど笑止千万である。

コフィ・アナン報告書にも書かれているとおり、第一回英緬戦争(1824−1826)の結果、ラカイン州は英領インドに従属させられ、この時期かなりのムスレム(イスラム教徒)人口が急激に増加した。英国の植民地政策はラカイン州における米作耕地を大きく拡張するもので、これにはインドのベンガル地方に住むムスレムを労働力として大量に必要とした

この時点からラカイン州の後進性と人権問題は発生し、今日までその状態がそのまま続いている。マザー・スーのどこに責任があるんですか?

植民地時代から持ち越された歴史的な悲劇の責任をスーチーが取るべきだというのですか?

アナタが自分自身に問いかけるべき質問は、「どうしたらラカイン州の2つの社会が平和に仲良く共存できるか?ということです。特に高名なミュージシャンであるならば、その立場を利用してどんな貢献ができるか?ということではないでしょうか。

ムスレム極右主義者から成り立つアラカン・ロヒンギャー救世軍(ARSA)、アラカン軍(AA:アラカンはラカイン州の旧名)、その関係政党はこの地域に騒乱状態を作り出そうとしている。

もうひとつ大事なことは、タマドウという名前の国軍は2008年憲法によって、スーチー文民政府の指揮下にないということである。

国会議員や民間団体はこれを何とか変えようと闘っている。ムスレム極右主義者によって攻撃され、殺戮され、奪われた農地を、新政府は法律に従い解決しようと図っている。この地ではムスレムだけが犠牲者ではない。非ムスレムの多くの人たちも殺戮された。

北部ラカインで何千人というムスレムがミャンマー当局によって殺戮されたという明確な証拠をボノさんはお持ちですか?

証拠もなしに他人を批難するのはよしましょう。

あなたのお国、UK、も、極右移民の大量入国を我慢できず欧州連合(EU)からの離脱を選択したというではないですか。ラカイン州も不法な移民によって、本来のラカイン人は徐々に少数派になりつつあるのですヨ。

さらに複雑なことには、軍事政権時代の1982年に制定された市民法によって、国民はすべからくミャンマー国民であるという認定手続きを経ねばならない。

ボノさんヨ!アナタはドー・アウンサンスーチーが辞任することによって、これらの複雑な問題がすべて解決できると考えているのですか?
アナタの批難は北部ラカイン州の逃げ出したムスレムだけに焦点を当てた狭量な考えです。
ミャンマー全土には平和に仲良く共存している数多くのムスレムも何百人といるのですヨ。

スーチー母さんは、憲法上の権限はないが、国軍とは法律に則って話し合おうと努力している。だから、なんら根拠なく国軍を批難するのも的外れである。アナタは批難していないが、批難するのであれば、先に揚げたARSAもAAも同時に批難すべきである。

アナタにもうひとつ聞きたいが、世界中の紛争地帯で、それらの国軍はすべて理想的な方法で、フェアな戦いで問題を解決しようとしているとアナタは考えているのですか?

ミャンマー国民や市民団体はASEANや近隣諸国からの助言を考慮し、協力して問題解決を図ろうとしている。どのような解決策も当局が阻止することはない。1824年に種を蒔かれた根の深い問題を、我々は今、平和的に解決しようと努力している最中です。
兵士も、国民も、少数民族も、僧侶も、そして学生も、すべて協力して全国的な和解を目指しているのです。

ミャンマーを含めた190カ国以上の国々が、その宗教など所属社会は異なろうとも、平和で仲良く共存していこうと国連の場で署名したではないですか。

アナタは国際的にも著名なミュージシャンだ。我々はみなアナタを尊敬している。ミャンマー人は世界の友情に飢えている国民である。アナタと友達になりたい。アナタをこの国にお招きしたい。そしてラカイン州に一緒に行きませんか。この多様性豊かな社会に平和を築きませんか?アナタにはアナタの歌を歌っていただきたい。私は自分の詩を朗読しましょう。

私たちが望むのは我々の友人で、敵を作ることではない。

自分たちは自分たちの権利のために今、立ち上がる。

軍人による独裁政権はもうコリゴリだ。

いまさら恐れるものは何一つない」

このSAW WAIは権力にしがみ付く独裁者タンシュエを皮肉る詩集を2008年に発行し、2年間の投獄を宣告された。



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