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<ミャンマーで今、何が?> Vol.255
2018.5.21

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■マスコミではないマスゴミに一言

 ・01: 世界のマスゴミにはミャンマーが見えない

 ・02: スーチーが指摘した重大なポイント

 ・03: THE POST

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)


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01: 世界のマスゴミにはミャンマーが見えない

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大きく出たが、それは事実だ。

50年間以上の軍事政権から民主的フェアな選挙でスーチー新政権が誕生した。ほ
んの2年前のことである。

独裁者タンシュエはテインセインを大統領に据えたが、スーチーは国民の総意で
選出された。

軍事政権の与党USDPが完敗し、野党NLDが大勝利したからだ。

テインセイン内閣は軍服を脱ぎ民主主義を装った。だが、民族服の下は軍服で武
装していた。このことに国民も海外の報道陣も騙されていた。それが国内外に知
れ渡ったのは、与党USDP内部の熾烈な権力闘争があったからだ。

ご承知2015年8月12日深夜から13日未明にかけてネイピードUSDP本部で発生した
与党内紛のクーデターである。

敢えて言えば、徳川政権末期の内乱に酷似している。

当時USDP党首および国会の下院議長であったシュエマンが当時の大統領テインセ
インによって党首の職を剥奪された。シュエマンに忠実だった多くの同調者一派
も同時に放逐された。即日、USDP役員幹部の大幅入れ替えが実行された。かろう
じてシュエマンは国会の下院議長に留まることができた。国会で承認された下院
議長を与党内の内紛で追放すれば、独裁的で非民主的だと海外の反撥を恐れたか
らだ。テインセインもそれだけは思いとどまった。

その当時の与党USDP内部は大きく二分されていた。

頑迷固陋なテインセイン派と、スーチーに肩入れするシュエマン派である。佐幕
派と勤皇派の闘争に例えてもよい。結果、テインセイン派が数の暴力(クーデター)
で、シュエマン派を追放した事件。スーチーが求める民主化への道は風前の灯と
なった。ミャンマーの民主化はテインセインが着手したと、彼を高く評価する外
交団もいるが、これはマグマの動きを察知しない皮相的な見方である。正直この
メルマガも、この内紛クーデターが発生するまでそれが見えなかった。

ここで判断を間違っていけないのは、USDPとは国軍そのものの与党政権党である。
テインセインもシュエマンも国軍出身で、国軍主流派の超エリート将軍である。
その違いは、シュエマンがミャンマーを取り巻く世界の風向きをイチ早くキャッ
チして民主化への舵を切ったことにある。風向きを読んだシュエマンは公然とスー
チーに擦り寄っていった。頭が切れるだけでなく勘が良いということである。し
かも憲法改正にまで口にするようになった。そのシュエマン親分に同調する同志
が国軍内部で着実に増えていった。だが、国軍内部の保守派はそれをタンシュエ
幕府の一大危機と判断したのである。シュエマンにはThuraという軍の敬称から
して武闘派の凄みがある。一方、テインセインはタンシュエのイエスマンで、学
究肌でしかない。風が読めない保守派にはシュエマンほど頭が切れ、凄みのある
リーダーはいなかった。

そして2015年8月という時期は、年末に天下分け目の総選挙が迫り、もう待った
なしのタイミングであった。

タンシュエ幕府を死守しようとする最後のアガキがこのクーデターであった。
総選挙の前にシュエマンの政治生命を絶ち、スーチーとの関係を遮断する。それ
が軍の目的であった。

短絡的に鳥羽伏見の戦いと比較してもよいだろう。

しかも、2015年8月12日深夜のUSDP本部の急襲クーデターには軍部が掌握する警
察権力が動員された。

米国大使館および英国大使館は国家権力を動員した与党内紛だと即座に非難した。
この両国はさすがに正確に情勢を把握していた。テインセインの形だけの民主化
は馬脚を現し、実質は軍事政権そのものと判断したのである。

冷静なスーチーはこれらの動きをいち早く、把握・分析した。

それだからこそ、USDPの後ろ盾を失い総選挙に破れ、議員資格のないシュエマン
を拾い上げ、スーチー新政権に「法務および特別問題査定委員会」という強力な
パワーをもつ特別職を設け、シュエマンをその議長に任命した。

クーデター前は、自分が次期大統領になると公言し、スーチーには例えば首相職
を与え民主化を進めると、外国首脳にも語っていたシュエマンが、逆に大統領の
上に君臨するスーチーから補佐役として上記の新職に任命されたのである。

じっくりと分析すると、「法務および特別問題査定委員会」とは軍部が作成した
現在の2008年憲法を改正するための研究機関であり、国軍内部における隠れたシ
ュエマン同調者を味方につけるためのスーチーの布石である。そして将来、軍部
が法を無視してスーチーを葬る動きに出たときには、このシュエマンの存在およ
び影響力は天下分け目の隠密作戦となるだろう。

だから、テインセインからスーチーへの政権移管は、民主的な選挙制度が確立し
たチャチな欧米諸国や日本とは全く異次元の話である。

それは日本に例えれば、太平の世をむさぼり金属疲労に陥った徳川政権末期の症
状、すなわち、明治維新という荒治療を要した時代背景に相当するのではないだ
ろうか。
米国に例えれば、南北戦争の時代背景に面白いほど酷似している。
前者は1868年で、後者は1861〜1865年という今から150年も昔の話である。
今時のマスゴミは日本でも米国でも、国を二分する天下分け目の内乱が自国内で
発生したことなど、歴史を学んでいない。

だから、ラカイン州のロヒンギャー問題だけを騒ぎ立て、スーチーを国家相談役
から引き摺り下ろそうとする。

スーチーが今、退位すれば、ミャンマーは北朝鮮になるだろう。

ミャンマーでは今この瞬間、先行きが見えない明治維新が、そして南北戦争がデ
ジャビュのようにライブで起こっている。その観点から、ミャンマーを眺めれば、
SAW WAIがU2のボノに書いた公開レターの訴えが読み取れるだろう。



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02: スーチーが指摘した重大なポイント

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スーチーはポイントを押さえて、ネイピードから全世界へ演説したが、海外のマ
スゴミはそれを読み切れなかった。

ラカイン州を取上げるのも結構。ロヒンギャーを取上げるのも結構。だが、...


ARSAや海外で訓練を積んだゲリラがバングラとの国境ラカイン州マウンドウ地区
における山岳地帯に散在するミャンマー政府軍の駐屯地を同時刻に組織的に奇襲
して兵士を殺し、大量の兵器弾薬を奪い、同地区に散在するヒンズー教徒のみな
らずイスラム教徒の一般住民多数を殺戮した。

この地区におけるヒンズー教徒およびイスラム教徒は、すべてインド出身だ。同
じ顔付きだが宗教が異なる。正確に言うと、それぞれの宗教に付随する言語、習
慣、服装、食事の規律が異なる。だが、見る人が見れば、東西南北研究所の所員
を含めて、その差異は一発で分かる。

ヤンゴンを走るタクシーでイスラム教徒の運ちゃんは結構見かける。ダッシュボー
ドで判断するのだ。その中で、ラカイン州出身者にも時折出会う。アナタがラッ
キーならロヒンギャーだと自認する運ちゃんにも巡り会えるはずだ。アナタの器
量(度胸、知力、語学力、態度)にもよるが、ロヒンギャーに関するレクチァー
をタクシー内で受講することも可能だ。

たっぷりとロヒンギャー講座を聞きたいとき、ヤンゴンの交通渋滞は実にありが
たい。だが、マスゴミのレポーターと同じアホな質問を発すると、アナタはヤン
ゴン川の土左衛門になる可能性も無きにしもあらずだ。普通の仏教徒のビルマ人
が尋ねても、この手の運ちゃんは何一つ答えない。アホ面をした日本人の観光客
に化ければ、話に乗ってくれるかもしれない。アホ面を装ってもアクセルとブレー
キを踏み分ける微妙な臨機応変さが必要だ。図に乗ってもいけない。土左衛門に
なりなくなかったら、謙虚でありたい。

話が横道に逸れた。

演説でスーチーは気の利いたことを言っている。

殺戮されたイスラム教徒にだけ焦点を当てるのではなく、同じイスラム教徒でも、
他の民族と平和に共存しているイスラム家族は多数いる。これはラカイン州だけ
でなく、ミャンマー全土でも平和な共存が行われている事実がある。

バランスをとって、それらの人びとのことも、世界に向けて報道してほしい、と。


スーチーの哲学は、木だけを見ないで森も見よ、といっているのである。同時に、
森だけ見ないで木も見なさい、とアホなマスゴミに諭しているのである。

同時にスーチーの哲学は、東洋思想の「中庸を重んじる」という精神が滲み出て
いる。右にも左にも偏らないで真ん中の道を歩めということである。いや、これ
は東洋思想のみならず、ピタゴラスとプラトンを経てアリストテレスも語ってい
る。東西の泰斗が期せずしてつぶやいた珠玉の言葉だ。



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03: THE POST

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これは昨年12月22日に米国で封切されたスピルバーグ演出・監督、メリル・スト
リープ主演、トム・ハンクス共演の話題の映画である。ポストとはワシントン・
ポスト新聞社(WP)のことである。ベトナム戦争に深く関与していた米国国防省
の極秘文書を入手したWPがその極秘文書を掲載するかどうかで社内の重役会議は
喧々諤々となる。時代は1971年のことで、当時のニクソン政権は最高権力を用い
て国家反逆罪にも相当すると新聞社を恫喝する。

2017年11月に大統領に当選したドナルド・トランプの出現によって、アメリカン
の言論界は1971年当時と酷似した危険な状態になった、というのがスピルバーグ
がこの映画を製作した動機だ。

映画のエンディングは、アメリカ憲法は言論の自由を保障していると最高裁が判
断を下し、WP社をはじめとするアメリカの言論界が憲法によって擁護され、勝利
した物語である。一括りでアメリカやイギリスというと、歴史を歪曲したり、戦
争や貿易におけるゴリ押しなど、汚点は多数あるが、一方でアメリカには建国の
精神に基づいた民主主義と自由を死守するという、この映画に描かれたように、
米国の良心が存在する。米国の最高権力者である大統領にすら噛み付く。

それに比べると、役人にあるいは大臣に一喝されると、おとなしく忖度してしま
う日本の言論界・放送界の無力さはあまりにも情けない。

日本ではこの映画はまだ封切りになっていないと思うが、じっくり味わってほし
い。
世界の最先端を行くヤンゴンではすでに一ヶ月前にこの海賊版DVDが出回ってい
る。
ミャンマーを、そしてヤンゴンを見くびってはいけない。情報開示という点では、
アメリカより2〜3週間しか遅れていない。

アメリカの二大新聞といえば、ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズで
ある。
正確な西暦年は忘れたが、インターネットの登場で、米国の新聞販売数が大幅に
激減した。実際に多くの新聞社が経営破綻に追い込まれた。

ちょうどその時に、PAGE ONEというDVDをヤンゴンで入手した。ページワンとは
新聞の第一面という意味である。しかも、ニューヨーク・タイムズ紙の「第一面」
である。
社内の編集会議が熱を帯びる。その日の割付が決まる。輪転機が回る。インクの
香る第一版が深夜の早朝にトラックに積み込まれる。ドキュメンタリーである。

ニューヨーク・タイムズの内幕ものといってもよいだろう。

二本の映画PAGE ONEとTHE POSTをじっくりと鑑賞すれば、米国ジャーナリスト界
の凄さが見えてくる。

同様に英国のBBCが作成したDVDの内容の質の高さはどの分野においてもズバ抜け
ている。
アマゾンで購入することも可能だろう。だが、日本語の字幕で鑑賞していたら、
その本質を見抜けないだろう。あの早口で喋るニューヨーカーの全文量を、すべ
てスクリーン字幕に書き取ることはムリだからである。

これらを真摯に学ぶなら、ヤンゴンこそ最適の環境である。決して東京ではない。


話は横道に逸れるが、トランプがその米国の指導者に選ばれて、確立された世界
の骨組みが次々に崩されていく。もういちど米国というものを知りたくなった。
手に入れたのが、オリバー・ストーン監督のUNTOLD HISTORY OF THE UNITED 
STATESである。
4枚組みのDVDである。今の若者は活字離れが進んでいる。ワタシもその仲間だ。
分厚い書物だと眠くなる。集中力が続かない。DVDだと、深夜にグラスを片手に
たっぷりと楽しめる。理解できない部分は巻き戻せばよい。何度でも。これが東
西南北研究所方式だ。

米国の歴史については、プリンストンやイェール大学の教授など多数のDVDがレ
クチャーしてくれる、だが、O・ストーン監督が自身でナレーションを担当する
このDVDが最高で秀逸だ。

土着のネイティブ・インディアンを殺戮し、辺境地帯に砦が築かれ、旧大陸から
移民が押寄せる。フレンチ、ジャーマン、アイリッシュ、イタリアン、そして横
断鉄道建設で中国人が新大陸にやってくる。大農園を賄うためにアフリカからの
奴隷貿易が始まる。薄っぺらなアメリカンだが、D・トランプに至るまでの歴史
は多彩で深い。

135の民族を抱えるミャンマーと相通じるものがある。だからアメリカ政府のミ
ャンマー理解はポイントをついている。

経済発展しか語れない日本の外務大臣に、「ミャンマーは複雑なんです」とスー
チーは語った。

その違いは当然ミャンマーの外交姿勢に反映される。




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