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<ミャンマーで今、何が?> Vol.257
2018.7.3

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■またまた長いご無沙汰です

 ・01: 不便こそ至福のとき

 ・02: メルマガが続行できるか?

 ・03: Matriculation(マトリキュレーション)という英単語をご存知ですか?

 ・04: Thura U Shwe Mannのパフォーマンス

 ・05: シュエマンが本を出版した

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)


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01: 不便こそ至福のとき

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モンスーン雨季は本格化し、エアコンだと冷えすぎ、扇風機で室内を攪拌する。停電も予期せぬときに発生する。頻繁にパソコンを中断すると、集中力が消えていく。ローソクを何本か灯し、資料読み込みに切り替えるが、湿気と熱気で、それも長続きしない。ベッドにござを敷き、ローソクを消し、暗闇の中で空想にふけり眠りに落ちていく。

カビの問題もあるが、それでもワタシはこの季節が大好きだ。トタン屋根を叩く雨音を聞きながら、目を閉じ妄想にふける。昼間なら、窓辺に移動して、ワンダーランドの読書タイムだ。停電なので、玄関のチャイムは鳴らない。直接ドアがノックされる。久しぶりに英国からの友人だ。もどかしいように情報交換が始まる。新規の電話番号も確認しあった。タクシー乗り場まで見送る途中で事件が起きた。”シット!“と本当に犬の糞を踏みつけたのだ。小雨の降る中、小砂利や草むらにサンダルを擦り付け、イギリス人が苦労している。英国人は植民地化までは成功したが、ヤンゴンの町を快適に闊歩できるほど器用ではない。

またしてもドアがノックされた。思いがけずも山形県新庄市からの友人だ。米作りの名人である。ありがたいことに二人で飲むには十分すぎる冷えたビールを差し入れしてくれた。これも便利な電話が通じない故のセレンディピディである。今の世の中は、「便利さ」にドップリとつかりすぎている。子供の時代、孫の時代、そして、ひ孫の時代と順に、「便利さ中毒」に侵されていく。そして人間を、ひいては国民をダメにしていくような気がする。



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02: メルマガが続行できるか?

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実はこのメルマガ原稿が日本のプロバイダー殿にキチンと配達され、オンラインにアップロードできるのか、不安なまま発信を試みるつもりである。

実は、この前にも原稿を用意してトライしてみたが、原稿添付発信できなかった。ヤンゴンに戻って以来、自分自身のGMAILアカウントが使用できないのである。だから、日本の友人へのヤンゴンへ戻った礼状も発信できないままだ。ましてや、受信していても受信箱は開封できないままだ。不義理はワタシの得意技だ。そして今、何とか新設できた新期アカウントで発信を試みるところである。

ですから、このメルマガ原稿にも一抹の不安が残る。

ということで、以下の文章も気楽な原稿である。

だが、これが上手くいったら、しばらくは「ミャンマーで今、何が?」に集中して見たい。



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03: Matriculation(マトリキュレーション)という英単語をご存知ですか?

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ヤンゴンでは子供でも全員知っている英単語である。ODE新英和辞典には“大学入学許可”と説明してある。ミャンマーでは英国植民地時代の教育制度が今も痕跡を残している。植民地時代のアウンサン将軍も知っていたし、その娘のアウンサンスーチーも知っている。それは当然として、現代の子供でも知っている英単語である。

だが、マトリキュレーションの制度を知るヤンゴンの日本人は非常に少ない。そのくせ、ミャンマーでは英語が通じなくてネと嘆く。それが思い上がった日本人の実話である。

ミャンマーでは、最終学年の高校3年生になると、天下分け目の試験が全国一斉に行われる。合格すれば大学に進学できる。だが得点数によって、一流大学の工学部・医学部、二三流大学の生物学部・動物学部などと厳密に仕分けられる。失敗すれば、大学に進学できない。浪人は一年だけ認められる。

この教育制度はスコットランドを除く英国全土で実施されてきた大学入学試験で、現在はGCE(General Certificate of Education)に取って代わられたという。スーチー新政権は、国家の礎は人材にありとして若者の教育改革に心血を注いでいる。そして重要優先課題のひとつとして教育制度の見直しを諸関係省庁に命じている。文部省だけの専管事項ではない。

だが、海外からの圧力は、経済発展に異常なほど重点を置き、経済インフラを優先させ、人材など廉価な単純労働の供給源としか看做していない。申し訳程度の単純技能を身につけさせ、自国ファーストの身勝手さで、自国民の嫌がる職種に充当させるのが、海外各国の狙いである。それでも、仕事の無い、手の職の無い一般労働者は、安い賃金であっても、海外に職を求める。それによって、出稼ぎであるが故の深刻な家庭不和が家庭内に生じ、悲劇のドラマを抱え込む。

それが、ロヒンギャ問題の本質であり、地中海で長年発生しているボートピープルの本質であるが、今回それは取り上げない。問題提議だけに留めておく。

2017-2018年教育年度のマトリキュレーション試験結果は、全国の地方管区で今年6月1日に発表された。余談だが、バングラとの国境の町ラカイン州マウントウ町区の合格率は前年比2倍に上昇した。この辺りからも、同町区が平穏になってきた曙光と見てよいのではないだろうか。

英語のプロを目指す老書生が、恥ずかしながら、英語を学ぶコツを近所の学生たちに手探りで教えている。寺子屋の真似事だが、その中の2名が今年の合格者である。母親一人に育てられた貧しい家庭の17歳の女子学生と同様の16歳の男子学生である。それぞれに家庭の事情があるのだろう。自分から話しだすまで理由は問わない。そのせいか非常にシャイで自信のない振る舞いをする。欠点など誰にでもある。それらはすべて横に置き、良い点を少しでも見つけて勇気付けると明るさが行動に現れる。教官でもあった山本五十六の「ヤッテミセ、イッテキカセテ、サセテミテ、ホメテヤラネバ、人は動かじ!」の真似事である。

合格すればラッキーだが、不合格の息子をもつ母親もいる。高校卒業だとほとんど仕事に就けない。せいぜいレストランの皿洗いか給仕、あるいはコンビニ店員のアルバイトしかない。薄給なため、母親は借金をしてトゥーイッションに入れるという。このTuitionもミャンマーではほとんどの人が知る英単語である。話を聞いて見ると、ヤンゴン郊外の僧院に一年間籠り、次回のそしてラストチャンスの大学入試試験に備えるという。僧院なら頭を丸めるのかと聞くと、瞑想のためではなく受験勉強に専念する寺籠りだという。そして高等学校の女性校長がつきっきりで一年間男女の学生全員に指導するという。携帯は取り上げられ、この校長先生経由でないと緊急の連絡は取れないという。

この校長先生には結構なアルバイトだが、出来の悪い子供をもつ親には、頭の痛い出費となる。これだけが理由ではないが、スーチー新政権は暗記中心の現行教育制度は見直すべきと、関係省庁と真剣に改革策を話し合っている。



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04: Thura U Shwe Mannのパフォーマンス

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当研究所が最も注目している政府高官のひとりがこのシュエマンである。これまで存在しなかった絶大な権力をもつポストをスーチーが用意して就任させた人物である。肩書きはミャンマー連邦議会法律関連・特別問題査定委員会議長となっている。肝心の民主化精神が盛り込まれていない2008年憲法の見直しが本来の仕事と思われるが、憲法・各法律を理由に議会にでも、大臣・省庁に対しても難癖をつけられる立場にある。そして軍事政権時代、タンシュエ、マウンエイという国家権力トップ2に次ぐ第三位に君臨していただけに、前大統領のテインセイン、そして国防軍現最高司令官であるミンアウンラインなど屁とも思わない凄みがある。

タンシュエがテインセインを自分の指でピックアップして大統領に据えたように、スーチーも議席を失いただのヒトとなったシュエマンを拾い上げ、この重要なポストに据えた。シュエマンはこのポストを引き受けるにあたり、ひとつだけ注文を付けた。「自分の後半生は自分のためでなく、ミャンマー国家のために尽くしたい。だから年間俸給は米国通貨で1ドルだけ頂きたい」と。格好良すぎるほどのセリフだ。スーチーは同意した。スーチーの深読みと配慮を上っ面だけで捕らえたら、何一つ見えていないことになる。経済面だけで捕らえたら、なおさらである。

今回は試験的な原稿発信なので、いい加減な話で終わらせたい。

シュエマンは6月16日に首都ネイピード片田舎の僧院で開催された、今年のマトリキュレーション試験に合格したずば抜けて成績の良かった学生を顕彰する式典に出席した。その式典でのシュエマンのスピーチである。

「試験に合格した生徒はもちろんのこと、その学校の教師、そして両親たちも祝福したい。同時に、受験に失敗した生徒たちも勇気付けたい。官民あげて、失敗した生徒たちを応援してあげてほしい。政府は国会をはじめとして教育制度の改革に取り組んでいる・・・」

一時はテインセインのあと次期大統領と、本人自身をはじめ内外の政治評論家までが予測した人物である。だが、一寸先は闇が政治の世界である。一転してシュエマンは奈落の底に突き落とされた。突き落としたテインセインと突き落とされたシュエマンとは今では犬猿の仲と言われている。地獄の底を覗いたシュエマンだけに受験に失敗した学生にまで思いを馳せる境地になったのであろう。だが、それはスーチーの意向を汲んだものでもある。



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05: シュエマンが本を出版した

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発行は今年4月で、ビルマ語版である。英語版が発行されていないか、書店をはじめインテリ友人を片っ端から当たってみた。そして今年6月に英語版の出版が確認できた。

その題名は「The Lady, I and Affairs of State」(仮訳:レディと私、そして国家問題)とある。先にも言及したが、シュエマンとはタンシュエが引退した後、テインセインやミンアウンラインにもヅケヅケと思い切ったことが言える立場にある。ページ数はわずか129ページの小冊子だが、内容は地獄の底を含めて実に読みごたえがある。

もし今回のアップロードが上手くいくようならば、それを解説するところから、「ミャンマーで今、何が?」の復活を図りたい。

日本のABCさんに対するインパール作戦検証のお約束も、それきりになってしまった。資料など肝心なところは抑えたつもりである。次回お会いする機会にはそれもお渡ししたい。なお、インパールを追跡するうちに、日本のエリートと言われる指導者たちの無策についても、明らかになったきた。かといって彼らもワレワレの血族であり、先輩である。そのお粗末な性質は自分に当てはまると同時に、残念ながら現代の日本政治経済の指導者にも当てはまるようだ。

英国は今、先輩たちが長年かけて築き上げてきたEUという欧州共同体からの離脱を国民総選挙の結果、実行しようと苦労している。英国の老獪さは経済的にスターリング・ポンドだけはEU統合象徴のユーロ通貨から並行させて存続させたことにある。

米国は、第二次世界大戦後、経済的に自由世界の盟主として自国通貨の米ドルを唯一の国際通貨として認めさせたが、国内事情は貿易赤字だ、財政赤字だと、国家戦略をアメリカ・ファーストに切り替えざるを得ない状況に陥っている。 戦後米国主導で70年以上も維持してきた制度疲労の表れで、破壊者ドナルド・トランプの出現は必然的な現象であった。国際諸制度のぶっ壊しが、これから至る所ではじまるだろう。

このように世界中のマグマが大きく変化移動する中で、旧態依然の祖国日本の反応が至極心配だ。このミャンマーでも、スーチーの登場、そして民主新政権の発足、ラカイン問題を含めての英国をはじめとするマスゴミのスーチー・バッシング、それらへの分析を含めてスーチー政権の対応は素早い。強調しておきたいが、ミャンマーにとっては経済分野だけでなく、教育問題などの主要な国造りが必須である。スーチーは今、国家最高権力者として、多角的に同時に国を動かそうとしている。非常にダイナミックな動きだ。

ビルマ独立半年前の1947年7月19日に銃弾に倒れたアウンサン将軍をはじめとする合計9名の殉難者を悼む記念日が再び巡ってくる。

今年は第71回目の殉難者の日となり、例年国民の休日に指定されている。副大統領のミエンスエが殉難者記念日準備委員会の委員長を務め、別途にアウンサン将軍伝記映画製作の委員会も設定された。中にはスーチーの身内主義と非難する記事も垣間見えるが、これはミャンマーの実態が見えていないマスゴミのタワゴトで、前軍事政権はスーチーとアウンサン将軍とのシナジー効果を極度に恐れ、アウンサン将軍が自分たち国軍の生みの親であるにもかかわらず、この両者を引き裂くことに異常なほどの心血を注いできた。アウンサン将軍復活はスーチー指示ではなく、国民の声の勝利で、軍部の影響力が徐々に衰退していることを表している。

少し蛇足が過ぎたようだ。では、現行発信に挑戦してみたい。




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