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<ミャンマーで今、何が?> Vol.26
2013.1.9

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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━━ヤンゴンより2013年年頭のご挨拶━━━━━

トロピカルのヤンゴンより
新年のご挨拶をお送りします。

皆さまにとって2013年が楽しく有意義な年となりますよう祈願いたします。
ミャンマーにとっては‘丁’と出るか‘半’と出るか激動の年になりそうです。


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年末も押し詰まった昨年12月26日にアメリカ最大の通信社AP通信からミャンマーの2013年を左右する飛び切りのニュースが配信された。

国内で推進中の改革を阻害する汚職・贈収賄・非能率が役所内にはびこっていると異例の自己政府批判を行ったテインセイン大統領のニュースである。

これはオーバーな言い方をすると大統領にとっては‘関が原’ともいうべき重要な発言なので解説を挟んでAP電全文をお届けしたい。

東洋思想では諸行無常、英語でも“ナッシング・イズ・パーマネント”と訳している意義のある動きである。

テインセイン大統領が踏込んだこの一歩は時期尚早なのではと危惧される薄氷を踏むような大決断で、2013年のミャンマーにさらなる大変革が訪れる光明の兆しとも見えるし、繰り返すが、大統領自身の立場が危惧される時期尚早の動きともとれるのである。

同大統領は内閣諸大臣・地方政府指導者・その他役所高官の集まりで彼らを叱責する演説を行い、その模様は全国中継のテレビ・ラジオで流された。

そしてこれが12月26日の中継放送だけでなく、翌27日・28日もビデオで流され、連続3日間のテレビおよびラジオ放送となった。大統領の決意が並々ならぬものだということである。

自分たちの失敗を決して認めなかった前軍事政権の秘密主義的指導部とは鮮烈な違いを明確に示すものである。

2011年3月の政権発足後、テインセイン大統領は自由・民主主義に向けた新しい改革の波を次々に起こし、半世紀にわたるミャンマーの軍事政権を外の世界に向けて開国することに成功した。

大統領はこの集会で、政府は変革の第1波として政治的変革と国民和解に重点を置き、第2波はミャンマー経済再建に力点を置いてきたと語った。そして第3の波として今、汚職撲滅を目指すと同大統領は決意を語った。

“ミャンマーは国の舵取りという点ではまだまだ脆弱で国際的な標準からは遥かに遅れている。良き政治を実行するためには贈収賄・汚職を効率的に阻止することが必須だ”と大統領は語った。

テインセイン大統領はこれまでにも汚職撲滅の必要性をたびたび語っており、“良き政治と清潔な政府”を実現するためとして、繰返し政府高官に語ってきた。

“しかし、政府の各省庁部内、各レベルでは国民の諸々の声を無視し、今でも透明性に欠けているのが実情である”と大統領は指摘する。

大統領は改革の輪郭は示さなかったが、役所内の清掃と総点検が“ミャンマーの改革・発展戦略にとっては第3番目の新局面になる”と語った。

軍事政権当時は首相であったこの67歳になる元将軍は、メディアの直接検閲を廃止し、政治犯を釈放し、民衆デモを許可するなど国際的に改革の先鋒者としての評価を受けてきた。

12月24日の国連総会ではミャンマーの積極的改革を歓迎する決議がなされたが、同時にラカイン州を2分するムスレムと仏教徒の宗教戦争に深刻な懸念が表明された。この決議は国際社会においては人権問題、基本的な自由への懸念として反響を呼んだ。

以上がAP電の骨格であるが、もう少し詳しく見てみたい。



この大統領演説では政府首脳が全員揃って列席したことになっているがただひとり欠席した人物がいる。国防省最高司令官ミンアウンライン副上級将軍である。

国家元首であったタンシュエ最高議長が軍服を脱ぎ表面的には一市民となり、テインセインおよびシュエマンなどの元将軍も軍服を脱ぎ、表面的には民主的な現政権の首脳となっている今、軍籍を保持している上記最高司令官がミャンマー国軍の最高位にランクされる人物である。彼の組織上の地位は国防省に組み込まれているが、実質的な発言権および影響力は国防大臣を遥かに上回っている。

したがって、同最高司令官がテインセイン大統領の演説発表に欠席したことはミャンマー国軍が大統領声明に反対していると見ねばならない。

テインセイン大統領は大統領府を含め自身の周りを改革派で固めたとはいえ、軍内部には強硬な保守派は多数おり、その微妙なバランスの上で、現政権は保たれている。

スーチー女史率いるNLD政党の補欠選挙参加、そしてスーチー女史の議会入りと表面的には民主化が進展しているように見えるが、旧軍事政権が作成したミャンマー国憲法は改正されず、今のままでは2015年に予定される大統領選挙でスーチー議員が大統領選に出馬する資格もなく、国軍は議席数の4分の一を選挙を経ずに指名できる仕組みとなっている。

現在のテインセイン大統領は国民の支持・支援を頼りにミャンマーから汚職・贈収賄を追放する。ついては、これまでに強制された汚職の経緯を大統領府の目安箱に報告するよう呼びかけており、これは告訴人の名前を明記してもよし、無記名でも受け付けるとしている。

しかしながら、それら一つ一つのケースに国権最高機関としての司法長官ないし会計監査のメスが入れば、当然、行着く先のトップは“元国家元首”ということになる。そこまで行けば敵も死に物狂いの反撃を仕掛けてくるだろう。したがって、今テインセイン大統領が第3の波としてアンチ汚職のキャンペーンを開始したことが、時期尚早ではないかという危惧に?がるのである。

いくら世間が歓迎し、海外首脳およびマスコミからは激賞されているとはいえ改革派テインセイン大統領の見えぬ敵は国軍内部には充満している。そして、ミャンマー国憲法もまだ手付かずのままである。その状態のままでアンチ汚職を第3の波として立ち上げることが正解なのかというのが、ミャンマー国内で有力識者の密かな論議の的となっている。

さあ、賢明な週刊メルマガの皆さんはどのような読みをされますか。東西南北研究所が激動の年と名づけた意味がお分かりいただけたでしょうか。





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