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<ミャンマーで今、何が?> Vol.260
2018.7.11

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■シュエマン著「レディと私、そして国家問題」その2

 ・09: インタビュー取材の方法、西と東

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)


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09: インタビュー取材の方法、西と東

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権力の絶頂から、ジェットコースターのスピードで、奈落の底まで一気に突き落とされた男がいる。今回は、そこに至るシュエマンのドラマ人生劇場をお届けしたい。

シュエマンは2015年8月12日夕方まで、ミャンマーの最高権力者に最も近いところにいた。憲法上の最高権力者はテインセインである。だが、残り5年ある大統領任期を断念させられ、中間大統領選挙への不出馬に追い込まれた。追い込んだのが策士シュエマンである。テインセインはすでにレイムダックであった。

国内外の関心は一気に次期大統領に注がれた。当り馬券間違いなしの大本命がシュエマンである。憲法上大統領資格の無いスーチーが、不思議なことに、ダークホースとして浮上してきた。スーチーのマスコミ作戦である。無謀とも思える戦略だが、スーチーはシュエマン以上のしたたかな策士であった。

スーチーを政治のド素人と断定し、あるいはスーチーの率いるNLDを日本の民主党に譬えて、スーチーの資質を完全に見誤っていたマスコミがいる。それが残念ながら日本のマスゴミである。その報道姿勢は今も変わっていない。英米の大使館はミャンマー政界の複雑な動きを実に事細かに把握していた。そして、それを欧米の一流報道機関にリークしている。

スーチーがNHK WORLDからの異例の独占インタビューを快諾し、ラカイン問題について英語で応答している、日本の報道姿勢が今も変わっていないというのは、その質問内容でも判断できる。当事務所にTVはないが、2018年6月10日付け英文日刊紙GNLMに全文掲載されたので、英語の勉強を兼ねて、何度も読み直して見た。5段組で裏表2ページ+半ページ、合計2.5頁、をフルに使い、インタビュー記事が漏れなく報じられている。日付に注目してほしい。ほんの一ヶ月前の話しだ。

例を挙げよう。ロヒンギャ問題でミャンマーは国際社会から非難を受け、この問題は非常に複雑な要素を含んでいるとのことだが、なにがそんなに複雑なのか、そしてどうして解決に時間がかかるのか、説明してもらえるか、という質問が発せられた。実は、これに類した質問が延々と続く。

スーチーは、間もなく、質問のレベルの低さに気づく。特派員を常設している一流の報道機関ならば、その辺りの実態はとっくに学習済みのはずではないかと、がっかりした表情だ。だから、質問に対して、”I don’t think”(私はそうは思わない)を連発している。このインタビューを引き受けたときに、スーチーはもっと核心に触れる。突っ込んだ質問を期待したはずだ。それは文面からヒシヒシと感じられる。

イエロージャーナリズム並みに、最初からミャンマーに非があると決め付け、スーチー政権は2年掛けてもほとんど進展がない、と非難がましい質問が続く。スーチーは子供に諭すように;歴史的にも、軍事政権時代にも、長いこと解決できなかった問題で、ミャンマーとバングラの双方で解決すべき2 WAY BUSINESS(二国間で努力すべき問題)で、まずは二国間の信頼を築き上げる2 WAY BUSINESS(相互理解)が必要である。だから、現政権でやってきたのは両国の大使をはじめ、両国の外務省各レベル、両国の軍首脳および両国国境警備パトロール隊などで緊密な話し合いを続け、国連にも協力を願い、スムースな交渉を積み重ねていると段階だ回答する。

そのようなこともご存じないんですかと、スーチーは明らかにイライラが募る。丁寧な応答に努めているようだが、スーチーの苛立ちは明白だ。国際社会の見解(*そのような統一見解が存在するのか?)という言葉は使用するが、NHK自身の見解は投げかけず欧米レポーターの受け売りをベースに質問している。しかも、長い時間を掛けて、なぜ新政権はこの問題を解決できないのかいう難詰調が続く。スーチーは、この点については何度も繰り返し説明したが・・・とウンザリした表情だ。挙句の果てには、質問者の意図が分からないとまで、スーチーに言わせている。

質問が突飛な形で飛躍する;ラカイン問題を取材したロイター通信社のジャーナリスト二名が最近逮捕された。ミャンマーの言論の自由には限界があり、民主的ではないと、国際社会から批判されているが、アナタはこれにどう答えるか?ミャンマーの民主主義とは国際社会が信ずる民主主義とどう異なるのか?と愚問を発している。(*またしても国際社会だ)

これに対するスーチーの答えは明瞭だ。彼らが逮捕されたのはラカイン問題取材のためではない。ミャンマー国の国家機密法を犯したからである。ご存知だと思うが、この裁判の進行状況には誰もがアクセス可能だ。確か、NHKの特派員も毎回出席していると承知している。新政権下では、司法制度を確立し、すべて法の裁きによって正否は判断される。我々が口出しできることではない。裁判所の決定に従うだけだ。

(*特派員が毎回出席しながら、この裁判が国家機密法に違反し、ラカイン取材ではないことを、ご存じないんですかと、スーチーはあきれ返っている)

愚問は続く;国際社会の多くの団体が二名のジャーナリストの即時釈放を要求している。国際社会のこれらの声をアナタはどう見ていますか?(*国際社会に丸投げした形で、これではNHKの主体性、意見はどこにもない。あまりにも情けないではないか。口はすべるが、日本の国会での証人喚問を怖れて、政府の顔色を伺い忖度して、発言を曖昧にする軟弱な報道姿勢をミャンマーにまで持ち込んで、それこそ国際社会で通用すると思っているのだろうか?スーチーに見透かされるような愚問に、日本の報道陣は本当に大丈夫なのかと心配になってしまう)

話は完全に横道に逸れてしまった。

だが、その反証として、イギリスを代表するBBC(英国放送協会)ビルマ支局の実例を挙げてみよう。シュエマンの「レディと私、そして国家問題」に収録されているシュエマンとの独占インタビューである。

収録されたのは2015年7月28日。なんと、今回明らかになった“真夜中のクーデター”のたった2週間前の収録である。タイミングが実に絶妙で、それだけに軍部によるクーデターがなぜ発生したのか暗示しているようだ。BBC取材陣の事前調査が凄い。

インタビューは年末11月に控えた総選挙のことから、さりげなく始まった。

BBC; 2010年の総選挙ではZeyar Thirの選挙区から出馬したのに、今回はPhyuから出馬すると聞いた。どうして、同じ選挙区から出馬しないのか?

議長; Phyuは自分が生まれた土地だ。2010年の選挙では大半の票を勝ち取った。そして選挙区Zeyar Thirのために自分はこれまでも大いに尽くしてきた。今度は生まれ故郷と国家のために尽くしたい。(*いかにも政治家らしい答えだ、だから、BBCは納得しない)

BBC; ニュースによれば、Zeyar Thirの軍人票は選挙委員会に対して、アナタから国会議員の資格を剥奪するよう嘆願書を提出したと聞いている。これが選挙区変更の本当の理由ではないのか?(*一気に核心を突く)

議長; そうではない。それとは関係ない。(予期せぬ質問だったのだろう。言葉少なだ)

BBC; 嘆願書によれば、アナタは国会議員としての義務を履行せず、憲法の特定事項に違反したとしている。議長殿、これにはなんと答えますか?(*質問はしつこく、シュエマンを追い詰める)

議長; 自分の行為に対しては説明責任がある。彼らが自分を除籍しようとするのであれば、自分は受けてたつ用意がある。すべては法に従って行動するつもりだ。(*気楽なインタビューではないと、悟ったようだ)

BBC; 彼らの非難の理由のひとつが、アナタはタマドウ(Tatmadaw=国防軍のこと)と国民を裏切ったと執拗に追求している。これにはなんと答えますか?(*BBCの追求も執拗だ)

議長; それではここで“忠誠心”の意味をはっきりさせておく必要がある。どのような事実から彼らは私がタマドウと国民を裏切ったと言うのか?これをはっきりさせるべきだ。わが国には、未熟な人々と、未熟な政府関係者がいる。自分たちが発言する、または書くことについて十分に理解せずに、他人の意見に同調して発言し、書く人たちがいることに注意すべきだ。(*シュエマンはここで、付和雷同の輩を逆に攻撃している。NHKは3年前のシュエマンのこの独占インタビューすら勉強せずに臨んだのだろうか?)

ここで話題は変わる。(*話はさらに長くなるが、重要なポイントなので、流れに任せたい)

BBC; スーチーとは頻繁にお会いになっていると了解する。両者間での了解事項、合意事項はあるのか?

議長; 確かに、了解事項、合意事項、そして相互間の信頼関係がある。合意事項は、国家と国民の利益のために両者協力するということだが、総選挙ではお互いに競い合い、ベストを尽くすということである。別の言葉でいえば、 “紳士協定”である。

BBC; 今回の選挙に出馬する軍部の三分の二は軍籍を去り、党認定の候補者ではないと聞き及んでいる。どうして、そういうことになったのか? (*このインタビューの時点では、シュエマンが国防軍政党USDPの党首で、選挙準備を含めて、軍の代表と信じられていた。一方で、BBCはすでに内部分裂の兆候を嗅ぎ付けている)

議長; これこそ正に前の質問で、私が答えた通りである。

BBC; 長いこと軍政の指揮下にあった翼賛団体USDAが政党の体裁を装ったのがUSDPなので、政府と軍部が一方の側にいて、シュエマンとスーチーが手を握り対立する構図は、これはUSDP(与党)の戦略・策略だと懸念する声もある。この状態をどうクリアできるか?
議長; この問題に関しては、スーチーに直接聞くのが適当だろう。もし機会があれば、政府と軍部にも聞いたほうが良い。私に聞かれるなら、自分の性質として、言葉をその場その場で変更する習癖はない。自分の希望としては、正直に率直に語り、行動もそうしたいと思っている。一部の人は、政治は複雑なので、常に純粋で正直である必要はないと忠告する。私は自分の性質まで偽りウソはつきたくない。

BBC;話を憲法修正に移したい。
国会内における議員たちの憲法修正案は、軍人票の不賛成で流れてしまった。民主改革にとって25%を占める軍人代表は障害になっていると思うか? この数字を減らす妙案はお持ちか?

議長; 憲法改正の手続きを通して、軍人議席団と執行部の立場について、真剣に検討すべきだと感じた。われ我は、憲法条項のすべてを改正しようとしたのではない。そのアプローチ方法は改正すべきは改正し、そうでない条項はそのまま維持し存続させるという分類をした。

BBC; これは仮定の質問だが、2015年の選挙で大統領になれなければ、アナタは政界から引退する考えをお持ちか? (*BBCの取材には忖度という言葉はない)

議長; 政治は先を予測することが難しい。それでも、政治家および政党は目的を持つべきである。私はかって兵士だった。アウンサン将軍が語った言葉がある。「ベストを望む、だがワースト(最悪の結果)に備えよ!」(Hope for the BEST, prepare for the WORST!=*筆者の大好きな言葉で、ミャンマーの人たちは将軍といえば、常にこの言葉を思い出す) 私はこの言葉を座右の銘にしている。私個人としては、自分が健康である限りは、国家と国民の利益のために仕える覚悟である。機会が与えられれば、私は、そのように献身したい。


以上がインタビューの要旨である。


今回は選挙に落選し地獄を覗いたシュエマン一家の運命、そしてシュエマンが到達した心境についてお伝えするつもりが、いつもの通りで、横道に逸れてしまった。

スピールバーグ監督の映画「THE POST」については、前にも触れた。経営の浮沈を幾度も経験したワシントンポスト紙を銀行家のマイヤーが競売で買い取った。その女婿であるフィリップ・グラハムが経営を拡大し順調に伸ばすが、1963年フィリップが自殺。経営は夫人で、マイヤーの娘キャサリン・グラハムに委ねられる。お嬢さん育ちで、ワシントン社交界の華であったキャサリンがド素人から脱皮して、ポスト紙をニューヨークタイムズ紙に並ぶ世界の超一流紙に育て上げたストーリーだ。スーチーにダブルものがある。

この映画の主題は、偶然手に入れた米国国防省の機密書類を、ワシントンボスト社の幹部連中がキャサリンを囲み、掲載するかどうか喧々諤々の議論が堂々巡りをする。社交上手なキャサリンには大統領に直結する政府高官にまで友人が多数いる。そして最後は、最高裁判所まで巻き込んで、論陣を張りアメリカ憲法が保障する「言論の自由」を獲得する。キャサリンはアメリカが誇る言論界の自由の女神となった。もうド素人とは呼ばさない。スーチーに似ていませんか。日本ではアメリカというと、トランプと一緒くたにするが、その内部を覗くと、健全な思想の持ち主が、立派に存在することが分かる。今回の二つのインタビューでそのことが見えてきた。


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