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<ミャンマーで今、何が?> Vol.268
2018.9.3

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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■海賊版DVDによる教育

 ・01: ミャンマーの英語教育

 ・02: 国家建設の基礎は若者にあり

 ・03: 海賊版コピーなどと言うなかれ

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)


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01: ミャンマーの英語教育

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8月19日(日)のGNLM紙に“Unlike Yesterday”と題した短いエッセイが掲載された。“イエスタデー”といえば、即座にビートルズを想い出し、カーペンターズの“イエスタデー ワンスモア”を想い出す。だが、そのイエスタデーではない。

GNLM紙日曜版はミャンマー改革の一端として始まった。ミャンマーの若者は日本人同様に英語が弱点と指摘されている。教育改革も大事だが、苦手な英語教育を見直そうとこの日曜版がスタートして。スーチーの肝いりで、情報相が音頭をとっている。子供・学生たちへの投稿を呼び掛け、若者の意見・随筆・作文・詩集などが毎日曜日に掲載されている。これが“ミャンマーの今”を学ぶ教材としても、役立つ。これはスーチーが取り組んでいるミャンマー大改革のほんの一端でしかない。

日曜版だけでなく、軍事政権時代の海外ニュースといえば、大半が新華社通信の中国関係ばかりだった。だが最近は日本のニュースが増えたことに驚かされる。例えば、2歳の幼児が三日間行方不明となり、無事に発見された。8月16日のGNLM紙海外版に大きく詳細に出ている。瀬戸内海の周防大島ということもあり、スクラップ帳に貼り付けた。この地は日本の偉大な民俗学者・宮本常一の生まれ故郷だ。マスゴミは、スーチーは中国に屈したと伝えるが、とんでもない。中国との屈辱外交を行ってきたのは歴代軍事政権で、その正常化に着手したのがスーチーである。

Grade9というから高校2年生、推定年齢14・15歳の筈だ。その若者が“Unlike Yesterday”と題した随筆を投稿した。昨日と今日は違う。明日はもっと変化するだろう。昨日は出来なかったが、今日は正しく出来るようになった。明日も今日と同じではない。それは一人の人間でも国家でも同じと、人生を悟ったような文章だ。

半世紀以上にわたって軍事政権に堕落させられた役人や大人たちに、スーチーは激を飛ばすが、それほど期待はできない。骨の髄まで腐っているからだ。真に期待するのはミャンマーの次世代を築く若者たちにある。だから、アセアン・国連各機関・米英・EU・中国・インドを中心とするポリティカルゲームは重要視するが、スーチーが仕上げを急ぐ改革路線の大本は軍事政権が無視してきた教育改革にある。特に自分の年齢と、コフィ・アナン、ジョン・マケインの訃報に思いを馳せ、その意を強くしていることだろう。

軍事政権に家庭を壊滅させられたスーチーに子供はいない。アレキサンダーとキムも別々の人生を生きる。スーチーも唯我独尊の道を歩む。だが、一人ではない。ミャンマーの若者たちが、彼女を“Mother, Suu!”と呼ぶ。

取り上げた“Unlike Yesterday”に限らないが、若者たちの言葉が、ミャンマー全土に地鳴りのように反響していく。坂本竜馬が西郷隆盛を評した言葉に、小さく叩けば小さく・・、大きく叩けば・・とある。最初は小さな運動でも、遂には山彦のように全国に波及していく。それがスーチー効果だ。



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02: 国家建設の基礎は若者にあり

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若者たちはスマホ世代に生きている。活字離れでは先進国に負けない。スーチーは国会議員に当選する以前から母親の名前を冠した“ド・キンチー財団”事業を行っている。これは政治活動ではなく、次世代の子供たちに読書習慣の機会を身につけさせたいと、辺境地帯にまで日本人(政府ではない)の協力を得てバスを改造した移動図書館を巡回させてきた。

一方、軍事政権時代の情報局は市民が恐怖を抱く秘密警察の本部であった。憲兵隊のようなもので、軍人のエリートがそのトップを握っていた。新政権はそれをすっかりイメチェンして、新政府の広報担当に作り変えた。名称は情報省といい、テレビ・ラジオ・出版とマスコミ全般を管轄下に置いている。

作家で民間人のDr.Pe Myintが情報大臣に任命され、陣頭指揮している。全国各地で若者を主体に“子供や若者文学祭り”などを開催し、地方政府高官も参加させ、その運動を盛り上げている。読書会を開いたり、優秀な学生・教師の表彰、そして早朝の体操、続いて市町村内をマス行進で練り歩いている。このような新国家建設の地道な動きは、海外ではあまり報じられない。

軍事政権はデモを怖れ5人以上の集会を禁止した。だが、新政権がやっているのはその逆で、主要大学・高校・公園などに子供・学生を集結させ、文化祭などのデモ行進を情報省主導で行っている。

海外のマスゴミ受けしないニュースだが、一例を挙げると8月28日に、スーチーはヤンゴン大学に全国から若者たちを呼び集め、学生たちとの円卓会議を開催した。座長はスーチーで、今回は読書のメリットについてがテーマだ。観覧席の最前列には政府高官が出席し、必要があればスーチーは彼らに指示を発する。公式な行事と違い、スーチーが不用意なほどの笑顔で写っている。同様の集会はマンダレーでも、モーラメインでも開かれた。

もう一つ例を挙げると、スーチーは8月19日から国賓として4日間シンガポールを訪問した。だが、役人が用意する形式的な国賓ではなく、実質的なworking tripであった。シンガポール建国の父とされるリークワンユー首相の名前を冠したアジアNo.1にランクされるパブリック・スクールを訪れ、教育制度について意見聴取・意見交換を行った。ISEAS-Yusof Ishak Instituteにて“民主主義へ移管するミャンマー、その挑戦と前進”と題してレクチャーも行った。

横道にそれるが、シンガポール大統領すなわち元首の事務所兼住宅は“ISTANA大統領府”と呼ばれる。シンガポールのホワイトハウスだ。その名前が示すとおり、これはムスレム系の名前の王宮である。シンガポール建国の経緯を知れば、それは納得できる。面積は周防大島の5倍にも満たない683Km2で、淡路島よりやや大きい。そこにマレー人、華僑、インド人、その他が混在する複雑国家だ。この国をカジ取りするリーシエンロン首相は、スーチーの理解者で、その影響力をアセアン連合国の盟主に仕立て上げようとしたこともある。スーチーは断ったが、このシンガポールから、ラカイン州の実情、そして“ミャンマーの民主化への道のり”というレクチャーを行い、その情報を世界に発信した。英国ケンブリッジ大学で数学を専攻し、米国ハーバード大学で行政学修士を終了したシンガポールのリーシエンロン首相は、米国・北朝鮮の首脳会議に会談場所を提供し、今回はスーチーにその情報発信の場所を提供した。

ミャンマーの若者が昨日・今日・明日を語ったように、今世界のパラダイムが変革のときを迎えている。「ミャンマーで今、何が?」と特定すること事態が、時代遅れではないのだろうか?



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03: 海賊版コピーなどと言うなかれ

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話は飛躍するが、今年6月18日のGNLM紙の記事である。

米国政府の管轄下である国際開発機関および知的所有権連盟と称する両機関がヤンゴン・バハン町区でフォーラムを開催した。フォーラムとは無邪気で無知なミャンマー人に、知的所有権の重要性を訴え、国際基準に加盟し、国内法の法規改正を促す会合であった。これにはミャンマーの関係省庁から無邪気で無知な官僚多数が出席した。国際社会の一員として、一時も早く国際標準を護り、その仲間入りをしろという、狡猾で巧妙な米国のキャンペーンである。

国際競技場に例えれば、一周も二周も遅れて走っているミャンマーの長距離走者に対して、世界記録保持者の連中が難癖をつけるようなものだ。そういう国に限って、ドーピングとかいう薬品漬けのSkeletonが自宅の食器棚から露見して慌てふためいている。

敢えて発展途上国というマヤカシの言葉は使うまい。つまりは後進国に対して、先進国同士で定めた国際標準を認めろという非常に身勝手な理屈を振りかざすフォーラムである。そうすれば、ミャンマーの作家、絵画、音楽、映画など、ミャンマー作家の著作権が守られると言う、耳に心地よい屁理屈だ。だが、ミャンマーが発信するコピーライト(著作権)など世界市場で1%にも満たない。国際収支に換算すると、映画にしろ音楽にしろ、先進国が所有する国際市場占有率99%以上の著作権がミャンマーになだれ込み、輸入超過どころかミャンマー文化を根こそぎ抹殺することになる。

なぜ、そのような過激論になるかというと、世界の歴史を洗い直すと、ポルトガル・スペインに始まり、オランダ・フランス・ドイツなどの欧州組みが未開拓のアフリカ・アジア・中南米を植民地とした。世界最強の大英帝国が誕生し、太陽の沈まぬ国と豪語した。そして老獪なほどに狡猾で巧妙な知恵を蓄積していった。だが、第二次世界大戦の西部戦線で、本土空襲の危機に直面すると、米国を強引に巻き込み、英国は生き延びることが出来た。大英帝国の世界制覇もそれが最後だった。

今次大戦をソロバン勘定すると、新興国・米国のダントツ勝ちであった。大英帝国の代わりに陽気で横柄で単純なアメリカ人が取って代わった。その最たる超新人類がドナルド・トランプである。巨大産業が産み出す大気汚染・プラスチック汚染を無視して、CIA(海外担当)、FBI(国内担当)、FRB(本物ソックリの米ドル紙幣を無限に印刷する機械を所有)、FDA(食品医薬品局)、NASAなどの特権を世界に押し売りして、この地球をコントロールしてきた。

その結果が貿易赤字だと。フザケチャいけない。野次馬メルマガとしては、アメリカというゴリ押し大国に対して、中国がどういう手を用いるのか、非常に興味のあるところである。老獪学を本場英国で学んだスーチーは、中国に対しても、米国に対しても、等距離外交という専門用語を用いている。

その一方で、フレンド(Friend)という外交用語を駆使して、マジに交際すべき相手を峻別している。その意味するところは奥深い。英国といっても、現政府だけでなく、元政府関係の高官もいる。それにもまして有力な民間団体もあれば、個人的な支援団体もある。だが、中国といえば何でもかんでも一緒くたにする国家もマスゴミもある。国益とはその辺りの峻別が出来るということではないのか。

これらの事情は、ヤンゴンで仕入れた海賊版DVDを若者たちと鑑賞しながら、学生たちと共に学習中である。海賊版DVDといっても、なんでもかんでも韓国版メロドラマではなく、英国のBBCや米国のドキュメンタリー報道が主体である。その報道姿勢は政府方針に逆らっても、ジャーナリズムに徹しているところが魅力である。自国政府が隠蔽しようとしたことでも、事実を公開する職業意識が凄い。島国根性だと、自ずからタブーを作り上げ、見え見えの遠慮がある。しかも、それを忖度という難しい言葉でお役人が誤魔化す。
だが、英国や米国のジャーナリストは、(もちろん、イエロー・ジャーナルの本場でもあるが)、根本のところで、その姿勢が異なる。それを露骨なほどにレクチャーしてくれるのが、ヤンゴンで手に入る海賊版DVDである。それをミャンマーの若者たちとの教材にしようと試行錯誤しているのが、当研究所の“今”である。

ミャンマー政府は、ということは当然スーチーも、その危険性に気づいている。だが、おしゃべりな欧米の外交政策に対し、ミャンマーの外交官はあまりに内気で太刀打ちできない。スーチーには学童たちの教育も必要だが、これらお役人の教育も手を抜くことが出来ない。

蠟山芳郎訳ガンジー自伝を読むと、英国の植民地であったインドの悲惨さは例えようがない。彼らの文化遺産までが根こそぎ持ち去られ、英国の富となった。欧米宗主国は、歴史的に各地で著作権無視の無法略奪を行ってきた。インドの外れにあるビルマも同様である。
だが、今は活字離れの時代である。多忙な現在人は古臭いガンジー自伝など読む気にもなれないだろう。そこで手っ取り早いお勧めがDVD鑑賞である。まずは英国人リチャード・アッテンボロー監督、そしてインド出身のベン・キングスレー主演“GANDHI”で、その複雑な歴史の世界に浸ってほしい。質の良い海賊版に出くわすと、何を伝えようとしたのか、監督自身が解説してくれるDVDもある。無抵抗のインド人民衆15,000人を逃げ場のない広場に追い詰め、英国軍の銃口が狙い定めて火を噴く。人権以前の悪名高きアムリッツァーの大虐殺である。

ミャンマーのDVDショップはすべて中国大陸で複製された海賊版である。だが、スーチーとは視点を変えて渉猟すれば、印刷された書籍を上回る上質の情報が収集できる。現在、実験的に進めているが、海賊版DVDを教材とすれば、このユニバースに出現した過去・現在・未来の英知を、ミャンマーの若者と共有できそうだ。

ガンジーの生涯に関しても、別の角度からのドキュメンタリーが幾つも見つかる。国際的著名人になった陰に、その息子の悲劇を描いた“GANDHI my father”もある。スーチー親子を髣髴させる実話だ。DVDコレクションの楽しみはアカデミー賞受賞作品だけに捕われないことだ。それらに追加してMichael Woodが案内する“The Story of INDIA”もインド亜大陸の悠久の歴史を古代から現代までレクチャーしてくれる。これもBBCで製作放映されたお勧めの教材だ。

それだけではない。BBC版の“The Making of Modern Britain”も近代英国の成立過程がAndrew Marrによって語られる。これらすべては、日本語の字幕がないので、逆に英語の勉強になる。理解できなければ何度も見直せばよい。ミャンマーの若者と英語の勉強を兼ねて世界を学習できる道は海賊版DVDにありそうだ。

歴史だけでなく、最先端の動きを追いかけると、米国国家安全局を相手に個人情報の危機を訴える元CIAシステムエンジニアのエドワード・スノードンのドキュメンタリーは“CITIZENFOUR”が生々しい迫力で迫ってくる。同じ題材をドラマ化したオリバー・ストーン監督の“SNOWDEN”もずば抜けている。国民ひとりひとりの個人情報を国家が管理する時代に突入している危険を追求している。クレディットカードや医療情報など、米国だけの話でないことがスリラー劇のように襲ってくる。

今、米国で製作されたDVDの初めの初めに米国FBIのおどろオドロシイ警告が出てくる。海賊版DVDは犯罪で、5年以下の刑期、あるいは25万ドル以下の罰金という警告である。もちろんクリエーターである製作者の権利は護られるべきだが、そのコンテンツは過去の植民地から略奪してモノである。であれば、アフリカ・中近東・アジア・中南米などでの教材に使用されるDVDのコピーライトは虐げられた植民地の期間と同年月だけ、免除されるべきではないだろうか?

停電の合間を縫ってDVDを鑑賞しながら、話はミャンマーから飛び出してしまった。


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