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<ミャンマーで今、何が?> Vol.278
2018.11.5

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■オリバー・ストーンのアメリカ発掘DVDは最高(1)

 ・01: 間違いの訂正

 ・02: 「戦場のメリークリスマス」

 ・03: “Manifest Destiny”

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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01: 間違いの訂正

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前号Vol.276で、「怒りの葡萄」の時代背景を1934年から1945年としたが、これは1945年は1935年のタイプミスでした。お詫びして訂正します。

蛇足を加えると、作者のジョン・スタインベックはカリフォルニア州に生まれ、父親がドイツ系、母親がアイルランド系という典型的なアメリカ移民の血統である。スタンフォード大学で英文学を学び、ギリシャ古典文学、生物学に興味を示し、在学5年で退学。彼の作品は故郷色が強く、その地をスタインベック・カントリーと呼ぶ人もいる。

だが、その主題は一地方の人間に限らず、人間と自然、西欧と非西欧への問いが一貫して認められる。後半はNY市に住み、アメリカ文明を批判し、キリスト教と異教、近代の産業主義と原始主義などをテーマとした。

「怒りの葡萄」はアメリカの経済大不況を背景にしているが、オクラホマの小作地を追い立てられ、カリフォルニアに楽園を夢見る様子は、ユダヤ民族がエジプトで捕虜となり、故郷カナーンの楽園を求めて苦しんだ「出エジプト記」が下敷きとなっている。アメリカの時代背景を史実に基づいて描写したため記録小説とも看做され、ピュリッツァー賞を受賞し、ベストセラーとなった。そして1962年にはノーベル文学賞を受賞している。

ジョン・フォード監督、ヘンリー・フォンダ主演で、この「怒りの葡萄」は1940年に映画化された。日本が支那事変の泥沼から太平洋戦争(第二次世界大戦)に突入する、その時代である。

スタインベックは「エデンの東」(East of Eden)という長編小説も1952年に発表した。題名からお分かりの通り、これも旧約聖書の「創世記」にヒントを得て、人間の原罪と救いをテーマとしている。

この作品もエリア・カザン監督(ギリシャ系のアメリカ移民)、ジェームス・ディーン、エリザベス・テーラー、ロック・ハドスンという豪華キャストで1955年に映画化された。日本が敗戦後10年目で貧乏していた時代である。

エリア・カザンといえば、伝説的なアクターズ・スタジオ設立(1947年)の主要なリーダー格で、ここの演技指導は独特のメソッドをとり、人間の内面を表に表現することを主体としている。それだけにクセのある、強烈な個性の、マーロン・ブランド、ジェームス・ディーン、ダスティ・ホフマン、ロバート・デ・ニーロなど、綺羅星のごとき名優たちを輩出している。



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02: 「戦場のメリークリスマス」

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本題が何だったのか忘れてしまった。

日本ではコンビニ的容易さで、アメリカとか、トランプを一括りにするが、旧約聖書流の言い方をするとGoliath“アメリカ”をどうやって解剖するかにあった。

自慢させてもらうが、手持ちのDVDコレクションは膨大である。

すべてのDVDを見終わったわけではない。データベースとして利用するために、どう仕分けするかに、目下頭を悩ましている最中である。心臓がクタバル前に、成し遂げたい。興味の対象は増えるばかりで、永眠するヒマがない。困ったものだ。三途の川を渡った先に渡った両親や、友人たちよ、もうしばらく待ってもらいたい。

お伝えしたオリバー・ストーン監督の“UNTOLD HISTORY OF THE UNITED STATES”は、アメリカを知るには格好の講座だ。がDVD4枚の長編で、中身が濃く、巻き戻し・再生を繰り返し手間取っている。

このDVDは、帰国のたびにコピーを入手して、友人たちにもバラ撒いた。

だが、友人の反応は皆無だった。

理由はいろいろ考えられる。

優秀な日本製機械が反応せず、画像が読み取れないことだ。これが意外と多い。

もうひとつには、日本語の字幕が利用できないためである。

年寄り連中は頑固で面倒を嫌う。アア言えばコウ言う日本語の達人だが、病院通いの待ち時間と薬漬けで多忙なフリをする。英語はベラボウに簡単だ、複雑系の日本語に対して、英語は単純でイージーだと進言するが、友人たちは信用しない。「戦場のメリークリスマス」の“たけし”(ハラ軍曹)ですら話せるようになったくらいだから、英語を怖れるに足らずである。

ワタシの師匠夫妻希望で、先々週ヤンゴン郊外にある日本人墓地をお参りしてきた。近くの生花市場で白色・黄色大輪の菊を大きなブーケにしてもらった。ついでと言っては何だが、日本人墓地近くのクリスチャン、中国人、ヒンズー教、イスラム教のお墓もお参りしてきた。バゴーへの高速道路近くのグルカ兵やインド兵、世界中に広がる大英帝国の植民地から徴兵された若き兵士たちが眠る連合軍墓地にもお参りしてきた。その後で「戦場のメリークリスマス」や「戦場に架ける橋」などを鑑賞すると、想いはイギリス軍と日本軍が軍靴で蹂躙した、このミャンマーに跳ね返ってくる。

スーチーの言う通り、モノの見方にも多様性があり、狂信的な片一方に偏しないことを学び、そういう反対の見方があることも、お互いに認めねばならない。それが、21世紀の複雑な世の中を解決する知恵になるのではないだろうか。またまた脱線した。

だが、ここで別の問題が出てきた。「戦場のメリークリスマス」は大島渚監督で、鬼才のデビッド・ボウイ、たけし、坂本龍一などのスター陣で話題作となった。それを欧米人と話題にするとき、困るのが英語の題名“Merry Christmas, Mr.Lawrence”を知らないと、会話がスタートしないことである。映画の最後にはたけしが“メリー・クリスマス!ミスター・ロウレンス”をたけし調発音で繰り返していた。だから、21世紀の今、欧米語源の固有名詞は英語発音で教えよ!というのが、私の主張である。日本語未完成の小学生に英語教育を押し付けるのは、民族浄化に繋がる反日教育とも言える。

話がまたもや脱線した。オリバー・ストーンの“UNTOLD HISTORY OF THE UNITED STATES”が受け入れられない最大の理由がある。4枚組みという大長編の英語版DVDに恐れをなし、DVDラックの奥の奥に永久保存されたのかもしれない。ここには日本人のDNAに組み込まれた先延ばし作戦という遺伝子が有効に作用している。



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03: “Manifest Destiny”

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今回このDVDを、メルマガ用にジックリと鑑賞してみた。アメリカ史というジャンルでは最高のDVDといえるだろう。若者よりも、インテリ振っている大人の教材に最適だ。それより、ワタシ自身の貴重な教材となった。

その理由をこれから解説していきたい。

このシリーズは順番どおりDisc-No.1からの鑑賞をお勧めする。

お馴染みオリバー・ストーン監督の顔がアップで画面に出てくる。

そして淡々と語り始める。

「ハロー!私はオリバー・ストーンです」第一声がはじまった。

またもや余談に入るが、ミャンマーには初対面の人に自己紹介する習慣がない。生徒たちも、無断で弟妹や友人を無断で教室に連れてくる。だが、アイサツはない。日本人も欧米人に英語で各人をキチンと紹介できる人は少ない。

形だけの先生役が、無遠慮に妹や友人を無言で見つめる。居た堪れずに、彼らは目を逸らしうつむく。先生役は無神経に何も言わない。非常に気まずい空気が教室に流れる。海千山千の先生役は、微動だにしない。それは数秒間から、数十秒間さらに続く。

この真剣勝負で、最初に降参するのは、間違いなく、弟妹・友人を連れてきた生徒である。気まずい空気を破り、慌てて口ごもる。その関係とか名前とかが初めて出てくる。一番最初に自己紹介、そして友人の紹介が必要だということを、ビルマ語も英語も使わずに納得させることができた。やればできるじゃないか。

だから番組第一声「ハロー!私はオリバー・ストーンです」は、ここミャンマーでは、礼儀作法の最高の教材となる。お断りしておくが、このメルマガではこの監督を単に“ストーン”と肩書き・敬称抜きで記述する。スーチーも同様だ。字数も削れる。

ストーンは名前だけでなく、自分の過去を要領良くさらけ出し、それが彼の思想(モノの考え方)に繋がっていく。

ストーンの自己紹介を続けよう。

「私は子供時代、NYシティで育った。そこで良い教育を受けたと思っていた。私は歴史を幅広く学び、特にアメリカの歴史を勉強した。そこで感じたことは、自分たちが世界の中心で、それこそ“Manifest Destiny”であった」とストーンは語る。

中国に限らず、世界中の人間は自己中心的な考え方をする。それが大きな宇宙であるか、小さな井の中の蛙であるかの違いだけだ。日本の地図を見ても、島国日本が世界の中心となっている。だから、ストーンの解説によって、世界観が同じなので習近平とトランプとの間で話が早いのは納得できる。日本の指導者にはその世界観がナイ。

ストーンの説明にある“Manifest Destiny”を見過ごして先に進むと、大やけどをする。知ったかぶりはしないことだ。将来アメリカ人と会話をするとき、アメリカを何一つ知らない無知な野蛮人とみなされる。癪だが辞書を引く。日本語・英語に限らず、辞書や百科事典を引く回数は、ギネスものと自負している。記憶力が先天的に弱く、同じ言葉を何十回も引くからだ。

辞書には米国史における“明白な運命説”と書いてある。何のことか分からない。さらに調べて見た。「米国が北米全体にわたって政治的・社会的・経済的支配を行うのは明白な運命という帝国主義的思想。19世紀の中ごろから後半にかけて受け入れられた。さらには領土拡張政策を指す」と書いてある。オモシロイ。アメリカ人らしい身勝手な主張だ。

これで満足しては、野次馬メルマガとして失格だ。次は百科事典のお世話になる。

「マニフェスト・デスティニとは1840年代に、アメリカ合衆国の西方への領土拡張を正当化するスローガンで“明白な運命(天命)”のこと。当時、アメリカの西境はロッキー山脈に達していた。だが、その領土を太平洋岸にまで拡大するのは、神が予定した“明白な運命”だという主張。これによって南部のテキサス共和国およびニューメキシコの獲得、西部のカリフォルニア獲得、そして北部のオレゴン獲得がなされた。さらには19世紀後半のキューバ、アラスカ、ハワイ、フィリピン進出を合理化するイデオロギーとなり、領土拡張主義にたつ民主・共和両党の政治家たちが愛用した」となっている。

マニフェストという言葉はイギリス政治史の中で生まれたが、日本では出典を理解せずに、独り合点の使われ方をしているようだ。

日本のお役人は総理大臣の意図を忖度し、アメリカの政治家は神の定める運命まで忖度している。D・トランプの傲慢さは、その系譜だと理解できる。

ソクラテスは、人間の知恵が神に遠く及ばないとの立場から、何よりもまず自己の無知を知る厳格な哲学的反省が肝要と、“Gnothi sauton”(デルフォイの神殿に刻まれていた有名な格言で、“汝自身を知れ”を意味する)を自己の哲学的活動の出発点とした。

イギリス人にはこの哲学を重視する老獪さがあるが、アメリカ人にはこの哲学を無視する軽薄さがある。D・トランプはペンシルバニア大学ウォートン校で地上げ屋の学位しか履修していない。だからインテリを気取る西洋人からバカにされる。

老獪なイギリス国ではPhD(哲学博士)を取得して初めて尊敬の対象とされる。哲学を学ばずに経済発展だけを語ると、英国のみならず欧州のインテリからはバカにされる。日本の歴代総理でPhDホルダーはいたのだろうか? 池田勇人もド・ゴールから“トランジスターのセールスマン”とバカにされた。

誤解してもらっては困るが、これらはすべて辞書や百科事典の受け売りである。このメルマガはノンポリが身上で、他人様の情報で成り立っている。



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