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<ミャンマーで今、何が?> Vol.29
2013.1.30

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■汚職疑惑のターゲットは通信大臣

・01:AAA:(政治)
・02:BBB:(経済)
・03:CCC:(生活一般)

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<AAA:(政治)>

○A1:汚職疑惑のターゲットは通信大臣

政府の特別調査局(BSI)は約20名の通信省高官をネイピードで尋問している模様。尋問の結果十分な証拠が揃えば、先週慌しく辞任したテイントゥン前通信大臣(元少将)を召喚することになると匿名を条件に政府高官がAFPにリークした。

同筋によれば、テイントゥン前通信大臣はこれまで当局から密かに監察を受けており、前大臣は首都ネイピードを離れる旅行は当局に事前申請するよう通告されている。前通信大臣の召還あるいは直接の尋問へと進めば、2011年3月に改革派新政府が発足以来、汚職容疑で取調べを受ける最初の大臣となる。

先日任命されたYe Htut大統領報道官は通信省関係者(引退者も含む)を調査中との事実は認めたが、それ以上の言及は避けた。

昨年11月、会計監査院は15省庁を含む多数の役所で仕組まれた“不正および悪用”の事実と約$65百万にのぼる省庁内退蔵金を発見し、相手先に返却するよう勧告したが、これが大統領の汚職撲滅キャンペーンの引金になったものと推定される。

海外からの投資を呼び込み、外国の投資家を迎え入れるに当たり、汚職大国の汚名はミャンマー改革最大の障害となる。昨年末12月26日の政府の各大臣・高官を前にしてテインセイン大統領は異例の全国テレビ・ラジオ放送演説を行った。年明け早々にアンチ汚職の強力な行動委員会が設置され、そして今、政府の特別調査局(BSI)の取調べで大臣にまでお上の手が伸びつつあるとはFBI顔負けの小気味の良いテンポの早い展開となっている。

当然ながら、通信省のみならず前述15省庁の大臣を含む政府高官たちはこの情報漏えいで枕を高くして眠れなくなったことだろう。

ここでもうひとつ見逃してならない肝心要のポイントはテインセイン大統領のターゲットがあくまでも2011年3月以降、すなわち軍事政権から新政権に移管した以降に、大統領自身が任命した省庁高官そしてその大臣のみを対象としている点である。

週刊メルマガ今年の新年号で東西南北研究所はアンチ汚職キャンペーンの行き着く先は当然タンシュエ元国家元首となり、これは時期尚早でヤバイのではと浅はかな判断をお伝えしたが、慎重の上に慎重を期すテインセイン大統領の凄さは昔の軍事政権にお上の手が伸びるという大半の保守強硬派が感じる不安・恐れと一線を画す離れ技を編み出したことではないだろうか。

あくまでも新政権だけを対象としたアンチ汚職キャンペーンであれば、大統領自身が最終責任をとるべき新政府であり内閣である。ほとんどの元将軍はすねに傷持つ身である。だが、やぶ蛇になるために正面きってこのキャンペーンに反対できない。軍部からの攻撃を封じるウルトラ級の技ではないだろうか。

新しいアンチ汚職法は汚職に関連した役所および民間会社その双方を徹底的に当局が調査し厳格な処分を下せるようにしたものだ。特にこのBSIの調査が入れば収賄側の省庁だけでなく、その贈賄側であるクローニー(権力を持つ将軍たちの取巻き連中といわれた成金財閥)の資金の出所も当然しらみ潰しに洗われる。

どこの国でも検察庁特捜部の調査は徹底している。受取る側と贈る側の双方の帳簿が徹底的に照らし合わされる。泣く子も黙るといわれる所以である。今のところは通信省がターゲットだが、当然クローニーの成金に至るメカニズムまで徹底的に洗い上げられる筈だ。ここで出て来た証拠は今回そのすべてを使う使わないは別にして、テインセイン大統領の残りの任期にとって凄みの効いた武器となりうる。という風に読み解いていくと今回の通信省の汚職事件は小さな蟻の一穴であって、ミャンマー全体に巣食っていた巨悪という大きな堤が崩される前兆にもなりうる。そのミャンマー全体の巨悪をどの範囲までとするかはテインセイン大統領の度量次第である。これによって巨悪に挑むテインセイン大統領の意気込みが見え、ミャンマーの変革の将来が読めるのではないだろうか。

米国で言えばウォーターゲート事件、日本で言えばロッキード事件に相当する大事件に進展するかもしれない。外野席としては興味をそそられるところだ。本件は新しい情報を入手次第、東西南北研究所で吟味の上、この週刊メルマガで続報を流していきたい。

なお、この事件の端緒は2013年に入ったばかりの週刊メルマガ1月9日・16日・23日(各水曜日)の“ミャンマーで今、何が?”を再読いただくと2013年ミャンマー激動の出発点がどこにあったかが見えてくる。

(1月24日 AFP・AP・ロイターなど外信電はこの話題に注目しており、国営のMNAからは公式の大統領府政令がタイムリーに発表されている)



○A2:マスコミ検閲局を解散

1月24日の閣議で、ミャンマーの印刷物を検閲していた報道機関検閲登録局の解散が承認された。印刷物出版公社の管轄下にあったこの部局は報道の自由への準備のために2012年8月20日よりその機能を停止していた。そして新たに著作権登録局が情報広報省の管轄下に設置されることとなった。これも‘言論・報道’への自由が着実に前進している証明である。 (1月17日 MNA=ミャンマ通信社)



○A3:中国の‘善隣外交政策’の限界をミャンマーがテスト?

ミャンマーがそのドアを世界に向けてオープンした時、冷たい風が中国とミャンマーの間に吹き始めたとユーローエイシア・レビューが1月25日のオンラインで報じている。最初の兆候は2011年9月30日であった。ネイピード当局がイラワジ川ミッゾンダムの建設を突然中止させた。テインセイン大統領の言葉では“我々は国民の意思を尊重する。この政府は国民によって選出されたからだ”と国民最優先の異例のコメントである。そしてミッゾンダムの建設は大統領の任期が終わる2015年までに再開されることはないと言明した。

China Power Investment Corp計画はUS$36億の規模で年間29,400百万キロワット時間を出力し、そのほとんどが中国へ送電される。

非常に興味深いことには、その一日前、ミャンマーの外務大臣と米国政府のミャンマー調整官デレック・ミッチェルが会合していることである。この会合とダム計画中止に何か関連がとの疑惑が出てきた。関連の有無にかかわらず、この中止決定が北京に物議をかもし出したことは間違いない。

20年間の鎖国と経済制裁を受ける間に、ミャンマー首脳は自国が中国にあまりにも依存しすぎているのではとの心配を募らせ始めた。この問題はミャンマーの防衛大学アカデミー研究者Aung Kyaw Hla中佐によって書かれた極秘文書によってすでに7年前にミャンマー首脳は了解していた。この極秘文書のタイトルは“ミャンマー・米国の関係に関する研究”で、中国への過剰依存はミャンマーの独立を維持していくのに脅威となる緊急事態を作り出す可能性があると示唆している。この文書では、海外の非難を避けるために国際社会に受け入れられる新体制に変更すべきだとネイピードに忠告している。著者はそのメリットについては特定していないが、その理論では米国と中国を同じ共通基盤で考えるべきだとしている。

ミャンマーの開放は中国の覇権が懸念されるアジアにオバマ政権が軸足を転換する新構想の発表直後に始まった。北京大学の著名な外交政策専門家は、中国の“善隣外交政策”は過去に例のない圧力を受けており、ミッゾンダムのケースは中国政府に甚大なショックを与えたと指摘している。

この疑惑を拭い去るため、ミャンマー当局は中国のカウンターパートに対しそれを打ち消す努力をしている。テインセイン大統領は2011年9月に両国関係は今も固い絆で結ばれていると語り、スーチー議員も2012年7月に両国関係が改善されることを望むと語っている。

しかし最近の報道は、中国とミャンマーの緊張は消散するどころか高まっていると指摘する。例えば、ロイター電は長い間くすぶっていた憤懣がいま公然と燃え上がっていると表現している。

ミャンマーの至るところで見受けられ中国の経済的進出がその原因で、バスに乗れば中国歌謡が流れ、マンダレーでは至るところ中国レストランと中国語で溢れている。インフラや資源でも中国の存在は突出しており、中国企業はこれまでもほぼ自由にミャンマーでの活動を謳歌してきた。しかし、彼らが歓迎されているわけでは決してない。

レッパダウン山岳地帯にあるモニア銅鉱山反対運動のケースがその良い例で、この鉱山はミャンマー国軍が所有するミャンマー経済持ち株会社(Union of Myanmar Economic Holdings Ltd)と中国のWanbao Mining Companyの合弁会社である。地元民は住居とわずかな補償金とを交換条件に自分たちの土地を明け渡すよう強制されてきたとクレームしている。2012年6月に抗議運動が高まり、その緊張は11月まで続いた。その挙句に政府は非情な暴力手段で抗議運動家たちを押しつぶした。

環境問題活動家による後押しもあって、この問題はミャンマー政府の舵取りが世界のマスコミから注目されている。もしこのモニア銅鉱山が中止に追い込まれると中国にとっては第2のミッゾーンダムとなり、中国企業のこれまで表ざたにされなかったプロジェクトがドミノ倒しで問題となる可能性もある。こういう観点から中国・ミャンマー問題は目が放せない2013年の主要テーマだ。



<BBB:(経済)>

○B1:ヤンゴン市内に経済地区を設定

ミャンマーの商業都市ヤンゴンが大都市に変貌しようとしている。ヤンゴンの大都市化を再評価する住宅計画の一環としてヤンゴンに新しい経済地区が建設されることになった。

“ヤンゴンを大都市に変貌する戦略的計画が現在昨作成中で、最優先の計画は3月と9月に最初の測量が行われ、2014年までには細かい設計が完了する”とYCDC(ヤンゴン市開発委員会)の担当官は語った。

YCDCはヤンゴン活性化のために、マヤンゴンT/S(町区)にあるミャンマー会議センターおよびビクトリア病院近くに経済地区を設置することにしている。コンド・ホテル・会社事務所・スーパーがこの経済区の中に建設される予定で、日本の経済援助団体の協力を得てYCDCが作成する経済地区の設計は今年2月には完了する。 (1月23日 ミャンマ・アリン紙)



<CCC:(生活一般)>

○C1:アローンの発電所にガスタービンを設置

ヤンゴンの夏場の電気需要に間に合わせるべく、発注していた米国ゼネラル・エレクトリック社製40MWのガスタービン1基が1月18日アローンの発電所に到着した。自重80トンのガスタービンは200トンクレーンを用いて1月22日設置工事を完了した。

監督官庁であるヤンゴン市電気供給局とミャンマ電力公社およびToyo Thai Public Co.,Ltdが設置作業に立ち合った。(1月24日 The New Light of Myanmar)





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