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<ミャンマーで今、何が?> Vol.292
2019.1.15

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■海賊版DVD“AMAZING GRACE”の秘密

 ・01:♪アメージング・グレース♪との出会い

 ・02:頭の悪い学生さん、段取りをどうする

 ・03:映画製作のウラ事情

 ・04:ビッグなピット(小)とウィルビーのエピソード

 ・05:変動相場制の現金でリッチになれるか?

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・01:♪アメージング・グレース♪との出会い

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この曲をはじめて耳にしたとき、これほど美しい曲がこの世に存在するかと思った。それほど、甘美な賛美歌である。

日本人特有の欠点で、歌詞はうろ覚えだが、鼻歌ならば、なんとか唄える。

だが、やはりこの名曲はプロの歌声で聞きたい。もちろんワタシのコレクションは抜かりがない。女性のライブ版DVDでは『KATIE MELUA』、男性では『CELTIC THUNDER』が思いつくが、他にもあるかもしれない。

先週金曜日、メルマガ出稿が終わったので、気晴らしに例のDVDショップに行ってみた。いつも纏め買いするので、扇風機を廻し、新入荷のリスト、椅子をもってきたりと気をきかしてくれる。『AMAZING GRACE』のタイトルが目に入った。軽い気持ちで買い物カゴに入れた。“ひとつのボイスが何百万人の生命を変えた。忘れがたき実話に基づく”と、副題は書いてある。多分あの創作秘話に間違いはあるまい。

ジョン・ニュートンがこの賛美歌を作詞した経緯は、興味ある人は、その創作秘話を含めてこの賛美歌を愛している。ワタシも聞きかじりで知っている。その物語を再確認できるかと期待してこの海賊版DVDを購入した。

ところが、この海賊版DVDは期待を完全に裏切ってくれた。
秘話どころではない。

この海賊版DVD大学で、その秘密を解き明かそうと、巨象を相手に立ち往生していた極秘情報の糸口になるかもしれない。画面は雨の田舎道を馬車が走る。緑が美しい。英国貴族の館、英国議会内の議事進行、帆船が港にひしめいている。波止場の様子。真っ暗な船内、英国の教会、英国貴族の社交界。時代がひと昔前の物語と分かる。

内容が複雑で英語が理解できない。
これは腰を落ち着けなければと、缶ビールとツマミを用意した。そして最後まで我慢して鑑賞した。英語のプロになると粋がっても、所詮は落伍者の英語力である。話があまりにも複雑で消化できない。

今度は英語字幕を呼び出して、二回目の鑑賞だ。このドラマを見ながら、この映画をどうやって攻略するか、漠然と考えた。こうやって、金曜日の夜、そして土曜日フルに一日、それから日曜日と、この映画だけに没頭した。

海賊版DVD大学では、ワタシは旗振り役も担当するが、今回は出来の悪い学生役も担当した。

おぼろげに感じたのが、このDVDで“英国の老獪さ”が見えるかも、ということであった。
何度も、繰り返し、鑑賞して、終にはその老獪さの尻尾を掴んだ。
海賊版DVDのお買い上げは大ヒットだった。スペンサー・トレーシーが演じた『老人と海』の老漁夫サンチアゴの気分だ。何日も不漁が続いた。巨大な手ごたえに何日間も格闘が始まる。それは死闘だった。今は正にそんな気分だ。



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・02:頭の悪い学生さん、段取りをどうする

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二回目の鑑賞も、筋書きが複雑で、全体のストーリーが読み取れない。
本腰を入れねば、と思った。

三回目の鑑賞は、作戦を人海戦術に変えた。

すなわち、英文字幕をひと言ももらさず、すべてメモ書きしていく。かなりの集中力が要求される。

パソコンの作業で言えば、停止・再生、ときには巻き戻し、そしてもう一度停止・再生。
何のことは無い。この映画のシナリオを全文書き取る作業である。
こういう単純作業は出来の悪い学生に限る。ひと言も漏らさずに必死にメモを取る。

A4サイズのメモ用紙、12枚にすべての英文シナリオを写し取った。
今度は、パソコンの電源を落とし、パソコンはしばらく休憩に入る。

もうひとつ重要な仕事が待っている。

英文和訳である。英語のプロとはいえ、知らない単語は幾らでもある。
知らない英文単語を片っ端から辞書を引く。カシオの電子辞書が実にありがたい。
これは物語の過程で、ニッポニカ・ブリタニカなどの百科事典も参照できる。名前の通り、一般的なことはニッポニカ、英米関係はブリタニカが主な情報源だが、時には、一つの事項も二つの百科事典で比較しながら、出来の悪い学生に理解させていく。

地球の裏側のグレート・ブリテンのことが、そしてあの時代のことが少し理解できてきた。
必要ならば、英文シナリオの隙間に注釈をつけておく。

何のことは無い。自分がこの映画の監督になった気分、あるいはそれを演じる俳優になった気分である。そして今の時代の映画産業の意図までも見えてくる。
これは章を改めてお伝えしたい。

日本人に分かりやすいように時代背景を説明すると、ミャンマーどころではない、日本が鎖国の真っ最中であった。関が原の戦いが1600年で江戸時代は1603年の開幕から1868年の明治元年まで続いた。

特に英国におけるこの物語は、寛政異学の禁が1790年、ラクスマン根室に来航・通称要求が1792年、蝦夷地を直轄領としたのが1799年、伊能忠敬が蝦夷地を測量したのが1800年である。
その時代の話である。

だが、日本が内へ内へと閉じ籠り政策を執るころ、大英帝国は外へ外へとその牙を磨いていった。その資金的な活動の源泉が、非人道的なという綺麗ごとでは済まされない人を人とも思わぬ過酷な奴隷貿易であった。

この映画を冷静に理解できる能力を持っていれば、成り上がりのトランプがメキシコ国境沿いに万里の長城を張り巡らすなぞ、恥ずかしくて発言できないはずだ。この数日間、インターネットではビル・クリントンがHIVで、あと数日の命だとのウワサが飛び回っている。ウワサを信じちャいけないヨという歌の文句はあるが、情報過多の日本ではとっくに古臭い話だろう。だが、これはスーパー大国の大統領の乱れた無節操な女性関係に起因しており、大統領はその権力をその方面に多用していたことになる。トランプの行動もクリントンと変わりない。

特にこの海賊版DVDを見ていて、アメリカでは奴隷貿易制度の思考が、国の指導者であるべき大統領にも蔓延している恐怖を感じさせる。アメリカだけではない・・

奴隷貿易の本家本元の英国、そしてオランダ、ドイツ、フランス、スペイン、ポルトガルなどの欧州の主要植民地宗主国が欧州連合体であるEU瓦解の瀬戸際に今、この瞬間、立たされている。すべては、このDVD映画の主題である奴隷船貿易のバックラッシュである。

だから、このメルマガが五分の魂で言い掛りをつけるのは、スーチーのラカイン問題、あるいはロヒンギャ問題などは、チッポケな問題で、延々と続いてきた暗黒の歴史からすれば、白人種・欧米人による老獪なスリカエでしかない。ましてや、ヒューマン・ライトなどという舌を噛みそうなチープな説教は、人類に対する罪の上塗りでしかない。

このミャンマーでも、HR(人権と言う意味だそうだ)を掲げた欧米人によるフォーラムが民主主義の国に持ち込まれアチコチで開催されているが、ナイーブな国民は、それが先進国がもたらす先進文化だと受け止めている。その危険性を指摘する駐在大使館はどこもいない。

話が脱線してしまった。



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・03:映画製作のウラ事情

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話は逸れるが、今の時代の映画製作は、時代の最先端を行く非情なビジネスに徹している。
この方面には元々興味があったので、さらに深入りしてみた。

この映画の制作費はUS$29,000,000、興行収入は本日現在US$32,120,360 である。と言うことは、すべてのコストを回収して、たったの3百万ドルの黒字である。

今日の映画製作は、投資家を掻き集め、企画を説明し、同意を得られれば、彼らが共同プロデューサーとなる。主催者がもちろんメインのプロデューサーである。
投資家を集めるためには、人気のある俳優の確保が必要で、なによりも話の筋ストーリーが観客動員に期待を持てるものということになる。そこでベストセラーになった小説とか、100周年、500周年あるいは1000年という歴史的なイベントが対象として取り上げられる。

だが、プロデューサーとは体の良い言葉で、実際は金儲けにしか興味の無い投機家である。
彼らの資金を当てにするメインのプロデューサーは、人気俳優を取っ換え引っ換えして、投機化の気を引く。この尺度からいくと、上記の3百万ドルはたったの・・ということになる。

最近の映画がつまらなくなったのは、ヒット作の第2弾をパート2、さらにはパート3として製作する傾向が顕著であるからだ。第一作がヒットすれば、その第2弾以降はすべて前作のシステムがそのまま使用できるから、コストは安く、そこそこの配給収入が期待できるからだ。それだけ、映画の投機家が小粒化したということである。

アメリカの大統領は堕落したとはいえ、アメリカの映画産業は革新的である。
インディーズと称して大手ではない独立の映画会社に若者は挑戦する。インディーズとはインデペンデントを指す。今は大御所となったスティーブン・スピルバーグも、駆け出しはインディーズである。そしてアメリカン・ドリームを実現していく。

アメリカ社会では黒人の壁は厚いが、このエンターテインメントの世界では、黒人たちが白人に混じってその才能を開花させていった。そのウラには、お決まりのセクハラ、パワハラがふんだんにある。その一部が、いまブーメラン現象で、暴露し始めたばかりである。だが、それは今、地殻のマグマが爆発寸前まできている。その空気を読み取れないと・・

その一部だけを批難していても、何の解決にもならない。
何度も言うが、巨象の一部を撫でるだけである。スーチーを一歩も二歩も下がって巨象全体を見渡さねば問題の核心が見えない。

そのためには、この“AMAZING GRACE”は興行的には成功しなかったが、ミャンマーの若き学徒たちには、歴史を学びなおす意味でも、ミャンマーの置かれた今を見つめる意味でも、偉大なる指針となる。そして“老獪な大英帝国”の秘密も教えてくれる。



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・04:ビッグなピット(小)とウィルビーのエピソード

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この映画のスタートは、文字による語りだ。
それを読解していこう。

18世紀の終わり、11百万以上の男、女、子供が奴隷としてアフリカから西インド諸島、そしてアメリカの植民地に連れ去られた。グレート・ブリテンは地球上最強の大国であり、その帝国は奴隷たちの苦難の歴史の上に建設された。

その当時、奴隷貿易は多くの人々に受け入れられ、わずかに一握りの人たちが反対した。少数ではあったが、彼らは勇気を持って発言し、それに反対した。

時は1797年、場面は英国。(日本の寛政の鎖国を思い浮かべて欲しい)
日本ではあまり知られていないが、この物語の主人公はWilliam Wilberforce、愛称はウィルビー。
大英帝国議会において、長い年月を掛けて、拒否されるたびに修正案、修正案を重ねて、ついには奴隷貿易廃止法案を通過させたサムライである。

有難いことに、ウィルバーフォースはニッポニカにもブリタニカにも掲載されている。頭の悪い学生は、この二つの百科事典を理解できるまで、何度も読み返す。そして映画のシナリオも。

ウィルビーは17歳でケンブリッジ大学のSt.John’s collegeに入学したが、裕福だった貿易商人の父親、祖父や叔父などの遺産で特権階級の怠惰なカードゲーム、酒、女などの学生生活を送っていた。だが、そこで生涯の友、William Pit, the Youngerと親しくなる。 大学生という敏感な時期にお互いの欠点・長所を認め合い、ライバルでもあり、肝胆相照らし、親友となっていく。

William Pit, the Youngerとは、日本ではピット(小)と訳され、William Pit, the Elderピット(大)の次男坊である。日本語での問題点は、このように(大)と(小)とで簡略化すると何のことか分からなくなってしまう。英語ではthe Elderと the Youngerと、明確に年長者と若輩に区別している。話はさらに変るが、正月に年賀メールを頂いた。その指摘によれば、最近は「あけおめ、ことよろ」など日本語を乱した輩がいるとのことだが、母国語の乱れはヤハリ危険な兆候とみるべきでないか、と考えさせられた。

どちらにせよ、このピット(小)は神童の聞こえ高く、14歳でケンブリッジ大学に入学、17歳で文学修士の学位を取得、21歳で下院議員となり、若干24歳で英国議会最年少の首相となったのが、(小)である、どこが(小)なんだと、このメルマガは叫びたい。
そして燦然と輝く大英帝国の歴史で、ピット(大)、W.チャーチルと並ぶ英国の三大政治家の一人とされている。彼は(小)どころかビッグなのである。

そして親友のウィルビーも21歳で地方選出の国会議員となった。
学生時代からの親友ピットとウィルビーは、お互いの豪壮な邸宅を行き来する。そして若き、ピットがウィルビーに周りの目を避けるように告白する。この場面は見ものである。

「ボクには首相になる計画がある」、ピットの並外れた優秀さを知るウィルビーは笑いを堪えて「いつかは、成れるさ!」と応じる。

真剣な目つきで「ボクの話は、緊急を要する今、すぐの話だ」とピットは畳み掛ける。「キミの執拗な奴隷廃止法案演説で、Fox議員とNorth議員は論破された。だから、彼らは議員を辞める」

ピットは目をピタッとウィルビーに注ぎ続ける「Lord Rockinghamが次の首相だ。だが、健康状態が優れない。彼が死ねば、次期首相候補への運動をすぐに起こす」

ウィルビーは驚きを隠さず「そこまで考えているのか!」と低く応える。
ピットの顔は真剣そのものだ。「キミには常にボクの傍についていて欲しい。ウィリビー!」

これが24歳で英国議会最年少の首相になる前のピット(小)とウィルビーのエピソードである。

ここの漕ぎつけるまでに、ウィルビーは英国議会で奴隷廃止法を提出しては、僅かのところで足をすくわれ法案は流れてしまった。時には、ウィルビー支持派の議員に反対派が票決のその当日、英国で有名なEpsomクラシック競馬場の無料招待券を配布して、買収したこともある。

当時の英国議会のウラ取引も勉強できる。
だが、英国一の逸材ピット(小)の戦略も実に老獪なものである。
このあたりの遣り取りが「英国の老獪学」を究めようとする学徒には、オモシロくてしょうがない。再度口を酸っぱくして言うが、このピットは(小)どころか、桁外れのビッグである。普通の常識で言えば、24歳にも満たないお兄ちゃんの話である。



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・05:変動相場制の現金でリッチになれるか?

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「英国老獪学」を究めるには、ひとつひとつのエピソードを理解していく必要がある。
それには、もう少し時間がかかりそうだ。
今週は、この海賊版DVDのつまらない話が続く。
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そろそろ今日月曜日の締め切り時間となりました。


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