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<ミャンマーで今、何が?> Vol.298
2019.1.25

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■海賊版DVD“AMAZING GRACE”の秘密−その7

 ・26:ジョン・ニュートンの懺悔録

 ・27:東の対極にある欧米思想を考える

 ・28:We cheat!!とは?

 ・29:陰謀に老獪さを加味して、さらに老獪に!

 ・30:ウィルビーとクラークソンの悪巧み

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・26:ジョン・ニュートンの懺悔録

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ウィルビーにとって、どうしても訪ねたいところが一ヶ所あった。
いかにもウィルビーだ。初心に戻ったのである。
それは信仰の道であり、自分の精神的な師、ジョン・ニュートンのところである。

賛美歌「アメージング・グレース」の原点に、物語は戻ってきた。
この曲を作詞したあのジョン・ニュートンの古びた教会を久しぶりに訪ねた。

静かな教会内にニュートンが必死に想い出す重厚な声が響く。
「岸壁で奴隷がムチ打たれるとき、その腕はロープで縛られ、クレーンのフックに掛けられる。足には25kgの重りがくくられ、足が地面すれすれになるまで、クレーンで持ち上げる。その不安定で苦痛の極致に達する状態で奴隷はムチ打たれる。エボニー(黒檀)の堅い木で皮が破れ、血が吹き出す。そこで句点。流れる血は次第に凝固していく・・」

そこへ、足音を忍ばせるように、ウィルビーが入ってくる。
ニュートンの語る一字一句を書き取っていた書記が、それに気付き鵞ペンを止める。
「チャンと書き取っているのか?鵞ペンの紙を擦る音が聞こえないゾ・・」
「スミマセン!どなたか、お見えです。牧師様」

ジョンは目が見えないようだ。顔を上げるが、どこを見ていいか定まらない。
「ジョン、僕だよ、ウィルビーだヨ!」
声を聞き分け、懐かしそうな顔に変る。そして席を外すよう書記に命じる。

「貴方の視力が衰えていると聞いてきた」
「今は両目共に見えなくなった」
「貴方が物語を口述筆記しているというウワサは本当だったんですネ!」

ジョンはもどかしそうに何かを話そうとするが、言葉にまとまらない。
だが「君の顔が見れたら、どんなに嬉しいだろう」と告げる。

手招きされて、ウィルビーが真ん前に立つ。
ウィルビーに掴まり立ち上がると、書記の机を探し当て、机の上を手探りする。
一握りの書類を掴むと「これが、告白録のすべてだ!」と告げる。
「これを活用してくれ。名前、船の記録、港、関係した人々、私が記憶しているすべてをここに書き留めた。記憶は徐々に薄れるが、二つのことはハッキリと覚えている。ひとつは、私は大罪を犯した救いようのない罪人で、もうひとつは、キリストは偉大なる救済者だということだ」

今は吹っ切れたようで、ジョンの言葉は力強い。
「これを君の力で是非とも出版してくれ。そして沢山の船に大穴をぶち開けてくれ。クソったれの奴隷船すべてにだ。一人ひとりの名前を思い出し、すべてを思い出したい。私の亡霊は20,000人もいる。彼らは一人ひとりに名前がつけられていた。美しいアフリカの名前だった。だが、自分たちは、ブーブー言い散らす彼らをブタのように一緒くたに扱っていた。我々はサル以下の下等動物だった。彼らこそ本当の人間だ!!」ジョンの目からは止めどなく涙がこぼれる。

この場面にも貴重なヒントが隠されている。
英文聖書と比較してセリフを読めば、欧米人の思想がどれほど、深く“バイブル”に拘束されてきたか、読み取れる。しかも、それは中途半端ではない。旧約聖書のGenesis(創世記)から、21世紀の今日まで綿々と続いている。

今でも、バチカン法王が世界中で説教すれば、多くの信者がシナイ山に巡礼するように、その足元に集い、そして涙する。その威力は仏教国といわれるミャンマーにおいても同様であった。骨の髄までキリスト教の彼らを侮ってはいけない、ということを思い知らされた。

その信心深いジョンが「この記録を書き終わるまでは、私は涙を流すことはできない」と言いながらハラハラと涙を流す。
そして「私はかって盲人だった。だが、今ハッキリと見ることができる!!」
「これは真実の言葉だ!!」とジョンが淡々と語る。

これこそ「アメージング・グレース」の歌の文句で、クライマックスでもある。



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・27:東の対極にある欧米思想を考える

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今や本当の盲人となったジョン・ニュートンの物語は、誰もが知っている。ヤンゴンで屋根裏部屋に閉じ籠った日本人ですら、知っていたくらいだ。
情報溢れる日本にお住みの賢明な読者は、とっくにご存知のお話だ。

この歌をライブで歌う日本の歌手も、ジョン・ニュートンの感動的な話を、枕として歌う前に披露する。
欧米の多数の歌手も競ってこの歌を歌うが、彼らは基盤が日本人とは違う。ニュートンの物語は子供の頃から子守唄として聞かされている。教会で歌い、当然、歌詞も覚えているはずだ。日本では知る人は知るが、欧米、特にキリスト教国では、小学生からの一般常識である。

先日、カレン人男性3人が遊びに来た。
今、夢中になっている映画『Amazing Grace』の話をして、ハーモニカで出だしを吹いたら、全員がこの歌詞を見事に歌ってくれた。
彼らはひと括りに言えば、ミャンマー人である。
そして考えた。

欧米人の見る未開地開拓は、軍事面、政治行政だけでなく、クリスチャンというソフトな武器で文化面を感化していく、強力なパワーがあることを、思い知らされた。
その総力戦は、現代のハリウッドの映画製作に劣らない、グローバルな影響力を行使する。

だが、この海賊版DVDは単に名曲の感動話だけではなかった。
そのウラに、“神”に対する信仰を失わずに、不正を糾弾し、正義を追及する不屈のイギリス人魂も見事にドラマ化している。それを上手い具合に味付けした上で、この映画劇に取り込んでいる。

インターネット上では、ニュートンは最後まで奴隷貿易船で金儲けしたとか、巨象の別の面だけに注目して、独りよがりの意見を粗探ししているように思われる。

スーチーの言うように、枝葉末節だけでなく、全体像も見て欲しいという、彼女の哲学に従えば、この映画の文脈から、イギリス人の老獪さが、歴史的にどうやって形成されていったかのヒントが至る所に配置してある。このメルマガのお粗末な和訳で理解しようとしても、本当のイギリス人の老獪さは見抜けないだろう。ミャンマーの若者は、複雑なストーリーだが、何とか英語で追いてきてくれる。有望だ!!

オーバーな言い方をすれば、18年間ヤンゴンにお世話になって、この海賊版DVDに出遭えたことは、クリスチャン流に言えば、“天啓”を受けたようなものだ。
これまでに、多くのイギリス人が屋根裏部屋を訪ねてくれた。

酒を酌み交わしながら、どうしても理解できなかったことが、今、この海賊版DVD『Amazing Grace』によって、ストーンと腑に落ちたのである。
イギリス流皮肉な表現をすれば“天啓”の衝撃を受けたのである。

日本語でダラダラ書いても、こんな話はアクビが出るだけだ。
だから、アクビが出たら、即座に無料メルマガの「購読中止」をクリックして頂きたいとお願いしている。
こうやって、コンビニ的読者の数を極力ゼロにして、今度は英文によるメルマガで、この地球上を好き勝手に制覇してきた欧米人、特にイギリス人に挑戦してみたい。

そのための、いかにも日本人という格調ある“英語”の修行に入るときが来たようだ。それこそ“英語のプロ”が目指す、本物の英語である。勘違いしてもらっては困る。サミュエル・ジョンソン博士の英語ではない。一目見て日本人が書いたと思わせる、日本人らしさが紛々と匂う未開拓の英語である。充電期間とするため、2月一杯、勝手ながら、このメルマガは休刊とさせていただきたい。プロバイダー殿に相談なく、そうさせていただきます。



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・28:We cheat!!とは?

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かと言って、『Amazing Grace』はまだ終わっていない。

場面は、20,000人の亡霊が住むジョン・ニュートンの古びた教会であった。
「私は不自由ない目だったが、実際は盲人同様だった。何も見えていなかった。だが、今、盲人となって、反対に見ることができるようになった!」
「この文句は書いたのだったかな?ウィルビー!」
「ジョン、確かに書きとめてあります!」
「この文句は、本当に真実だ、ウィルビー!」

「ウィルビー、さぁ行くんだ!やってくれ!我々二人の間には、やるべきことが山ほどもある」
二人は抱き合い、力強くお互いに肩を叩いて、ウィルビーは教会を去る。

ドラマの場面は変る。
アシの繁る川のほとり、山小屋に身を隠してとバーバラが言ったトーマス・クラークソンが赤ん坊を抱いて川っぷちのアシの原を歩いている。あれから、かなりの時間が経過し、クラークソンも結婚して、赤ん坊ができ、環境がすっかり変ってしまったのだろう。

日本人なら見過ごすが、クリスチャンがこの場面を見れば、赤ん坊のモーゼをエジプトの圧制から守るため家族がアシで編んだ揺り篭でそっと川に流す場面をすぐに想像するはずだ。有名な「モーゼの十戒」その人の伝記である。

詳しくはバート・ランカスターがモーゼを演じた『MOSES』あるいはドリームワーク製作の漫画映画『THE PRINCE OF EGYPT』を参照いただきたい。とくにこの漫画映画は非常に平易で子供にも分かりやすくモーゼの一生を描き出している。

ユダヤ教またはキリスト教入門としては肩の凝らない最適のDVDである。このように、ユダヤ教・キリスト教というのは布教が実に上手い。キリスト教の宣伝とは絶対に思わせないところが老獪で、巧妙である。イギリス人もここから老獪さを学んだのかもしれない。

自慢のコレクションには、ユダヤ教キリスト教だけでなく、仏教、イスラム教、ヒンドゥー教の海賊版DVDがドッサリと揃っている。若者の教材には不自由しない。

そのアシの原を見渡す端の上から大声で「クラークソン、クラークソン!」と呼びかけるシルクハットの紳士がいる。
「やったー!彼に元気な声が戻ったようだ」とクラークソンがウィルビーをみとめ、つぶやく。
「直ぐにロンドンに戻ってほしい!」

ウィルビーの精力的な呼びかけで、昔の仲間が続々とロンドンに集結する。
そして、ここは再び、ウィルビーの事務室。
「今夜の会合は西インド諸島から戻ったばかりのジェームス・スティーブンを歓迎するためのものだ!」

覚えておられるだろうか?仲間たちのミーティングで書記を買って出たスティーブンである。髪も伸び、ヒゲも生やし、かなりの時が経ったことが分かる。
部屋の暖炉は燃え、フォックス議員も、ウィルビーの従兄弟ソーントン議員も、クラークソンと、懐かしい顔が大勢揃っている。

スティーブンは、昔通り、無駄のない淡々とした語りで「ある法廷の書類をもってきた。まったく無知なアフリカン人が、無実の罪を着せられ、生きたまま火あぶりの刑に処せられた法廷記録である。その証言が何ページにもわたって続く。細かい数字も統計も含まれている。今や西インド諸島の各島で反乱が起きはじめた。ハイチでは島が奴隷の手に落ちた。奴隷は切望している。自由な解放をもう待てないといっている」

出席者は静かにスティーブンの説明に耳を傾けている。
「彼らはウィルバーの活動に注目している。一人の女奴隷とその子供がコーヒー農園でムチ打たれているのを目撃したことがある。その後で、女が子供に話をしているのを聞いたことがる。誰かが、海を越えて、私たちを助けに来てくれると。その人の名前はキング・ウィルバーフォースだと!」

皆が首を廻し、ウィルビーを見つめる。居たたまれないように、ウィルビーが腕組みして考え込む。
「だから、今回は絶対に失敗してはいけない。これはお遊びではないのだ。これだけでは充分な証拠とならない。この書類を議会に提出しても、同情は集めるだろう。そして関心も持ってもらえる。しかし、それでは、前回、前々回、これまでと同じ失敗に帰すのは目に見えている!」

「我々の望みを奪うために君は帰ってきたのか?」とウィルビーがスティーブンを問い詰める。
「否、いや、僕にはアイデアがある。法律書を読み進めるうちに、あるところで目が停まってしまった。それを皆さんに新戦略として提案したい。“Nosus Decipio”だ!!ラテン語だ!大雑把に翻訳すれば、“We cheat”という意味だ!」

この瞬間、ワタシは鬼の首を盗ったように小躍りして、その場面を何度も、何度も、再生してその英文字幕を見詰めた。間違いない。冷えたビールを取り出し、一人で祝杯を挙げてしまった。会場の皆はそれぞれに考え込むように、黙して語らない。
場面はそこで転換する。



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・29:陰謀に老獪さを加味して、さらに老獪に!

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場面はコロコロ変る。
首相の私邸。ピット首相の館である。
自宅の敷地内で、ピット首相が従者多数を引き連れて一人ゴルフを楽しんでいる。
どんなにゴルフ好きの総理大臣でも、日本ではお目にかかれない光景である。

ヒッコリーのクラブで首相がアドレスに入る。
そこに、ウィルビーとクラークソンが一頭の白馬に跨り駆けつける。
「Oh God!どんなに大事な用件か知らんが、この一打は先に片付けるゾ!」
二人とも、寒くて堪らんという風情で足を踏み鳴らす。

「Oh, for the God’s sake, what is it?」
首相はついにクラブを投げ出し「クソったれめ!一体全体何の用だ」と切り出す。
待っていられないとばかりに、二人一緒に声が出る。
「奴隷廃止法案を提出しないことに決めました」
「出さないだって!」首相がオヤオヤという顔をする。

「その代わりに、貨物船に対して中立国籍の旗を掲げる問題について取り組むつもりです」
「あまりパットしない問題だな!」
「その通りです!」

「フランスの貨物船は便宜的にアメリカの国旗を掲げて航海していることを提議したいと思います。これはPrivateerによる捕獲を避けるためです。これは戦争協力の一部ともいえます。すべては愛国心から出たものです」
「君たちは、いつから戦争努力とか、愛国心を考えるようになった?」
クラークソンがニッコリ笑って「愛国心なんか、これぽっちもありません!」
「それでは、ゲームを続けよう」

「このヤリ方に、何か奇妙なものを感じませんか?」
「否、別に!」
「そうであれば、連中も同じ考えを持つでしょう」
「チクショウめ!何を君たちは考えているのだ?」

「奴隷船すべての80%は西インド諸島へ向かいます。それらは中立のアメリカ国旗を掲げています。これはPrivateerが乗り込んでくる臨検を避けるためです」

「この法案を通過させれば、臨検阻止も排除できます。どの船主でも航海を続けることはできません」
「この法案は、フランス船にだけ適用して、イギリスの船には適用されないのだな」
「それが、この作戦の優美なところです」
「いちどアメリカ国籍の国旗を掲げる以上、どんな船であろうと法律によって、フランス船、イギリス船の区別はありません。だから英国の奴隷船であろうとも、フランス船同様に捕獲されます。またPrivateerは法の範囲内で強制する以上どこの国の密輸品を押収しようがまったく関係ありません」

「中立国船としての保護を取り上げれば、英国の奴隷船は一夜にして80%が消えて亡くなります」
ピット首相が再び「Dear God!」とつぶやく。
「しかし、首相閣下!この法案はまったく別のところから提出する必要があります。偽装するのです」
「できることなら、自分自身議会内に立ち入りたくないのです」とウィルビー。
「だが、これだけでは奴隷船廃止にはできないだろう」と、ピット首相。
「連中の利益をカットできれば、奴隷貿易商人の半分は2年以内に破産します。そうすれば、我々は国会内の議員を一人ひとり吊るし上げるのです」
「これは誰のアイデアだ?」とピット首相。
「法律学者です!」
「反フランスの法案が同時に反奴隷貿易の法案となる!」
「どうしてこれまで、こんなことを思いつかなかったんだ?」

「だが、この法案の後ろに我々が控えていることを誰にも知られてはなりません」
「だれか、もっとも愛国者らしい議員に、この法案を提出するよう指示して頂けませんか?首相閣下!」
「バレたりしたりして波風を立てたくないのです!」
「実際、本当に口の堅い人間を必要としています」



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・30:ウィルビーとクラークソンの悪巧み

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場面は大詰めの国会議事堂内。
ガラガラの野党席で、ひとりの名もない議員が立って演説をはじめる。
前の席には野党代表のタールトン議員が提案趣旨書に目を通しながら座っている。
与党席は塞がっているが、野党席はまばらにしか議員はいない。一見退屈な議会のようだ。

「特にフランス籍の船は、アメリカの国旗を掲揚して国籍を変更します。そしてハバナで砂糖を積み取るとアメリカのカロライナ州、あるいはバージニア州、あるはフロリダ州、あるいはNYシティ、場合によってはボストンへと向かいます。それから積荷は卸され、そこでアメリカ国旗を掲げた次の二番目の船に積み込まれ、フランスへ向かいます」

その演説の途中で、与党後ろの席のウィルビーが前の席のフォックス議員の肩を叩き、紙の束を手渡す。抜かりないタールトン議員はその様子に気付き、何かオカシイという顔をする。フォックス議員は紙の束を握り締めて、スタスタと議場から出て行く。
さらには、ガラガラの上階の一般観客席にクラークソンが入ってくる。タールトンは見逃さない。久しぶりのタールトンの登場に何かあると気付いたようだ。

この長ったらしい演説はまだ続いている。
「このような状況下で、英国海軍も特許をうけたPrivateerもこのような商船を捕獲する権限はない。私の提案は、アメリカの国旗を掲げるすべての船舶は臨検・拿捕の対象とし、フランス船の一部、そしてオランダ、それからスペインが行っているこの欺瞞行為に終止符を打つことである」

手の内の提案趣旨関係の書類を読み比べながら、野党タールトン代表は、疑惑に駆られる。そして突然起立して「議長殿、奴隷廃止論者たちは不正な横風を送り込もうと企んでます」
「横風?どんな横風なんだい?」議長が怪訝な顔をする。
「どんな横風か説明できませんが、何かが企まれているような気がします。」

ウィルビー陣営に緊張が走る。
タールトンは必死である。「議長!休会を要求するのは手遅れですか?」
議場内の空気が一瞬凍りつく。
議長が重々しく「どうも、そのようだな!議事進行!」と告げる。

陰謀が謀られたとタールトンの勘は鋭い。
議場を駆け出し、国会議事堂内の廊下を、走り回る。
今、採決がはじまれば、野党席はガラガラで、票が集まらない。対して与党席はほぼ埋まっている。これは陰謀だ。

廊下で仲間を見かけると、直ぐに議席に戻れと指示する。
「Chamber, Chamber! Move your arse!」これが日本人で一般に誤解されている上品なギングズ英語である。議場だ、議場だ!直ぐにケツの穴を動かせ!
キチガイのようにタールトンは議事堂内を走り回る。

議事堂内の社交クラブでは、入り口に執事がひとり、暖炉だけが赤々と燃えている。
「皆どこに消えたんだ?」鬼のような面相でタールトンが入ってくる。

奥の奥から声が聞こえる。椅子の背で見えなかった。
お馴染み狸オヤジのフォックス卿である。
「皆は今、Epsom競馬場に出かけたヨ。タダ券を手に入れたんだ!ウィリアム・ウィルバーフォース議員からのタダ券をアナタのために一枚取ってあるんだ。ほら、ここに!!」と券をヒラヒラさせる」
タートンは怒り心頭で、近くの椅子を持ち上げると、フォックス議員の方へ投げつけた。

エプソン競馬場といえば、ロンドン南西25kmにあり、ダービーとオークスの開催で知られる。
18世紀には温泉があり、上流階級の社交場であった。
なんてことは、どうでもいいことで、肝心なのは、これまでは、野党の連中が与党議員を買収するのにこれらの入場券やオペラの招待券を乱発していた。それほどまでに、英国議会は当時腐敗の巣であった。

それを今回、ピット首相と手を組むウィルビーが敵の汚い手を、そっくりそのまま頂いて、敵討ちしたわけである。もちろん、知能犯の狸オヤジの手の内のひとつでもある。

とここまで書いてきて、突然、急用ができてしまった。ヤンゴンでは一寸先、何が起こるか分からない。

本当はこの「アメージング・グレース」シリーズの最後まで完結するつもりが、未完になってしまった。週末を挟んで、再考してみたい。


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