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<ミャンマーで今、何が?> Vol.300
2019.2.1

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━

■旅の途中

 ・01:人生そのものが旅である

 ・02:「日の名残」

 ・03:途中経過報告

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・01:人生そのものが旅である

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現在はメルマガを休刊し、旅に出ている。

3月初旬にはヤンゴンに戻り、人生最後のプロジェクトにミャンマーの若者と挑戦するつもりだ。今回は、それに必要な情報を求めて地球上をさ迷っている。

ある日本人と、現地時間2月15日午後5時ぴったりに、地球上のとある場所で、約束どおりに落ち合うことができた。

同氏も私も、お互いに、話したいことが山ほどあった。
だが人生と同様で、手持ち時間は限られている。
あっという間に三時間が過ぎ去ってしまった。

同氏との話は、ロンドンの晴れた日と同じだ。
キリがない。
話題はあちこちに飛び火していく。
名残惜しいが時間がきた。
今年7月に、ヤンゴンで再会する約束をした。
同氏は、これから南に旅するという。

別れた後で、同氏との会話を反芻してみた。
語るべきことが、さらに山ほど出来てしまった。
別れ際に、パックされた沢木耕太郎の「深夜特急」6冊、そしてもう一冊「日の名残」をプレゼントされた。

「深夜特急」はヤンゴンに戻ってからゆっくり楽しむこととした。
「日の名残」については、同氏のアドバイスが気に掛かり、早速読み始めた。

この本は日本語だが、あくまでも英語の原文で味わってほしいとの一言だった。
そして同氏も、英文の原書で読んでいる最中だと付け加えた。

なんといっても嬉しいのは、本人が感銘を受けた本を、ぜひ読んでほしいとプレゼントされるときである。
旅の途中で、読み終わったと週刊誌や新聞を置いていってくれるご同輩にも感謝している。
私の図書棚から、地図など一部をそっと切り取り、分からないように戻していく同胞にも、時折出会う。
人生イロイロである。

それぞれに旅の途中である。



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・02:「日の名残」

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原題は「The Remains of the Day」、あのカズオ・イシグロの作品である。
英国最高のブッカー賞を受賞し、続いてノーベル文学賞を受賞した日系英国人であることは仄聞している。

だが、同氏の著書は一冊も読んだことがない。このプレゼントは嬉しかった。

この本を手渡されたときに、ダーリントン・ホールという英国の旧いお屋敷における“バトラー”の話です、と説明を受けた。

“バトラー”とは“執事”と訳されるが、英国では身分の高い人の館で、事務・庶務一般をつかさどる人品卑しからぬ職務とされているようである。
日本では高貴な家族は消え失せてしまった。ワレワレ庶民にはまったく縁のない職業である。

だがヤンゴンでは、“バトラー”はもう少し身近になってくる。
ミャンマーでもっともステータスの高いホテルといえば、なんといっても“ストランド・ホテル”である。格式がシャングリラやセドナよりも、数段上にランクされる。
ここの売りは、バトラーが24時間待機して、宿泊客からのいかなる要求にも応えてくれる、となっている。

このホテル・メインロビーの奥にキオスクがあり、このホテルの歴史を書いたオレンジ色の英文書が置いてあった。今から17年ほど前の話である。セピア色の写真や図説がたっぷりと挿入されていた。確か定価は20数ドルだったと思う。

私はこの本を通して、はじめてイギリスの植民地がいかなるものであったのか、そうしてビルマの歴史がいかに波乱万丈であったかを学んだ。
ヤンゴンに長期滞在して2年目になったが、ミャンマーのことは何一つ知らなかった。そこで、この本を手がかりにビルマの歴史を徹底的に勉強してみた。
この本を書き出版したのはオーストリア人で、ホテル経営学を学んだプロである。世界でもっとも有名なホテルというシリーズ名で、その一環として、東洋の貴婦人といわれる“ストランド・ホテル”を取り上げていた。

その物語に夢中になった。
丸ごと一冊、一字一句を、日本語に訳してみた。
読み直しても悪くない。ワープロに叩いて、原作者ともメールで連絡を取り、翻訳原稿を紀尾井町の文芸春秋本社に持ち掛けた。飛込みである。
出版担当の女性は時間を割いて話は聞いてくれたものの、ミャンマーがアフリカにあるのか、東南アジアにあるのか、あまり興味はないようだった。結局のところ、失礼のないように慇懃に出口まで案内してくれ、それですべては終わった。
今から、20年近くも昔の話だ。

だが、カズオ・イシグロを翻訳した土屋正雄氏の日本語訳はさすがにプロである。
私が読んだのは、その日本語訳「日の名残」であるが、20世紀初頭のイギリス人のシニカルな英語表現が十分に想像できる会話となっている。

もし、私が「アメージング・グレース」で英国の歴史的背景を勉強していなければ、“バトラー”の仕事を、そして「日の名残」を理解できなかっただろう。
時間にリッチな私は、普通の文庫本は一二日もあれば読み終える。新書版なら一日に二三冊は読み終えるが、この「日の名残」には5日間も掛かってしまった。中身が濃いのである。しかも、シニカルで老獪な表現がウラのウラを読み解くことを要求される。

例の紳士は、そのことを見透した上で、この書物を私にプレゼントしてくれたようだ。



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・03:途中経過報告

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物語は、1956年の旅の途中が舞台となっている。だが、主人公は貴族の館に仕えた1920年代・1930年代を頻繁に回想して、現在と過去が行ったり来たりする。

イギリスの貴族の館とは、卑近な例で言えば、最低18ホールのゴルフ場の敷地に建てられた豪華だが、質素な英国式邸宅といえば、日本人には分かりやすいかもしれない。だが、日本人の想像を絶するのが、敷地の中にいくつか池が配置され、丘陵地帯が続き、ルアーフィッシングが出来る川がその敷地を貫流している。そして、羊やヤギなどが放牧され、そして角の立派なへら鹿や、野ウサギがも住み着いている。狩猟用の馬や猟犬も飼育されている。

だから、多くの友人を何日間も招いてのハンティングとか、フィッシング、乗馬やピクニックが楽しめる。これらすべてを取り仕切るのが“バトラー”の役目である。

その広大さを視覚的に理解するには、海賊版DVDが最適である。
DVD「イマジン」は、すでに大富豪となったジョン・レノンが緑豊かな英国の田園に建つ貴族の館を見せてくれる。ヘリコプターが英国の美しい田園風景を上空から訪れる。田園風景が延々と続き、そしてやっとヨーコ・オノと住む貴族の館がはるかかなたに見えてくる。

日本の明治村に保存される明治の洋館建てはほとんどが、英国の貴族の館がモデルとなって建てられた。英語では“マナーハウス”と呼ばれ、日本語では“荘園”と訳される。だが狭い日本の領土では、建物だけが真似され、この美しい広大な田園風景までは移植できない。そこで、せいぜい、ちんまりとした築山の日本庭園でごまかす。

そしてこれら貴族の館がいぶし銀のような輝きを見せるのは、総合的に内向きを管理する老練な“バトラー”の存在である。

海賊版DVDで“The Butler”があったはずだが、今、ヤンゴンを離れ、それが確認できない。アメリカのホワイトハウスで、何代もの米国大統領に仕えた黒人“バトラー”の話だった。確かアイゼンハワーから、ケネディを経て、ニクソンやレーガンも出てきたような記憶がある。

私もこれまで英米をごちゃ混ぜにしていたが、オリバー・ストーン監督、そして“アメージング・グレース”によって、イギリス人とアメリカ人はまったく異なること。そしてアメリカはイギリスの亜流であることをいやというほど知らされた。すなわち、アメリカ人のやる事は、老獪なイギリスのコピーであることを学ばせてもらった。

この黒人“バトラー”もイギリスの真似事であり、ドナルド・トランプのフロリダの別荘地にしても、完全にイギリスのコピーである。

話を“日の名残”に戻そう。
ダーリントン・ホールには、世界の大物がお供(バトラー)連れで訪れ、日数を限らずに何日間も滞在する。英国の大物だけではない、ドイツの大物も、フランスの大物も、そしてアメリカの大物までもが、時には家族を伴い、長期滞在する。

第二次世界大戦における大英帝国の存亡が、国会議事堂ではなく、この貴族の館で話し合われる。根回しは日本の独占特許と思っていたが、そうではない。日本が英国の老獪な根回しを真似したのである。

そのダーリントン・ホールのあるお屋敷も、戦後は成金と思われるアメリカ人の金持ちに買い取られてしまう。アメリカ人とて、この広大な敷地を完全にマネージすることは不可能だ。

そこで、お屋敷と同時に、そのノウハウを先祖代々受け継ぐ英国人の“バトラー”も同時に引き取られる。

この辺りから、成金のアメリカ人がドナルド・トランプに見えてくるから不思議だ。
それだけではない。
この“バトラー”がどうしようもない頑迷固陋の英国そのものにも見えてくる。

そして「アメージング・グレース」におけるピット首相のゴルフ場のシーンまでも思い出される。ピット首相やウィルバーの住んでいた貴族の館、そして影のように付き従うバトラーまでが生き写しのように見えてくる。

たった一人のバトラーを描いているが、この一人のバトラーが21世紀が抱える諸問題にも見えてくるから不思議だ。
ということで旅の途中の私にとって、宿題が増えてしまった。

ひとつは、ヤンゴンに戻ってじっくりと、このカズオ・イシグロをもう一度読むこと。
そしてこの原作はアンソニー・ホプキンス主演で映画になっているので、そちらの解釈も海賊版DVDが手に入れば見てみたい。
その上で、ヤンゴンの古書店街で原書が手に入れば、原書にも挑戦してみたい。

これによって、「The Remains of the Day」を多角的に鑑賞できるだろう。これこそ私の目指すヤンゴン老獪学の授業である。

話は中途半端となりますが、まとまった考えは、ヤンゴン帰着後とさせてください。




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