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<ミャンマーで今、何が?> Vol.308
2019.5.27

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━

■ケーススタディ卒業式

 ・01:モンスーン雨季がやって来た

 ・02:ケーススタディ卒業式

 ・03:ミャンマーのマハラジャ

 ・04:“走らずに、ゆっくり歩けよ!”はベンチャーズ?

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・01:モンスーン雨季がやって来た

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異常気象とはいえ、ヤンゴンでも確実に季節が変わりはじめた。
遠雷を何度も聞いた、そして雲が動きはじめる。
強烈な太陽光線がその雲で遮られる。

そして突然の豪雨だ。南方の雨は、数歩歩かぬうちに土砂降りとなる。
大陸性の落雷は派手派手だ。地響きを立てて落ちてくる。
ミャンマーは広い。全国から落雷で命を落とすニュースが飛び込んでくる。
ゴルフ場は逃げ場がない。くれぐれもご注意のほどを。

これだけ揃えば、気象庁に頼らず、モンスーン雨季を宣言したい。
停電は相変わらず頻繁だ。だが、待望の雨である。雨季の初めはありがたい。
子供たちも、外で働く労働者も、嬉々として、ずぶ濡れを楽しむ。

坊主は長い雨安居(うあんご)に入る。
昨年10月から続いたハレの日が、ここで入れ替わる。
9月までは目出度い結婚式などは慎むのが、当地での常識だ。
だから、先週は駆け込みのお目出度が各ホテルで満開だ。

学生たちも、6月1・2日は土日で、6月3日から授業が始まる。
それまでは、長い長い夏休みだった。
酷暑、灼熱のあの天候では、元気な子供たちも惰眠を貪る。
それが自然にかなったサイクルである。

そして雨季に慣れてくると、連日の雨にウンザリし、カビ対策に追われる。
ミャンマーでは、このサイクルに付き合えるか否かで、印象はまったく異なる。
どこで灼熱地獄を生き延びたのか、カエルの合唱隊が、この下町で聞ける。
不思議だ。



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・02:ケーススタディ卒業式

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とある“アカデミー”と称する職業訓練機関の卒業式に招待された。
学生の反政府運動を嫌う軍事政権は郊外に幾つかの大学を設置した。
彼女はそこを卒業したが、仕事は無い。そこでこの“アカデミー”に入学卒業となった。

最近、このような教育機関が雨後の筍のように出現している。
ほとんどが外資系だが、国籍がハッキリしない。
NZ、カナダ、英米への留学を謳っているが、実態はまったく見えない。

好奇心を刺激され、行ってきた。
場所はヤンゴンの新名所ミャンマー・プラザのMELIAホテルである。
セドナに対抗するように、その向かいに立ち、インヤレークは目の前だ。

MELIAホテルは1000人を招待した友人の娘の結婚式で土地勘はある。
さらにこのホテル立ち上げの総指揮をとったシンガポール人とも知り合いで事務所を訪ねたこともある。

駆け込み時季だったので、他の“アカデミー”も、そして結婚式もと、大繁盛だった。
この本人はもちろん、付き添いの姉、母親も、美容室でけばけばしく完全に化けていた。
オヤジだけが、その場に相応しくなく、ピカピカのロビーをご当地スリッパで闊歩していた。

両親とすれば、この日の出費はかなりのものである。
カメラマンと助手の男を2時間借り切り、ホテル内を駆け回る。
娘の房付き角帽と黒いガウン、黄色いショールもレンタルである。

カメラマンはピカピカのホテル内のシャンデリアの下、ロビーの長椅子、ロビー内噴水の前、エスカレータの乗降口、あらゆる場所に移動して、娘だけ、娘と母親、娘と両親、家族全員の写真を撮りまくる。

そのとき、面白いのが、カメラマンはコレオグラファーを兼ね、アゴを挙げろとか、後足を壁につけろ、長椅子では両足を揃え左へしなをつくれとか、両親にまで両脇から娘にキスするよう強制する。黒澤明以上に、横柄なカメラマン監督だ。

時折助手からペットボトルを受け取り、飲料水を飲むさまは余裕すら感じられる。
カメラは間違いなく日本製高級カメラ。ミャンマーでは羽振りの良い商売である。

助手は、外側は真っ黒、内側を銀色に塗った、大きな反射板パラソルを抱えて、汗だくでカメラマンに付いていく。

その大作が、ミャンマー人宅を訪ねると、必ず入り口の居間に埃をかぶって飾られている。
そのために両親は借金をしても大枚をはたくことになる。

今のデジカメは性能が良い。フォトショップも覚えさせれば、卒業式だけでなく結婚式と併せてチャンスがある。ヤンゴンで激戦区のラーメン屋よりは勝ち目がある。挑戦してみたい。

この“アカデミー”は、卒業したら、UAEの高級ホテルでルームサービス、カリブ海の豪華客船で接客業、シンガポールでF&Bの仕事、とイノセントな若者を引っ掛ける写真を多数掲載するが、本日入手した紙っぺら一枚の卒業証書(Diploma)では保証の限りでない。さらに次の上級選科を推奨している。これが数千ドルに設定してある。貧乏家族には思案のしどころである。

Diploma一枚に数千ドル盗られ、その上に、数千ドルを騙し盗られるところなど、その心理作戦商売はラスベガスと変りはない。イノセントなのはこの本人だけでない。本日だけ紅を引いた母親も、鼻高々のオヤジもイノセントである。それがミャンマーの現実で大問題である。

この出稼ぎ問題の仕組みが分かっているのは、注意深く取り組んできたスーチーだけかもしれない。

北欧系の国々は、人権問題をかなりマジメに考えているが、シンガポール、マレーシア、タイをはじめとするアジアの国々は、単純労働を嫌う自国民に代わって実習訓練生の名前で、廉価なミャンマー人を労働者として導入しようと考えている。

人材派遣は現代の人買いだと唾棄する好漢も、時にはいる。



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・03:ミャンマーのマハラジャ

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中国製スマホでグーグル検索中に電話が鳴った。
画面に赤と緑の電話マークが出てくる。
慌てて、緑を押したり、ワイプするが、受信状態に変わらない。
そこで電話は切れてしまう。それを四五回繰り返しただろうか。

慌てて折り返した。だが、録音テープが繰り返されるだけ。
かなり時間を置き、再再々挑戦し、やっと話が通じた。
第一声が「無事かい? 電話が通じず、日本帰国かと思った!」

今夜いつもの仲間が集まるという。
無精ひげを剃り、タクシーを飛ばした。
すでに仲間20数人が、広いラウンジのアチコチで歓談している。

片隅にはキーボードとエレキが設けられ、得意のBGMを担当してくれる。
奥方連中がマイクを独占、次々に好みの歌を注文する。
ひとりがマイクを握ると、三四個のマイクが次々にオンされる。
エルビス、コニー・フランシス、ジム・リーブス、ドリス・デイ・・・
懐かしのレパートリーがオン・パレードだ。

♪君が夢見たその枕を送っておくれ♪
♪今でも君の事が気になっているんだ♪
♪君の夢見た枕で、僕も君の夢を見ることができる♪

ハンク・ロックリンの名曲である。
アメリカでは多くの有名歌手がカバーしている。

アメリカのカントリー界では三人のハンクが活躍した
ハンク・スノー、ハンク・ウィリアムス、そしてハンク・ロックリンだ。
シニアの奥方たちが、うっとりと、声も若々しく和しはじめる。
奥方だけでなく、ダンナたちもギターを手に、メロディとリズムが追っかける。

彼らは山岳地帯シャン州の仲間たちである。
その系譜はマハラジャに匹敵する土候に近い。
日本のリッチマンは知らないが、彼らの生活は実にリッチだ。

州都タウンジーに豪邸があり、ヤンゴンでも飛び切りの豪邸に住む。
ジョニ黒やシーバスが湯水のごとく空いていく。
炭酸で割るも良し、ロックも良し。何人集まろうが、グラスも氷もたっぷりある。
田園調布は知らない。だが、この豪邸はそれを上回るのでは。

ミャンマーの現代史を学べば、必ず出る将軍の娘の自宅が、この真向かいにある。
夕暮れに大勢でパーティを開こうが、真向かいですら気にならない。
ここは手狭なピアノ殺人には縁が無い。

日本ではその余裕はもうないだろう。
使用人が皿グラスを片付け、次々に新しい盛り付けが運ばれる。
コックをはじめとして、家の内外で、何人かの使用人が切り盛りしている。

集まった目の色、髪の色、肌の色を観察すると、その多様性に驚かされる。
目はパッチリと二重まぶたで、吸い込まれるような瞳をしている。
有名な元女優もいるが、それは昔の話。全員、それなりに。

半世紀以上も前の若者たちが、得意のギターで伴奏する。
♪SEND ME THE PILLOW THAT YOU DREAM ON♪

パンジャブ系も、カレン族も、クリスチャンもいる。もちろん仏教徒もいる。
日本と異なるのが、男性女性ともに社交性に長けていることだ。
外国人が加わると周りは突然英語に切り替わる。

日本と異なるのは、洋楽の歌詞をしっかりと理解して歌っていることだ。
日本人は私を含めて、メロディあるいはリズムの良さで、歌詞は棒読みだ。

自分を卑下して言うのだが、社交の会話にビジネスマンの狭量さがない。
彼らには、ムスレム・西洋人との、交易の長い歴史が流れている。

顔つきもジックリ観察すると、ハイブリッドの一滴が入っているのだろう。
黒い肌のオヤジからどうして、と思うが、魅力的な娘や孫は色白だ。
Blue Spanish Eyeを想わす魅力的な娘が国連の外交官になった。
一時は紛争地帯に駐在し、オヤジは盛んに心配していた。

乾季だけミャンマーで過ごし、明日アメリカに戻る旧友夫妻とも出会えた。
奥方はペルシャ美人を想わす容貌で、パンジャブのダンナは今でもベタ惚れである。

ヤンゴンで出会う日中韓の人たちを観察すると、世界の見方が実に狭量だ。
日中韓からミャンマーまでの地図しか頭に描いていない。
東経で言うと、60度にも満たない狭い狭い範囲である。
地球は丸いのだ。残りの300度を無視して世界を見ている。

逆に、この仲間たちは、カイバー峠からイスファハーン、ボスポラス海峡、地中海、そして大西洋を越えて屈託なく話は弾む。ハイブリッドの血のせいかもしれない。

日本人も極東の吹き溜まりでハイブリッドした筈だ。だが、アイヌ民族も琉球民族をも疎外してきた、その島国根性に今、ヤンゴンで疑問を抱いている。

パーティが一段落した頃、世が世ならばプリンセスである、この夜のホステスが、隣のダイニングルームに女性陣を急きたてる。
そこには、本日のメイン・ディッシュがたらふく用意されている。
シャン名物のときもあれば、インド料理のときもある。
女性陣だけのテーブルは賑やかだ。

ラウンジに残された野郎の宴会は停電そのものだ。華やかさが消えてしまった。
日本で懐かしい、昔のビジネス風景二次会にソックリである。
女性陣が第二回戦に備えて、一人二人戻ってくる。
豪邸ではあるが、パウダールームはまだ充実していない。
ダイニングがそれを兼ねている。世間のウワサ話しはここで仕入れる。

お預けを食ったワン公たちが、女性陣と交代でダイニングに向かう。
この分別スタイルは、僧院でもミャンマーでは伝統作法である。

人生の楽しみ方にも、多様性があることをここで学ばせてもらった。
高名な画家もいるし、出版者を経営する女性社長もいる。

大都市ヤンゴンでシャン州のコミュニティは有力な大集団である。
それを束ねる女性会長も、ここではいつも控えめである。

日本で馴染みの現役中心では決してない。
家族愛に包まれた個々人が、コミュニティに広がるネットワークを確立している。
何よりも、彼らは家族を大切にしている。
昔の恩師も、長老もいれば、孫たちはここで社交を学ぶ。

敬老の日だけのお義理ではない。
子供や孫たちが、恭しく接してくれる。
この祖父母の人生に、憧れに近い、尊敬を抱いているのだろう。
このネットワークは、利便性のみを優先するWWWをはるかに凌駕している。

社長や相談役など、肩書きで風を切るビジネスマンや役人は多数見てきた。
その有効期限や賞味期限は、ほんの一瞬の浮世である。
シャン州の仲間たちは、そういう価値観とはまったく別の世界に住んでいる。

彼らを紹介してくれた義理の弟が、僭越にも私を差し置いて旅立っていった。



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・04:“走らずに、ゆっくり歩けよ!”はベンチャーズ?

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雨季になったらヤンゴンを訪ねてくれる友人から、ギター演奏のビデオを送ってもらった。彼の演奏もプロ並である。
だが、残念なことにダウンロードできない。

彼の刺激を受けて、屋根裏部屋もネット時代に相応しく、カタツムリのスピードで改造中である。
雨季に入ったので、壊れていた頭脳も少しは動くかもしれない。

Walk, Don’t Run!で諦めず、挑戦を続けていきたい。



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