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<ミャンマーで今、何が?> Vol.310
2019.6.3

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━

■書を捨てよ、YouTubeを活用しよう

 ・01:山道を登りながら、こう考えた(漱石「草枕」)

 ・02:本が取り持つ縁

 ・03:YouTubeの世界

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・01:山道を登りながら、こう考えた(漱石「草枕」)

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本当によく降ってくれる。朝から本降りだ。
しかも、地響きのする雷まで伴っている。
落電はせずとも、ビル全体が不気味に震える。
厚い雨雲に覆われているのだろう。外は真っ暗だ。

だが、早朝になると、決まった時間、小鳥が窓際を訪れる。
ブーゲンビレアが一色一色消えていき、今は白一色になった。
これからは、葉桜ではないが葉っぱの緑が鮮やかになる。

停電は、頻繁にやってくる。
真っ暗闇の室内で、最初に確認するのはエアコンの電圧安全装置だ。
緑の点が2つ見えれば通電しており、真っ暗なら電気は回復していない。

真っ暗闇で目が覚める。時間は分からない。
起きるか否かは、自分の身体に相談だ。

東京の郊外では厚いカーテンを下ろす。深夜でも外の明かりが飛び込んでくる。
ヤンゴンでは犬の遠吠え、そして虫の音、カエルの合唱、トタンの雨音、小鳥のさえずり、人工の不協和音はない。ここ大都会で原始生活に戻れる。

停電には2時間ルールが適用されているようだ。
トイレに立ったついでに時間を確認する。
真夜中だと、12時、2時、4時、6時が切り替え時間と予測する。

今電気が来ていれば、この時間が次の停電。
まだ停電中なら、この時間に電気は回復する。

この予測がほぼ的中するようになった。
日本で経験できない停電は実にありがたい。
時間を粗末にしない習慣が身につく。

電気の寿命は、アト30分。それまでに何と何を済ます。
あるいは、停電が回復するまでにアト45分。
ベッドに戻り横になり、電気が戻ったらと、段取りを考える。

時間の管理を停電が教えてくれる。
停電の無い日本は気の毒だ。ミャンマーの子供たちは恵まれている。
モノゴトは考え方次第だ。
真っ暗なベッドに横になり、こう考えた。



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・02:本が取り持つ縁

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それにしても、酷暑の4月、灼熱の5月は、読書三昧で過ごした。
友人が態々アマゾンから取り寄せてくれた「深夜特急全6巻」である。
冷えたビールで一気に読み終えた。
学生時代に夢見た水平線の向こう、地平線の向こうへ、連れて行ってくれた。

題名は不確かで礼を欠くが、「何でも見てやろう」、「お嬢さん放浪記」、ミッキー安川の留学記、「パリの空の下、オムレツの匂いは流れる」などなど、当時は叶わぬ夢を描いて、片っ端から読み耽った。

「深夜特急」は未読だった。それだけに学生時代の自分に引き戻してくれた。
改めて友人にお礼を述べたい。

そういえば、私の図書にも同じ著者・沢木耕太郎の「テロルの決算」「キャパの十字架」がある。すでに読んだ本だが、処分できないのが、私の悪い性分だ。しかも、内容はおぼろげにしか覚えていない。医学的には脳軟化症というらしい。忘れるのは私の特技だ。

この二冊も最初からもう一度丁寧に読み直した。
新しい発見が幾つもあった。そこに付箋を貼り付ける。
だから紙の印刷は、ペーパーレスの時代といえども、決して亡くならないというのが私の信念だ。

沢木耕太郎のコダワリ、何かを追及する態度には、鬼気迫るものがある。
大本の原因がどこにあるのか、徹底的に追いかける、その態度は、足元にも及ばないが、このメルマガが目指すところでもある。

頭の良い人には縁のない話だが、私は前に読んだ本を何度も何度も読み直す。そのたびに新鮮は発見をして驚いている。山口二矢、ロバート・キャパについても新たな情報を得た。

山口二矢から連想して、五一五事件、二二六事件、桜田門外の変、坂本龍馬殺害、アウンサン将軍暗殺、三島由紀夫関連、モサドの「標的は11人」、コンラッドの「闇の奥」、永六輔の「大往生」、ついでに司馬遼太郎の「殉死」など片っ端から読み直してみた。

止むに止まれぬ事情が介在するが、刺殺してもそれに輪をかけた人物がアトを継ぐ可能性もあり、防備がさらに厚くなる可能性もある。それを切り捨てるだけでは、歴史的に無理があり、無責任だ。現在多発するゲリラテロから余計そう思うようになった。

それを誘引させるアメリカの指導者は危険だ。
自由と民主主義を掲げながら、その短い歴史は大統領暗殺で充たされている。

話が逸れた。
今、イギリスのEU離脱が話題になっているが、ヨーロッパ共同体は戦後苦労に苦労を重ねて設立された。それに因縁浅からぬ日本の大手建設会社がある。
ビルマにも事務所があった。だがラングーンから一時手を引いた。
同社図書室の蔵書処分を頼まれたカレン人がいる。

三枚の大型麻袋に入れたまま放置していた。
この国の雨季は長く、カビなどにやられてしまう。
蔵書のほとんどが日本語である。適当な日本人に会う機会はなかったという。

その蔵書が私のところに持ち込まれた。
麻袋三つはズッシリと重い。室内一杯に新聞紙を拡げ、虫干しをした。
“しみ”を漢字で書くと「紙魚」となる。体形が魚に似た昆虫だそうだ。
ほとんどがカビ臭い。不適当な日本人は頭を抱えた。

分厚い高価そうな書籍もある。
「紙魚」が何本も曲がりくねったトンネルを掘り、大部分が欠字で読めなくなっている。
ほとんどを廃棄処分することとした。
読書に耐える本だけを慎重に選別した。僅か何十冊かが私の蔵書となった。
7-8年前の話である。

この不適当な日本人に出遭ったのがVol.308号でご紹介したミャンマーのマハラジャである。
その当時、彼はインレー湖近くの旧豪邸に住んでいた。
セキュリティに厳重にガードされた地区である。
そこにコンドミニアムを建築するため、例の新豪邸に移り住んだ。

その分譲マンションが完成したという。詳細で美麗なパンフレットを貰った。
貧乏人には無縁の話だ。外国の友人にでも紹介してくれという。

私とマハラジャはビジネスで結ばれているわけではない。
あくまでも本が取り持った縁だ。

それだけに信頼関係には裏切りが無い。むしろ信頼できる友人を紹介され、信頼のネットワークはさらに拡がる。
私には大会社の名刺はない。立派な肩書きも無い。
だが、話せば分かる。



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・03:YouTubeの世界

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もう十分だというのに、また大型のマチスを届けてくれる。
マンゴーは黄色くなれば熟れているというものではない。
緑の完熟マンゴーはある。バナナもそうだ。
どこで判断するか?ミャンマー人が教えてくれる。

停電に不意打ちがあるので、パソコンは諦め、読書に専念した。
フリーシンカーではあるが、宗教には興味津津である。
仏教、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教、ユダヤ教、手当たり次第に読み明かした。
老獪なイギリス、フリーメイソン、その対象は濫読である。

蔵書を完読したら、あの世に引っ越すのも悪くない。
この世はクソ袋満タンの人間で溢れかえっている。長居することも無いだろう。

漱石も言っている。
「とかくに人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、・・・引き越したくなる」(草枕)
「人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない」とも断定した。ここで西洋文明のカルト宗教とは一線を画し、円覚寺の塔頭に籠った。

という訳で、漱石から鴎外、坪内逍遥にまで手を出した。
蔵書完読には程遠い。
三途の川を渡るには、もう少し時間が掛かりそうだ。

何人かの友人からはYouTubeへの手引きをしてもらった。
これだけは停電だと手も足も出ない。
だが、その合間を縫って、暇さえあれば中毒状態である。

私が読書に溺れるのは、ミャンマーの若者に何をどのように教えるか、という極意を得るためである。教えるという言葉は、あまりに僭越である。結果的には、自分自身が学ぶためである。
だが。今日から始まる「ミャンマーの学校」も、日本の教科書も、世界の教育も間違っているのではないか、という疑問からすべてはスタートしている。

どうしてYouTubeの中毒に掛かったかというと、教訓となる、教本となる教材が、これほど世の中に飛び交ったいるのかというのを、いやというほど見せつけられたからである。

ヤンゴン郊外の大学で法律を学ぶ学生とYouTubeを鑑賞していた。
最初からスムースには行かない。すべては試行錯誤の繰り返しだ。

日本人の先生に習うと、生真面目な指導で段々授業から離れていく。
法律をヤルなら過去のケースを綿密に調べるのではなく、相手を言い負かす挑戦的な弁護士にならないかと、けしかけた。

教材は、ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンのDebate(論戦)だ。
それを繰り返して何回も見る。
もちろん停電の合間を縫っての視聴である。

繰り返し授業が有効なのは、あの下品なトランプの米語までが、かなりの部分理解できるようになる。ただ聞くだけでは英語は上達しない。
その重要な前段階として、開発した英語発音の特別講座を経ての話である。

ドナルドとヒラリーだけでは物足りない。
リパブリカン予備選挙の、同様に候補者討論会もYouTubeで鑑賞できる。
もちろん字幕を消し、英米人同様に画面をタップリと鑑賞し、耳で彼らの米語を聴き取る。

クドイようだが、これをデスクトップの大型画面で徹底的に何度も繰り返す。
なぜトランプが共和党で勝ち残り、民主党のヒラリーとの決選投票で、勝利を得たのか、それが見えてきた。ヤンゴンで、新聞だけを読み、マスコミが伝える情報に大きな欠陥があったことが、今、YouTubeによって初めて見えてきた。

日本人のスピーチにはユーモアが無い。
日本人の政治家・お役人の演説は特にそうだ。
英語でRoastという言葉がある。

ローストダックのローストで、オーブンで焼くのもロースとだ。火であぶるのも、蒸し焼きもローストだ。そしてコーヒー豆を炒るのもRoastという。

英語の授業ではあまり聞かないが、英米ではRoastには“からかう”“バカにする”“酷評する”という意味がある。

巧妙な老獪さの国、英国はひとまず置くとして、アメリカという国は、大統領を公に、そして大ぴらに“からかう”文化がある。オモシロいことにドナルド・トランプにはこの資質が掛けている。からかわれることをトランプは嫌っている。

特にレーガンとオバマはユーモア精神タップリで、自分がからかわれることを、腹を抱えて笑っている。例えば、YouTubeで“Dean MartinとRonald Reagan”のキーワードを入れるだけでよい。その爆笑場面を幾つも鑑賞できる。ミャンマーの若者への教材としては最高だ。私自身がしびれるほど学ばせてもらった。

最初は何一つ理解できない。繰り返しは力である。
最初はゼロ%から、繰り返せば10%、20%になる。中毒するうちに、50%、60%が理解できる。100%といかなくても、80%,90%はいけるだろう。

舞台中央にレーガン大統領あるいはカリフォルニア州知事がメインゲストして招かれる。
その横には一列、コメディアン、俳優、スポーツ選手、錚々たる有名人が並ぶ。
ディーン・マーチンの紹介で一人ひとりが、順番で中央の演台に立つ。

会場には、資金集めを兼ねているのか、紳士淑女が大勢着飾って丸テーブルに着いている。
彼らも笑い転げる。アメリカに文化は無いと思ったが、このユーモア・ジョークは彼らの文化である。アメリカで学ぶ中国人、韓国人に欠けているのはこれらのセンスである。

ここでは日本の政治に欠けているユーモア・ジョークが、5秒に一度の割合で炸裂する。
英語の勉強も結構だが、アメリカ人のこの技を盗まない限り、日本人の英語は向上しないだろう。MBAに留学しようが、英語の真髄はこれである。
ミャンマーでの教材にこれは必須である。
どういう風に取り込むか、現在思案中。

寺山修司が少し分かりかけてきた。
正直、メルマガなど書いている暇はない。



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