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<ミャンマーで今、何が?> Vol.319
2019.7.29

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━

■インパールからWe are the Worldへ

 ・01:21世紀の今、インパール作戦を遠望する

 ・02:南アにマンデラ大統領誕生

 ・03:南アに奇跡が起こった

 ・04:ミャンマーのパイソン

 ・05:音楽や芸術はMBAや経済力に勝る

 ・06:We are the World

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・01:21世紀の今、インパール作戦を遠望する

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急速に親しくなった日本人がいる。
シュエダゴンパゴダを真近に望む友人のペントハウスで出遭った。
馬が合うというのか、その後のメールのヤリトリで、急接近していった。

父君が日本最強の菊軍団としてインパール作戦に従軍され、敗戦をヤンゴンで迎え、ヤンゴンの日本人捕虜収容所に入り、会田雄次と似たような経験をされたらしい。
同氏との切っ掛けは海賊版DVDだったと記憶する。



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・02:南アにマンデラ大統領誕生

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DVD映画“INVICTUS”に描かれた南アでのラグビー試合が切っ掛けだったと思う。
アパルトヘイトで悪名高い南アに大変革が起こった。
27年間投獄されていたネルソン・マンデラが白人支配の南アで初の黒人大統領となった。1994年4月のことだ。
“INVIVTUS”とはラテン語である。“征服されない”または“不屈の”という意味がある。

民主主義国家を標榜し口ではキレイごとを語るあのアメリカですら、人種差別の壁に阻まれアフリカ系オバマ大統領の実現が、やっと2009年のことで、南アに遅れること15年も経ってからだった。
世界最先端を誇るシンクタンクも、最も知的とされる学者先生も、ジャーナリスト界もそのマグマの大変動を予知できなかった。ましてや世界の政治指導家は地殻大変動を知る由も無かった。彼らはそれを予測する能力に欠けていた。

海賊版DVDに描かれたマンデラ大統領の奇跡は、アナタがビルマの歴史を学んだならスーチーにオーバーラップするはずである。あの残忍な軍事政権を打ち倒す反体制派の指導者が女性だとは誰もが予測できなかった。



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・03:南アに奇跡が起こった

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もうひとつ別の奇跡がマグマ大変動の震源地、南アフリカ共和国に起こった。イギリスの詩人バイロンの言葉を引用させてもらえば“事実は小説よりも奇なり”であった。

マンデラ大統領就任の翌年南アでラグビーのワールドカップが開催された。
強豪がひしめく世界のラグビー界で無名の地元チーム“スプリングボックス”はウワサの種にも上らなかった。その弱小ラグビーチームが1995年のワールドカップを制したのである。世界のナンバー・ワンになった。南アの人々に夢と希望を与える感動のドラマがマンデラに続いて起こった。映画では、ネルソン・マンデラ大統領をモーガン・フリーマンが、ラグビーチームの主将をマット・ダモンが演じている。



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・04:ミャンマーのパイソン

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英国製老獪学の学徒として、この話を無理矢理にミャンマーにこじつけたい。

Aung La Nsang(アンランサン)という快男子がミャンマーに居る。少数民族カチン族として1985年5月21日カチン州の州都ミッチーナに生まれ、今年34歳になる。
2005年にMMA(世界最強の格闘技ミックスト・マーシャル・アーティスト)としてプロデビューした。瞬く間に頭角を現し“ミャンマーのパイソン”として怖れられた。そして現在はONEチャンピオンシップで複数のタイトルを所有している。

2017年にミャンマー初の世界チャンピオンに輝き、その年後半に国家相談役・アウンサンスーチーが直々にアンランサンを表彰し、カチン州問題について話し合っている。
何故?と違和感をもつのが常識ある感覚であろう。

彼の経歴を調べてみた。
父親は宝石商。そして5人兄弟姉妹の4番目としてヤンゴンのインターナショナル高校に通った。そして2003年、米国に渡りクリスチャン系大学として世界的に有名なミシガン州のアンドリュー大学で農業科学を学んだ。2007年に卒業すると米国で移動養蜂家として働き、同時にWWAの訓練も続けた。

この経歴から、彼は裕福な家庭に育ち、敬虔なクリスチャンで、祖国で役立つ農業科学という専門職を身につけたことが見えてくる。彼が達者な英語を操るのも納得できる。スーチーの眼の付け所には卓越したものがある。アンランサンはミャンマーを代表する親善大使となった。

その後もWWAにおいて華々しい戦績を残し、彼はミャンマーの国民的英雄に伸し上がった。スーチーが着目したとおり、名声が高まるとともに彼は祖国のチャリティ事業に力を注いだ。野生動植物の保護を訴えたり、ストリート教育の率先など、モノ言えぬ弱者に手を差し伸べている。非凡な国際人としての風格が備わっていった。

2018年にはミャンマー国防軍の上級最高指揮官ミンアウンラインが国防省にアンランサンを招き、世界チャンピオンとして表彰し、異例の賞金を授与している。
だが、スーチーの目線と比較すると、彼を武闘派として表面的にしか評価していない。いかにもミャンマーの国防軍だ。アンランサンの秘めたる異色の可能性を見出していない。

国家が大きく変革するときに、スーパースターの登場は国民に不屈の活力と感動、そして自信を与えてくれる。アンランサンの活躍は“INVICTUS”のラグビーチームにオーバーラップする。



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・05:音楽や芸術はMBAや経済力に勝る

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政治が国を動かすと思い上がった愚かなポリティッシャンは星の数ほど居る。だが、政治では大衆を動かせない。心からの感動を国民に与えてくれるのは、大衆の中から生まれた非凡なアスリートたちである。

否、それだけではない。
音楽、絵画、美術、建築、造園、小説、映画、話術の世界とジャンルは幾らでもある。大学受験の課目だけでは査定できない大きな宇宙がそこには広がっている。
東洋・西洋・南北の国々という国境を越えて感動の波紋は広がる。
経済力だけを売り物にすると、政治指導者だけでなく国民までが薄っぺらに見えてくる。


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・06:We are the World

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1985年1月28日の夜ロスアンゼルスでアメリカ音楽賞の授与式が行われた。前日までにアメリカ全土のミュージシャンが続々とLAに集まってくる。そこで仕掛け人は、これらミュージシャンたちに呼び掛けてLAハリウッドにあるA&Mスタジオで一枚のレコードを製作した。

この企画に賛同したメガ級の大物スターは、ライオネル・リッチー、スティービー・ワンダー、ポール・サイモン、ケニー・ロジャーズ、ビリー・ジョエル、ティナ・ターナー、マイケル・ジャクソン、ダイアナ・ロス、ディオンヌ・ワーウイック、ウィリー・ネルソン、アル・ジャロー、ブルース・スプリングスティーン、シンディ・ローパー、キム・カーン、ボブ・ディラン、レイ・チャールズなどなどで、ハリー・ベラフォンテやベット・ミドラー、ラトヤ・ジャクソンなどの顔も見える。

アフリカ大陸の大飢饉で死に絶えて行く惨状を見かねた“バナナ・ボート”などのカリプソで一世を風靡したハリー・ベラフォンテが、居た堪れずに音楽プロデューサーのケン・クレイガンに電話を掛けた。1984年クリスマス直前のことであった。

ベラフォンテはアフリカ大飢饉援助の資金集めに黒人ミュージシャン主体のライブ・コンサートを企画できないか、クレイガンに相談したのである。
アフリカ支援を目的とするため最初は黒人ミュージシャンを対象としたが、白人のミュージシャンもこの話に乗ってきた。クレイガンは最終的に45名もの大物歌手を集めることに成功した。プリンスは仲間の前で歌うことを極度に恥ずかしがり、録音は何時も一人だ。だから一室に皆が集まるこの録音には参加しなかった。

ライオネル・リッチーが作曲を担当した。
彼がした最初の仕事は、世界中のすべての国歌を何度も聞き比べた。イメージしたのは、世界中の誰が聞いても、聞き覚えのある身近な音楽を捻り出すことにあった。これこそプロの仕事である。

しかも最初の歌詞二行“We are the World”“We are the Children”までは考え付いた。だが後が続かない。そこで友人のマイケル・ジャクソンとの共闘がはじまる。そして大御所クウィンシー・ジョーンズがプロデュースを買って出る。三人ともアフリカ系のアメリカ人である。黒い肌の下に流れる燃えたぎる血が祖国アフリカの救援を強く呼びかける。感動の伝説のはじまりである。

マイケルは最初の録音開始前日の夜、独りでこの歌詞を書き上げた。クウィンシーもライオネルも驚いた。これほど意味深い歌詞をスーパースターのマイケルが2時間半という短時間に仕上げたことに驚いたのである。マイケルには測り知れない才能が宿っている。単なる天才ではない。

この企画の原案を申し入れたのはハリー・ベラフォンテである。彼もアフリカ系で子供の頃、母と弟とともにジャマイカのキングストンで育った黒い肌の持ち主である。当然ソロと思われるところだが、録音シーンでは、バックコーラスの一員として控えめに参加している。

この企画が始動すると、大物であればあるほど個性が強烈で自分のスタイルを崩さない。我を張るのである。セレブの彼らは高級感タップリの細長いリムジンカーで続々とスタジオ入りした。クウィンシーは「エゴはドアの外に置いて、スタジオに入れ!」と書いた紙を入り口に張り出した。そして最後にコレオグラフィー(振付師)を請け負ったライオネルが、録音質のフロアにミュージシャンひとり一人の名前を書いた紙を貼り付けた。個性の強い彼らが勝手に動き回るのを防ぐ作戦だ。

録音初日は1985年1月22日の夜であった。
録音場所はセキュリティの関係で、べバリー・ブルバードにあるケニー・ロジャースのライオン・シェア録音スタジオであった。そこにミュージシャン、技術者、ビデオクルー、付け人などの関係スタッフが集まった。

全員の唄声にかぶせるように、ライオネル・リッチーとマイケル・ジャクソンが声の説明を付け加えた。指揮者の役割を音声で行ったのである。この最初のデモテープは細部に配慮して6回分を慎重に収録した。ダビングされたコピーテープは参加ミュージシャン全員に配布された。

それぞれのミュージシャンがソロで録音していたときのことだ。録音技師のひとりが異様な音を拾い上げた。犯人はシンディ・ローパーであった。身につけていた首飾り、腕輪、そして奇抜な耳飾が、シンディが感極まって身体全体で歌い上げたときに、脚本に無い派手な伴奏を奏でていた。シンディはごめんごめんとすべての装飾品を外した。

このなかに“There’s a chance we’re taking our own lives”という歌詞がある。グループのだれかが“自分たち自身の命を奪う”とは自殺を暗示するのではないかと疑問を提示した。そこでライオネル・リッチーが代案を考え付いた。“We’re saving our own lives”は仲間の音楽家全員が賛成した。“自分たち自身の命を救う”という意味である。

最後の収録は1985年1月28日の夜に行われた。マイケル・ジャクソンは午後9時にスタジオ入りした。一番乗りであった。自分のソロの部分と、バックコーラスの音を収録するためである。彼の有名な5人の兄弟姉妹ジャッキー、ラトヤ、マーロン、ランディ、ティトも参加した。

KFCやマクドナルドからの食料・飲料水が無料で支給された。
セレブの歌手たちである、馴れるに従い、あちこちでお喋り、立ち食いとパーティの様相を呈してきた。録音室にアナウンスがコダマした。
「この一瞬一瞬、アフリカでは一滴の水も飲めず、飢えに痩せ衰え、大切な命が消え去って伊いることを思い出してください」
スタジオには厳粛な空気がまた戻ってきた。

「ウィー・アー・ザ・ワールド」には“USA for Africa”という強烈なメッセージが付けられている。これは米国政府の言葉ではない。市民であるアメリカ黒人音楽家のメッセージである。それが白人ミュージシャンの魂も動かした。そして世界をも動かしたのである。

そして巨額の支援金、食料・医薬品などの援助物資がエチオピア、スーダンなどのアフリカ諸国に届けられた。
このシステムは実にパワフルである。
2010年1月12日ハイチで発生した巨大地震にも“We are the World”はリメークされてまたしても多額の支援をすることが出来た。“USA for Africa”から25年経ち、今回は“We are the World: 25 for Haiti”と名付けられた。

例によって、話は大きく横道に迷い込んでしまった。
本来は急速に接近していった日本人とのインパール作戦の歴史を辿る旅をドキュメントする予定だったが、この日本人と交信しているうちに支離滅裂になるほどの話題が飛び交い、収拾つかなくなってしまった。彼はギターが得意である。老人ホームでのボランティア活動が目前に迫っている。音楽とボランティア活動を思案しているうちに迷い込んでしまった。YANNIは音楽は世界共通の言葉であると語っている。

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