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<ミャンマーで今、何が?> Vol.345
2019.12.23
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━


■国際司法裁判所におけるスーチーの闘い(2)

 ・01: 法廷手続きが開始

 ・02: 問題の発端とスーチー相談役の資格

 ・03: 見逃してはならぬ重要問題

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・01:法廷手続きが開始

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ガンビアの訴訟問題は、予想したとおり日本ではほとんど報道されていないと連絡をもらった。ありがたい。連絡をくれた友人は気がついていないが、当研究所の立派な現地駐在員である。これこそCIAやMI6 が密かに行ってきた老獪術である。

ガンビアの提訴、そしてスーチーの反論を仔細に分析すると、ガンビアが女子供が殺されたと感情的なのに対し、スーチーの弁舌は事実陳述の展開で理に適っていると判断するが、万が一、ガンビアが勝訴することになれば、ハーグの国際司法裁判所(ICJ)の権威が一気に瓦解し、世界が無秩序状態に陥る危険を感じる。

ICJはコトの重大さに鑑み、判決を急いでいるとの報道もある。結論が出てしまえば、このメルマガ解説も“遅かりし由良之助”で役立たずとなる。急がなきゃ!

国連の安全保障理事会と総会によって選挙される15人の裁判官で構成される。
裁判官は本来国家代表の性格を持つものではなく、現在は欧米5、ラテンアメリカ2、東欧・ロシア2、アジア3、アフリカ3(ニッポニカ)で、冷戦後の特徴としては、第一に、ジェノサイド(集団虐殺)、人民自決権、テロリズム、核兵器の使用といった国際社会全体の利益に 関わるような事件や問題が相次いで付託されてきたことが上げられる。

今回ガンビアから提議された争点も、ミャンマー・ラカイン州におけるジェノサイドで、バングラデッシュに逃避した70万人ものロヒンギャーに対する人権擁護とミャンマー罰則を訴えている。



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・02:問題の発端とスーチー相談役の資格

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ガンビアは“イスラム協同機関(OIC)”を代表してミャンマー国をIJC(the International Court of Justice)に提訴した。国連憲章に従い、ミャンマーを含む国連加盟国すべてはICJの判決に縛られることになる。それだけに、これはミャンマーの国益に関わる重大な問題である。

スーチー国家相談役はミャンマー連邦政府の外務大臣および国防軍のリーダーとしての資格でこの国際係争事件に参加している。そしてミャンマー最高の法律専門家と最強の法律チームを構築した。法廷では、ミャンマー連邦を代表するエージェントを指名する必要があるが、国家相談役がその資格においてエージェントを引き受けることになっている。

同時に国家相談役は、国家のリーダーとして国防軍を代表して説明責任を果たすことを表明している。



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・03:見逃してはならぬ重要問題

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スーチー相談役は2008年憲法上、国内での国防軍に関しては何一つ権限を保有していない。
だが、今回の問題提議が“ジェノサイド(集団虐殺)”を焦点としている。当然ながら吊るし上げを食うのは陸海空三軍の最高司令官であるミンアウンラインであることは歴然としている。

老獪なスーチーが極秘の極秘としてミンアウンラインと取引をしてきたとしても何らオカシクナイ。ミンアウンラインが国際司法裁判所に引っ張り出されて、通訳つきであっても、そこで反論する勇気もキャパシティも持ち合わせていないことは明白だ。

スーチー姐御の凄いところはソコである。
今世界のリーダーと自称する政治屋の中で、スーチーほど肝の据わった大政治家はいない。
米国・英国はもちろんのこと、中国・日本のリーダーなどまったく話しにならない。

スーチーはどこのお白洲だろうと、出るべきところに出て、冷静にしかも理知的に自国の国益というものを実際に力強く弁護してきた。国内では威張っているが、三軍の上級最高司令官などビビッて仕舞う場面である。

ミャンマーに日本の大手報道機関の支局は駐在しているかもしれないが、日本では一切報道されていないことだろう。例えば:12月11日日刊英字紙GNLMの第5面に「2008年憲法改正に関する協同委員会67/2019が開催された」と掲載されている。

これは議会代表と国軍代表議員が出席しての協同審議会のニュースである。注目してもらいたいのが2019年になって第67回目の会合となっている。
これはスーチーの指揮下で設置された2008年憲法改正への地道な努力である。

スーチー姐御が、もろ肌を脱ぐ必要はないが、年少のミンアウンラインに向かって「私はミャンマーの国益擁護には全力を尽くすが、国防軍の仕業に付いてはアンタが最高責任者だから、お白洲で説明して頂戴。私には憲法上、何の権限もないのだから」と啖呵を切っても筋は通る。

山口百恵調にボウヤ!イッタイ何ヲ教ワッテキタノ?と言ってもよいだろう。

スーチーがミンアウンラインを同道しないで、自分でリーダーとしてオランダのハーグに乗り込んだのは、ダテではない。あの弁論を聞いていると、官僚が書いた原稿を棒読みする日本の首相とはまったく違う。自分で準備し、法律の専門家にチェックさせ、再度自分で認めたスピーチ原稿だということがハッキリ聞き取れた。

これは今言うのは早すぎるが、もし国際司法裁判所でミャンマー連邦が勝訴したら、国内人気においても、議会の運営でもスーチーの力学は大きく変わるはずだ。
その時点で態度を豹変してスーチーに擦り寄ろうが、スーチーの覚めた目は老獪学に則ってそれなりの対応をするはずだ。

国難という厳しい状況を反映して、ミャンマー国内の彼方此方の市町村からスーチー支援の声が大行進とともに響き渡っている。

12月9日のGNLM紙見開き第8・9面では、ヤンゴンのローマカトリック教会の大司教が署名入りで、ハーグにおいて正当な判断が下され、スーチーが全面的に勝訴することを祈っていると声明文を発表している。

同様の声明文はThe National Spiritual Assembly of Baha’iからも同紙同ページに掲載されている。
さらには、ミャンマーに住む全ムスレムからとして、同様の熱烈なスーチー支持が表明されている。

またまた日本語学校へ出かける時間となった。
本日が最後の授業なので、特別に思案中の段取りで臨みたい。


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