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<ミャンマーで今、何が?> Vol.354
2020.01.29
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━


■勝負を挑むなら敵を知ることだ

 ・01: 教養としての“聖書” 

 ・02: 仕事を済ませて休むか、先に休むか?

 ・03: バチカンがイエズス会に乗っ取られた

 ・04:スーチーの諸刃の刃

 ・05:英国こそ老獪で、スーチーも老獪になった

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・01:教養としての“聖書”

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聖書は実に饒舌である。それだけでなく、総合的科学知識のなかった時代に、この宇宙がどうして出来上がったのかナルホドと納得させられる理詰めで迫ってくる。織田信長の時代にバテレンの無知な信徒が増えたのも無理はない。

あまりの見事さに豊臣秀吉が、これは怪しいと直感したのも、日本史のひとコマである。
話しは飛ぶが、YouTubeを濫読鑑賞していると、自民党と公明党があたかも一心同体でいる不可解さ、そして及川幸雄の海外ニュースは尊重するが、幸福実現党と聞くと胡散臭さも感じる。秀吉の直感に似たものがあるのかもしれない。

これらの物語は欧米では「天地創造」ともよばれ、海賊版DVD「The Bible: in the Beginning」で手短に鑑賞できる。この「天地創造」の神話を手繰っていくと、原典はユダヤ教に至り、2020年の今、英米のみならずラテン民族の一家が全員で信じてきた物語と知ると何か一種異様なものすら感じる。だがこれをユダヤ人陰謀説とひと言で片付けるのもイノセントである。

だから聖書の感化を受けた欧米人と接触するときには、最低限、彼らの思想の背骨となる“聖書物語”ぐらいは、逆に常識として予習しておかないと、彼らの本心はなかなか掴めない。

厄介なのは、欧米人だけでなく、現代の日本人自身がその影響を大きく受けていることがある。例えば副首相がローマンカソリックの信者であったり、首相夫人がミッション系の学校で学んでいたり、皇族にもその流れを組む人々がいたりと、スーチーではないが、今の世の中が複雑であることには間違いない。



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・02:仕事を済ませて休むか、先に休むか?

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生徒たちへの話しも、“聖書”の第二章に入っていく。
もう少し我慢して聞いて欲しい。

第一章で“神”はすべての仕事を完了したと言う。たった六日間でこの天地を創造したと言う。
そこで“神”は自分の仕事に満足し、第七日目は聖なる日として休息された。
本当によくできた話である。

凡人でも成る程、これがSunday(日曜日)の起源かと納得する。
重箱の隅を楊枝でほじくるのが好きな日本人は、そこで考える。
英語で一週間を数えるとき、欧米人はSunday、Monday・・と日曜日からはじめる。日本人は月・火・水・木・金・土・日と日曜日は最後に配してある。

欧米人は“Play Now、Pay Later”と同じく先に良いとこ 取りをしている。これは“神”の言葉に逆らうのではないか?
むしろ日本人の方が月曜から土曜日までシッカリと働き、第七日目に休息するという“神”の言葉に偶然にも合致しているのではないか?

東京ドームにローマンカソリックのフランシス教皇を迎えるのなら、イノセントな歓迎ムードではしゃぐだけでなく、日曜日に対する教皇の考えあたりから対話を始めて欲しかった。



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・03:バチカンがイエズス会に乗っ取られた

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更に話しは飛躍するが、YouTube「戦国時代とイエズス会(字幕付き)」および「フランシス教皇訪日の意味」をお勧めする。

イエズス会が今初めてバチカン王国を乗っ取ったという曝露番組が、非常にオモシロイ。これらの陰謀説は推論に根ざしているので、真贋の見分けに鑑賞者のインテリジェンスが試されることになる。だが日本人横並びの見方を見直すには、良い切っ掛けにはなる。

ヤンゴン川の濁流を見渡しながら、仏教徒が多数を占めるミャンマーではキリスト教に対しては寛容だが、インド人・そしてイスラム教に対しては、心理的な嫌悪感があるような気がする。どうだろうか?と生徒たちに質問してみた。答えはもちろんイエスだ。

彼らがこれから出稼ぎに行く日本も同じようなものだと説明し、イスラム教がキリスト教の兄弟宗教であることを説明し、欧米、特にアメリカでは9/11以降、そしてオサマ・ビン・ラディン以降、イスラム教に対する嫌悪感が蔓延し、それを世界中に輸出していること、それに対するイスラム勢力の反撃が今まさにはじまったこと、その一環がミャンマーのラカイン州におけるロヒンギャー問題では、と私の疑問を投げた。

ミャンマーの国防軍は、本来は外敵に向けるべき武器を、同胞の国民に向けて発砲してきた。その延長線上で国防軍は国際的に疑惑をもたれている。それが国際司法裁判所(ICJ)の判断として表れ、ミャンマーは4ヶ月以内に、ロヒンギャーに対するジェノサイドの事実を内部調査して報告すること、そしてジェノサイドの今後の防御策を早急に講じて発表する義務を負わされた。



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・04:スーチーの諸刃の刃

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スーチーは緒戦はオランダ・ハーグに自身で乗り込み、国防軍を擁護する論陣を張った。だがスーチーにとってはICJのこの判断は想定内であったと思われる。
日本の新聞では報じられないが、スーチーが行ってきた改革は上院・下院のミャンマー国会だけではない。国防軍や警察に対しても着実に手を打ってきた。

その主な柱が“法制度の平等な適用”“透明性”“友好的な海外勢力の活用”などである。
もちろん教育、医療、福祉等々取り組む課題は無限にある。地方行政にも取り組んできた。

それらがじわじわと浸透して、今では国防軍がコトあるごとにオープンな委員会を設置して、質疑を伴う記者会見を開き、出来る限りの情報開示を行っている。
この点では、日本の官房長官による記者会見を内容においても質的にもはるかに優っている。

国防軍が死守するといった2008年憲法の改正委員会も、スーチーの要求に応じて設置され、年々開催され、昨年2019年だけでも67回開催された。今年2020年に入ってからも既に3回開催されている。これらには与党側民主政党だけでなく、肝心の国防軍代表を含めて協議している。その点の実情は日本のマスコミはほとんど取り上げない。

ミャンマーに駐在するビジネスマンが、ミャンマー国内での数々の動きを把握せずに、日本発のミャンマー情報のみで右往左往していることに、戦略としても危うさを感じる。
その点、欧米の駐在員たち、そして中華人民共和国の情報量と質の高さには、日本の国際競争力が心配で、心細くなってくる。

今回のICJにおける判定でも、ラジオおよびテレビですべて録画中継された。全国民に開示する努力をミャンマー政府はとっている。昔の軍事独裁政権のように都合の良いニュースは知らしめ、都合の悪い情報は流さない姑息な手段はとらない。

だから、スーチーはこの国際司法裁判所を味方につけ、三軍の最高司令官であるミンアウンラインに憲法上、国家相談役には国防軍に何一つ手をつける権限はない。すべては貴官の職務権限に掛かっている。しかも4ヶ月という期限付き裁定である、と圧力をかけられる。

国際世論を敵に廻すも味方につけるも貴職次第。さあ、どうする、と迫ればよい。政治用語では恫喝である。外交上の問題、そして法律上の問題であれば、いかようにも貴職のお役に立つ用意はあると付け加えるのも悪くない。

ヨットレースで風下から真後ろに着くのを“ホープレス・ポジション”という。風向きと帆の角度からして絶対に追い抜くことが出来ないからだ。
今スーチーはミンアウンラインを“ホープレス・ポジション”に追い込んだ。

目の前を大型コンテナ船が二隻、時間を置いて川下に下っていった。
コンテナは上甲板一杯に積まれているが、乾舷は上がっている。陸揚げ済みの空コンテナを満載しているのだろう。このことからヤンゴンに輸入される物資が確実に増加していることが分かる。これもスーチー効果であるのだが、それを評価する日本の新聞は皆無だ。

生徒たちはスーチーの成果を見届けることが出来る。
生徒たちには夢がある。生徒たちには新聞を読めといってある。分からない単語があればスマホのアプリで辞書を引くことだ。その辛抱を続ければ、プロの見方が出来る。5年後のミャンマーは大きく変わるはずだ。唯一心配はスーチーの健康だけである。

前々大統領のテインセインは、新植民地主義がもたらされるのが心配だと数日前の新聞で語っていた。自分たちが成功しなかった外資の呼び込みへの警鐘である。テインセインは軍服を着替え民主主義を装ったガチガチの軍人である。タンシュエのイエスマンである。

いつの時代でも反対勢力はある。スーチーは国連の外郭団代でも、味方か敵を見分ける目を持っている。そう心配することはあるまい。



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・05:英国こそ老獪で、スーチーも老獪になった

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最初に述べたとおり、欧米人の弁舌は実に爽やかだ。
アメリカの政府高官、国会議員にしても、論理的でウィットに富んだスピーチや議論は学生時代から鍛えられており、“聖書物語”で学んできた。

今の時代、日本のそれとは雲泥の差がある。
中国や南北朝鮮に対してもキチンとモノが言えない国会議員がいることに、将来への不安を感じる。江戸時代、明治維新、日進・日露戦争、そして第二次世界大戦を経て、経済ではなく日本人の器量が転げ落ちるばかりのような気がする。

老獪な英国は、ビルマの宗主国であったが、それはそれは狡猾であった。
だからロヒンギャー問題では口を挟まない。旧植民地時代の遺物だとは決して語らない。
そして問題がイスラム教と仏教の問題に摩り替わるのを黙って横目で見ていた。

英国が身につけた老獪さ、狡猾さ、は何処で身につけたのだろう。
その原典こそ“聖書”にある。“旧約聖書”も“新約聖書”も貴重な古典的教科書である。

だから生徒たちには、自分の生い立ちでも良い、自分の家族でも良い、自分の物語を語りなさいと指導している。そして聖書のように何度も何度も書き直して洗練された物語を創りなさいと指導している。

そうすれば老獪なクリスチャンにもイスラム教徒にも負けることはない。
ミャンマーにはアウンサン将軍という手本があるではないか。
そして今目の前にアウンサンスーチーというモデルがいるではないかと語ることにしている。

一月四日は毎年ミャンマーの独立記念日で祝日である。
だが今年の独立記念日は少し様子が違っていた。
少しずつ環境が整ってきたのである。

その日を記念して千チャットの新札が発行されたからだ。まだ印刷が追いつかないのか市中にはほとんど出回っていない。だが銀行に勤めるボーイフレンドをもつ女子生徒が新札をプレゼントしてくれた。そこに刷られているのはスーチーの父親、アウンサン将軍の肖像画である。

地方都市に行っても、市中央の目抜き通りにはアウンサン将軍の名前を冠した大通りがあり、公園にはアウンサン将軍の馬上姿なり、腰を降ろした銅像が建立されている。
そしてスーチーの母親の名前を付けた図書館や学校、そして病院が新しく建てられている。

アウンサン将軍はスーチーの父親であるが、一方では国軍生みの親であり、国父でもある。ド・キンチーもスーチーの母親であるが、元々ヤンゴン総合病院の婦長であり、子供たちへの教育には特に熱心であった。

だから上記の動きはどちらとも取れる臭いボールを投げたようなものだ。別な言葉でいえば、国軍がどう反応するか異なる踏み絵を仕掛けたようなものである。そうして一般大衆と国軍の顔色を窺う。スーチーの仕掛けは精緻で巧妙である。

だが前々大統領のテインセインではないが、ときおり不協和音が聞こえてくる。これらにも注意しながらミャンマー・ウォッチを続けたい。


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