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<ミャンマーで今、何が?> Vol.361
2020.05.18

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━


■ヤンゴンの5月18日

 ・01: 日本にたどり着けなかった実習生

 ・02: 奇跡に気付かぬ現代人

 ・03: We are the World. We are the Children

 ・04: ヤンゴンもロックダウン解除

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・01:日本にたどり着けなかった実習生

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昨年の12月一ヶ月間だけ、日本語教師を突然引き受けた。生徒は合計9人、実
習研修で三人ずつ埼玉、東京、神奈川の3工場に派遣が決まっていた。長年やっ
ている英語教育の勘から、独自の日本語教授法を考案した。

その生徒の一人からスティッカーが送られてきた。数日前のことである。名
前もうろ覚えだったが、苦労の末なんとか電話がつながった。更にビデオ機
能に変換しブディー(冬瓜=ひょうたん)棚の下で笑う懐かしい顔が現れた。
毎朝一時間前にビルの下で私を待ちぶせしたアノ学生だった。

今はヤンゴンで働いていた家族全員がザガイン州の実家に戻り生活している
ようだ。STAY-AT-HOME宣言でヤンゴンも出稼ぎの場所ではなくなった。東京・
埼玉とウサギ小屋に住んだ身としては、中部ミャンマーの広々とした大地に
巨大な瓢箪が幾つもぶら下がるブディー棚だけで人生の贅沢さとは何かを考
えてしまう。GDPとか年収の額だけで国際比較する尺度が果たして正しいのか?


彼のスマホにも白髪の薄くなった老教師が映っている筈だ。突然の日本語で
彼もドギマギしている。だが構わない。私もボランティアだが、教師として
はプロを自覚している。授業料は完全無料だが、生徒一人ひとりから地元情
報を学ぶ老獪システムが出来上がっている。

それだけではない。生徒とは一対一で向き合い、彼らの個人情報は大事にフ
ァイルされている。その手法はGAFAが見逃す独特のシステムである。名前は
覚えられなくとも、スマホの写真で顔認識できる。ヤンゴンにある外国人経
営の私立学校より、教師との関係は濃密である。

だから突然コネクトされた彼とのコミュニケーションは見事に復活した。3月
までは誰もが日本行きの準備に忙しかった。そして翌4月には9人の生徒全員
がばらばらに故郷に戻っていった。彼らが一所懸命口真似して覚えた「イッ
スンサキハヤミ!」が現実のものとなった。

次回再会する機会があったら、今度はその意味を教えるつもりだ。一発で理
解してくれるだろう。「今日の夢大阪の夢」「油断大敵」「果報は寝て待て」
も教えた。意味までは教えてない。試しに“ゆ”と言ったら、生徒たちは即
座に「ゆ・だ・ん・た・い・て・き」と応えるレベルには到達している。

私の描いたシステムはこうだ。日本に一度も足を踏み入れたことのない若い
ミャンマー人(ビルマ人もラカイン人もという意味だ。中国系もインド系も
もちろんOKだ。)に、京都・大阪・江戸の“いろは歌留多”の発音を骨の髄
まで叩き込む。意味は教えない。七五調のリズムと発音だけに徹する。一ヶ
月もあれば日本人だけが醸しだす日本語のリズムを体得できる。

文法は掟破りで教科書も教室から締め出す。大きなホワイトボードと赤・黒
のマジックペンだけで独自の教室は出来上がる。欧米人が毒されたラップト
ップも追放する。
この音感授業の一ヵ月後から生徒は飛躍的に能力を発揮する。それが日本語
の偉大さである。

「一寸先は闇」とか「果報は寝て待て」には、ハーバードやオックフフォー
ドのMBAが到達できない“人生の叡智”が隠されている。それをホリエモンや
落合陽一、グロービスなどは欧米のユーチューバーやイーロン・マスクを真
似した二番煎じを滔々と語る。「滅びゆく国家-日本はどこへ向かうのか」を
立花隆が出版し警告したのは2006年である。

あれからすでに14年。歴代の指導者が日本を破滅の方向に導いてきた。シン
ゾー・アベひとりに責任があるわけではない。習近平ひとりに責任があるわ
けでもない。彼らを引き摺り下ろしても何一つ変わらないだろう。根本的な
解決にならないからだ。ソレは歴史が証明してきた。

ヒントは1941年9月8日のサンフランシスコ講和条約(Treaty of Peace with
Japan)にあり、1945年8月14日のポツダム宣言受諾にありそうだ。本当にそ
れだけであろうか? 否、遡るのは1868年明治維新前後にまで戻るのが妥当
な気がする。

今の世は“維新”を勇ましいサムライ魂と勘違いして政党名にまで採用され
ているが、明治維新そのものが瓦解寸前の軍事政権への反対派で、先の読め
ない脆弱な新興勢力であった。どちらにせよ、島国というコップの中の嵐で
あった。

何千年・何万年という悠久の歴史の中で、維新後150年、あるいは戦後75年と
いう短いスパンで計測し、経済大国に伸し上がったと臆面もなく吹聴してき
たアメリカと日本、そしてそれを真似して台頭してきた中国などの傲慢さ。
国家としての品格は微塵もないような気がする。

安政の寅さんをご存知だろうか? 幼い頃は“寅次郎”と呼ばれ、25歳のと
きペリーの浦賀再来の折、アメリカの軍艦で密航を企て失敗した。1859年10
月27日江戸伝馬町の獄で刑死した。尊皇攘夷派への大弾圧で安政の大獄と呼
ばれた。吉田松陰の生涯はわずか30歳で終わった。松陰の思想「草莽崛起」
(そうもうくっき)は松下村塾を通じて高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤博文、山
県有朋などの門下生に影響を与えた。

2020年5月18日(月)午前10時、ヤンゴンの下街にシトシト雨が降り始めた。
雷は聞こえてこない。

そこで吉田松陰の関連情報を調べていると、25歳のとき中国福建省のアモイ
に密出国し、32歳の若さで大英帝国の秘密機関に暗殺されたミャンマーの国
父・アウンサン将軍のことが思い出される。松陰もアウンサンも将来が見え
ないまま、国を想い命を懸けて、短い人生を閉じた。2020年の今、軽々にひ
と括りの言葉で表せない人生の重みがある。

とまたまた話しは大きく脱線してしまった。


今回のパンデミックで日本行きが無期限に停止しても構わないではないか。
無責任に言っているのではない。彼らは純粋で素直だ。もし我流の授業をい
つの日か再開することが出来るのなら、もう一度、日本語のリズムと発音を
一ヶ月頑張ってもらい、次の一ヶ月で日本語の知恵を学んでもらう。

「いろはカルタ」の意味するところは人生の教訓である。ひとつひとつが重
くのしかかる。繰り返すが、彼らはまだ日本に一歩も足を踏み入れていない。
その彼らをミャンマーの若者に教える日本語のプロの教師に変身させる。そ
れがパンデミック期間中に泥酔した私のインポッシブル・ドリームである。
既存の語学校も、日本の受け入れ機関もぶっ壊す。

イケナイ、イケナイ、またもや脱線だ。


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・02:奇跡に気付かぬ現代人

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外国語の修得は、母親を真似する赤ん坊を“師”とすべきだ。というのが私
の哲学である。三歳の童子は母語という最初の外国語を一人残らず喋る奇跡
を、この地球上あまねく起こしている。あまりにも当たり前で、誰も“奇跡
”とは気付かない。そこに秘密がある。

私の20歳前後の生徒も一人残らずこの奇跡を起こしてきた。だが全員忘れて
いる。私の授業は、英語も日本語も、そこから開始する。その“奇跡”は辞
書も教科書も使わずに起こった。47歳の若さで世を去った寺山修司なら「教
科書を捨てよ!!」に賛同してくれるはずだ。

どうして教科書を捨てるのか?そこには“文法”が書かれているからだ。文
法とはNoah Websterとか諸橋轍次などの大学者が研究するもので、初心者が
学ぶものではない。大学者の文法を初心者に押し付けるから、生徒は眠くな
り、落ちこぼれが出てくる。“文法”など安易に教えては絶対にダメだ。こ
れが私の信念である。

白状すると私は日本語の文法をほとんど知らない。それでも日本語が喋れる、
と生徒には自慢している。

“教科書”と“文法”が語学教育を崩壊させた元凶である。そのことに歴代
の責任者と保護者は気付いていない。だからユトリ教育とか英語は小学生か
らなど、国家的な犯罪である。次世代の若者の可能性を摘み取ってしまった。


ミャンマーと日本はこの点で非常に似たシステムである。日本語を習うミャ
ンマー人、英語を勉強する日本人、その日本語・英語は海外ではほとんど通
用しない。通用するとは路上で買い物をするレベルでも、食堂で注文するレ
ベルでもない。

ビジネスの交渉あるいは国際会議で通用するレベルを問題にしているのであ
る。一歩踏み込むと国連の場で原稿を読み上げるのではなく、満場を味方に
引き付け、あるいはひと波乱起こすスピーチができるかというレベルを指す。
明治維新後150年、いま世界のレベルはそこまで進化した。だがそれに対応で
きる外交官、政治家はほとんど育っていない。

スピーチライターの書いた原稿をオバマは自分の頭で考えて自分の英語に修
正する。外務官僚の用意した英語の中身は検討せず、朗読訓練の振り付けに
従う。それが歴代の日本の総理であった。苦手な英語なら、堂々と日本語で
喋ればよい。総理より気配りの出来る優秀な同時通訳者は幾らもいる。幼稚
園生じゃあるまいし、ファーストネームで呼び合い、それを自慢する。

語学哲学に話を戻そう。
赤ん坊は、羊水に包まれたウォーター・ベッドで10ヶ月間、体感振動を通じ
て母親の話し言葉と母親の鼓膜振動を通じてダメ親父などとの外界音を体感
する。右脳・左脳などの頭脳で理解するのではない。身体すべてで“体感”
するのである。

だから語学はPhonetics(音声学)が出発点だと見ている。真面目な日本人は
音声学というとすぐに発音記号だとか誤解する。そうではない。むしろ“音
楽”のイメージに近い。真面目な日本人は音楽というと、これも天才児・モー
ツアルトだとか、盲目の音楽家・宮城道雄を思い浮かべるかもしれない。そ
れも私のイメージと異なる。もっと原始的なリズムである。

子供たちの体が自然にリズムを刻む。手を叩く、膝を叩く、思わず立ち上がっ
て地面を踏む。ステップを刻む。腰がスウェイする。ベースのリズムが単調
に延々と続く。そこでドラムが強弱をつける。ステップが揃ってくる。土ぼ
こりの中で円陣が出来る。陶酔状態の誰かが合いの手の拍子を入れる。リズ
ムが大地を揺るがす。

NATOアルファベットの最後の文字は“ZULU”のZである。英語では“ゼッド”、
米語では“ジー”と発音される。そこには大英帝国とズールー族との悲しく
も勇壮な歴史が秘められているのだが、それには触れない。

YouTubeで“Zulu Dance”とググルと、何十もの関連動画が見れる。だが今の
時代観光地のショーアップ化が進み、私のイメージする原始的なリズムに遭
遇するのは、ちょっとしたテクニックと忍耐が必要である。トライしてほし
い。

もちろん音楽の好みは人それぞれなので、バリ島の“Kecak Dance”、マリア
ッチの“Mexican Dance”でも良いし、日本の“阿波踊り”、“Irish Dance
”、“Country Line Dance”とお好み次第だ。もし神秘の世界を覗きたけれ
ば“Sufi Dance”がお勧めだ。

先ほど述べたが、今はどの国も経済優先の時代で、民族音楽もショーアップ
してディズニー的に洗練されたけばけばしさが目立つ。何十とある動画の中
で、素朴でこのリズムこそ土着性の環境が生み出したオリジナルに行き着け
ばアナタはラッキーである。

「沖縄の唄にあわせて皆が躍りだすムービー」とか「山城ウメトさん94歳;
頭に一升瓶乗せカチャーシー躍る」はサーフィンを続けて出遭った動画だが、
私の意図する原始的リズムに近いものだ。これらはすべて郷土の伝統であり、
誇るべき知恵でもある。

あるいは世界の街角で見かける“Mob Dance”または“Mob Music”は魅力的
だ。周りを取り囲む4・5歳ぐらいの子供が音楽に浮かれて自然に踊りだす。
母親が手を引いて引き離そうとするが離れない。それどころか母親にせびっ
て献金のおカネをオープンになったバイオリンケースに投げ入れる。これこ
そが音楽の魅力である。決してドレミの音感教育ではない。



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・03:We are the World. We are the Children

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その延長が日本の友人が添付してくれた有名な“We are the World”の動画
である。前にも書いたと想うが、カリプソ王のハリーベラフォンテがアフリ
カの貧困と飢饉を聞き及びアメリカの音楽界で活躍するアフリカ系アメリカ
人に呼びかけた。

大物スターたちが綺羅星のごとく活躍するアメリカの音楽界で、ライオネル・
リッチーがマイケル・ジャクソンと共作し、大御所クウィンシー・ジョーン
ズがプロデュースし、指揮棒を振った。最初は黒人だけが対象だったが、救
いの手を無償で差し伸べるという、その心意気に感動し参加した白人スター
たちも大勢いる。

大物セレブ揃いで、スケジュール調整も大変だった。1985年に録画風景をリ
リースした“We are the World”がリリースされると、世界的なミリオンセ
ラーとなり、グラミー賞を総なめした。声を掛けられながら参加できなかっ
たスターたちも、画期的な売り上げとなった大成功を知らされ、自分たちの
不幸を呪い残念がった。

今コロナウィルスの災害で世界中が落ち込んでいる。そういうときにこそ聞
きなれた名曲だが、その動画を送ってくれた友人に感謝する。日本では経済
的な落ち込みに話題が集中しているが、本当の支援活動はそれだけでないこ
とを雄弁に実証してくれた。

このメルマガではアメリカという国の横暴さ、クリスチャンのずる賢さ、ド
ナルド・トランプの人気取り政策を批難してきた。この“We are the World
”のボランティア精神はヒューマン・ライトではない、ヒューマニティの感
動を超えたところにある。

この歌詞はクリスチャンの聖書をベースに書かれている。それを理由に非難
することは止めよう。つまらぬ宗教談義を超えたところに、この歌の偉大さ
はある。そしてキリスト教の第一歩は愛を与えるところから出発する。今の
日本はカネを出すなら見返りを計算する。老獪な欧米人は確かにダブルスタ
ンダードをこよなく愛する。それはそれでよいではないか!トランプのよう
に口を歪めて非難することでもあるまい。

そのキリスト教からボランティアは出発した。だから日本人にはボランティ
アの本当の意味が分かっていない。だから大震災でもツナミでも大勢押しか
けるが、効率的な采配が出来なかった。そして外国からの支援も断わった。
ミャンマーの軍事政権と同じである。サイクロン・ナーギスでは米国とフラ
ンスの軍艦に山済みされた支援物資を拒否した。

だがそれも経験、その間に死者の数は増えるので、安くはない高価な経験と
なった。人類は愚かな選択をしながら成長?していくのかもしれない。その
試練を神は与えているのであろうと、神を信じない東西南北研究所所長がブ
ツブツ呟いている。

“We are the World”の大成功は、新しい価値観を生み出した。
そして“We Are The Wold25For Haiti”、「Michael Jackson Tribute -
Heal the World- Child Prodigy Cove」、「COVID-19 Tribute Video - We
are the World Various Artist/DOT」と形を変え、感動を世界に伝えている。


特に最後の二つの動画は偶然見つけたものです。お勧めですのでお時間許せ
ば是非覗いてみてください。

今回は特定の友人とゴルフの話しでもしようかと、メルマガを書き出したの
ですが、いつもの気まぐれで想定外のところまでボールは飛んでいったよう
です。OBにならなければ良いのですが。



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・04:ヤンゴンもロックダウン解除

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友人が訪ねてくれたので、タクシーで町内を一回りしてみた。
ナンバーストリート言う路地裏はすべてロープが取り払われ、進入禁止も解
除された。レストランも二人だけで対面着席も可能だ。しかし二人の間には
透明のビニールシートが設けられ、なんか刑務所の面会を想定させるような
設定で、ビールの乾杯もイマイチ迫力がない。

以上ヤンゴン下街の最新情報です。


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