******************************

<ミャンマーで今、何が?> Vol.365
2020.05.28

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

******************************


━━【主な目次】━━━━━━━━━━━


■ジャングル物語

 ・01: キップリング著「ジャングル・ブック」

 ・02: シンクレアの小説「ジャングル」

 ・03: ファラディの「ロウソクの科学」

 ・04: 会田雄次著「アーロン収容所」

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━



=============================

・01:キップリング著「ジャングル・ブック」

=============================


いま真夜中の午前1時半である。目覚めると室内は真っ暗だった。ヤンゴン名物の停電である。だが便利な世の中になった。枕もとのスマホをスウィッチオンして、フラッシュライトを点灯する。それを持って蚊帳を吊ったベッドを抜け出す。生徒に教えられたスマホは役に立つ。

身体が汗ばんでいる。先ずは小用、そして冷蔵庫から冷えた水をひと口、さてどうしようかと考える。もちろんエアコンは作動しない。ウィスキー大瓶のフタに据えた極太のロウソクに点灯する。停電が当たり前のヤンゴンで、ワンルームに約20枚の鏡を相対して壁に埋め込んだ。このアイデアは正解だった。部屋の中央でロウソクを灯すと、左右の鏡が相乗効果でより明るくなる。

デスクトップのPCはもちろん使用できない。となると椅子に座り、話し相手はロウソクだけだ。ロウソクの灯りを見つめながら考える。“火”は長いこと人類の友で、武器でもあった。それを人類が使いこなし征服したときに文明が出現した。

“火”を人間が生み出した文明批判として暗示したのが、ラドヤード・キプリングの名著「ジャングル・ブック」(The Jungle Book)ではなかろうか。最近は文字離れで原書も遠のいていく。だが内容をインスタントに電子辞書で調べられる時代となった。

虎のシーアに追われる人間の子供が、狼に助けられモーグリと名付けられ養育される。熊のバルーと黒豹のバギーラからジャングルの掟を学ぶ。シーアの陰謀でジャングルを追放されるが、大蛇のカーに助けられる。最後は人間の占有物である“火”を使って宿敵シーアを打倒する。だが狼少年として育てられた主人公は、あの恐ろしい人間に自分の姿かたちが類似していることに気付く。ネタばらしはここで止めておこう。

個人的な見解だが、この物語は単に児童文学ではない。インドで生まれインドでジャーナリストとして活躍した英国人のラドヤード・キプリングが人間社会の産みだした文明への強烈な批判のような気がする。原典は縁遠くなったとしても、ディズニーのDVD映画から「ジャングル・ブック」に手軽にアプローチできる。

緊急事態宣言は解けたとはいえ、在宅勤務を続行されている読者には、大画面のスクリーンでお子さんと一緒に過ごすに格好の物語だ。その際に少し高学年の児童には、この本が発表された1894年頃の時代背景を語れれば親子の距離がさらに緊密になるかもしれない。1894年といえば日本が支那と戦った日清戦争勃発の年である。あの頃は日本も支那も貧しかった。イギリスもアメリカも貧しかった。



=============================

・02:シンクレアの小説「ジャングル」

=============================


ご参考までに、アメリカの小説家アプトン・シンクレアの小説に「ジャングル」(1906年発行のThe Jungle)という小説がある。日清戦争とそう離れていない時代である。

シカゴの缶詰工場を舞台に、ネズミが群れ、結核患者が痰を吐き散らすという恐るべき環境の中で働く、虐げられた労働者の生活を描いたアメリカ資本主義発展の裏面にひそむ矛盾を突き、アメリカにおけるプロレタリア小説の最高傑作と認められる。(ブリタニカ国際大百科事典による)

ニッポニカはもう少し詳しい。
リトアニアの移民ユルギスは缶詰工場で過酷な労働条件の下で働いている。共働きの妻が上役の手篭めに会ったとき、彼はそのボスを殴って投獄された。出獄してみると妻は産褥熱で死に、嬰児も死亡。希望を失い、一時自暴自棄になるが、主人公は缶詰工場の非衛生状況を暴いていく。

世界中がパンデミックで慌てふためいている今だからこそ、考える時間があるかもと、100年前を振り返ってもどうかなとヤンゴンで考えた次第である。アメリカや中国が経済大国とは言え、超経済大国のアメリカですらわずか114年前は、上記の状態であった。

ましてや中国などは、必死に見栄を張る経済発展の裏側はアメリカの100年前と変わらないのではなかろうか、とロウソクの灯りを見つめながら妄想してしまった。
いま危険だからとロウソクやマッチは消え、ほとんど電化の時代である。電化とともに思考する時間が消えてしまった。



=============================

・03:ファラディの「ロウソクの科学」

=============================


我が家にもLEDのランタンはあるが、深夜の停電にはロウソクの灯りを点し、考える時間が私は大好きだ。アルタミラの洞窟で人類の祖先が松明の灯りで絵の具を選び、狩の様子を生き生きと描いていく。時代を選ばず、場所を選ばず、人間の頭脳はタイムマシンと化す。思考の代金は無料だ。それをヤンゴンの若者たちに伝えたい。

室内で対流が起こると、炎が揺れ、ファラディの昔読んだ「ロウソクの科学」を思い出す。この本からは、科学的な思考方法を教わった。ファラディはイギリスの化学者、物理学者だが、鍛冶職人の息子として読み書きと算術を習っただけで、書店兼製本業の店に徒弟奉公に出された。そして1824年王立協会会員に選ばれる。英語で言えば権威あるロイヤル・ソサエティだ。

それから37年間王立研究所の屋根裏部屋で過ごした。屋根裏部屋という意味では私と何ら変わらない。1860年のクリスマス前後、69歳のファラディは王立研究所で少年少女のために講演した。それを編集して刊行したのが「ロウソクの科学」である。このファラディの物語はミャンマーの若者にも伝えたい。



=============================

・04:会田雄次著「アーロン収容所」

=============================


話しは“ジャングル”だった、その連想で妄想を膨らまそう。

お子さんに、“ジャングル”と言ったら何を思い出す?と聞いてみたらよい。身なりは小奇麗でリッチな子供は、思考は貧困だ。“ジャングルジム”はジャングルとは何ら関係ない。だからキプリングの「ジャングル・ブック」をお勧めする次第である。

ここヤンゴンである日本人と出遭った。
お父上がインパール作戦に従軍されたと言う。そして何とか生き延び日本の敗戦を知り、ここラングーンで約一年間捕虜生活を送った。戦後日本が落ち着きを取り戻しても、父上は戦争の話しはほとんどされなかったという。

会田雄次の「アーロン収容所」とオーバーラップし、ひょっとして同じ収容所だったかもと、アーロン収容所跡地も追いかけてみた。

そのこともあり、インパール関連の書物を日本でもヤンゴンでも渉猟しまくった。英書も日本語もすべて古本である。そこでオモシロいことに気がついた。“ジャングル”に対する考えがイギリス人と日本人ではまったく異なるということである。

イギリス人は子供の時代から「ジャングル・ブック」の素養がある。ジャングルの掟も学び、厳しさも知っている。その素養の上に、イギリス人は大英帝国には厖大な戦争記録が残されている。
だが一方の日本人は椰子の木陰で昼寝するイメージしかない。指揮を執った牟田口廉也中将の頭も大なり小なり、そのレベルだった。そして国家を敗北に導く致命的な誤りを犯した。

愚将は祖国を喪う。それはいまの時代も同じだ。
特にパンデミックの時代、どの国が?とロウソクの灯りと対話する。
そして“ジャングル”という言葉から糸口を辿っていった。

ジャングルは下生えやツル植物の密生する熱帯の密林である。熱帯雨林の意味で用いることもあるが、これは誤解である。
日光が十分当たるため、ツル植物や潅木が密生して人間の歩行を困難にしてしまう。ジャングルではサルなどを除けば大型の哺乳類は少なく、昆虫や爬虫類は極めて多いとされている。

さらにブリタニカ国際大百科辞典では、Jungle warfare(ジャングル戦)の項目があり、次の説明でインパール作戦を妄想することが出来た。

ジャングル戦とはジャングルの中で行われる戦闘である。第一次世界大戦でドイツ領東アフリカ守備隊がヨーロッパ兵3000人、先住民兵1万1000人の兵力で、16万人のイギリス軍を相手に、キリマンジャロのジャングルで世界大戦が終わるまで戦ったのが有名。

第二次世界大戦まではアメリカ、ヨーロッパの諸国軍は、近代的軍隊はジャングルを通過できないと考えており、ジャングル戦を想定していなかった。

このためシンガポールやコレヒドールの要塞の背後のジャングルには防衛施設がまったく無かった。しかし第二次世界大戦中の日本軍との戦闘やベトナム戦争では、ジャングルでの戦法の確立、装備などの点で変化が見られたと記述されている。だが日本大百科全書にはジャングル戦の記述は無い。

追伸:
27日(水)午後3時30分から午後4時40分までかなり強い土砂降りとなった。雷はかなり真近まで迫ったが停電にもならず、持ちこたえてくれた。
そして今朝もまた強烈な太陽だ。ベランダの日陰で気温34度、日なたに出れば体温をはるかに上回る。コロナウィルスもこの太陽レーザーには勝てないだろう。
ヤンゴン情報でした。



========================================

公式ツイッター(@magmyanmar1)

========================================


<ミャンマーで今、何が?>の公式ツイッター(@magmyanmar1)をはじめました!


今月よりアカウントを取得し、<ミャンマーで今、何が?>の
公式ツイッター運用を開始いたしました。

公式ツイッターでは読者のみなさまからの感想などをツイートしていただけると
嬉しいです。

ツイッターをご利用の方はぜひ『フォロー』をお願いいたします。

現在のところリプライには対応しておりませんので、
質問等は下記メールアドレスまでご連絡ください。

お問合せ:magmyanmar@fis-net.co.jp 

公式ツイッターをぜひご覧ください。


■公式ツイッターはこちら

https://twitter.com/magmyanmar1




東西南北研究所




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ご意見、ご感想、ご要望をお待ちしております!
 http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※「ミャンマーは今?」の全文または一部の文章をホームページ、メーリングリ スト、ニュースグループまたは他のメディア、社内メーリングリスト、社内掲示 板等への無断転載を禁止します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※登録解除については下記のページからおこなえます。
○購読をキャンセル: http://www.fis-net.co.jp/Myanmar
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行元:ミャンマーメールマガジン事務局( magmyanmar@fis-net.co.jp )
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━