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<ミャンマーで今、何が?> Vol.368
2020.06.09

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━

■英国式コロナ対策!?!

 ・01: 恍惚の人たち

 ・02: 深沢七郎著『楢山節考』

 ・03:コロナ対策は積極的免疫アップ

 ・04:ヘレン・ミレン主演の海賊版DVD『THE QUEEN』

 ・05:コリン・ファース主演の海賊版DVD『The King’s Speech』

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・01:恍惚の人たち

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土砂降り⇒停電⇒かんかん照り、の三点セットがヤンゴンのいまである。湧き起こる入道雲、そして雲の流れで季節の変化を感じる。

そんな中Stay-At-Homeを逆手に取った商売が繁盛している。サイカーを大八車に改造し、夫婦あるいは親子で路地裏を周回する。色とりどりのトロピカルフルーツが山盛りだ。よく通る声で、マンゴー、ドリアン、バナナ、パイナップル、マンゴスチン、ライチー、スイカ・・それぞれの名前と値段を繰り返す。物売りの声が両側のビルに反響する

ビルの上階から声を掛けると、上と下で値段の遣り取りが始まる。隣近所がそれを聞きつける。窓窓が開き、主婦たちが下を覗く。値段に合意すると、洗濯ロープに吊り下げた買い物カゴが下ろされる。引き上げて商品を検品。納得すると代金が下りてくる。ヤンゴン名物、ベランダ・ショッピング風景である。

果実は灼熱の太陽で甘味がぐんと増す。だが豪雨で地面に叩き落とされると商品価値が激減する。だからいまの季節が最後のチャンスである。先日はドリアンをパック一杯に詰めて差し入れしてもらった。私の大好物である。一人では食べきれない。指をどろどろに汚しながら、友人とアッという間に平らげた。ドリアンだけは、お喋り好きも会話が消える。さすがに果物の王様だ。

あまりにも精力が強く、アルコールとの食い合わせは天国直行とウワサされる。玉ねぎの腐ったような悪臭が強く、一流ホテルへの持ち込みは禁止される。西洋人はトイレでブルーチーズと揶揄する。だが虜になった男には「ジョセフィーヌ、今夜もOK!」と、ナポレオンの気分を味わえる。

ドリアンは身体をホットにする。火照ったら、身体をクールにするマンゴスチンがお勧めだ。果肉はアイスクリーム状で、味は熱帯の一級品。果物の女王と呼ばれる由縁である。ここヤンゴンではこの王様と女王をコンビネーションで楽しめる。この醍醐味を知らずに先進国の連中は貧乏国とヌカス。貧乏国には人生のハッピネスが転がっている。

フグの肝で急逝した坂東三津五郎(八世)の“粋”が分かるなら、熱帯の通人の気持が理解できる。果物屋の店先で、棘とげの果実の肛門部分に鼻先をくっつけ恍惚状態に陥っている男たちがいる。欧米人はフェチと呼ぶが、ブルーチーズこそ究極のフェチと言ってやりたい。

そのドリアンを買い戻り、禁じ手とは言え、ついついブランデーに手を出したくなる。懐が許せばもちろんナポレオンが望ましい。国境なき天国にはそれで召された連中がウヨウヨいると聞いた。恍惚の頂点で人生を終えるのは幸せではないだろうか。“粋”ですらある。

そこのところを先進国の連中は理解できない。養護老人ホームに縛りつけムリヤリ恍惚状態にさせる。それは意味を取り違えている。これは三津五郎の世界ではない。



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・02:深沢七郎著『楢山節考』

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先日ぎっくり腰の前兆があった。短足を机に投げ出し、ぐうたらな格好でYouTube鑑賞のせいである。Stay-At-Homeで時間はたっぷりある。カイロプラクティックに通うのではなく、どうしてぎっくり腰になったのか、徹底的に自分の頭で考え、治すことに専念した。偶然堅めのクッションを手に入れ、数日で寝返りも難なく出来るようになった。そのとき思った。

寝具はハリウッドの映画で見るソフトなクッションばかりである。枕を含め柔らかい寝具は、命取りになると確信した。寝たきりでぎっくり腰になれば老人力どころではない。二度と自分の脚では立てなくなる。立ったままでパンツも穿けない。これこそ人間の尊厳にかかわる大問題である。

友人に教えられたYouTubeはビジュアルな百科辞典である。
「老人看護」とググルと幾らでも映像を見ることが出来る。養護施設経営者、職業としての看護士、の視点は見えてくるが、収容された人たちの視点が何一つ見えてこない。時間がたっぷりあるいま、どうしたら立ったままパンツが穿けるかを真剣に考えている。

夫91歳、妻94歳で亡くなった夫婦を知っている。二人とも亡くなる前のほぼ一週間寝込んだだけで、人生を全うした。夫は田舎の町医者で午前中か午後は必ず往診に出かけた。往診かばんは看護婦に持ってもらい、ステッキはつくものの、自分の足で歩くのは最後まで厭わなかった。古い言葉で一喝されそうだが、夫唱婦随で妻も夫の人生観に従った。

この二人は寝たきりを体験せずに人生を終えた。YouTubeを見ながら、そのことを思い出した。
老人介護はビジネスとしては花盛りだが、植物人間製造のベルコンではないのだろうかと? ワタシとアナタの未来に関係する重大な問題である。このヤンゴンで、町医者夫婦をモデルに、そして自分自身をモルモットに、実験中である。

友人の万歩計を見習い、週に一・二回ゴム草履でヤンゴン市内を徘徊している。気分次第・天候次第で、30分、時には3時間も歩いてしまう。汗だくになると、洒落たカフェで一服することもあるが、新鮮な果物やヨーグルトを見つけると、タクシーで一目散に帰宅する。

先日の遠出はヤンゴン大学のキャンパスまで行った。帰りのタクシー代金は5000チャット。高いか安いかはアナタ次第。医療費とすれば信じられないほど安い額だ。しかも確実にぎっくり腰から回復している。それだけではない。二本足で立ち、人間の尊厳も失っていない。

先進国では、若い元気な看護士さんが面倒を看てくれる。オムツを外され、キレイに処理してくれる。ここヤンゴンで自己リハビリに挑戦しながら考え込んだ。

いくら完全看護だといっても、昔は威勢のよかったジイさんが、昔はイキな姐ごだったバアさんが、オムツを外され、真っ裸となる。蒸したタオルで下半身の面倒を看てもらう。若いときはイナセが売りでも、悲しいかな寝返りひとつ打てぬ身である。ダブルオーのテーマ曲を思い出し、絶体絶命の自分が不憫だ。

消えいりそうな恥ずかしさで一杯だ。人間の尊厳などかなぐり捨てて、ボケを演じ、恍惚を演じてやろう。自分で自分を見ぬフリをする。老獪さにおいては、狡猾さにおいては、年季が入っている。見守る若い看護士を欺くのは簡単だ。

敬老の日だけ訪れる親族に、「ときどきハッとするほどチャンとしたお話をされます」と看護士が語る。そうではない。ボケを演じる老練な収容者がほんの一瞬油断しただけなのだ。

ついつい深沢七郎の「楢山節考」を思い出した。世界の若者たちに是非とも薦めたい本だ。これは他人事ではなく、いまの若者の明日の姿でもある。

そういえば海賊版DVDで白黒の映画がコレクションに入っていたはずだ。1958年の木下恵介監督ではなく、確か1983年の今村昌平監督だったと思う。ここヤンゴンでは日本映画の海賊版DVDも結構手に入る。しかも中国語の字幕つきで。

中国の業者にも結構目利きがいて、日本の名作もほとんどは海賊版で東南アジア一帯に流布している。NHKの大河ドラマなど海賊版の定番である。
ここヤンゴンではそれらから知のユニバースを学ぶことが出来る。

話を戻すと、先進国の完全看護漬けに満足して人生を全うするか、あるいはこのヤンゴンで、二本の足で立つ訓練を自分でして、人間の尊厳を守るか? 人生イロイロである。新型コロナウィルスは、誰もが想像しなかった人生を哲学するチャンスを与えてくれる。

ありがたい。今日もフェースマスクと帽子、それにパラソルを持ってルンルン歩きに挑戦だ。これもYouTubeで仕入れた知識である。アップル社のiPhoneは万歩計のアプリが組み込まれているそうだ。だからボクの友人は、散歩中でも機関銃のごとく即座にメールを打ち返してくる。ヤンゴンの火縄銃では手も足も出ない。



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・03:コロナ対策は積極的免疫アップ

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脱線ついでに話をさらに飛躍させたい。
ヤンゴンの古書店街で見つけた半分虫食いの本があった。17世紀か18世紀のイギリス人が書いた本である。あの当時は神学者崩れとか、傭兵崩れ、あるいは船乗りなど一攫千金を狙う怪しげな連中がインドからビルマにかけて金脈を探していた。

「自分は港町に着くと、船着場近くにある屋台で見たこともない、珍しいものを、片っ端から注文して食べてみた。そして安宿に部屋を確保する頃、間違いなく胃痛が起こる。それも中途半端ではない。三日三晩七転八倒することもあった」と書いてあった。

私はヤンゴン川沿いにある「ストランド・ホテル」が建造される前のビルマの港町を想像しながらこの本を読んだ。いまCOVID-19と関連付けながら、この本を思い出している。その後にこう書いてあった。「だが七転八倒のアト、どんな山奥に行っても一度も腹痛を起こしたことがない。たぶん免疫が出来たのだろう。この方法はアフリカの港町でも有効だった」

私の飛躍分析では、イギリスのボリス・ジョンソンは最初この方法を採用したと思われる。国民に免疫力をつけさせる方法だ。だが野党もマスコミも反対意見で逆襲してきた。本人がコロナウィルスに感染したために弱気になったのかもしれない。そこで180度反対のStay-AT-Homeに方針を切り替えた。それから英国の感染数が激増していった。



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・04:ヘレン・ミレン主演の海賊版DVD『THE QUEEN』

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英国は日本の皇室とは歴史がまったく異なる。
93歳の女王はコロナに汚染されたロンドン中心部のバッキンガム宮殿から、ロンドン西郊のウィンザー離宮にさっさと引っ越してしまった。

だが国難に見舞われたとき、政治に、議会に、直接介入する。それが2020年4月6日のエリザベス女王による異例のTVスピーチであった。英国議会はクイーンに従属する議会だからである。日本は英国王室をお手本にしているようだが、その本質はまったく異なる。

スピーチ内容は日本でも取り上げられたのでそれは触れない。だが英国王室を知る入門偏としての最適のDVDはヘレン・ミレンがタイトル役のエリザベス女王二世を演じ、マイケル・シーンがトニー・ブレアー首相を演じた『THE QUEEN』に限るだろう。

ダイアナ妃に好印象を抱かなかった女王は、離婚後の悲劇的な死にも冷たい態度を取っていた。国民はこぞってダイアナを愛し、その死をいたんだ。首相になったばかりのトニー・ブレアーは決意して女王に国民感情を強く訴えた。そこで女王は態度を豹変する。

裏話として女王は主役のヘレン・ミレンをバッキンガム宮殿の晩餐会に招待しようとしたらしい。ハリウッドでの撮影で時間が合わず、この企画は実現しなかったが、女王自身はこの映画を高く評価していたとみてよいだろう。

日本ではひらかれた皇室といいながら、宮内庁のガードは堅い。この映画ではロイヤルファミリーの寝室にまで入り込み、政治的に微妙な会話までが披露される。そこには象徴の人ではなく、人間クイーンが描かれ、国民の声を聞く大切さを女王自身が学ぶ。それが4月6日のクウィーン‘ズ・スピーチだったのだと思い知らされる。



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・05:コリン・ファース主演の海賊版DVD『The King’s Speech』

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このDVDを見終わったら、もう一歩英王室の歴史に踏み込んでみたい。
それが『The King’s Speech』である。コリン・ファースが国王・ジョージ六世を演じる。今年94歳になったエリザベス女王二世の実の父親である。

知る人ぞ知るで、このキング・ジョージVIは勇壮な兄エドワード八世の華々しい活躍の陰で、生まれつき気が弱く引っ込み思案でStammer(どもり)であった。繰り返すが、現英国クイーンの実父である。映画では幼いときのこのエリザベスも出てくる。

そのStammerを克服するため、オーストラリアのスピーチおよび言語治療専門家を密かに訪ねる。そのテラピストを渋いジェフリー・ラッシュが演じる。このエリザベスの父親ジョージに人生最悪のシナリオ、最も怖れていたことが起こる。この事件が起こらなければ、現在のエリザベス女王は実現しなかったかもしれない。それは何だ!

国王となっていた兄のエドワード八世が米国庶民で2度の離婚歴のある女性・シンプソン夫人と結婚するため王位を捨てるとヤンチャを言い出し時である。少し英国の歴史に興味を持つと、英国王室がどれほどデタラメをやってきたのかが分かってくる。

日本だと必死に隠そうとするだろうが、根本的に英国はそこが違う。かのウィリアム・シェークスピアはその曝露本を何冊も書いた。英国国教会(=Anglican Church)の創立も、ヘンリー八世がローマ教皇から王妃との離婚を承認されなかったためと記されている。

アメリカとはまったく異なる、イギリスの老獪さを学ぶうちに、私はチャランポランなこの英王室の老練な手法に夢中になった。
武漢ウィルスを発火点として中国包囲網が動き始めた今、私自身はアメリカに期待してトランプ大統領のうしろでコソコソするよりも、イギリスの後でコソコソと洞ヶ峠を決め込もうと思っている。

話は逸れたが、“王冠を賭けた世紀の恋”と騒がれたエドワード8世とシンプソン夫人の結婚は国王退位後に英国を離れ、友人のみを招待しフランスでひっそりと行われた。そして1972年同地で亡くなり、夫人も1986年に亡くなった。二人の遺体はエリザベス女王がコロナ避難したウィンザー離宮に眠っている。

そして子供のいなかった二人は厖大な遺産をすべてパスツール研究財団に寄贈したといわれている。コロナを発端にいがみ合う中国とアメリカよりも、いまの時期、非常に意味深なエピソードではないだろうか。

お茶の間で英国王室や日本皇室のテレビ中継にウットリするのも結構だが、この『The King’s Speech』を何回か繰り返し鑑賞すると、世界の歴史が生き生きと見えてくる。

個人的な話しになるが、“Simpson Spence Young”という歴史・伝統のある多国籍企業のシッピング・ブローカーがニューヨークやロンドンなどに存在する。海運会社の末席にいたとき、同社とも非常に親しい関係にあったが、そのとき、この“Simpson”とシンプソン夫人はルートは同じと教えてもらった。

その夫君であるエドワード8世が皇太子時代、ビルマを訪ねたことがある。いまのヤンゴンの動物園、それからオールド・バガンの“Thande Hotel”。そこにはその記念のプレートがどこかに置かれているはずだ。興味のある方は探してみるのもおもしろい。こうして話しはもう一度ビルマともつながった。


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