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<ミャンマーで今、何が?> Vol.373
2020.07.06
http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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━━【主な目次】━━━━━━━━━━━

■中国とミャンマー!その3

 ・01: 話しのまくら

 ・02: ミャンマー国防軍広報課発表

 ・03: Debt Trap

 ・公式ツイッター(@magmyanmar1)

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・01:話しのまくら

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<中国とミャンマー>の次ぎは<ロシアとミャンマー>を書くと、プロバイダー殿には言明していた。だが話しの流れは水嵩を増し<中国偏その2>を書く羽目となった。そのあと激流は状況を一変させ、<中国偏その3>を書かざるを得なくなった。

6月24日(水)GNLM紙第2面の目立たぬ記事をご紹介したい。表題は「ミャンマー国軍代表団がロシア連邦を公式訪問」。挿入写真も地味だ。全員がフェイスマスクをしている。訪ソの主目的は、第二次世界大戦(1941-1945)の第75回勝利記念パレードを観戦することにあった。

本当に便利な世の中になったものだ。モスクワの赤の広場で開催された軍事パレードは日本語解説は無いが、YouTubeのノーカット版ビデオ(1時間41分34秒)ですべて見ることが出来る。プーチン大統領の観閲式、そして演説。
陸海空それぞれの制服を着た兵士たちが国防大臣の鼓舞に応える“ウーラー”三唱の歓呼が赤の広場にコダマする。

クレムリン大宮殿の裏庭には、オリンピックの聖火に似せたような火が点されている。解説が無いので事実は不明だが、プーチンに率いられた国防大臣以下の選ばれた高級参謀が徒歩で横並び一列で燃え続ける火のGreat?
Patriotic War(偉大な戦没兵士たち)にそれぞれ献花し黙祷を捧げた。非常に荘厳な場面である。

このVictory Day(戦勝者記念日)はドイツ・ベルリンのナチスが降伏した1945年5月8日を祝うものだが、モスクワ時間では翌5月9日が記念日となっている。今年の第75回記念日も同様に5月9日だが、COVID-19のために延期され2020年6月24日の祝賀パレードが挙行された。

話しはさらに寄り道する。プーチン大統領の任期に重大な影響を与える国民総選挙は当初4月22日に予定されていた。だがコロナ騒動を理由に7月1日(水)に再設定となった。国民が連帯し、国への忠誠を誓う、そういう気分にさせられる戦勝者記念日からちょうど一週間後である。AFPなどの記事はプーチンの老獪さをそういう風に深読みしている。

終戦というと日本では盛夏の8月15日だが、その3ヶ月前にすでにドイツのナチス政権は崩壊し、降伏した。ソ連を含めた欧米諸国ではこの西部戦線での戦闘が決着した1945年5月8日を中心とした日をV-デイ(戦勝記念日)として盛大に祝福する。

ここで思い出したのが1945年2月4-11日開催されたヤルタ会談である。アメリカ大統領FDルーズベルト、イギリス首相チャーチル、ソ連首相スターリンの三首脳がソ連ウクライナ共和国のクリミア半島の保養地ヤルタで戦後処理の基本方針について協議した会談である。

ソ連の対日参戦に関する秘密協定もあるが、基本的には3ヵ月後に実現するナチスドイツ崩壊後の世界秩序について英米ソの参加国だけで語り合っている。


同様に1945年7月17日から8月2日まで、ベルリン近郊のポツダムで開催された米英ソ三国政府首脳会談をじっくり検証願いたい。ヤルタと同じ米英ソ三カ国の首脳会談には違いないが、役者が異なる。

アメリカ側はトルーマン大統領とバーンズ国務長官、ソ連はスターリン首相とモロトフ外相、イギリス側は最初(7月25日まで)チャーチル首相とイーデン外相であったが、国内での政権交代の結果、7月28日からアトリー首相とベバン外相が出席した。

このポツダム会談の開催途中7月26日に米英+中華民国=合計三国政府首脳の連盟で日本に対し降伏勧告のポツダム宣言が発表された。話しは複雑になるが、1951年9月8日サンフランシスコで署名され、1952年4月28日に発効されたのがサンフランシスコ講和条約である。

当事国は45カ国であったが、複雑な話とは、中国はアメリカが国民政府を、老獪なイギリスが中華人民共和国を承認していたため、この両政府ともに中国は当事者としてこの講和会議には招待されなかった。日本は占領中のアメリカとの密約により、1952年4月28日国民政府と日華平和条約を締結した。そして1972年9月29日、日本は方針を変更し、日中共同声明で中華人民共和国を中国の唯一の合法政府と認めて中国と戦後処理を行った。ここで日米中の視点が変わる。

繰り返すが、問題を深掘りしていくと歴史が見えてくる。歴史を知らねば未来は見えてこない。簡単にトランプの口車に乗って中国バッシングをやるのも結構だが、日本の歴代政権に問題はなかったのかを自分の頭で考える余裕と、懐の深さが大切である。そのためにも今回のコロナ休養期間は天が与えてくれた絶好のチャンスである。

コンビニ的に簡便に話をまとめよう。
英米ソという曲者はヤルタ会談でドイツ敗戦後の世界秩序を考え、ポツダム会談で日本敗戦後の世界秩序を話し合っている。今になって制度疲労した国連のスタートである。これこそ老獪学のケーススタディに適した参考例は無い。孤立した島国には無い発想だからである。個人的に反省する点だが、世界の動静を眺めて、それから自分を見つめ直すしかない。

このメルマガの常で話は大きく横道に逸れたが、ミャンマー国軍代表団がロシア連邦を公式訪問したところに話を戻そう。

12カ国から国家の元首が、19カ国から国防最高司令官を団長に、国防大臣、高級参謀などが招待されこの式典に参加した。第2次世界大戦の同盟国として勝者側についたミャンマーもロシア連邦最高司令官兼国防大臣のSergei?
Kuzhugetovichi Shoiguの招待で今回参加した。

ここで疑問が生じた。その場合はWikipediaを徹底的に調べることで疑問の一部は解けてくる。
戦争とは勝敗を決着するものである。勝敗の付かない長引く戦争もあるが、基本的には一方が勝てば、片方は負ける。総力戦の時代となった第一次世界大戦、第二次世界大戦からは民間人を含めて夥しい数の戦死者・負傷者を出すようになった。

犠牲者の多くは祖国のために戦った愛国のヒーローである。それに感謝、冥福を祈るヤリ方はその国の伝統・文化・慣習に従いイロイロだ。今回ロシアの愛国者たちに黙祷を捧げる国の最高権力者たちを見ていて、一種の感動を覚えた。これは勝利国であろうと敗戦国であろうと変わりない。他国がアレコレ言う筋合いのものではない。ちょっかいを出せば、それは独立国家を無視した内政干渉である。

疑問というのは靖国問題である。日本ではその矛先が中国に向かい、何でもかんでも中国が悪いと言うが、頭を冷やして自分の頭で整理すると、国際慣習に反するちょっかいは無視するのが当然で、主権国家であるならば一喝して終わりである。

私が苦悩するのは、そうしなかった祖国の先輩の態度である。さらに問題を複雑にさせるのが、サンフランシスコ条約で独立国家になったものの、その自覚が無くアメリカに隷属してきた歴代政権の無策である。このような発言をすると「それでも日本人か!!」と見当違いの罵声を浴びる。オリバー・ストーン監督が指摘したとおり、我々はそれぞれに自国の歴史を振り返って見る必要があるのではないだろうか? その意味でもコロナさま様である。

オリバー・ストーンは指摘する。米国の大統領選挙においては、大統領候補の資質は徹底的に精査される。だが刺身のツマの副大統領は形式的な精密検査が行われるだけである。だからFDルーズベルトが急死すると、教養も何も無いボンクラの副大統領であるトルーマンがアメリカの最高権力者の椅子に座った。

そして科学的にその破壊力・影響力の証明されていない原子力爆弾の実験を広島と長崎で行う命令書に署名した。人類史上最悪の極悪非道の犯罪人だが、日本国政府は占領国の大統領として崇め奉りイエスマンに徹した。その系譜は悲しいかな今日まで続いている。今どうするかを考えたい。

歴史は残念ながら覆せない。今の時代はスーチーが主張するとおり、事実は隠蔽しないで透明に曝け出すことだ。その上で日本独自の理論を考えればよい。アメリカで開発され、中国が無断借用した海賊版DVDおよびYouTubeを、逆手にとって活用すればよい。藤井聡太七段の必殺技から奮起して対アメリカ、対中国の戦略は編み出せる。そのためにはコロナ休暇を存分に生かすことだ。

その延長線上で、当研究所は優秀な研究員を総動員して、昨年の中国建国70年「国慶節」軍事パレードもYouTubeLiveで観閲した。それから北鮮の軍事パレードも閲兵した。念のために英国、米国の軍事パレードもだ。国力の差、兵力の差が歴然と見えてくる。YouTubeはエンタメだけでなく、活用方法は無限だ。YouTubeでサーフィンすれば、昨日の素人が明日は一端のプロとなれる。


スーチーがミャンマーに根付かせた改革は三つある。(1)民主化の達成(2)法の遵守(3)透明性。これらは一晩で成し遂げられるチープなものではない。だが海外のマスコミは短期的な見方しかせず、スーチーをこき下ろす。

スーチーの改革がミンアウンラインを動かした。
ミャンマーの憲法上では、ミンアウンラインとは大統領の上に君臨するスーチーの権力外に屹立する国防軍の頂点に立つ男である。単純な見方をすれば、ミンアウンラインはスーチーの敵となるが、賢明なスーチーは軍とも協力しながらミャンマーを民主化していくと公言している。



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・02:ミャンマー国防軍広報課発表

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ミンアウンラインに引率されたロシア訪問団は6月22日に特別機でミャンマーを出発し、同日夕方にモスクワに到着した。そして予定行事をこなし、6月25日モスクワのSheremetyevo国際空港を飛び立ち、同25日午後11時にネイピード国際空港に戻った。

実質23日と24日の二日間だけが仕事日である。スーチーもそうだが、最近のミャンマーの大臣、高級官僚は、スーチーから学んでWorking Tripが多い。
仕事をしない官僚は外される。日本では仕事をする官僚は煙たがられると聞いたが本当だろうか?

ミャンマー国防軍一行がモスクワ入りした翌6月23日午前、ミンアウンラインはCrowne Plazaホテルで、Arguments and Facts Media、Zvezda TVチャネル、RT TVネットワーク、Red Starメディア、Politics マガジンの各編集者およびレポーターと個別に会見した。

会見では、ミンアウンライン上級将軍は、ミャンマー国軍の歴史、国内政治における国軍の指導的役割、国会における国防軍代表、国家安全保障、国家主権、COVID-19に対する国防軍の貢献、そしてロシアとの軍事技術に対する協力と進展状況について説明した。

その後、Irukut Corporationの副社長以下軍関係者と会い、軍事技術に関する意見を交換した。
以上が国防軍広報からの説明である。このようにミャンマーの国防軍はラカインの紛争でも逐一記者会見を開き広報活動を公開している。

実質二日目6月24日の午前中はロシアの軍事パレード記念式典に参加し、一行は午後からモスクワにあるミャンマー上座部仏教僧院に住む高僧を訪ね供物を献上した。敷地内の礼拝堂建設計画もその場所を確認した。

その後モスクワのMetropol hotelでインドの国防大臣と会い意見交換した。
会談内容は両国国防軍の関係強化、国境地域における平和と安定、同地域の適切な管理体制、国境線に沿いテロリスト戦闘に対する協力、Kaledan計画の進捗状況および成功に導くための両国間での安全保障、インド洋での安全保障に関する両国軍の協力、両国軍の協力関係強化で、訓練コースを実施し、COVID-19のパンデミックを一定レベルまで押さえ込むなどが話し合われた。

同日夕はロシア国際協力機構が主催する船上での夕食会に招待され、船上からモスクワ市の発展状況と美しい景色および市民の憩いの状況を楽しんだ。
午後11時には、本日の祝賀式典の成功を祝って花火大会が行われた。

ミャンマー国軍広報課の発表は以上のとおりで、GNLM英字日刊紙もこのように報道していた。



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・03:Debt Trap

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好奇心の強い弊研究所はZvezdaTVチャネルに目を留めた。調査の結果ロシアの国営TVである。オモシロイ。最近覚えたグーグル検索で彼方此方と遊んでみた。

英国のThe Economic TimesとインドのHindustan TimesがロシアのZvezdaTVのインタビューでのミンアウンライン上級将軍の発言を掲載している。

東南アジアで唯一の中国の同盟国と看做されるミャンマー国防軍最高司令官が、ロシアの国営TVに中国の卑劣な行為を曝露し、国際社会に支援を要請したとなっている。
弊メルマガは中国の同盟国という表現には異論を挟むが、ミンアウンラインが動いたというのは正にこの記事のことである。

報道内容は、中国がミャンマー北西部のラカイン州で活発に活動する反政府テロ組織のArakan Army(AA軍)およびArakan Rohingya Salvation Army(ARSA)に武器を提供し、ミャンマー国内を不安定に陥れている。その武器はすべて中国製で、これには地対空ミサイルも含まれる。

そのコストは一基当たりUS$70,000-90,000とされ、これは2019年のTa’an?
National Liberation Armyの軍事急襲にも使用された。ミャンマーの国境地帯で少数民族の反乱軍は大半が中国製武器を使用している。習近平はこの事実を否定して、どうして反乱軍が中国製武器を調達したのか調査し、反乱軍との仲介を目録つもりだが、北京政府には一帯一路イニシャティブのみならず、中国―ミャンマー経済回廊を通じてベンガル湾から中国へのランドブリッジを最優先課題としている。

ラカイン州のシットウェイには中国政府が肝いりで完成させたチャオピューという大型タンカーが着桟出来る深海港があり、ここから中東原油と天然ガスを二本のパイプで中国の大工業都市重慶まで搬送できる仕組みになっている。これもミッゾーンダム同様に軍事政権の時代の闇契約である。

スーチーが国際世論を味方につけて、そしてミンアウンラインと老獪なアイデアを出し合えば、中国との闇契約を有利に解約することが出来るかもしれない。もちろん中国はミャンマーに輪をかけたしたたか者だ。だからヒンドスタン紙の記者は署名入りで、中国のDebt Trap(負債トラップ)に引っかからないようにと注意してくれている。

詳細は不明だが、時間の問題で、その内事実は浮上してくると思われる。ジックリ見守りたい。


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