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<ミャンマーで今、何が?> Vol.45
2013.5.22

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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・週刊メルマガ一周年記念特集第2号
  09:最初にお詫びして訂正します。
  10:中国とミャンマーの複雑な関係
  11:テインセイン大統領初の外国訪問は中国
  12:米国のホワイハウスでオバマ・テインセイン両大統領が首脳会談
  13:中国の巻き返し
  14:ミャンマーのパワーバランス

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09:最初にお詫びして訂正します。

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ミャンマーの麻薬王をウィキペディア(英語版)で確認すると表記法が高野秀行
氏の執筆時より異なり、このメルマガでは今後下記に統一します。

初代麻薬王:ローシンハン(中国名:羅興漢=Luo Xinghan)
二代目麻薬王:クンサー=Khun Sa(中国名:張奇夫=Zhan Qifuザンチーフー)
三代目麻薬王: バオヨウシアン(中国名:鮑有祥=Bao Youxiang)

*この三代目バオヨウシアンは2005年頃から急速に体力を損ない、代行そして代
替わりが行われているようですが、今のところ確たる情報は不明です。三代目の
地盤であるシャン州Wa地区はミャンマーの秘境中の秘境で、外国人の探検家やジ
ャーナリストが潜入するにはあまりにも危険を孕んだ地区である。キンニュン首
相時代にUWSAと一旦は平和協定が締結されたが、約束は破棄され、現在はミャン
マー国軍ですら近寄れない地区となっている。

今回、中国がこの地区に目をつけ、人民解放軍が最新鋭の兵器を供与していると
いう話は、中国が世界一の超軍事大国である米国と対峙するには地政学的にも格
好の場所と見えてこないだろうか。


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10:中国とミャンマーの複雑な関係

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これら三代にわたる麻薬王の名前を良く見て欲しい。すべて中国名を保有してい
る。ということは漢人の血が流れ、中国語を解し、中国語を話せるということで
ある。そして初代・二代目共に中国系コーカン(果敢)族の出身である。そして
二代目の名前クンサーはシャン人の名前だが、中国名も保有している。問題のWa
族は、領土的にはミャンマーだが、民族的にはミャンマー系というよりも、むし
ろ中国系の響きが強い。

もうひとつ複雑な事情をお話ししよう。

1962年にクーデターを起こし軍事政権を築いたネーウィン将軍と、その将軍の懐
刀で情報省のトップとなり軍政権時代もっとも恐れられたキンニュン元首相は共
に中国ハッカ(客家)族の出身で、民族的には華人である。現在のテインセイン
大統領も民族的には華人で中国名表記は登盛と書く。

さらに複雑な話をするとネーウィン時代、ミャンマー国内における中国語の教育
は彼によって禁止されていた。 


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11:テインセイン大統領初の外国訪問は中国

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形式的にせよ軍服を脱ぎ文民政府に衣替えした新政府の大統領が選んだ最初の海
外訪問は北京であった。当時、わが東西南北研究所も‘然もありなん’と解釈し
ていた。歴代の日本国総理大臣がワシントンを目指したように。だが、その随行
員のひとりにミャンマー名Tun Myint Naingと名乗る男がいた。外国人には
Steven Lawで知られる男だ。初代麻薬王ローシンハンの息子で、ミャンマー最大
の複合企業Asia Worldの総帥。そして今ミャンマーで大人気のプロサッカーのひ
とつである、マグウェーFCのオーナーでもある。この北京訪問では大統領がステ
ィーブン・ローの中国コネを当てにしたのか、あるいはスティーブン・ローが利
権拡大を狙って大統領に随行したのか、賢明な読者に読み解いて欲しい。

この巨大企業Asia Worldの事業が中途半端でないことは、ネイピード新都心の建
設、アローンにあるコンテナーヤードの港湾経営、ティラワ深海港の経済特区建
設、ダウェー深海港の経済特区建設、そしてラカイン州チャオピューの深海港に
深く関係している。その他にもネイピード国際空港、マンダレー国際空港、ヤン
ゴン国際空港拡張工事などにも関わり、パテインからグエサウン・ビーチへの道
路建設、タンルイン川でのダム建設、テインセイン大統領が一方的に中断を決定
した問題のミッゾンダムにも絡んでいる。そしてヤンゴンでのスーパーマーケッ
ト事業、トレーダーズホテル(10%の株式保有)、ヤンゴン・マンダレーの両セ
ドナホテルなどなど。Asiaの名前を冠した企業がその主だった企業群だ。ここで
は主要な事業のみ拾い上げたが、もう少し詳細を知りたい方はウィッキペディア
英語版を参照していただきたい。これらは秘密の情報ではなく、すべて公開され
た情報である。


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12:米国のホワイハウスでオバマ・テインセイン両大統領が首脳会談

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オバマ大統領が昨年11月ヤンゴンにテインセイン大統領を訪ねた。それからちょ
うど6ヵ月後の今週20日に、テインセイン大統領がホワイトハウスにオバマ大統
領を訪ねた。これまでは執拗に“ビルマ(Burma)”にこだわってきたオバマ大
統領であるが、今回はミャンマー政府が自称する“ミャンマー”を連発している。
単にリップサービスではない。驚くべきほどの改革を短期間に成し遂げたテイン
セイン大統領に敬意を表して“ミャンマー”という国名を使用したと広報官は語っ
ている。

前回のNY・国連訪問と様変わりで、今回は大統領が宿泊するワシントンのフォー
シーズン・ホテルに各界の大物が続々と訪れた。ヒラリー元国務長官も世界銀行
総裁も同ホテルに足を運び敬意を表している。

しかし、米国内は歓迎一色ではない。共和党の闘士からはビルマの大統領をホワ
イトハウスに招待するのは時期尚早だと批難の声が上がり、人権問題活動家グルー
プはロヒンジャーを無国籍化し抹殺しようとする政策を取る非人道的な国家は断
固許せないと怒っている。だがオバマ政権にはそのような批判は枝葉末節で、テ
インセイン大統領を今ホワイトハウスの執務室オーバル・ルームに招き入れ、米
国にとって国運を掛けた極秘会談が待っている。資金援助だとか、技術援助、学
校教育、農水産物の輸出、電力の供給などクリスマス・プレゼントのような好意
がワシントン発のニュースとして世界を飛び回っているが、今回の究極の目的は
ただひとつ、大統領随行団のトップの席次が国防大臣のワイルイン中将であるこ
とから推測できないだろうか。

テインセインが大統領就任後、初の外国訪問が中国だったことは先に述べた。そ
して第2回目の中国訪問は2012年9月18-22日。第3回目が今年の4月5-8日。そして
今回米国から帰国すると慌しく5月26日に国賓として中国を訪問する予定になっ
ている。これは第4回目の訪中で、これまでは実務会談ばかりであったが、今回、
中国側はテインセイン大統領を丁重に国賓として習近平国家主席が迎える。火花
が散るミャンマーを巡る米中の駆け引きがマスコミの注目を集める華々しい外交
交渉の舞台に表面化したことを読み取って欲しい。

第4回目の今回の訪中では完成間近いラカイン州チャオピュー深海港に中国海軍
艦隊が寄港する可能性について両首脳の間で話し合われるとのもっぱらの噂であ
る。米国はインド洋および太平洋の安全に寄与するためにオーストラリア北部の
港湾都市ダーウィンに2,500名の海兵隊を配備することはすでにお伝えした。こ
れは米国海軍の艦船が常駐する海軍基地が出来るということであり、南シナ海・
東シナ海における警備が一段と厳しくなるということを意味する。

話を途中でお邪魔するが、その中国訪問の直前秒読み段階である5月24日に、米
国から帰国したばかりのテインセイン大統領に平和と経済に異常な関心を払う一
国の首相と財界トップ数十人がアベノミクスをレクチャーするとのニュースも飛
び込んできた。

一方、オバマ大統領は中国のトップに就任して初の米国訪問となる習近平主席を
カリフォルニア州で迎え、会見する予定になっている。


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13:中国の巻き返し

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テインセイン大統領は2011年9月30日、中国が押し進めてきたカチン州ミッゾン
水力発電のダム建設を環境破壊とミャンマー国民が望んでいないとして、一方的
に中断すると発表した。

そして現在、サガイン州モニワにあるレッパダウン銅鉱山が注目を浴びている。
この鉱山はミャンマー国軍の所有で国策事業を幅広く展開するミャンマー経済持
株会社(UMEHL)と中国人民解放軍の武器製造会社の子会社Wanbaoとの間の合弁
企業が所有・経営することになっている。しかし、この土地は昔からの住民がゼ
ロあるいは安い補償金で強制的に排除され、鉱山の閉鎖を求める平和的なデモ抗
議行動に対して可燃性の有毒弾薬を使用して火傷など多数の重傷者を出している。
その対応は昔の残酷な軍隊政権と何ら変わるところがないと国内外の批難を受け
るようになった。この事件の調査委員会の委員長として指名されたアウンサンスー
チー委員長の報告書は結論として鉱山事業の継続を認めている。この辺りからスー
チー議員に対する、特に人権活動グループからの批判が突出するようになった。
そして今、ラカイン州チャオピュー深海港から中国雲南省につながる2本の天然
ガスと原油のパイプラインである。先週カチン州では反乱軍がこのパイプライン
近くへの攻撃を開始した。

これまでミャンマーの軍事政権とグルになって人権・環境を無視した大きなプロ
ジェクトが特に欧米マスコミの指弾を受けるようになり、僧侶・88年の活動家に
指導される抗議行動が活発になってきた。
ミッゾンダムが中止となり、レッパダウン銅鉱山に世界の眼が注がれ、チャオピ
ュー深海港までが問題を起こせば中国政府・中国人民軍にとってはドミノ連鎖の
痛手となってくる。そこで中国のイメチェン作戦が付け焼刃的に開始された。
銅鉱山の周りには道路が整備され、排除した村人を収容する仮設住宅などの供給
である。そして立ち退き補償費用の話し合いも始められるとのことである。だが、
どれ程の効果があるかまったく未知数である。

そして中国政府はこれまで冷遇してきたスーチーさんだが、彼女の政党NLDの代
表2グループを中国に招待して、近々スーチー党首も中国を訪問することになっ
ている。スーチー党首がテストされるわけである。

もう一度、繰り返すが中国人民解放軍がミャンマーの片田舎Wa民族地区への武器
供与はチャチな武器ではない。アフガンの兵士がジェット戦闘機を地上から打ち
落とす地対空ミサイルの映像を見かけたことがあるだろう。空対空のミサイルを
備えたヘリや頑丈に作られた装甲車などの代物である。これらは当然、ミャンマー
国軍への、そして米軍への戦争抑止力となる恐喝材料である。


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14:ミャンマーのパワーバランス

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ミャンマーの争奪戦は中国がインド洋・ベンガル湾に進出する橋頭堡となり、米
国にとっては経済的にも軍事的に将来の脅威となるスーパーパワーを阻止する最
前線となる。だから、米国はミャンマーを21世紀戦略の最重要拠点に格上げした。


別の見方をすると、ミャンマーは米中という2大スーパーパワー国のど真ん中で
ジョーカーを手に入れたと言えないだろうか。

同じ視点に立つと、インドと中国のど真ん中でも、別のカードを手にしたとも言
える。

そしてアセアンの仲間たち9カ国のほとんどは、ミャンマーと中国があまりにも
親密になることを恐れ、そして北朝鮮との不健全な関係を危惧していたはずだ。
ミャンマーはこのポーカーゲームでもエースを手にしている。

そして軍事政権時代に作成した憲法をほとんど修正せずにここまで到達したミャ
ンマーをEUや日本を含めた世界中の国々が嬉々として応援・支援してくれる。

したたかなミャンマー国軍であり、したたかなテインセイン大統領である。

今回はっきり分かったことは、テインセイン大統領が支援・協力を求めているの
ではなく、米国大統領が、そして中国国家主席がテインセイン大統領を自分の陣
営に引き込もうと必死になっていることである。

三国志の諸葛孔明に例えたら褒めすぎだろうか。

中国の脅しにもビクともせず繰り返し中国を訪問する。米国の口やかましいマス
コミも平然と受け流す。どうしてそういう芸当が出来るのか、ミャンマーの今を
分析すればその辺りが見えてくる。

週刊メルマガ<ミャンマーで今、何が?>一周年特集号はまたもや完結しなかっ
た。次回はその辺りの秘密をさらに掘り下げてみたい。





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