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<ミャンマーで今、何が?> Vol.52
2013.7.10

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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・AAA:(政治)
  A1:テインセイン大統領の演説内容
  A2:上院議長が軍人議員に警告を発す

・BBB:(経済)
 B1:中国人がミャンマーのヒスイ市場を意図的に操作
 B2:“中国元”の経済圏

・CCC:(生活一般)
 C1:タイのマハチャクリ王女がミャンマーを訪問
 C2:米国は北朝鮮との武器取引で将軍をブラックリストに指定

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AAA:(政治)

A1:テインセイン大統領の演説内容


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先週号の予告どおりテインセイン大統領はミャンマー全国民にラジオ演説を行った。そのポイントは、タイム・マガジン誌(7月1日号)がミャンマー特集を行っているが、その内容は多くのミャンマー人と反対の行動を取った数人の個人を描写することで仏教に関する間違った観念を植え付けたとするものである。そのために同日付同誌はミャンマーでは発禁処分となった。そして大統領はミャンマー国民と世界のメディアに対して、"もっと建設的であれ"と忠告した。

同誌の表紙は、扇動的な反ムスレム仏教徒として知られるミャンマーのアシン・ウィラトゥ僧侶の写真を掲載し、その上に"仏教徒テロの顔"のヘッドラインが大きく横切る。 この表紙カバーは、実際の多くの記事内容よりも、路上の販売所では多くの通行人の目を引き、仏教徒が多数を占めるミャンマーではインターネット上で何千人という怒りの声がタイム誌とこの記事を書いたレポーターに投げかけられた。 ミャンマー同様に仏教徒が多数を占めるスリランカでも7月1日に同タイム誌は発行禁止となった。 

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A2:上院議長が軍人議員に警告を発す

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上院議長で軍事政権党USDPのメンバーでもあるキンアウンミエン氏が議会の25%を占める軍人議員団に異例の警告を発した。 議会に提出される議案に同意するなら"イエス"、反対するなら"ノー"の投票を行う義務が各議員には課されている。集団で棄権することは許されないと同議長は議員たちを叱責した。 

この件では間接的に何度も警告を発している。もし諸君がグループで行動し、何も発言しないなら、議場からの退場を命令する権限を上院議長は有している。だから、今後は発言を求められたら、諸君は発言せねばならない。 2008年憲法によれば、軍人議員たちは国軍最高司令官によって指名されることになっており、それは2011年に誕生した現在の新政府にも引き継がれている。

ある同僚議員は7月4日に、軍人議員たちは活気のある軍事演習からはあまりにもかけ離れた議会内での議事進行に興味を失っていると語った。その理由は、最初の起草案から最後の法制化に至るまでに何度も何度も投票を要求され、正直うんざりしているとしている。 彼らは戦う闘士で議事進行には興味を抱いていない。

戦場に復帰したいというのが本心である。議会には興味ないが、議会内の議事進行で見聞きしたものはすべて国軍最高司令官に報告する義務がある。唯一彼らが議会内で積極的に発言したのは武装少数民族との平和交渉問題の時だけであった。多分、国軍最高司令官よりこの問題の討議が事前承認されていたのであろう。このときほど彼らが迅速に反応したことはかってなかった。

もし軍人議員が定期的に出席すれば、国のためになるはずだ。彼らほど広範囲にわたる諸問題に通暁している人たちはそういないと同議員は語った。

彼らが討議に参加すれば、国会はこれまで以上に活発になるはずだ。(ここで欧米のマスコミが見落としている大事な点を蛇足として付け加えれば、軍人議員の大半は中佐クラス以上で、国軍士官学校の卒業生であり、ミャンマーでは超エリートである。士官学校では国際上の問題を含めて幅広い知識を一流の教師から学んでいる。

一方、ヤンゴン大学卒業の肩書きを持っているとまるで東京大学を卒業したような錯覚をする日本人は多いが、2011年に改革が始まる前のミャンマーの教育はかなりレベルが落ちるものであった。だから、軍人が好き嫌いは別として優秀な人材はという観点からすれば、軍人議員を野卑な連中だと色眼鏡で見ることは逆に危険だといえるだろう。その中で、テインセイン大統領のような傑物が輩出されるのである)

しかし、軍人議員が討論に参加するには組織上、上官の許可を必要とする。 先月、NLDを率いるスーチー党首は2008年制定の憲法を修正するために議会内で国軍を代表する議員たちと作業を共同で行うと約束した。 *

 

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BBB:(経済)

B1:中国人がミャンマーのヒスイ市場を意図的に操作

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先月ネイピードで第50回宝石展覧会が開催されたが、その閉幕後にミャンマーの宝石商から中国人のバイヤーに対する非難の声が上がっている。 

今回は272組の宝石が入札方式で、107組の宝石が競売方式で、国内と海外のバイヤーにすべて売却された。 外国の宝石商にはEU通貨50,000ユーロ、国内宝石商には20,000ユーロの預託金が要求される。そして国内外の宝石商ともに10,000ユーロを前金としてネイピードのミャンマー経済銀行に預託せねばならない。 

中国人宝石商は会場では市場価格よりもはるかに高い金額を提示した。だが、彼らは落札した宝石を受け取りに現れなかった。当然、預託金は没収された。ミャンマー人の宝石商によれば、宝石・ヒスイ市場を混乱に陥れる目的があったとみている。

過去の展覧会では中国人宝石商はほんのわずかの金で宝石やヒスイを買い漁った。それを欧米の宝石商に再販売することで彼らは何倍もの利益を享受していたが、当時の政治状況下では容認せざるを得なかったと、あるミャンマー人宝石商は語っている。しかし、今は透明化の時代だ。中国人は汚い手口を使うべきではない。今回の展覧会では彼らは西洋人宝石商の10倍の購入価格を提示し、落札した宝石を受け取りに姿を見せなかった。西洋人の提示した価格で宝石が彼らの手に渡ることを中国人が嫌ったからだと別のミャンマー人宝石商は語っている。 

第49回展覧会までは中国だけが市場を牛耳っていた。今回からは世界の宝石商が大勢やってきた。そして中国は自分たちの市場を失うことを非常に恐れていた。そこでグループを形成し宝石展覧会をかく乱する目的で組織的に動いたのだとヒスイの売人は語っている。

落札されたあとで、宝石を引き取りに来なかったのはたったの2社であった。しかし、その宝石は200組に及んだ。最高価格で落札して引き取らないとは地元のヒスイ商にとり大きな打撃となった。 

宝石商によれば、これらの宝石とヒスイは最終的には雲南省のシュエリ市場を通じて中国国内に捌かれていく。 

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B2:"中国元"の経済圏

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ミャンマーの話題から話はそれるが、影響度からすると密接に関係があるので、少し無駄話にお付き合い願いたい。 

ミャンマーの国境の町ムセ経由で中国雲南省の小さなルイリ市に何千人というミャンマーの宝石商人が毎日出たり入ったりする。宝石を売却して得た中国元はそのままルイリ市に銀行預金し、また持ち込んだミャンマー通貨も中国元にルイリ市で換金できる。雲南省では省都の昆明市に続いてこのルイリ市は第2番目のオフショア中国元取引地区に指定された。 

両市ともに、中国元が東南アジア9カ国の通貨に直接換金でき、他国のようにいったん米ドルに換算する必要はない。ルイリ市の大半を構成する小規模な貿易商は東南アジアの商人とは中国元での直接取引を歓迎し、米ドルを介在させない直接換金は多額の為替コストを節約することにもなる。それだけではなく、中国の他省で徴収される17%の取引税がここでは免税となっている。これは国境貿易で中国元の使用を促進するために雲南省政府が2004年6月から採用している政策で、地元の小規模な貿易商には大きな利点となっている。

雲南省はミャンマー、ラオス、ベトナムと4,000kmにわたって国境を接し、中国から東南アジア、南アジアへ開けた表玄関となっている。

中国商務省によれば、雲南省の国境貿易の90%以上が中国元で支払われており、中国全土では中国元での取引は全体の10%でしかない。2011年には、中国中央政府は2020年までには東南アジアにおける中国元のフィナンシャル・センターとすべく雲南省に対して権限委譲した。

この計画は中国元を中心とした貿易決済を目指し、中国元国際化の実験場とするものである。 雲南省の中国元決済による国境貿易は2012年には461億元(米貨75億ドル)に上り、そのうち175億元は資本取引で、年率280%の伸びとなっている。東南アジアは中国元の国際化にとって地の利を生かした跳躍台となっており、すでに中国元経済圏は出来上がっており、米ドルの衰退に対して、中国元の覇権はますます強まっている。同地域10カ国のうち、7カ国においては、中国元の使用は米貨を40%上回っている。 

インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、韓国、台湾では各国通貨は米ドルよりも中国元により接近している。逆に米ドルが支配的な地区は香港、ベトナム、モンゴルのみである。 これは中国日報の英語版アジア週報7月5-11日号に掲載されたもので、興味のある方は直接同誌を参照願いたい。 

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CCC:(生活一般)

C1:タイのマハチャクリ王女がミャンマーを訪問

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隣国タイの王女が7月2日ミャンマーを訪問し、国立博物館、ヤンゴン中心部にある高等学校を見学した。興味深いのがミャンマーの石油王といわれるモーミエン氏の自宅で昼食をともにし、その事業の秘密を語り合ったということである。王女がこの石油王と知り合ったのは2010年に同氏の図書館を訪ねたときが最初で、このモーミエン氏は元老として君臨したネーウィン将軍の個人パイロットとして将軍の庇護を受け、石油開発の利権を築いていったものとみなされている。かといって詳細な事情は藪の中である。 

昼食の後、王女はヤンゴン大学外国語学部でタイ語科の生徒たちと団欒し、アンチ麻薬博物館、タイ大使館、シュエダゴンパゴダを訪ね、今回の日帰り訪問を終了した。 

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C2:米国は北朝鮮との武器取引で将軍をブラックリストに指定

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テインセイン大統領の歴史的なワシントン訪問で米緬間は一段と親密な関係にアップグレードしたとみなされた矢先、米財務省は国連安全保障理事会の禁輸決議に違反したとして将軍の一人であるテインテイ中将を2012年7月の経済制裁に継続して指定すると発表した。

米財務省によれば、同将軍はミャンマー防衛産業一機関の総理事だが、ミャンマー政府の役人ではないとしており、今回のブラックリスト指定はテインテイ中将個人を対象としたもので改革に努力しているミャンマー政府に対するものではないと強調した。

そして7月2日のこの制裁声明では、テインテイ中将と取引するいかなるアメリカ人も米国内に所有する資産を凍結処分にすると発表した。ミャンマー政府は北朝鮮からの武器の買い付けを禁止する国連安全保障理事会の決議を支持していると昨年の11月明言しており、テインセイン大統領も平壌から核兵器技術を得るためのいかなる秘密取引も行っていないと否定している。

だが、57歳になるこの将軍は今年はじめまでミャンマー政府の国境問題を担当する現役の大臣であった。

本件に関する日本での報道はチェックしていないが、このニュースの裏を読み取ってほしい。米国政府はミャンマー政府に対して完全にダブル・スタンダードを適用しており、米財務省の今回の発表および言い訳は両国間ですでに手打ち式を済ませた下手な芝居に過ぎない。

逆に読むとミャンマー政府の、いやもっと言うとテインセイン大統領のしたたかな外交政策が見えてこないだろうか。このあたりは米国と中国の中間に存在する目に見えない熾烈な戦場で、采配を振るうしたたかなテインセイン大統領が浮かび上がってくる。賢明なメルマガ読者はいかに解釈しますか。





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