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<ミャンマーで今、何が?> Vol.54
2013.7.24

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar

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 ・スーチー姉御が弟分のシュエマンに果し状

・AAA:(政治)
  A1:スーチー姉御が弟分のシュエマンに果し状
  A2:スーチー議員を取り巻く阻害要因
  A3:シュエマン議長は本気で協力するか?

・BBB:(経済)
B1:ミャンマー通貨が危機に?

・CCC:(生活一般)
C1:ヤンゴンの大通りですべての車がストップした

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AAA:(政治)

A1:スーチー姉御が弟分のシュエマンに果し状

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野党NLDのスーチー党首は7月18日、シュエマン下院議長に対してその政治的な影響力を利用して現行憲法を改正するよう要求した。

「議長殿、次回の選挙で私と互角に戦う勇気をお持ちなら、私が大統領になれるよう現行憲法を改正するよう力をお貸しいただけませんか?」

これは首都ネイピード国会内での記者会見でシュエマン議長(1947年生まれ)を横にしてスーチー党首(1945年生まれ)が語った言葉である。

「もしできなければ、あなたは正しい行いをしていることにはなりませんよ」と彼女が続けた。その途端そこに居合わせた人たちから大きな拍手が沸き起こった。

下院議長であると同時に与党USDP党首であるシュエマンと野党NLD党首スーチーの両名は2015年大統領選への出馬を公に表明している。

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A2:スーチー議員を取り巻く阻害要因

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軍事政権時代の2008年に制定された現行憲法は亡夫と二人の息子が外国籍であるとしてスーチーの大統領就任を阻止している。そしてこの憲法条項はあからさまにスーチー個人をターゲットにしていると西洋のメディアは非難しており、テインセイン大統領の先週の英国訪問でも、英国のデビッド・キャメロン首相は2015年の大統領選挙ではスーチー議員が出馬できるよう配慮してほしいと圧力をかけた。

与党USDPと国軍で大半を占める議員たちにシュエマン議長が率先して憲法改正のロビー活動を行って初めてフェアであるとスーチー議員は語った。しかし、結果として自由で公正な選挙を決めるのは国民であると同議員は付け加えた。


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A3:シュエマン議長は本気で協力するか?

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2011年3月に就任したテインセイン大統領にも、大統領職をもう一期継続することは憲法上可能である。今回の英国・フランス訪問でも何度か質問を受けたが、テインセイン大統領はその可能性は否定せず、それは国民が決めることだと明言を避けた。もし、テインセイン大統領が今期で引退すれば、2015年はシュエマンとスーチーの一騎打ちだとする見方が大半である。

国軍のランクでは第3位であったシュエマンは先月、議会は近々憲法の見直しを行う委員会を設定し、スーチー議員の大統領への道が妥当であると議員たちが判断するなら、議会はその方向で進むだろうと述べた。

さらにスーチー議員は国民の信任を得ないで任命される25%軍人枠の条項も撤廃すべきだと求め、現憲法は少数民族地域での紛争に際して、中央政府の厳重な管理の下に軍隊にすべての権限を与えていることに異議を唱え、これの排除も要求している。

憲法改正には全議員の最低75%の賛成が必要だが、軍人議員とシュエマンが率いるUSDP党議員を合計すると議席の80%以上となる。

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BBB:(経済)

B1:ミャンマー通貨が危機に?

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ミャンマー通貨のチャットがこの数ヶ月間で劇的に落ち込み、多くの人をまごつかせている。ほんの少し前には強いチャットによって輸出業者は苦境に陥っていた。輸入業者にはその逆のことが言える。その両者を満足させることは容易な仕事ではない。為替の大幅な変動は脆弱なミャンマー経済にとって成長の阻害要因となる。

チャットが落ち込んだ要因は何なのか? 今後チャットはどうなるのか? 政府に為替政策はあるのか?これらの疑問には誰も答えていない。

2012年4月にミャンマー通貨はフロート制に移行した。チャットが大幅に落ち込んだ原因を建設ブームで輸入が増加したためとする人もいれば、金価格の下落に結びつける人もいる。ミャンマー人の多くが昔からやってきたことだが、通貨投機に走る人が続出し、米ドルの買いだめが始まったとする専門家もいる。多分、原因はその幾つか、あるは全部が絡み合ってチャットの大幅下落が発生したのだろう。しかし、ここで経済政策の面からこの問題を検討してみたい。

ミャンマー通貨が固定制度に戻らないとすれば、換算レートは基本的に不動産価格と同様に需要と供給で決定される。チャット需要はチャット表示の物品を買い付けるために主に輸出で必要とされる。米ドル需要は輸入で必要とされる。だから輸入増は短期的にチャット安となる。IMF統計によれば、ミャンマーの貿易収支は1980年―2010年の間はバランスが取れていた。しかし2011年から2012年にかけて輸出は伸びたが、輸入の勢いはもっと急激であった。これによって現在の貿易赤字はGDPの4.2-4.5%となり、2013-14年にはそれぞれ5.1%、5.8%になると予測されている。

経済理論では為替レートは自動調整されることになっている。チャット安は輸出を促進し、輸入が停滞する。輸出拍車がかかればチャット需要が増し、結果的にはチャット安となる。一例をあげると、米国などの場合には巨額の貿易赤字が慢性的に続いても、海外からの投資資金が流入する限り財政資金は賄える。しかし、ミャンマーには金融市場は今のところ存在しない。そこで海外からの投資資金の流入は主に不動産に向かい、ミャンマーの貿易赤字をはるかに越える金額となっている。IMF統計によれば、貿易赤字の拡大をはるかに上回る外貨準備高の伸びがミャンマーには見られるとしている。海外の投資家がこの国に興味を示す限り予測可能な将来のミャンマー経済は生存可能といえる。中央銀行は十分な外貨準備高を所有し、為替市場への介入も可能となる。

もうひとつの問題、国家予算の赤字を見てみよう。これへの対応は政府が借金をするか、最悪の場合はチャット紙幣の増刷となる。紙幣増刷はインフレを引き起こし、通貨価値の下落が生じる。アジア開発銀行によれば、2012年のミャンマーの国家予算の赤字はGDPの5.4%となっている。借金の一形態である国債の発行はミャンマーには存在しない。そこで巨額の国家予算赤字はチャットの価値に大きく依存することになる。ここで中央銀行の政策が重要となってくるが、今のところその機能はない。近隣兄弟国と比べると、アジア開発銀行のデータでは、カンボジアの2912年財政赤字はGDPの5.2%、ラオスが7.9%、ベトナムが6.9%となっている。

さらにもうひとつの問題、ゴールド価格の下落を見てみよう。経済が不安定な時期にはゴールドはインフレヘッジとなり、投資の一方法となる。銀行制度が脆弱で、他に投資先がほとんどない国ではゴールドは安全な蓄財方法だ。ミャンマーでは現金を預金する習慣はなく土地の価格が急増した。ゴールド価格の下落で、ゴールドは魅力的な投資対象となった。国際的なゴールド価格は米ドルで表示され、昨年は20%以上の下落であった。大規模な投機的ゴールド買いが始まり米ドルへの国内需要が高まった。そしてその騒ぎが一段落すると、ミャンマーの通貨不足はさらに悪化していた。

世界最大のゴールド輸入国であるインドもこの問題に直面した。貿易赤字の拡大で、インドルピーは過去2ヶ月間で約10%の下落となり、ミャンマーチャットも同様の下落となった。インドはゴールドの輸入税を引き上げることでこれに対応した。ゴールド価格の動きを予測することは容易ではないが、この傾向が今後も続くとは思えない。貯蓄率とゴールド価格がさらに下落するとすれば、ミャンマーチャットへのプレッシャーはさらに強まるだろう。インフレを低く抑えれば一つの防衛策となりうる。しかし、ゴールド価格は上下しやすく、現行の中央銀行の管理システムではまったく手に負えない。

最近のIMFレポートでは、2013-14会計年度でのミャンマーのインフレ率は5.5%と見ている。ミャンマーの歴史から見ると、この数字は低い水準である。これからミャンマーの財政改革が強化され、金融機能と金融市場が発展すれば、投資対象はゴールドから他にシフトしていくだろう。

もうひとつ見逃してならないのは、中国経済の低速化とこの数年間における中国からのミャンマーへの投資が激減していることである。ミャンマーへの中国投資は過去2年間の$40億と$80億から2012年にはたったのUS$4億に落ち込んだと伝えられている。この落ち込みはミャンマーの資金手当てにマイナスの影響を及ぼす。この落ち込みは長期的には他国からの資金流入でカバーされるが、短期的には不安材料となる。

中国の経済減速もミャンマーの輸出にはマイナスで、ミャンマー通貨にとっても好ましいことではない。しかし、ミャンマーの対中国貿易収支は2011年が約$35億の巨額赤字となっているのでその影響は最小限に抑えられると思われる。ミャンマーの最大の輸出相手国はタイで39%を占め、第2位の中国は約20%となっている。ミャンマーの輸入に占める中国製品は39%となっている。したがって、チャット安と中国元の値上がりはミャンマーにとって望ましいこととなる。ドル高はどうなるのだろう?

これだけでチャット安を説明するのは無理である。主要6ヶ国通貨バスケットに対する米ドル指標はこの一年間ではほとんど変化がなかった。そしてミャンマーの近隣諸国に対する米ドルの価値も値上がりしていない。

最後にチャット通貨は危機に直面しているかどうかを見てみよう。ミャンマーの為替市場はオープンしたばかりで非常に若く、変動に対する免疫は出来上がっていない。そして貿易数量も非常に少ない。その結果、大量の商いを行えば、価格は大きく変動する。そこでこれらの変動に対する投機行為をやめさせることが重要で、通貨の安定を保証するシステム作りが中央銀行の仕事となってくる。投機を制御しながら予防措置を施す健全な政策が求められる。これまでの悪しき慣習を表に出し、通貨の防御策を講じることである。沈黙は常にゴールドとは言えない。直近の歴史は教訓を与えてくれた。過剰な投資は危険で投資家たちの全財産を失うことになると。

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CCC:(生活一般)

C1:ヤンゴンの大通りですべての車がストップした

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週刊メルマガのネタを仕入れるために毎朝下町のネットカフェに行くが、そこは赤レンガの荘厳な建物が目を引く内閣府の広大な敷地の対面にある。外が異常にうるさいので表に出ると、大勢の人だかりで、西洋人の顔も何人か見かける。マハバンドーラ大通りを走行中の全車両が停止し、クラクションを鳴らし続けている。警官も何人か出ているが、交通整理をしようともしない。取材と思われるカメラマンたちがこの情景と後ろのビルを写している。7月19日正確に午前10時37分のことであった。

66年前のこの日この時間、この赤レンガの建物の一室で閣議開催中のアウンサン将軍他8名の閣僚たちが非情の凶弾に倒れた殉難の日である。大英帝国植民地からの独立を目前にして散っていったビルマ建国の父・アウンサン将軍以下の殉難者たちに敬意を表するために、この日は国民の休日として全国で式典が厳かに行われる。マハバンドーラの嘆き悲しむようなクラクションもアウンサン将軍以下に敬意を表する儀式だったのである。

シュエダゴンパゴダの北口ゲート近くにある殉難者廟にはアウンサン将軍以下8名の殉難者が今日のミャンマーの繁栄を知らずに眠っている。この廟は献花に訪れた韓国の全斗煥大統領一行を狙った北朝鮮による1983年10月9日のラングーン爆弾テロ事件の現場でもある。国営テレビではこの殉難者廟での荘厳な儀式を昨年からライブ中継するようになった。

これも大きな変革のひとつと言えよう。アウンサン将軍は建国の父であると同時にビルマ国軍の生みの親である。したがって、軍事政権にとっても国父としてのアウンサン将軍に最大の敬意を払うのは当然のことである。だが、問題を複雑にしているのが、旧軍事政権にとって恨み骨髄のアウンサンスーチーがこの国父の実の娘という事実である。ビルマの歴史を語る上でもアウンサン将軍にあまりにも脚光を当てすぎると反体制派のスーチーを利するというのが旧軍事政権の理屈であった。その結果、アウンサン将軍の取り扱いが卑屈に歪められ、ジャーナルでもアウンサン将軍の写真は目立たないところに小さく掲載して、やっと当局の許可が下りた。だから本日の儀式のライブ中継も大きな変革なのである。

8時からの式典には政府を代表してDr.サイモクカム副大統領がシャン州伝統の民族衣装で出席し、殉難者たちの墓碑に大きな花輪を捧げた。連邦政府、地方政府、国防軍の高官たちが続々と続く、そして半旗に掲げられたミャンマー国旗に儀仗兵が敬礼し、出席者全員が2分間の黙祷を厳かに行った。この後で、殉難者たちの遺族がそれぞれに大きな花輪を献花する。当然のことながら、厳重な警戒の中でそのトップを飾るのはアウンサンスーチーである。旧軍事政権がアウンサン将軍のイメージとスーチーを引き裂こうとすればするほど、国民の関心はスーチーに注目する。旧軍事政権としてはその反対効果によっぽど地団駄を踏んだことであろう。

建国の父、偉大な将軍と言われるが、アウンサンが凶弾に倒れたのは32歳。1945年生まれのその時のスーチーはわずかに2歳。そして今のスーチーは父親の2倍の年齢をはるかに超えている。経済発展国、特に日本人の高齢化、長寿化と重ね合わすと、今日も元気でただ長生きするだけで人生は良いのかと、この32歳は自己反省も含めて考えさせられる年齢である。

そして、この式典には国際NGO組織の代表団、大使館など外交使節団、そして一般の国民も参加した。拡声器からは「凶弾に倒れた指導者たちに敬礼!」と低い声が語りかける。そして「敬礼がお済みの方は次の方に場所をお譲りください」と続く。敬意を表しにきた一般の人たちの行列は延々と続く。政府や海外のお偉いさんたちよりも一般の人たちこそ、今の変化を敏感に感じ取っているのかもしれない。

午後3時には雲がだんだんと暗くなり雨が降り出した。一人の若い男が雨に打たれながら廟の前で静かに黙祷を捧げている。

副大統領は何十年振りかでドー・スーを含む殉難者の遺族たちに会って言葉を交わした。政府がこの様な形で式典を行ってくれたことに、特に副大領の臨席を得たことに感謝しているとドー・スーは国営MRTVに語った。



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