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<ミャンマーで今、何が?> Vol.59
2013.8.28

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■2015年の大統領選を展望

・AAA:(政治)
  A1:2015年の大統領選を展望

・BBB:(経済)
  B1:コーヒー豆生産農家に行政指導

・CCC:(生活一般)
  C1:著名な将軍が土地をめぐる紛争で農民に銃を突きつける

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AAA:(政治)

A1:議員連盟が大統領を非難

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テインセイン大統領は立法府の議事手続きに介入し、憲法裁判所にその影響力を及ぼそうとしていると、これまで歩調を同じくしてきた議員連盟が珍しく大統領に噛み付いた。これは権力の乱用を防ぎ、国民の政治的自由を保障するために、国家権力を立法・司法・行政の相互に独立する3機関に委ねるいわゆる三権分立に違反する行為だとして大統領を公の場で非難したことになる。

2013年地方・連邦議会法案およびアンチ腐敗法案に対して大統領は文言の修正を公開文書という形で要求したが、議会はそのほぼすべてを拒否し、7月末にその法案を通過させた。議員連盟では大統領の声明文を精査し、政府は立法と司法の行使に影響力を及ぼそうとしていると結論付け、同連盟の委員長は8月22日に議会でこれを説明した。そしてこれらの法案は議会を通過し、あとは憲法裁判所で合憲か否かを判定することになっている。

そして、大統領の声明文は憲法に違反し、不適切であると釘を刺し、議会は常に国民の利益を最優先に考慮し、それが憲法上許されるかどうかを判断した上で法案の採決を図っていると語った。

大統領をはじめとして、これら議会筋の大物も、2011年の新政府発足前は制服組で筋金入りの軍人・将軍であった。しかし、世の中は変わり、国民の利益を最優先させるなど、今は“民主化”で草木もなびく時代になった。議会の未熟さ、大統領・大統領府・議会間でのぎごち無さは目に付くものの、着実にミャンマーは民主化に向かって一歩一歩前進しているさまをこのニュースは示している。



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BBB:(経済)

B1:不動産市場沈静化で政府が動く

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過熱化した不動産市場を沈静化させるために取引税の追加を計画中であると政府高官は語った。業界からは取引税削減の圧力がかかっているが、取引税は37%以下にはならないと言明した。当局内部では特にヤンゴン地区の土地取引税を検討しているが、これはミャンマー全土にも適用していく予定で、まもなく発表できるだろうと語った。取引税の増率は不動産価格を沈静化させ、国庫収入の増額も期待できるとしている。財務省の発表では6−7月の2ヶ月間で土地取引税は261億チャットの国庫収入とのことである。



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CCC:(生活一般)

C1:各地でモンスーン豪雨が本格的に

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ヤンゴン市内でも毎日バケツをひっくり返したような豪雨が時間差攻撃で次から次ぎに襲ってくる。下町のヤンゴン川と並行して走るストランド大通りでは、特に満潮の時間帯と重なると下水溝が逆流して一帯が洪水となる。ありふれた光景が繰り返される。

これをミャンマー全土で見ると、デルタ地帯のイラワジ地区はもちろん、ヤンゴン地区、バゴー地区、タニンタリー地区、そしてカレン州、モン州、ラカイン州が主に豪雨の影響を受ける。そして今年の豪雨はやはり異常気象なのか、大河、中小河川で危険水位をはるかに超える水準に達し、土手・堤の決壊、家屋倒壊、流出、家屋浸水などの被害が各地で発生している。そして今月の国営日刊英字新聞をみると、ミャンマー各地に豪雨注意報、河川決壊注意報、異常水位警報が囲み記事で中央気象台から連日発令され、保健衛生省からは病気発生に対する予防注意が発令されているが、トイレの下水も飲み込む洪水にどう対処すればよいのだと憤りたくなる。

日本だと小中高校などの頑丈な講堂・体育館が頼りになり、トイレも順番に使用でき、飲料水や、毛布の支給など期待できるし、何よりも電気は煌々と24時間確保されている。それらがまったく無いミャンマーの地方都市・村落などでは避難といっても、着の身着のままで、わずかなシェルターを求めて高台を目指す。だが、上り坂は鉄砲水の粘土道で、家族の人数を確認しながらの一歩一歩はキツイ登りである。そして夜になれば、もともと乏しい電気がなく、辺り一帯は真っ暗闇。そして時には垂れ下がった電線で感電死という泣きっ面に蜂のニュースも飛び込んでくる。

断続的な豪雨で熱帯地方とはいえ雨に濡れた身体はガタガタ震え、乳飲み子を抱えた母親は朝までまんじりともできない。それに排泄の問題もあり、衛生状態はさらに悪化する。どうやって病気予防に注意すればよいのだろう。そして辺りは水がいっぱいというのに飲み水が無い。太平洋のど真ん中で飲み水が底をついた船乗りと一緒だ。毎年同じことが繰り返される。ここまではモンスーン雨季の陸地での話。

ミャンマーの西側はベンガル湾に面した長い長い海岸線である。北のラカイン州から南のタイ国境まで1,930kmもある。海上のモンスーン時期は大荒れに荒れる。さすがの漁師たちも三角波を恐れてこの時期、漁船は陸上にしっかりと固定されたままだ。せいぜい波打ち際で、打ち上げられた海草や貝殻を拾って食卓の具とする。

今話題になっているロヒンジャーもこの時期の船出は差し控える。バングラデッシュやラカイン州を出発点とするロヒンジャーは冷遇されるミャンマー本国をスキップして隣国のタイからさらにその南のマレーシア・インドネシアを目指す。この両国ならば、同じイスラム教の同胞として表面上は温かく迎えてくれるからだ。だが途中のミャンマーやタイの海軍は必死の命乞いを無視して難民ボートが本土に近寄ると警告を鳴らし、沖に追い返すのが国の政策となっている。

6・7・8・9月のモンスーン時期は冬場の日本海、あるいは佐渡の荒波を想像してほしい。だから、このシーズンになるとロヒンジャーの難民ボートは営業をピタリと止めてしまう。だが、時には山椒大夫のような悪徳ブローカーがボロボロの漁船を仕立てて、無知な難民たちを立錐の余地も無いほど詰め込んで船出させる。今の時期だと、船賃はシーズンの半額だよの謳い文句である。そしてカネを握らせ、船頭にたっぷりと言い含めて、恐る恐る船出させる。海岸線ではわりに静かであった海上も沖合いでは佐渡の荒海である。乗客全員が手持ちの容器で船内の海水を必死に掻い出す。当然ながらボロ舟は沖合いに出るか出ないかで沈没する。無知な乗客は大半が老人か乳飲み子を抱いた母親で、船頭を除いて水泳の達人は一人もいない。船頭ですら大金に目がくらむというよりも、残され遺族となるに違いない家族への最大のプレゼントを企図してこの仕事を引き受けたのかもしれない。水泳の達人ですら勝率は5割どころか、1割も難しいだろう。このように絶望的に悲しいニュースがこの時期にはNLMにも時折掲載される。

雨音を聞きながらホテルで優雅に読書を楽しむ人たちには縁の無い話だが、この雨季はミャンマー人口の70%といわれるお百姓さんたちにとってはもっとも大切な時期でもある。ミャンマー全土で、お役所が、学校が、軍人のお偉いさんたちの家族までもが、参加していろいろな樹木の植林行事が行われる。それがこの4ヶ月間に行われる。ミャンマー人の手抜きスタイルにぴったりなのだろう。穴を掘って苗を差し込むだけで、あとの面倒は何ひとつ無い。この国の恵まれた気候では親が無くても子は育つのである。ほったらかしたままで樹木は実によく成長する。

ミャンマー中央の乾燥地帯では反対に雨が降らず旱魃の被害が出ている。やはり異常気象なのだろうか。この時期、農村地帯で綱引きゲームを見たら、それは伝統的なミャンマーでの雨乞い行事である。今でも各地で行われている。ミャンマーという国土の広大さを思い知らされる。

モンスーン雨季は過度でなければ自然の恵みである。それにもかかわらず、促成栽培には化学肥料が効果的と中国・タイの製品が溢れ、殺虫剤が大量に使用される。昨年は効果的だった殺虫剤が今年は効かない。昆虫自身の免疫システムが学習効果を発揮している証拠だと専門家は言う。メーカーはさらに強力な殺虫剤を開発する。イタチごっこのあり地獄に落ち込むとも知らない無知なお百姓さんたちがその新製品に飛びつく。もちろんコストに加算される。ミャンマーはもともと自然の恵みに恵まれ、多くを望まなければ十分な収穫が得られるとナチュラリストは言う。

沿岸地帯のマングローブ林は伐採され外貨獲得に手っ取り早いエビの養殖池に早代わりする。効率性を追求する経済学は養殖池いっぱいに稚魚を詰め込み最大の利益を目指す。詰め込まれた魚はストレス状態で間違いなく病気を起こす。養殖池では病気に強く、促成効果の高い合成飼料が大量にばら撒かれる。そして数年すると養殖池の地味は衰える。すると養殖池は水抜きし石灰をまき数年間放置しないと再利用できなくなるそうだ。その結果、借金だけが養殖業者に残される。これはベトナム・インドだけでなく、世界中の養殖業者が繰り返してきた。

言い古された言葉だが、ミャンマーはブータン型を目指すのか、バンコク型を目指すのか?グローバライゼイション戦略を着々と進める大国の理屈をミャンマーはそのまま鵜呑みにしてよいのだろうか?もういちど経済発展のあり方を根本から考え直すのに雨の音は自然のメッセージを聴き取る最適の環境ではないのだろうか。特に深夜であれば思索はさらに深まる。

ビルマ大統領の強い要請で1955年1月ビルマの経済顧問に就任したE・F・シューマッハーは、3ヶ月間の滞在期間中、仏教に傾倒し瞑想を続けた。ケインズ卿の衣鉢を継ぐひとりとみなされたこともあるが、それとも異なる、もちろん「ゆたかな社会」のガルブレイスとも異なる、そしてユダヤ教、キリスト教、イスラム教のいずれでもない、その思想は仏教経済学として結実したのが1973年に出版された「スモール・イズ・ビューティフル」で、一躍世界のベストセラーとなった。窓を叩きつける雨のリズムでも聞きながら、この本をもう一度読み直してみたい。雨安居(うあんご)の季節は、僧侶は寺に閉じ篭り修行する。TPP流行の昨今、根本からもういちど考え直すのにも「スモール・イズ・ビューティフル」はひとつの指針になりえないだろうか。




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