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<ミャンマーで今、何が?> Vol.60
2013.9.4

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■中国の病院船がティラワ深海港に着岸

・AAA:(政治)
  A1:中国の病院船がティラワ深海港に着岸

・BBB:(経済)
  B1:ミャンマー・ビールの所有権が紛争の種に
  B2:国境の町ムセで土地が急騰

・CCC:(生活一般)
  C1:デイクラブが若者で大繁盛
  C2:デンマークの水供給システムをヤンゴンに
  C3:韓国がヤンゴン・ダラー間の友好橋建設の土質検査を施行

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AAA:(政治)

A1:中国の病院船がティラワ深海港に着岸

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8月28日付イラワジ紙のこの記事は普通であれば<生活一般>の範疇であろうが、普通でないので敢えて<政治>面で取り扱いたい。

“平和の箱舟”と名付けられた中国の病院船が8月28日ヤンゴン郊外のティラワ港に着岸し、ヤンゴン在住の中国人、中国大使館関係者はもちろん、何百人というミャンマーの海軍関係者が出迎えた。

港で行われた記者会見には何十人というジャーナリストが出席し、中国海軍東海艦隊副参謀総長の海軍少将は本船を訪れるミャンマーの人たちに中国人医師と看護婦が中国伝統の東洋医学を含めた治療を行い、同時にヤンゴンの病院・クリニック・学校・孤児院に医師と看護婦を派遣して同様の施療を行うと語った。そして、我々の目的はミャンマーの人たちと軍関係者に医療を施し、特に海軍との間に、両国間の友好親善を図りたいと付け加えた。一週間の停泊期間中、ヤンゴンの中国人街にも医師と看護婦を派遣する予定で、病院船では選抜されたミャンマー人と軍関係者に無料で簡単な健康診断から外科手術まで行うとしている。この“平和の箱舟”号はすでに5カ国を訪問し、約18,700名の人たちを診療した。4,000平米のスペースを誇る病院船には300床のベッド、20の集中治療室(ICU)、8つの外科手術室が整備され、一日に40件の手術をこなせるとしている。伝統的な中国医療は来週公開で行われ、施療を希望する人は地域の医療当局に登録するよう中国大使館は広報している。この病院船は6月10日に浙江省舟山を出航しすでにアデン湾、モルジブ、パキスタン、インド、バングラデッシュに寄港した。ミャンマーのあとはインドネシア、カンボジア、ブルネイに寄港し、アセアンの国防大臣拡大会議の人道援助・災害救済訓練に軍事病院船として参加する。そして10月6日に中国の母港に戻るとしている。

現在、ミャンマーには世界各国から競うように援助の手が差し伸べられている。欧米に対抗するように、中国が意図するイメチェン作戦も各方面にわたり、仏歯のレプリカが中国の宗教団から貸し出されミャンマー全土を巡回したり、雑技団・文化交流・中国産品エキスポなど実に手の込んだ行事がメジロ押しである。今回もその一環で、もちろん善意の医療行為をアピールしているが、敵は本能寺でミャンマー海軍とのパイプ構築が狙いである。

日本主導で開発を進めるティラワ深海港に一週間も停泊するということは、北西部ラカイン州で中国が進めるチャオピュー深海港へ間もなく中国海軍を派遣・常備する布石としての諜報活動であることが見え隠れする。

ご承知の通り、“真珠の首飾り”戦略とは中国の海軍指令本部がある海南島三亜港から紅海に面するポートスーダンまでの原油輸送を保障・確保するための中国の重点海外海軍基地を譬えたものである。この重要航路にはマラッカ、ロンボック、ホルムズなどの隘路がある。これらの安全保障を確保するために、ソマリア・パキスタン(グウォーダー港)・モルジブ・スリランカ(ハムバントータ港)・バングラデッシュ(チッタゴン港)に中国は海軍基地建設を着々と進めてきた。

その最終港がミャンマー・ラカイン州のチャオピュー港である。チャオピュー深海港であればマラッカ・ロンボック・南シナ海を通行せずにランドブリッジでアフリカ・中東原油を中国雲南省に直接パイプ輸送ができる。幾らで取引したか知らないが、ミャンマーの軍人たちが経済地政学を計算できたら、その価値は10倍・100倍を吹っかけても中国政府はノーと言えなかっただろう。将来のエネルギー消費・国家経済を考慮すれば、中国にとって死ぬほど手に入れたかったバラ色のシーレーンである。それだけに米国がそしてインドが神経を尖らすところである。

そして今回注目したいのは、この病院船がその“真珠の首飾り”をひとつひとつなぞるように寄港していることである。


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BBB:(経済)

B1:ミャンマー・ビールの所有権が紛争の種に

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日本人の好みに合うのかミャンマー・ビールは当地では非常に好評だ。生が中ジョッキー600チャット、ボトルだとスーパーで約1,200チャット、高級ホテルでは4ドル(4.000チャット)する。

製造元はMyanmar Brewery Ltdで、その資本構成はシンガポール上場の合弁会社Fraser and Neave社が55%、残り45%をMyanma Economic Holdings Ltd(MEHL)が保有している。 

同社の生い立ちをたどると、両社は1995年にヤンゴンのミンガラドン町区にこのMyanmar Brewery Ltdを設立した。

タイの億万長者Charoen Sirivadhanabhakdiが所有するThai Beverage社が昨年22億米ドルでFraser and Neave社の支配権を購入した。Fraser and Neave社はその後、Myanmar Brewery Ltdの株式は保有したまま、タイガービールの親会社であるAsia Pacific Breweries社の持ち株を元のパートナーであるオランダのHeineken社に売却した。

こういう経緯のさなかに、ミャンマー国防軍が経営するMEHLはFraser and Neave社に対して、合弁企業合意書に従いFraser and Neave社が所有する株式をMEHLに売却するよう提訴するという警告書を提出した。これに対してFraser and Neave社は、MEHLはこのような警告書を提出する根拠はなく、選任弁護士をすでに指名しており、このようなクレームには断固抵抗すると述べている。

MEHLは前にもお伝えしたが、ミャンマー国防軍が経営する二大コングロマリットのひとつでこれまでは勝手気ままに強大なパワーを振りかざしてきた。もちろん、米国・EUから経済制裁の重要なターゲットとされ、欧米マスコミの関心も高い。そこで今回の問題はパートナーである国際企業を相手にどのような法廷闘争、あるいは決着をたどるのか、ひとつのモデルケースになると思われるので今後の成り行きを注目したい。


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B2:国境の町ムセで土地が急騰

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シャン州最北部、中国との国境の町ムセで、中国人とミャンマー人が新しい経済地区を買い漁り、土地の価格は現在1エーカーUS$200,000となっている。この経済地区は大きなプロジェクトで、PRC(中華人民共和国)から毎日大勢の中国人が土地の購入に押し寄せている。この価格はヤンゴン郊外の幹線道路に近い一等地とほぼ同じ値段である。今年初め、ムセ地方政府はミャンマーと中国の国境線シュエリ川沿いに中央経済地区288エーカーの建設計画を承認した。そしてミャンマーのGreat Hawkham Public社とNew Star Light社の両社がその開発許可を獲得したと国営新聞NLMが6月に報じた。

New Star Light社は200エーカーの計画予定地に関して1エーカー当たり$25,000の補償金を農夫に支払うと発表した。この金額はヤンゴン郊外のティラワ経済特区の補償金よりも高額だが、中国の投資家はこれよりはるかに高い金額を提示しているとムセの住民は不満を述べている。

New Star Light社は農地1エーカーに対して$25,600を支払いすでにこの計画に着手したが、中国人はまだ徴発されていない土地を$105,000で買上げており、農地をすでに徴発された農夫は不満の色を隠し切れない。だが両社ともに一部は政府が関係しており、住民はこの計画に反対できないと語っている。

ムセ中央経済区の開発計画にはホテル・ヒスイ取引所・スーパーマーケット・娯楽施設・事務所ビルなどが含まれている。その完成予想図では未来型の高層ビル、ショッピングモール、住宅地区などの近代的な町が出来上がることになっている。

ムセは雲南省の国境の町Ruili(瑞麗)の川向こうに面している。そこはミャンマーでは最も重要な国境貿易の交易所で、これからますます増加する国境貿易の導管となるものである。その金額は2011年で27億ドルとなったと新華社通信は伝える。


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CCC:(生活一般)

C1:デイクラブが若者で大繁盛

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薄明かりの中で若者たちが、若いカップルたちが酒を飲み、軽快な音楽でダンスに興じる。ヤンゴン市内のデイクラブ。真昼間だからナイトクラブとは呼ばない。他のアジア諸国、西洋世界とは異なり、ミャンマーの風習では、特に若い女性は、暗くなってからはなかなか外出しにくい。最近、ヤンゴンではこの手のデイクラブが大流行だ。午前10時から午後5時まで毎日営業している。高校生も大学生もケイタイで示し合わせて授業をサボりここに集合する。ダサイ学生服は最新のファッションにトイレで早変り。若者たちはここに来ると自由を感じるという。当局は定期的に巡回して、デイクラブ・ナイトクラブ・マッサージパーラーなどを営業中止に追い込むが、どういうわけがオーナーは事前に情報をキャッチし、当日は自主規制で店は閉まっている。イタチごっこが当局と業者間で繰り広げられる。タムウェー町区ではDJクラブ・パールコンド。チーミンダインではスカイワールド・パイオニアクラブ。ミンガラタウンニュンではクラウド9などが人気のスポットだ。若者たちには一流高校・大学の学生も多い。犯罪へ巻き込まれたり道徳的堕落を恐れる親たちは当局に駆け込み、当局も厳重に取り締まると約束した。なんとも甘酸っぱい日本の原宿・竹下通り時代を思い出す。これも民主化に伴う世相なのだろう。年寄りたちは古代ギリシャの時代から“いまどきの若者たちは”と苦情を呈し、若者たちは若者たちで時代を謳歌する。そしていまどきの若者が、明日は間違いなく年寄りとなる。有為転変は世の習い。


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C2:デンマークの水供給システムをヤンゴンに

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水道供給網のハイテク会社VCS Denmarkがヤンゴンの住民に清潔な飲料水を供給するパイプライン敷設の可能性調査をほぼ完了した。この作業はヤンゴン市開発委員会(YCDC)と共同で進めているものでヤンキン町区水道局に水道管システムを設置する予定にしている。

このデンマークのハイテク技術を採用すれば、不必要な問題は発生せず、何十億ドルの出費を削減できると同社は語っている。同社によれば、ヤンゴンの水道局は50年以上もの老朽化したシステムを使用しており、大量の漏水が発生しメーター計測も信用できないとしている。

同社はこのプロジェクトを実施するために世界銀行・アジア開発銀行からの資金提供やデンマーク政府の協力を求めている。

この調査結果は今年12月までにYCDCに提出される予定で、その報告を待ってYCDCはその実施を最終判断する。

メルマガ第58号でミャンマーを“ミャンマ・フェリックス(幸福なミャンマー)”と呼んだが、その実例が正にこれである。今世界で問題を抱えている国は米国を初めとして国連の加盟国の数だけある。アラブの春で西欧社会から賞賛された中東諸国は、今カオスの中にある。サダムフセイン・オサマビンラデンが始末されてもイラン・アフガンは混沌としている。日本も原発問題を解決できていない。ミャンマーも問題を抱えているが、今世界中が善意の援助を申し出ている。デンマークが世界最高水準の水道技術を提供し、しかも資金の目処まで面倒見てくれようとしている。


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C3:韓国がヤンゴン・ダラー間の友好橋建設の土質検査を施行

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8月27日、韓緬友好橋の基点となるポンジー通り桟橋から10メータ離れたヤンゴン川中央で土質検査が開始され9月2日まで続行される。夜間は2隻の検査ボートに警告灯が取り付けられ衝突事故を防ぐ処置がとられている。これも“幸福なミャンマー”を物語る以外の何物でもない。




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