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<ミャンマーで今、何が?> Vol.68
2013.10.30

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■タンシュエが政治に復帰するチャンスはない

・01:AAA:(政治)
  -A1:タンシュエが政治に復帰するチャンスはないと下院議長が断定
  -A2:テインセイン大統領が2期目の出馬を断念
  -A3:英国訪問中のスーチーがBBCで語る

・02:BBB:(経済)
  -B1:MICが外国企業に許可を与える
  -B2:ミャンマー初のフローティング・ホテルを開設
  -B3:セドナホテルが客室を2倍に拡張
  -B4:フォルクスワーゲン社がミャンマーに復帰

・03:CCC:(生活一般)
  -C1:海外支援金の使途を保健省に質問
  -C2:ミャンマー陸軍が女性の兵士を初採用

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ミャンマー・タイムズ紙の今週号(第701号2013年10月28日-11月3日)で記事の取り扱いは小さいが、国家の命運を読み取るのに非常に興味ある報道がなされたので、まずはそれの全文からお届けしたい。



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<AAA:(政治)>

A1:タンシュエが政治に復帰するチャンスはないと下院議長が断定

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タンシュエ元上級大将(以下敬称は略す)はミャンマーの政治状況を心配しているが、現憲法では権力が分散されており、政治の舞台に戻ることはないとトゥーラ・ウ・シュエマン(以下敬称は略す)が語った。

“タンシュエは現在の政治状況を心配している”と私に語ったと下院議長は述べた。しかし、タンシュエの懸念事項が何なのか議長は明らかにしなかった。

最大与党USDPの党首でもあるシュエマンが10月24日レポーターに語ったところでは、タンシュエが政治の世界に戻るのは不可能だとしている。

“我々はすでに立法・司法・行政を独立して設立した。だから、タンシュエが政治に関与することは今後できない”とシュエマンは語った。“ミャンマーの指導者として、タンシュエは善意を持って人々のために最善を尽くしてきた。しかし、誰もがその結果を知っている。私はタンシュエの善意を評価するが、我々はその結果を評価する必要は無い”
シュエマンによれば、シュエマンとその家族はダディンジュ(水祭りから6ヵ月後に巡り来る火祭りの儀式)の満月の日(今年は10月19日)にタンシュエの自宅を訪ねて敬意を表明した。

USDPの高官が匿名を条件に語ったところでは、他の多くのUSDP上級高官が同様にタンシュエ宅を訪問し敬意を表している。そしてその中にはテインセイン大統領も含まれている。


<解説>

2011年3月にテインセイン大統領率いる新政府が発足してから2年半、タンシュエの消息は死亡説から陰で政治を操っているというウワサしか聞こえてこなかった。しかし、国会の下院議長の地位にあるシュエマンが部分的情報を提供してくれた。これから行間を読み取ってみよう。

ミャンマーでは騒がしい水祭りが終わると静粛な正月を迎え、季節は4ヶ月間の雨季に入る。僧侶は僧院に閉じこもり外出せず雨安居(うあんご)の修行に入る。“水祭り”の半年後の10月に対称的な“火祭り”が巡ってくる。このダディンジュの満月の夜にはロウソクの光が僧院を満たし、各家庭のベランダはLEDのイルミネーションで飾られる。平信徒は僧衣・生活必需品・花束などを競って僧院に寄進し、僧侶もこの日を境に外出が許される。ミャンマーではこの日まで結婚式は控えられこの日から解禁となる。暦の上で陰が陽に転じる。

旧き良き風習が残されているミャンマーの特に田舎では、この日に晴着を着て昔の生徒たちが贈り物を手に懐かしい恩師を訪れ感謝の気持ちを表明する。両親に対しても居住まいを正して低頭しこれまでのご恩に感謝する。年長者に対する特別の感謝祭が催されるのがこの日である。だが、敬老の日ではない。これを英語ではHomageと表現する。これがミャンマーの伝統的な慣習で、ミャンマーの市町村至るところで行われる。

欧米人の目には旧弊と映るかもしれないがこれがミャンマーの風習である。この火祭りの10月19日にシュエマンが家族揃ってタンシュエ宅を訪れ敬意を表明した。ミャンマー民主化の立役者テインセイン大統領までがタンシュエを訪れたという。ということは、国会・内閣・大統領府の主だったところ全員が旧軍事政権の元最高権力者を訪れたと見てよいだろう。だが、シュエマンおよびテインセインといえども今ではタンシュエと会見することはこのような機会を除いてほとんどないはずだ。

シュエマンが解説したとおり、タンシュエが今の政治状況にいかに不満でも、それを左右する権力はすでに持ち合わせていないのも事実である。この国の歴史から想定するとクーデターだけが可能性があるが、万が一タンシュエが呼びかけたとしても、それに呼応する将校・兵隊がいるかというとそのトップに立つシュエマンが否定していることは文脈から読み取れる。



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A2:テインセイン大統領が2期目の出馬を断念

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次期大統領選への出馬は国民が望み体力が許せばと昨年語っていたが、10月24日テインセイン大統領は大統領選への出馬を断念した。“テインセイン大統領は次期大統領選に出馬しないと私に語った”とUSDPのシュエマン党首が明らかにしたとロイター電が報じている。
2011年に解体された旧軍事政権ではテインセインの上位にランクされていたシュエマンは穏健な改革派とみなされ、大統領職への希望を公然と表明していた。与党USDPの党首の地位を今年テインセインから引き継いだシュエマンが大統領になる可能性はひとえに憲法の改正に掛かっていると専門家は分析する。現在109名の国会議員からなる委員会が2008年憲法の見直し作業を行っている。

幅広く人気のあるノーベル平和賞受賞者で野党党首のアウンサンスーチーも出馬を期待されているが、すべては憲法の改正次第である。

<解説>

10月19日満月の火祭りにミャンマー新政府のVIPがこぞって旧軍事政権の元最高権力者を自宅に訪ねている。その折に大統領職続投を断念させる強力な精神的圧力がテインセインに掛かったのかもしれない。憲法上は現在ミャンマー国の最高権力者といえども、自分を大統領にピックアップしてくれたかっての上司からの圧力であれば、旧軍隊組織上反対できないのが人情である。

そしてこの重要な2件をシュエマンを通してマスコミ発表させたということは、テインセインを1期のみで退陣させ、次をシュエマンに任せるとの奥座敷からの意向とも受け取れる。

その情報を入手したスーチーは今回の英国訪問で元々スーチーの大ファンであるデビッド・キャメロン首相に国際的圧力を結集させミャンマーの憲法改正を実現しスーチーを大統領選に出馬できるようにベストを尽くすと語らせたのかもしれない。



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A3:英国訪問中のスーチーがBBCで語る

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ミャンマーには真の民主主義はまだ確立していない。長い道のりが続くだろう。仏教徒とイスラム教徒は民族間の暴力で恐怖の中で生活している。状況を打開するためにミャンマー政府に国政的な圧力をかけてほしいとBBC(英国公共放送)を通して語った。

国内議会で進展しない憲法改正にスーチー党首は外圧活用に踏み切ったものと思われる。海外での機会があるたびに外圧による憲法改正を訴えるようになった。



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BBB:(経済)

B1:MICが外国企業に許可を与える

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MIC(ミャンマー投資委員会)は10月24日、中国・シンガポール・香港・英国両バージン諸島・オーストラリアなど多種類の事業を運営する外国企業に認可を与えた。その業種は衣服、飼料、食品製造、製靴など多種類に及び、外国投資法に従って認可された。衣服会社はオーストラリアとミャンマーの合弁企業でラインタヤ町区で操業する。香港の会社もラインタヤ町区のシュエタンルイン工業団地で衣服会社の運営することになっている。中国の製靴会社は間もなく操業を開始し、英国領バージン諸島の会社は女性向け洋装を運営することになっている。シンガポールの会社はヤンゴン地区モービー町区で国内企業との合弁で動物向け飼料を製造する。



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B2:ミャンマー初のフローティング・ホテルを開設

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ミャンマー港湾局によれば、ミャンマー初のフローティング・ホテルが年内にヤンゴンのボータタウン・ジェティに開設される。

ミャンマーのHla Hla Pa Pa社はフィンランドから2,000トンのエンジン撤去船舶を購入し、フローティング・ホテルに改造する認可を得た。同船舶はすでに8月18日にヤンゴンに到着し、ミャンマー造船所で二人用ダブルルーム104室、食堂2室およびバーを提供する改装工事を行っていた。ヤンゴン港湾開発はすでにボータタウン港湾地区の拡張計画に着手しており、昨年7月からヤンゴン川に向けての作業を進めていた。この拡張工事を担っているのは地元のPearl Myay社である。



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B3:セドナホテルが客室を2倍に拡張

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ヤンゴンのセドナホテルは29階建ての別館を建設すると先週発表した。これは深刻な客室不足に悩む観光業界にとっては朗報である。完工予定は2016年を目指し、8千万ドルを投資して420室を確保し、同ホテルの合計客室数は786室となる。同ホテルは同時に現在の客室、廊下、表玄関ロビー、共有施設の改造に取り組んでおり、改装コストは2千5百万ドルを見込み、その完成は今年末を予定している。シンガポールに本社があるKeppel Land社はヤンゴンとマンダレーのセドナホテルを所有し、後者の改装工事に7百万ドルを投資するとしている。



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B4:フォルクスワーゲン社がミャンマーに復帰

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ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンがミャンマーの企業と合弁で自動車サービスを開始すると発表した。同社の子会社であるドイツ自動車工業が運営するサービスセンターは今月ヤンゴンに設立されるとYoma Strategic Holdingsが声明を発表した。Yomaはこのドイツ自動車工業の株式70%を所有している。Yoma Strategic Holdingsの大半はミャンマーの財閥サージパンが運営するSerge Pun & Associates (Myanmar) Ltd社が保有している。フォルクスワーゲンはEUの経済制裁で軍事政権下の13年前にミャンマーでの事業を打ち切った。

ミャンマーは自動車輸入が緩和され、アセアン地区で最も重要な自動車市場になろうとしており、この後期を逃したくないと同社のCEOは語っている。



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CCC:(生活一般)

C1:海外支援金の使途を保健省に質問

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100億チャットを越える日本からの援助金を含めて、国会でその使途の透明性を保健省に求めた。“保健省は日本からの援助で地方に健康センターを建設し、保健施設を整備すると議会に対して報告書を提出したが、どこにいくつ健康治療センターを建設するか明確にしていない”と一議員は議会で語った。保健省は2010会計年度780億チャットを健康治療に使用している。保健省にはその傘下に7つの部門があるが、その合計でさらに27億チャットの収入がある。



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C2:ミャンマー陸軍が女性の兵士を初採用

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ミャンマーの史上初めてミャンマー国軍が女性の参加を呼びかけた。国営ミャンマー語の日刊アリン紙広告欄で、国軍は新規に女性の見習い士官を募集している。条件は年齢25−30歳の独身女性、身長最低160cm、体重59kg以下としている。ただし、彼女たちの最初の肩書きは少尉で、駐屯部隊に配属され、戦闘には参加しない。かってビルマ国軍は英国の殖民統治から独立を勝ち取るために幅広い人気を呼んでいたが、1962年と1988年の陸軍クーデターによってその支持は落ち込んだ。かっての女性の国軍参加は従軍看護婦に限られていた。



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