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<ミャンマーで今、何が?> Vol.71
2013.11.20

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■ミャンマーの政治犯

・01:テインセイン大統領の約束

・02:今回の釈放には次のような人物が含まれている

・03:ミャンマーの刑務所の歴史

・04:政治犯の釈放は政治的な取引か?

・05:最後に

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経験された方は少ないと思いますが、今週は壁の向こう、すなわちミャンマーの刑務所の話です。

ヤンゴンが、そしてミャンマーが激変していることは皆さん肌身に感じていらっしゃることでしょう。それは番外地でも起こっています。

一昔前はヤンゴン大学がエリートコースでした。ですが、今はミャンマーの刑務所帰りが、エリートコースともなっています。例えていえば、父親のアウンサンはヤンゴン大学から頭角を現しビルマの国父と言われるまでになりました。そしてその娘のスーチーは自宅軟禁とはいえ、15年間の収監でノーベル平和賞まで手にしました。



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01:テインセイン大統領の約束

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2013年7月15日、英国を訪問したテインセイン大統領はすべての政治犯を今年末までに釈放すると発表していた。そしてブルネイにおける第23回アセアン・サミットに出発する前に、今回の特赦を発表できるようにと大統領は政治犯調査委員会に指示していた。

そこで、ミャンマー政府は11月15日の特赦で69名を釈放したと発表した。

大統領府は収監された人たちにも国づくりに貢献してもらいたいと政府の慈悲と善意で特赦を決定したと語り、年末までには旧軍事政権が投獄した政治犯全員を釈放すべくリストを作成中であると発表した。



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02:今回の釈放には次のような人物が含まれている。

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1962年のクーデターで権力を掌握し、1988年までこの国を支配した前独裁者ネウィン将軍の二人の孫、エイネウィンとチョウネウィン、そして黒魔術師のサヤレイ・アウンプウィンカウンの計3名は国家(軍事政権)転覆を図ったとしてタンシュエ軍事政権時代の2002年に逮捕され、終身刑を宣告されインセイン監獄に収監されていたが、今回の特赦で釈放された。黒魔術師とは、彼らが意図した国家転覆が成功するよう神がかりの秘術で祈祷する者を指す。

著名な反政府活動家のノウオンラー女史も今回釈放された。はじめヤンゴン北方760kmのサガイン地区モニワ町近くのレパダウン銅鉱山で9ヶ月前の警察による暴力によるデモ粉砕記念集会が行われたが、この抗議活動を指導したとしてノウオンラー女史はモニワ刑務所に投獄された。そして8月29日には2年間の刑期を宣告され、獄内ではハンガーストライキを行ってきた。それだけに同女史は今回の釈放に驚き、“私は常に人々の権利のために立ち上がり、このような活動を継続したい”と語っている。

ほとんどの囚人は平和的集会・平和的デモ法第18条、ないしは刑法第505条(b)の国家反逆罪か、非合法関連法案違反として有罪とされていた。

元政治犯グループ(FPP)は今回の特赦を歓迎するが、政府は平和的な抗議デモの参加者を逮捕することは止めてほしいと要求している。政府は徐々に恩赦を施しているようだが、同時に政府は平和的な抗議行動の参加者を平和的集会・平和的デモ法第18条の罪名で有罪にしようとしており、民主的な方法で自分たちの要望や自分たちの権利を求める人たちを処罰すべきではないと語った。



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03:ミャンマーの刑務所の歴史

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悪名高いインセイン、モニワの監獄以外にも、今回はミンガン、タヤワディ、タウングー、シュエボ、パテイン、タトン、インガプ、バモー、ミッチーナ、ティボー、ケントゥン、チャオピュー、タンドウェ、ブーティダウンの各刑務所からも政治犯が釈放された。
ここで一言付け加えると、ここに記載した監獄の大半は英国が建設した植民地時代の監獄施設で、それらは当然ながら植民地からの独立を叫ぶビルマの青年たちを収監した施設であった。

ついでに言及すると、ベンガル湾に浮かぶアンダマン諸島はインドの反植民地運動の活動家たちを閉じ込めた完璧な独房スタイルの大英帝国によるインド政庁の監獄で、その近くにあるココ・アイランドは同様にビルマの反政府運動家を収監するビルマ政庁の監獄であった。共に当時としては島流しのための南海の孤島で、この独房に収監されると一生島から出られないどころか、独房から外の空気を吸うことすら許されなかった大英帝国が築いた獄門であった。

最近の欧米のジャーナリストたちは“悪名高いインセイン・プリズン”と旧軍事政権の残虐な象徴として報道するが、その手本の大本は大英帝国がインドに、そしてビルマに植えつけてくれたものである。大英帝国だけでなく、アジアの歴史をさかのぼれば、ポルトガルも、スペインも、フランスも、オランダも、そしてアメリカも日本も同罪である。であるから、旧軍事政権から衣替えした新政府の有識者としては、欧米が民主化、人権問題と叫んでも、あまり度を越すと、お前さんたちもスネにキズのある身じゃないの、良きも悪きも欧米から模範を示されてそれを模倣してきたのが我々の先輩で、我々の歴史なんだよ、と反論されかねない。

現在の大統領府にはそれだけの人材を揃え、諸大臣から構成される内閣より一段上の高みからご意見番として国の行く末を判断しており、対外的な交渉に臨んでおり、チョット前の中国一辺倒ではなく、欧米からの支援でバランスをとりながら国の運営を行っているように思える。それが現在のミャンマーを奇跡とも思える世界の寵児にしているのではないだろうか。



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04:政治犯の釈放は政治的な取引か?

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政府から任命された政治犯調査委員のニャンウィンは、多方面から入手した収監リストに基づき、各人が本当に政治犯かどうかをチェックする作業が必要とされたと語っている。スーチー議員が党首を務めるNLDの上級顧問でもあるニャンウィンは、収監されている政治犯はまだ80名もいると語っている。

過去2年間に発表された大統領特赦は大統領自身が海外渡航する直前か、海外からの著名で有力な人物・団体のミャンマー訪問と時を同じくしている。今回はEUからの大型代表団の訪緬がそれにあたっている。

EU、米国その他西洋諸国は49年間続いた軍事政権時代には想像もできなかった自由化・民主化革命を行い、大量の政治犯を釈放してきたミャンマーに応答して、これまでの制裁を解除して、投資を増やしてきた。

軍事政権最後の年には、約2,500人の反体制活動家、ジャーナリスト、政治家、コメディアンまでもが拘束され、その多くは拷問を受けてきたといわれている。人権活動家および国連は、ミャンマー政府は ‘良心の囚人’、すなわち政治犯全員を拘束から解放すべきだと呼びかけてきた。そして、ミャンマー政治犯支援活動家グループ(AAPP)の分析では、約230名の政治犯がいまだに刑務所に収監されていると推測している。



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05:最後に

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11月15日の釈放に伴い、国際アムネスティ機関は言論抑圧以外の何ものでもない理由で拘禁の危険にさらされるか嫌がらせを受けた人たちの人権を擁護するための平和活動を今後も継続したいとし、このような状況は即座に終了すべきで、さもなければ今回のような釈放は無意味なものになると語った。

FPPのリストでは、全国で200名以上の活動家が第18条で逮捕され、裁判に掛けられている。釈放された政治犯の穴埋めに、新しい‘良心の囚人’を収監すべきではないと同FPPグループは強く訴えている。

テインセイン大統領が2011年3月30日に新政府を発足して以来、29,820名の政治犯が大統領特赦として釈放された。

ミャンマー関係者にとっては、竹山道夫の「ビルマの竪琴」とともに、会田雄次の「アーロン収容所」は必読の書と言われているが、このアーロン収容所はインセイン刑務所のことで、連合軍は第二次世界大戦の日本軍捕虜をここに収容したと時折聞かされるが、その裏づけが無くて東西南北研究所は困っている。もし、この件に詳しい読者の方がいらしたら、その事実を明確に教えていただければ幸甚であります。





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