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<ミャンマーで今、何が?> Vol.78
2014.01.22

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■ナーギス台風ニモマケズ その2

・01:ミャンマーにかかわりを持つ人たち

・02:あるウワサ

・03:何一つ目立たない善行

・04:環境問題の第一歩

・05:OPK村のクリーンアップ作戦

・06:連隊長の高度なテクニック

・07:学んだこと

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奇跡的にナーギス被害から救われたOPK村から電気もあるインターネットも使えるヤンゴンに戻り、グーグルでミャンマー関連のニュースを斜め読みしているが、どれもこれもコップの中の嵐で、大勢に影響するようなニュースは今のところ見当たらない。2014年の開始は中だるみの状況と思われる。そしてありがたいことに、最近は日本語のタウン誌を初め、日本語でのミャンマー情報が急増しているので、それはそちらにお任せして、当週刊メルマガは日本人がかかわった<ナーギス台風にも負けなかった>奇跡の物語を続けたい。


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01:ミャンマーにかかわりを持つ人たち

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ミャンマーとのかかわりについてもいろいろある。

インパール作戦に従軍した父親の終焉の地に線香の一本も捧げたいと訪れ、貧しさの中で中国とは違うやさしさにあふれた供応に感激し、それから毎年この地を訪ねる人。

地図の上でミャンマーがどこにあるかも知らず、ミャンマーにビジネスマンが世界中から群がっていると聞き、盲滅法に飛び込んできた人。

これはタウチャンの連合軍墓地に眠る遺族も同じだ。ここには欧米人だけでなく、英国の植民地下にあったアフリカやグルカの戦士まで眠っている。父親が、祖父が眠る地に一度でいい花束を捧げたいとやってくる。その後毎年、学童たちへのノートやキャンディーを持参する人たち。

経済制裁が解けて、中国や日本に負けてはならないと欧米のビジネスマンも殺到している。
結局は西も東も同じということだ。



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02:あるウワサ

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有名な、そして巨大なNGOがナーギス台風(本当はサイクロンだが、日本人にわかりやすいようにこの名称を使う)の直後、ジャンボ輸送機を使って莫大な支援物資を米国から運んできた。そのシステムは完璧にできあがっているのだろう。現地人を組織して大量の救援物資をイラワジデルタ地方に配布した。だが条件として約10万人の村人たちを特定の宗教に改宗させることに成功したとのウワサがヤンゴンの路上喫茶で一時話題になったことがある。ウィキペディアで調べてみるとこの巨大NGO団体は福音伝道をモットーとすると書かれていた。

UN(国連)からも認定されている世界的組織のNGO団体がある。ナーギス台風直後に、救援物資としてその団体名をプリントしたレトルト・パックが大量にヤンゴンにやってきた。だが、何年経ってもそのレトルト・パックが倉庫に山積みされており、その一個をおすそ分けさせてもらった。試食してみるとこれほどにまずい食べ物は世界中で探すのも苦労するだろうというシロモノだった。試食した全員がそう言うのだ。たぶん栄養上はバランスの取れた優れものなのだろう。だから、飢餓状態にあればこれで良いというものではない。災害下にあってもミャンマー人の舌はグルメなのである。その一方で、この製品を納める業者を組織して基金作りをしているのではとの疑惑も臭ってくる。



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03:何一つ目立たない善行

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話を本題に戻そう。イラワジデルタで13年間という長期に亘ってこの活動を継続できた裏には日本のとある超優良企業が基金を提供してくれたからでもある。昔の中国・日本には“陰徳”という言葉があった。欧米のフィランソロピー(陽徳)とはまったく異なる概念だ。その日本の会社が創立120周年記念事業として日本から遠く離れたこの地味な地域活動を賛助してくれた。地味ではあるが、人類がたまたま乗り合わせたこの地球という美しい星を救う大事業である。人類と書いてしまったが、これは人間の思い上がりで、実際には動植物も、その景観をも含めた万物が乗り合わせたロンリー・プラネットのことである。その会社の意気に応じて社名はここでは記さない。



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04:環境問題の第一歩

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ディセンバー・カウンティングのことを覚えておいでだろうか。小学生の男女学童20名がマングローブの苗木の生存状況を数えた野外授業だ。最後に森林指導官たちが子供一人ひとりにご苦労さんと両手いっぱいのキャンディを配った。すると子供の何人かは私たちにまでそのキャンディを分けてくれようとする。またもや目頭が熱くなった。こんな純粋なやさしさを見たのは母親の思い出の中で、遠い昔々だったような気がする。

これは森林指導官たちが巧妙に仕掛けたワナなのだ。子供たちは森林指導官の話を腰をかがめてリラックスして聞いている。今のキャンディはひとつひとつプラスチックの用紙でくるんである。プラスチックは自然が生み出したものではない、だからこの大地の原野に捨てても永遠に消えずに残るのだと。分かりましたか?と確認する。子供たちの元気な声が一斉に返ってくる。今、子供たちは大切なことを学習したのだ。この美しい大地を汚さない大切さを。そしてキャンディが入っていた大袋を回すと、プラスチックの包み紙が競って回収されていった。

ボートでベースキャンプに戻り、参加者全員で記念写真を撮影。忘れずにヤンゴンに戻ってプリントして子供たちに送ってあげねば。子供たちは道端の水場で泥土がこびりついた足を洗いスリッパを履いて学校へ戻っていった。見送る子供たちの後姿からよそでは手に入れられない貴重なものを学ばせてもらった。ありがとう。



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05:OPK村のクリーンアップ作戦

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数日して、OPK村のクリーンアップ作戦が前回の小学校の全児童を主体に挙行された。先生たちを入れると100人をはるかに上回る人数だ。日本から参加した一人ひとりが児童たちの前で自己紹介。山形から参加した男性が子供たちに身振りたっぷりに夢のような話をしてくれた。もちろん日本語から英語に、そして連隊長がミャンマー語に通訳して子供たちに話しかける。

私の出身の山形は雪国です。皆さん、雪を知っていますか? 知っている子供が思った以上に多い。寒い冬にはおじさんの背丈以上に雪は積もります。キャンディのプラスチックを道端に捨てても雪が降っていますから、捨てたプラスチックはすぐに雪に覆われ、朝になるとあたり一面、また真っ白な銀世界です。ですが、春になると雪が解けて前に捨てたプラスチックだけがそのまま残っています。プラスチックはいつまでも地球上から消えないのです。だから、プラスチックは捨てずに、拾っていきましょう。

それから子供たちは麻袋を担いで、OPK村の隅々に飛び出していった。世界最強のプラスチック回収軍団である。そして報道班は麻袋に投げ込んだプラスチックをもう一度取り出して投入するポーズをとってくれと注文する。大きなプラスチックの買い物袋を見つけた生徒は得意げに写真を撮ってくれとねだる。昨夜晩くまで入念に練った作戦は有効に動き出した。

ミャンマーの田舎はどこにいっても道端は汚く、どこにいってもゴミだらけである。
その意識を変えるにはどうすればよいか? また指導者たちが夜遅くまで議論を重ねる。
このキャンペーンも地元の篤農家をはじめとして地域活動家たちがアイデアを出し合って練り上げた。道路だけでなく、池や川で環境汚染の悪役となっているのが、プラスチックのバッグである。ペットボトルはここでは燃料入れなどに転用が利くので貴重品であり、道端に捨てられることはほとんどない。子供たちに対しては塩化ビニールとか難しいことは言わずにプラスチックのみに絞るほうが理解しやすいというのが前夜の結論だ。

そしてリーダーはバナナやニッパ椰子の葉っぱなど自然に生まれたものは土に帰るとやさしく噛んで含めるように説明する。それはゴミではない。子供たちの理解力は想像以上にすごい。

その後、近在の村々をボートとバイクタクシーを乗り継いで訪ねたが、驚いたことに、連隊長の指令は徹底しており、村々にクリーンアップ作戦の責任者が指名され、各農家の軒先に大きな麻袋が吊るされていたり、その地の子供たちが大量のプラスチックを一ヶ所に回収しているのを目撃する。



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06:連隊長の高度なテクニック

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この活動家たちが一過性のNGOと根本的に違うことは、地元に完全に根ざしていることである。各家庭を訪問しても、この連隊長は家族の健康をまず第一に尋ね、今家族が必要としているものは何か、困ったことはないかと、彼らと同じ低い目線で話し合う。彼らから尊敬されていることがよく分かる。そして連隊長も腰を低くして村人一人ひとりに敬意を払っていることが傍で見ていてもよく分かる。だから、キンマのひとつ包みをどこに行っても勧められる。外部の人間からは嫌われるあの赤いツバを吐き出すミャンマーの嗜好品である。そのキンマの交歓は彼らに受け入れられるのみならず同化していることを示す。欧米のNGOには真似のできない高度なテクニックである。



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07:学んだこと

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この連隊長の作戦会議も一日の仕事が終わった夕飯後の団欒に勉強会を開き連日精力的に行われた。

最初は討議した結果のシンプルな目標を示し、それを篤農家の人たちに、実行可能かどうか相談するのである。決して押し付けないのである。地元の人たちの意見を最も重視してコトを進めるのである。

そして村人たちが実行出来る様になると、それを近隣の村々とシェアするのである。決して自分たちだけで独占しないのである。
どんな単純な作業でも、何度も何度も繰り返すのである。継続は力なりをこのときほど強く感じたことはない。

そして完璧にこなせるようになると、さらなるアップグレードした目標を掲げていく。

山本五十六の「やって見せ、言って聞かせて、させて見て、褒めてやらねば、人は動かじ」に匹敵するミャンマー独自のシステムをこの連隊長たちは開発してしまったようだ。他のNGOたちのモデルになるシステムである。だがこれはマニュアルでは学べない、アメニモマケズの精神を心から理解せねば到底悟ることができないだろう。


参考文献:「TEN YEARS IN PYINDAYE」RESTORATION OF MANGROVE ECOSYSTEMS AND COMMUNITY DEVELOPMENT, Ayeyarwady Delta, Myanmar (1999-2008) FREDA/ACTMANG編集
「緑の冒険」-砂漠にマングローブを育てる- 向後元彦著 岩波新書



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