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<ミャンマーで今、何が?> Vol.88
2014.04.02

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


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■ミャンマー国軍創立記念日

・01:第一面の写真とトップ記事

・02:ミャンマー国軍最高司令長官

・03:最高司令長官のスピーチ

・04:華麗なる宴

・05:紅一点スーチーさん

・06:国軍記念日のフォト・ギャラリー

・07:タンシュエの手法

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今週はNLM紙の3月28日付に注目してみたい。

その前日はミャンマー国軍創立第69回記念日で国民の祝日であった。だから、その話題がこの日のトップニューとなっている。国軍に関連する記事はこれまでは危険視されたが、最近の開かれた風潮を横目でチェックしながら、その関連記事からどこまで深く読み取れるか、分析を試みてみた。


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01:第一面の写真とトップ記事

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かってはこの国の最高指導者であるタンシュエ上級将軍のありとあらゆる勲章を身につけた軍服姿がアップでNLM紙の第一面を飾った。今年の国軍記念日はミンアウンライン上級将軍が上部を取払ったジープに起立しミャンマーの陸海空三軍の軍隊を閲兵している写真が第一面であった。

そしてその見出しで“第69回国軍の日を記念するパレードで、国軍は憲法を保護する責任があると最高司令長官が語った”となっている。



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02:ミャンマー国軍最高司令長官

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ミンアウンライン上級将軍は、このメルマガの今年2月26日付け第83号<きな臭い話>で解説したが、2015年の大統領選挙でダークホースとなりうる人物ではないかとご紹介した。であるから、東西南北研究所はこの将軍に関する記事はすべてチェックし、NLM紙面での頻出度も重要なバロメータと見ている。

次期大統領選挙までには1年半以上の準備期間がある。

闇将軍の見えざる手が、この将来を託すべき若き上級将軍に“しっかり勉強せい”と発破を掛けたとしたらどうだろう。もちろん大統領としてのキャパシティをそれまでに身に着けろという意味である。その文脈でこの将軍に関する記事をチェックすると、納得できることが多々ある。

海外からの大物およびEUや日本などの経済団体などが、機会あるごとに同将軍を訪ねるのが目立って増えてきた。もちろん、彼らがネイピードを訪れて最初に握手するのはテインセイン大統領である。だが、経済団体のみならず、文化団体、スポーツ関係者がどうして国軍の最高司令長官にという疑問が残る。だが、次期大統領含みということであれば納得できる。

皆さんは大使とか大使館というときらびやかな外交パーティを思いつかれるかもしれない。だが、裏を返すとそこはエスピオナージの世界でもある。007のような諜報活動の世界である。ほとんどの各国大使館には優秀なエリート武官が派遣されている。英語でミリタリー・アタッシェと称している。騙し騙されの世界でもある。このあたりはハリウッド映画で勉強していただきたい。ミャンマーでも同様のことがと推察してもなんら不思議ではない。

ネイピードから不確実情報が非公式に流される。誰が流したのかも、誰に流したのかも、意図的なのかどうかも、何一つ不確実だ。だが、そのあとの某大使館のカクテル・パーティで数カ国の武官がひそひそと立ち話を交換する。何一つ確実なことはない。だが、いつの間にか、各国の経済団体が、文化団体が、そしてスポーツ関係者が、これまで特別に注目されなかった国軍の最高司令長官にアポを取り付ける。各国共に、2015年の大統領に他よりも早く渡りをつけたいと考えるのは常識かもしれないが、それだから何だというのだ。

このようにしてミャンマーでは小さな噂話が本物になっていく場合もある。



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03:最高司令長官のスピーチ

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NLM紙の第一面から第三面に跳んで報じられているトップ記事の内容を覗いてみよう。
ミャンマー国軍の軍備を誇示する第69回軍事パレードが3月27日ネイピードで挙行された。そこで国軍最高司令長官は国軍の役割について演説した。

憲法に従えば、国軍には憲法を保護する責任があると語り、その憲法は第12章の条件に合致したときに始めて改正できると発言した。そして2008年憲法の第12章は連邦議会の75%以上の事前承認を持ってはじめて改正できると述べた。最高司令長官は、さらに、2008年の国民総選挙において投票者の92.8%が賛成票を投じたこの憲法を尊重するようにと呼びかけた。当時を振り返ると、57百30万人の人口のうち国民投票有資格者は27百28万人で、その内24百76万人がこの憲法に賛成票を投じている。国軍の必要性はテインセイン大統領も先日のスピーチで強調している。だが、同時に、ミャンマーが成熟した民主国家になれば、国軍の役割も徐々に軽減していくと大統領は語っている。

そして社会問題に関して、上級将軍ミンアウンライン国軍最高司令長官は、英国植民地主義者がミャンマーにもたらした異なる民族による問題を我が国は解決せねばならないと語り、さらに、英国植民地主義者の分割統治によって引起された国民の破壊された調和は国軍が責任を持って強化し友好と統一にもっていくと決意を表明している。

これは別の解釈をすると、2008年憲法の正当性と国軍がそれを死守すると明言することで闇将軍に対する忠誠心を鮮明にし、後半は、大統領の仕事領域に踏み込んだ発言と取れないこともない。



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04:華麗なる宴

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NLM紙第三面はすべてこの国軍記念関連ニュースで、上段は“国軍記念日の夕食会を上級将軍ミンアウンライン夫妻が主催”の見出しで、16.5x11cm大のカラー写真は横列にずらりと勢ぞろいした各国のミリタリー・アタッシェ(大使館付き武官)をミャンマー国三軍(陸海空)最高司令長官が次々に握手し、長官の後ろには一歩引く形でその夫人がミャンマーの伝統衣装で付き従っている。長官はもちろんのこと、各国の武官も出席者全員がフル・ドレスといわれる礼装着用である。写真では長官の影で不鮮明だが、当然ながら、ミャンマーの陸軍司令長官、海軍司令長官、空軍司令長官の三名、さらには高級将校たちが接待役として付き従っているものと思われる。

当夜はネイピードのゼイヤティリ・ベイクマンの芝生で歌舞音曲入りの華麗な宴が夜遅くまで繰り広げられた。



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05:紅一点スーチーさん

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第三面下段の記事は全文すでにお伝えしたトップ記事の後半部分である。

ここで注目したいのは同じく16.5x11cm大のカラー写真で、ぎっしりと埋め尽くした会場のパレードを参観する最前列のVIP席ですらりと背筋を伸ばしたレディが一人写っている。このフォトグラファーは明らかにスーチーさん一人に焦点を当て、その周りにVIPのお歴歴を配した構成を狙っている。他の男性はすべて白地の上着にロンジーという正装、そしてミャンマー独特の白い被り物だが、スーチーさんは清楚な花々で後ろ髪をきりりと結わえている。

ミャンマーが変われば、政府直系の日刊英字紙も変わる。

スーチーさんが、そしてNLD党員が、補欠選挙で当選したのはほんの2年前2012年4月1日のことである。そしてスーチーさんが初めて招待され国軍軍事パレードにVIPとして出席し、内外の注目を浴びたのはたった1年前の2013年の記念式典であった。

そしてもう一枚、16.5x8.5cm大の写真がミャンマーの国旗を掲げ整然とパレードを行う各軍兵士の縦隊を記録している。



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06:国軍記念日のフォト・ギャラリー

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そして第九面にはキャプション付き写真5枚がその勇壮な模様を伝えている。
時計回りで見ていくと、まずはミャンマー国旗を頭上高くたなびかせて飛ぶヘリコプター。

次が、招待された各国大使館付き武官のVIP席。礼装用軍帽を前のテーブルに置き、目の前を通過するパレードを静止写真に、あるいはビデオにおさめる武官の姿も写っている。あるいはミャンマーの最新の軍備技術を探ろうとしているのかもしれない。

そして、会場グラウンドに次から次に入場する陸・海・空軍の行進が延々と続く。それぞれが、迷彩色にヘルメット、真っ白な制服に水兵帽と、彩りも鮮やかである。この新聞が全面カラー写真となったのも、そういえばほんのちょい前のことである。

移動式ロケット発射装置を運搬する重機がネイピードの山々を背景に威容を誇る。

最後の写真は、火砲を装備した軍用装甲車がはるかかなたまで続く。まるで地響きが聞こえてくるような写真だ。



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07:タンシュエの手法

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そして今週はミャンマーの新政府が発足して3周年の記念日でもある。2011年3月31日、ミャンマーはこれまでの軍事政権と決別して、この国の元首はタンシュエ国家議長からテインセイン新大統領になった。

しかし、テインセイン大統領の前歴からして軍人そのものであり、しかも、タンシュエ議長自らがこの男を国家最高権力者の地位に拾い上げたといわれている。内閣の諸大臣もほとんどが大佐クラスの元軍人で、国会内にしてもミリタリー・カラー一色で埋まっていた。

だから、米国をはじめとする諸外国は新政府の決定にすべて慎重に対応するという態度を崩さなかった。だが、慎重に慎重にと言っていた米国がまずミャンマーに対する経済制裁を段階的に解除していった。EUも経済制裁を一時中断すると発表した。

これはテインセイン大統領の手腕が並みの将軍ではないという証ではないだろうか。そして今日のミャンマー・ブームはテインセイン以外の誰ひとりとして達成不可能な奇跡である。タンシュエでは絶対不可能。シュエマンでも無理だろう。スーチーにはあまりにも大きな難問だ。

テインセインをピックアップしたのはタンシュエだが、今日のミャンマー・ブームまで予測していたとは思えない。だが、タンシュエの手法は何人かのリーダーにそれぞれの仕事をそれぞれに任し、上手く行けばそれを続行させ、上手く行かないと首を挿げ替えるタイプであったように思われる。

そのリーダーのひとりが今回取上げたミンアウンライン最高司令長官である。世間は2015年の大統領選挙はシュエマンかスーチーという見方だが、この最高司令長官の今後の動きを注目していきたい。



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