******************************

<ミャンマーで今、何が?> Vol.90
2014.04.18

http://www.fis-net.co.jp/Myanmar


******************************


━━━━━━━━━━━━━━━━━ MENU ━━━━━━━━━━━━━━

■国営日刊英字新聞NLM紙

・01:NLM本社がネイピードからヤンゴンに移転

・02:NLM紙が外国人編集者とレポーターを募集

・03:NLM紙の方針が見えてくる

・04:「ミャンマーで今、何が?」の手の内

・05:3月21日付けNLM紙第一面

・06:転載された“Mizzima Business Weekly”の内容

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


先週号でお伝えしたとおり、今ミャンマーは“水掛け祭り”の真っ最中である。
東西南北研究所は街の喧騒から一歩引き、UV光線(紫外線)も避けて、かと言ってリッチなヤンゴン脱出も図らず、いつもの自然体でダウンタウンの事務所からミャンマー・ウォッチを続けている。

この大型連休10日間は事務所を瞑想センターと見立てて、「ミャンマーで今、何が?」を原点からじっくりと見直そうと考えている。

そのきっかけになる興味ある記事を見つけた。3月21日発行のNLM紙(“THE NEW LIGHT OF MYANMAR”)第一面である。しかも、内容はNLM紙自身に関する記事だ。3-4週間前の話なので、大体の粗筋はすでにご存知の方もいらっしゃるだろう。だが、東西南北研究所流でこれをじっくりと料理してみたい。



=================================

01:NLM本社がネイピードからヤンゴンに移転

=================================


3月20日に首都ネイピードで重要な会議が開催された。出席者の顔ぶれはNLM紙に関係する株主、顧問団、内部関係者たちである。議題は情報省が民間企業と連携して行う合弁事業運営に関するもので、その新体制での事業再開は4月に迫っているという。

この合弁事業の株主は49%がミャンマー生まれの投資家で、残り51%は情報省が所有するとのこと。NLM本社はネイピードからヤンゴンに移転され、新しい印刷機はすでに準備中。大半のスタッフは合弁事業発足前に退社すると発表しており、この移転期間中のサービス維持が問題となっている。サービス改善のみならず、資金・資材・スムースな移転を保障する説明なども不足していると大童な様子も提議されている。

驚くべき合弁のニュースは他のメディアで記事になっているのか、あるいは当方が見逃したのか不明だが、共同通信社東京本社はNLM社に対してアドバイスや資材の提供で支援しているとのことで、同社のMr. Nitobe(新渡戸氏?)をNLM社のCEO(最高経営責任者)としてすでに送り込んでいるとの事実を明らかにしている。このCEOは会議で、政府の重大ニュースを取材するためにもネイピード支局を設立する必要性を説き、将来は人権問題侵害や環境破壊など喫緊の問題を日刊ベースで記事にしたいと語った。

NLM紙の現状は、国際ニュースを配信するミャンマー国営通信社(MNA)からの翻訳記事に頼り切っており、将来はThe Straits Times紙に見習って“ミャンマーの窓”として外交官・ビジネスマン・決定権を持つ人たちを読者層に狙っていきたいとしている。

情報省のイエトゥッ副大臣も資金がいくら必要なのか、有能なスタッフの給料をいくらにすべきかなど詳細はまだ何一つ決まっていないと同会議で語った。

取材の基本の基本であるカメラや電話も支給されておらず、給料も他のメディアを下回っている。そして人材も不足しており、ジャーナリストとしての訓練も日常業務に時間を取られ散発的に行われるだけだと一編集スタッフは語っている。

そしてトップ間での方針・連絡に透明性を欠き、山積みの問題がさらに複雑化していると、社内内部のマイナスの面も率直に記事にしている。

プラスの面としては副大臣が、スタッフは再び雇用され、資材も提供されるので、土地接収・民族紛争・平和協定の進捗状況など、幅広い範囲での話題をレポートできると約束したうえで、記事にはバランスが求められ、NLM紙も今後はムスレムやベンガル人の問題をレポートできると請け負い、しかし‘ロヒンジャー’という言葉は使用禁止だと釘をさした。

この合弁事業がスタートすれば、NLM紙のレポーターはカチン州など特別の入域許可証が必要とされる地域へのアクセスも許可される。なお、ヤンゴンへの移転に伴い、4月中旬の約7日間は新聞発行を休刊する。

以上がこの記事のほぼ全内容で、そのタイトルは「NLMがヤンゴンへ移転準備中、合弁事業がまもなくスタート」となっている。そしてネイピードのNLM編集室内の写真が添えられている。



=================================

02:NLM紙が外国人編集者とレポーターを募集

=================================


気がついたのは4月3日のNLM紙であった。第8ページの下段片隅に6x8cmの囲み枠広告が掲載された。見出しは“ミャンマー最古の英文日刊新聞が募集中!”となっている。中身は、「世界のNLM社が4月中旬にヤンゴンに引っ越す。現在、外国人の編集者と地元のレポーターを募集中。フリーランスあるいはパートタイムで働きたいジャーナリストも歓迎。委細は履歴書と作文例を添付してEメールで編集長のwallace.tun@gmail.comへ連絡を」となっている。

同じ内容の囲み枠広告は翌4日、5日、そして4月6日と連続載っているので、この募集広告はしばらく続くものと思われる。念のために3月発行分すべてに目を通してみたが、この広告記事は4月3日が初出のようだ。代わりに関連情報らしきものが引っかかってきた。



=================================

03:NLM紙の方針が見えてくる

=================================


3月27日付けNLM紙第8面の約5分の四を割いてキンマウンウー氏の真摯な提言「英語学習の組織的方法の立ち上げを」が堂々と掲載されている。同氏はヤンゴン在住の識者で、5Movies社の顧問やSkyNet社のトレーニング役員を務めた経歴があり、現在は英語を教えていると説明されている。

同氏の提言内容は、英語は海外からの知識を吸収するのに必要で、ミャンマーを世界に知ってもらうためにも重要な道具である。過去の英語教育には問題があったが、これからはもっと有効な組織的な英語教育を目指すべきだというものだ。しかも、同氏に与えられたスペースが上段の指定席“PERSPECTIVES(展望)”欄を除いて、国営日刊英字新聞のほぼ一ページということが何かを物語っている。

そして3月29日付NLM紙その“PERSPECTIVES(展望)”欄である。

この欄はNLM紙の編集局が読者に呼びかけて、読者の意見・提言を毎日掲載している。一般読者が自分の声をEメールで投稿できることになっている。

この日の見出しは「英語を話す重要性」となっており、ミャンマーにおける英語教育の現状と英語に対する見方が間違っていると苦言を呈し、実践的な会話力を身に付けるよう提言している。そして軍部を意識して書いたのか、英語を話すことは民族意識とか愛国主義に反することではなく、単に相互理解の道具なのだと締めくくっている。

そして4月1日付けNLM紙第九面下段から第十面にかけて、例のキンマンウンウー氏が英語に関する子供時代からこれまでの思い出を語り、実践的な学習方法に言及し、その努力を続ければこのNLM紙は表題の下に書かれた、“アナタの身辺で最も頼りになる新聞”という謳い文句が本物になるとしている。この「メディア(英語版新聞)への個人的な想い」と題した長文の寄稿文は明らかに新体制として発足するNLM紙への応援歌である。



=================================

04:「ミャンマーで今、何が?」の手の内

=================================


「ミャンマーで今、何が?」の手法は、ある主題に関する関連情報をこのヤンゴンで可能な限り収集して、それを時系列に従って並び替える。それを吟味していくとひとつのストーリーが出来上がるが、それは単に最初の段階。今度はこの話の主役、例えば大統領や下院議長など、本人の発言内容を徹底的に読み直す。そこに本人の意図するところが見えてくるので、それに従ってストーリーを組み立てる。だが、A4サイズで4-5ページ以上は読者が退屈されるので、徹底的に文章を削る作業にかかる。

この手法に従って、NLMストーリーの作業に入っているところだが、3月19日付けNLM紙に今回のストーリーの発端らしきものが掲載されているので、それを熟読してみたい。



=================================

05:3月21日付けNLM紙第一面

=================================


下段3分の二のスペースを費やして、今を盛りの各日刊紙・週刊誌を吊るした新聞スタンドの様子を写した約11x16cmの大きなカラー写真が目を引く。キャプションは“ミャンマーは今、日刊新聞が花盛り、だが競争は熾烈”となっている。もう一葉約9x8cmの写真があり、これは同じく政府系日刊ミャンマー語新聞“チェーモン紙”(英語で“Mirror紙”)の編集長キンマウンチョウディン氏にインタビューしたときの写真だ。

見出しは「強力な後ろ盾を得て、ミャンマー国営メディアが有望な民間日刊紙へ変身中」と題し、エイミンソー氏の署名入りで、この二葉の写真も同氏が撮影している。そしてこの記事が始めて掲載されたのは今年3月13日付“Mizzima Business Weekly”だとの注釈が入っている。

すなわちこれからお伝えする記事内容は他紙からの転載ということになる。

しかも、この“Mizzima紙”は国外追放となったビルマのジャーナリストたちが1998年8月にインドのニューデリーに設立した反体制派の組織で、2012年始めにミャンマーに戻りメディア組織として正式に認められたものである。そのバックグランドを踏まえたうえで、NLM紙に転載された記事内容を読んでいきたい。



=================================

06:転載された“Mizzima Business Weekly”の内容

=================================


ミャンマーの国営日刊新聞が過去からの恐竜のごとくに現れる。政府の声として、政府の諸大臣の言葉をオウムのように繰り返し、追悼記事には神経質なほど気を使い、それでいて広告収入はたっぷり稼いでいる。民間の日刊紙にとっては夢の様な話だ。

と先ずは、民間会社としては皮肉たっぷりの書き出しである。そして“チェーモン紙”の編集長キンマウンチョウディン氏に直接インタビューしているが、この“チェーモン紙”は国営日刊ミャンマー語新聞で、NLM紙の姉妹紙と言ってよいだろう。

その国営新聞の編集長が元反体制派のメディアに写真撮影とインタビューおよび記事掲載を許可したこと自体サプライズで、それをさらに国営日刊英字新聞NLM紙に掲載したことは、当然ミャンマー政府首脳部が、4月中旬からの大きな方針転換に踏み切ったと読むべきだろう。

ここには同編集長の略歴が簡単に、1974年頃“チェーモン紙”を各家庭のドアからドアへ配達する新聞少年になり、1977年には同じく姉妹紙の国営日刊ミャンマー語新聞“アリン紙”に広告部門事務員として就職。そして2008年に“チェーモン紙”の編集長に指名されたと紹介されている。

3年前にテインセイン政府が発足したものの、ミャンマー国営通信社(MNA)の配布するミャンマー首脳に関する記事に手を加えて編集する自由などなく、融通の利かないお役所仕事の中で長ったらしい画一的な物語をどう短縮すべきか編集スタッフはまったく知らなかった。仕事場での改革を頭では理解しても誰も率先してやる者はいなかった。良くない結果が起こることを彼らは知っていたからだ。

このような話が同社内で6台のパソコンで編集作業を続ける社内写真と共に第九ページ全スペースを割いて掲載されている。

当然、深読みする人は“Mizzima紙”を指名した上でのヤラセだと推測するのも自由、しかし、NLM 紙が変わると見るのもあなたの勝手である。

しかも、同社のCEO(最高経営責任者)に共同通信社が絡んでいるということは、欧米系企業とは一味違う、おもしろい展開になるかもしれない。

なお、今回の重要会議のキーパーソンは情報省のイエトゥッ副大臣で、同氏はテインセイン大統領の公式スポークスマンでもある。国軍での最終ランクは中佐。フェイスブックの愛用者とも噂されている。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ご意見、ご感想、ご要望をお待ちしております!
 magmyanmar@fis-net.co.jp 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


=================================
- ご注意 -
このメールマガジンは情報提供を目的としたものであります。
なお、内容につきましては正確であるよう最善を尽くしておりますが、その内容
の正確性を保証するものではなく、内容についての一切の責任を負うものではあ
りません。
=================================


▽このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください
 表示がズレる場合はお使いのメールソフトのフォントの設定をご確認下さい
 ※MS Outlook Expressの場合
 「表示→文字のサイズ」を選択、「等幅」にチェック


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※「ミャンマーは今?」の全文または一部の文章をホームページ、メーリングリ
スト、ニュースグループまたは他のメディア、社内メーリングリスト、社内掲示
板等への無断転載を禁止します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※登録解除については下記のページからおこなえます。
 ○購読をキャンセル: http://www.fis-net.co.jp/myanmar/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 発行元:ミャンマーメールマガジン事務局( magmyanmar@fis-net.co.jp )
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━