魚名の由来(アンコウ)Vol8

アンコウキアンコウ ヒメアンコウ ノドヒメアンコウ
メダマアンコウ ミノアンコウ シモフリアンコウ

アンコウ は、アンコウ科の、アンコウ属に属しており、 日本からは21の呼名が知られている。

呼名と使われている地方(◎和名.○別名)
呼名地方呼名地方
◎アンコウ東京都、静岡県、高知県、富山県 カマギョ
アゴ和歌山県 キアンコウ宮城県
アゴウオ和歌山県 ○クツアンコウ神奈川県
アゴウヲ和歌山県 クツアンコオ神奈川県
アファー沖縄県 ゴウオ和歌山県
○アンコ新潟県、富山県、高知県、和歌山県 ハタアンゴ鹿児島県
アンゴ京都府、和歌山県 ピーアン福島県
アンコオ東京都、静岡県、高知県、富山県 ピアン福島県
アンゴウ大阪府 ビワキョ
アンコモチ和歌山県 ミヅアンコウ宮城県
エドアンコオ高知県


アンコウ(和名)
ヒキガエルの方言説
千葉県では、ヒキガエルのことをアンコウともいう。 鱗のないブヨブヨとした柔らかい体で、その前方に大きな偏平した頭部、左右にはデンデン太鼓のような小さな鰭があり、 これを用いて海底にへばりついている様より呼名されたものではなかろうか。

アンコウという言葉には、ブヨブヨとした体型、大きな口、またほとんど泳ぐことなく深い海底に静止し、背鰭第1棘の小皮弁を動かして小魚を誘いじっと待っている様から、 太った人、立ちん坊、仕事を待つ日雇い人夫、身を売る娼婦等の隠語がある。

また、何もしないで御馳走にありつくことを「アンコウの餌待ち」、口先では強いことを言うくせに内心は小心者のことを「アンコウ武者」といい、あまりいい意味では使われていない。

この呼び名について、水産動植物図説(1933、田中)に「クツアンコウ 苦津鮟鱇(アンコオ科)Lophius setigerus Vahl アンコオ類は凡そ二種あるが、本種は不味の方である為、三崎では濱斥してクツアンコオと云ふのである。

従来、本種へはアンコウの通名が與へてあったが、どうも都合がわるいので、今回本種に對して改名を行ふこととした。」と、以前、田中茂穂博士によりクツアンコウと改名されて、これが和名として用いられていたことが記載されている。

また、魚鑑(1978、武井)には「あんこう 俗に.鮟鱇(アンコウ)の字を用ゆ.漢名 華臍魚(クワサイキョ).一名、琵琶魚(ビワキョ).一名、蝦蟇魚(カマギョ).中華(カラ)には形を琵琶と見.蛮夷(オランダ)には蝦蟇(カヘル)と見て名く」と記載されている。

属名Lophimusは、ギリシャ語のlophos(とさか)とomos(かた)から成っており、本種の背鰭棘が分岐している所から呼名されたものと思われる。

学名setigerusは、剛毛があることを意味しており、吻端から眼の上へ走る隆起線上に3〜4本の小棘があるところより呼名されたものと思われる。
英明fishing frogは釣りをするカエル、fishing toadは釣りをするガマガエル、angler fishは釣りをする魚の意味で、和名の由来と同じように、その外観から呼名されたものと思われる。 ちなみに、本種は、背鰭の第1棘条が長く釣り竿のように伸びており、その先端には皮弁という皮がぶら下がって、これが餌の役目をする。小さな獲物が近づき、その皮弁を食べようとする瞬間、大きな口でパクリと一呑みにする。

アゴ(顎)の転化説
アゴ(顎)がアンゴウ、アンコウと転化したものではなかろうか。 この魚の口は、大きな三日月型で、歯帯はやや広く、大小不同の歯が1〜3列並ぶ。

歯は内側に向かって生えているので、飲み込まれたものは口内から逃れることが困難である。

また、本種は、全体が柔らかいので、他の魚のようにまな板に横たえた状態では調理がしにくいために、さばくときは、大きな顎を上方に引っかけて吊し斬りを行うことも、由来の一因になっていると思われる。

鮟鱇という漢字
鮟鱇という字は、本種が、海底に一日中寝そべって、餌がくるのをじーっと待っている姿より、大平無事な暮らし安泰を想定し、それに魚編がつけられたものではなかろうか。



キアンコウ は、キアンコウ科の、キアンコウ属に属しており、日本では和名のみ知られている。

呼名と使われている地方(◎和名.○別名)
呼名地方呼名地方
◎キアンコウ アンコモチ和歌山県
アゴ和歌山県 エドアンコウ和歌山県、高知県
アゴウオ和歌山県 クツアンコウ神奈川県
アファー沖縄県 ハタアンゴ鹿児島県
アンコ新潟県、富山県、和歌山県、高知県 ○ホンアンコウ北海道
○アンコウ北海道、富山県、東京都、神奈川県、静岡県、高知県 ホンアンコオ
アンコオ茨城県、神奈川県、大阪府 ミズアンコウ宮城県
アンゴ和歌山県 ミズコ
アンゴウ大阪府


キアンコウ(和名)
黄鮟鱇(キアンコウ)説
本種の体が、黄色っぽい褐色で、灰色がかった他の仲間と容易に見分けられることから呼名されたものではなかろうか。

しかし、アンコウの仲間は、海中で生活している時には周辺の色に体色を随時変えるので、生きている個体を体色から識別することは難しい。
本種は、アンコウの類の中では最も美味で高価である。 また、他の仲間は南日本に多いが、この魚は北日本に多く、北海道の東太平洋沿岸からオホーツク海沿岸や北部日本海で漁獲されるアンコウ類はほとんど本種である。

ちなみに、アンコウ類を大量に取り扱う茨城県等では本種が最も美味なため、多種と分けて本当のアンコウとして販売されいてるが、他の魚市場では、アンコウ類はほとんど同一種として取り扱われており、同じ呼名で呼ばれる場合が多い。

この呼名について、水産動植物図説(1933,田中)には「アンコオ 鮟鱇(アンコオ科)Lophius litulom(Jordan)クツアンコオと殆ど同一に取り扱い、同一の方言で言っている場合が多い。

本種を私はキアンコオと付けていたが、従来、本種はクツアンコよりも美味で、多くの一が是れを索めるため、今回、改名して本種を単にアンコオと云ふか又はホンンアンコオと云ふこととした。」と記載されており、以前は、前述のアンコオと混称されていたことがわかる。

英名fishing frogは釣りをするカエル、fishing toadは釣りをするガマガエル、angler fishは釣りをする魚の意味で、和名の由来と同じように、その外観から呼名されたものと思われる。

ちなみに、本種は、背鰭の第1棘条が長く釣竿のように伸びており、その皮には皮弁という皮がぶら下がって、これが餌の役目をする。 小さな獲物が近づき、その皮弁を食べようとする瞬間、大きな口でパクリと一呑みにする。
英名Yellow goosefishは、黄色い鵞鳥魚の意味で、本種の大きなお腹の中から、海鳥が出てきたことより呼名されたものであろう。

本種は、普段はほとんど泳ぐことなく、やや深い海底に静止している。 海底にいる時は体色を周囲に合わせ、背鰭第1棘の小皮弁を動かして小魚を誘い、大きな口でぱくりとやるが、貧欲で、周辺に餌がなくなると水面まで上がり、波間の海鳥を襲うことがある。

年代は明らかでないが、11月のある頃、アメリカの東海岸にあるStaton島に住んでいたPorevoyという人が、ある朝、友人と船に乗っていると、朝霧のたちこめた行く先の水面に、異様な黒い塊が大きな波紋を描いてバタバタと暴れていた。

よく見るとそれはなんと全長1m位の大きなアンコウであった。 そのアンコウは、口一杯に海鳥を飲み込んだのはいいが、その海鳥が大きいために全部呑み込みかけて、苦しんでいたのである。

そこで、彼らはそれを生け捕りにし、大麻袋にいれ、近くの自然科学博物館に持っていったという。 この様な話から英名は生まれたと思われる。



ヒメアンコウ は、アンコウ科、ヒメアンコウ属に属しており、日本からは2の呼名が知られている。

呼名と使われている地方(◎和名.○別名)
呼名地方呼名地方
◎ヒメアンコウ ○ハタタテアンコウ


ヒメアンコウ(和名)
姫鮟鱇(ヒメアンコウ)説
本種の体が、大きくなっても全長30cmと、小型のアンコウ類であることより呼名されたものであろう。

小さいサザエをヒメサザエと言うように、日本語では、小さいものや愛らしいものを呼ぶ時、その頭にヒメをつけることがある。

学名Lophiodes naresiは、Lophiodes moseleyiの同物異名である。



ノドグロヒメアンコウ は、アンコウ科、ヒメアンコウ属に属しており、日本からは和名のみ知られている。

呼名と使われている地方(◎和名.○別名)
呼名地方呼名地方
◎ノドグロヒメアンコウ


ノドグロヒメアンコウ(和名)
喉黒姫鮟鱇(ノドグロヒメアンコウ)説
本種が大きくなっても全長22cmと小さく、口腔内が黒いことより、そこが黒くない近縁のヒメアンコウと区別できることから呼名されたものではなかろうか。 ヒメアンコウはヒメアンコウの項を参照のこと。



メダマアンコウ は、アンコウ科、ヒメアンコウ属に属しており、日本からは和名のみ知られている。

呼名と使われている地方(◎和名.○別名)
呼名地方呼名地方
◎メダマアンコウ


メダマアンコウ(和名)
目玉鮟鱇(メダマアンコウ説)
頭長の約1/3が眼径と、本種の目が大きく、眼隔域は狭くて浅く窪んで目立つことより呼名されたものではなかろうか。

英名Bigeye goosefishは、大目鵞鳥魚の意味で、和名の由来と同じように本種の特徴をよく表している。 goosefishの詳細はキアンコウの項を参照のこと。



ミノアンコウ は、アンコウ科、ヒメアンコウ属に属しており、日本からは和名のみ知られている。

呼名と使われている地方(◎和名.○別名)
呼名地方呼名地方
◎ミノアンコウ


ミノアンコウ(和名)
蓑鮟鱇(ミノアンコウ)説
ミノは、カヤやスゲなどの茎葉を編んで作った雨具の蓑(ミノ)の意で、本種の背面と腹面、著しく長い分岐した皮弁が多数あり、特に若魚ではそれが著しく、蓑のように体を取り巻いているのを見て、呼名されたものではなかろうか。

ちなみに、この蓑のような皮弁は遊泳の補助になり、クラゲに似せて外敵から身を守るためのものといわれている。 また、他の仲間では、第1棘条の先端に餌の役目をする皮弁という皮がぶら下がっているが、この魚のそれは未発達で皮弁状になっていない。

本種は、和歌山県の太平洋側で採集されたSL75mmの個体と沖縄県の慶良間諸島で採集されたSL61mmの個体について、東京大学海洋研究所の猿渡敏郎氏と東京大学総合研究資料館の望月賢二氏によって命名され、1984年12月28日に、 魚類額雑誌に投稿されたものである。

その雑誌には「The name fimbriatus is from the Latin meaning fibrous, fringed, borderd with hairs, refering to the tendrils on the bodyspecies. The new Japanise name "mino-anko" is given for the tendrils on the body which make the fish look as though is wearing a "mino". japanese traditional rain gear. "Anko" means lophiid anglerfish in japanise」と記載されている。



シモフリハナアンコウ は、アンコウ科、ヒメアンコウ属に属しており、日本からは和名のみ知られている。

呼名と使われている地方(◎和名.○別名)
呼名地方呼名地方
◎シモフリハナアンコウ


シモフリハナアンコウ(和名)
霜降花鮟鱇(シモフリハナアンコウ)
本種の体が褐色で、頭部の前半に霜降りのようでもあり、また小さな花のようでもある多くの小白点があり、目立つことより呼名されたものと思われる。

英名 Flowery goosefishは、和名と同じようにその外観からつけられたものであろう。